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第四話 切嗣(ツギハギ)怪人形編〜 その2 さらなる恐怖。新たな脅威となんでも屋アライブメンツ

前回までのあらすじ


ビルの間にやばいのが居た。

モヤの怪物がビルの間から、人通りの方へ壁を伝い出ようと動き出す。

物騒な手を光の差している方へ伸すが陽の光に当たった瞬間、影が掻き消えるように鉤爪から腕全体が形を失いモヤ状になって霧散してしまった。


怪物は別段怯む様子もなく振り返り、小道の奥の方へ歩き出すとその道の先に暗闇が立ち込める。

怪物はその暗闇に紛れて見えなくなっていく。

その場に残った人形たちもカタカタと顔や関節を揺らしながら、その後を追うように1体また1体と次々に消えていく。


最後の一体が消えるその刹那。その最後の一体と眼が合ったような感覚に肌が逆立ち、体が恐怖に震える。


「大丈夫。大丈夫。あのまま消えたんだ。気づかれてないはずだ……。」(そうだよ。もしあいつが僕を認識していたら、こっちに向かってくるはずだろ。だけどあいつは仲間の後を追って消えたんだから。)


危険は過ぎ去っていったと思った瞬間、体に力が戻ってくる。


「とにかく、ここから出よう。何時までもここにこのまま居るのはまずい。」


コンビニから出ると今度は目的地もなくただ歩き出す。

(暗がりやビルの間や路地裏などにはできるだけ近かないように避けることにしよう。)さっきの怪物たちがあれだけだという思い込みは捨てて、少し神経質気味に辺りを見渡しながら歩き続ける。


流石にだんだん日も落ちてくる。最初は徐々に次第に足速に。暗闇が世界を包み込み始めていき夜の街が顔を出し始めていく。

キャッチのお兄さんの声や客をもてなす飲食店員の声が聞こえ始め、日光の中にある場所の方が少なく小さくなって隅に追いやられていく感覚。

それでも僕にかけられる声は皆無で、考えないようにしてきた淋しさと不安が顔を出す。



「もし、そのお方。お食事などはいかがですか?」

「そこの緑のパーカーを着ているお兄さん。」


「?」

しつこく聞こえる声にもしかしてと近くを見渡して、自分だけしかパーカーを着ている男がいない事を確認してから、ようやくこの声が僕に向けて話しかけていることに気づいた。

(今までは、どんなに歩いても誰も見向きもしなかったのに、ついに見える人に出会えたのか?今になって急に?)


心のなかで疑問が渦を巻いてこみ上げてきては消えていく。


[あの時の僕は長らく誰とも話せず、認識すらされていなかったから不安定になっていたのだろうと。]

僕は迂闊にも声の主へと振り向いてしまった。


振り向いたそこに居たのは、禿げて少ししか残されていない髪の毛に、歯が少しかけていて不衛生な口元。充血しきっていて血管がくっきり浮かび上がった目で僕をじっと見つめている筋肉質の男だった。


身長は190センチを超えており、服装はガレキなどを作るときにプロが着る多機能エプロンを着ている。片手には首から上に当たる部位が無いあの怪人形を、そしてもう片方の手には鮮血が首の根元から地面に滴り落ちる生首を持って……。


「う、ア…、アアアぁぁぁあ!!!」


歯がカチカチと鳴り、五感が危険信号を発して逃げろといっている。

(ヤバいやってしまった。振り向くべきじゃなかった。)


叫び声を上げるのと同時にその場より少しでも遠くへ、一目散に駆け出す無様さでとにかく走り出す。

後ろから、まってくださいよ〜と気の抜けた声とともに僕をすっと走って追いかけて来ているのを背中に感じながら街中を一心不乱に駆け回る。


やがて背中に感じていた気配がかき消えるようになくなり、やっと巻けたと気づいてその場で足を止める。

座り込まなかったのは、もしここに崩れ落ちてしまうと、しばらくはもう立てない気がしたからだ。


「ハァハァ……。どこだここ?」

やたらめたらに走り回ったせいで、今いる場所が何処なのかも分からず周りを見渡すと、建物の壁にかこまれた小路の途中に立ち止まっていた。


間隔を空けて左右に街灯が建てられているビルに囲まれた小路に、一つだけ看板が付いてる建物の入口を見つける。

アライブメンツと書かれた看板の文字が中にある蛍光灯の淡い光で浮かび上がり、看板の下にある店の入口を照らしだす。

ライトに照らされた扉に【なんでも屋】の文字が書かれたプレートが掛けられていた。

「なんでも屋アライブメンツ?」


そっと走ってきた道を振り返ると、街灯の光が届かない暗闇の先から吹きつけてくる風に不吉なモノを感じて、なんでも屋に入ろうとして店の扉に思いっ切りぶつかってしまった。


「い…痛ってぇ〜……。」(って…触れる!?)

ようやく見つけた今日初めての触れる建物に、驚きと期待でごくりとツバを飲み込む。


ドアの取っ手に手が触れて、その存在感をしっかりと確かめるように握るとそのまま取っ手を回して、店の扉を開けると中に入った。


店内を照らす電球の明かりに目が眩み、目を細めて光に目が慣れるのを待った。


店のロビーに入ってすぐ左側には商品が入っているガラスケースが並べられ、中には統一性の無い商品がバラバラに陳列されている。

その反対の右側には固定電話と呼鈴のベルが一つずつ乗せられた、人が数人入れるカウンタースペースがあり、台の向こう側の壁に何枚かのポスターが貼られている。


もう少し奥に入るとロビーの中ほどに、テーブルが1つとその傍に椅子が2脚置かれていて、それよりもう少し奥に見える灯りがついたランプの置かれたテーブルが、ロビーで一番印象深く存在感を出していた。


僕が、店内の様子に圧倒されていると。

ランプの置かれたテーブルより奥の壁に備え付けられた扉が開き、奥から一人のゴスロリ衣装に身を包んだ17歳ぐらいの少女が姿を現す。

未だに店に入ってすぐの所で固まっている僕に気がついた彼女は、そっと僕にその場で会釈をして言う。


「いらっしゃいませ。【なんでも屋アライブメンツ】へようこそ。」

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