3話
「なあ、あの馬車の中には誰がいるんだ?えっと・・・女騎士さん」
好奇心から聞いて見る。
「そう言えばまだ名乗っていなかったな、私の名前はリオナ・イルリダール、ダールグレン伯爵家に仕える騎士だ。リオナと呼んでくれ。馬車の中に居るのはダールグレン伯爵家次女のミリア様と専属の侍女が1人だ」
うーむ、勘は当たっていたか。或いはテンプレ補正か。
「俺もまだだったな、俺はレイだ。都会に憧れ田舎から出て来た青少年をやっている。しかしこんな女所帯の場所に俺なんかが居てもいいのか?親が余計な心配しなくて済むように身の回りを女性だけで固めさせたのだと思っていたのだが」
「正しくその通りだ。ミリア様のお父上様・・・ダールグレン伯爵家当主なのだが少々度が過ぎた過保護でな。御子息に対しては普通の父で当主なのだが御息女の事となると少し周りが見えなくなるのだよ」
「過保護という割には少し護衛が少ないと思うのだが」
「今回は隣街に赴くだけだったのでな、人数は少な目なのだよ、まあ女性の騎士で腕利きな者が少ないという理由もあるが何時もなら盗賊など出ないのだ。伯爵家の御膝元であるし、領内の掃除は定期的に行われているからな」
「なるほど、つまりあの盗賊共は出来たばかりだったのかもしれないな、出来たばかりで襲った相手が貴族とは、運がいいのか悪いのかわからんな」
「領民に被害が出る前に討伐出来たのであれば伯爵家としては運が良かったのだろう。まあお嬢様が襲われた事実を知れば当主様は烈火の如く怒り領内を徹底的に掃除するだろうが」
「・・・積極的な人なんだな当主様は」
「まあそうだな、ただまあ襲われた原因の一端は当主様にもあるのだがな」
「どういう事だ?」
「簡単な事だ、パッと見女性のみの一行で、人数が少なく尚且つ騎士が護衛しているとなれば襲わない奴らは居ないだろうな」
つまり人数が少ない。騎士はいるが全て女性。騎士が守るのは貴族。貴族は金持ち。女なら性処理にも仕える。
=よし襲おう。
と、なる訳か。
思考回路がゲスいな〜。力が支配するのはどこの国でもどの世界でも同じみたいだが、こういうのを聞くとより力による支配が顕著な世界に来たのだと実感するな。
或いはまだ未発達なのかもしれないな。地球も一昔前には貴族制の中世や日本で言う武士の時代もあった訳だし。
「酷いなそれは」
ちょっと思考が飛んだぜい。
「うむ、まあだから君の言う男が居てもいいのか?という質問に対する答えは、男が居るだけで警戒されるから居てくれた方が有難い。に、なるな」
「それならいいんだが、盗賊はともかく後で当主様に難癖つけられたりしない?」
「・・・・それは、その、まあ、あれだ。知らん」
「まさかの答えに俺は驚きを隠せないんだけど」
「まあ、悪い様にはならないだろう。原因の一端は当主様にもあるわけだし」
「そうならいいんだけどね」
◇◇◇◇◇◇
それから暫く歩いて街に着いた。
ただ今検問中である。
「身分証の提示をお願いします」
門番さんである。
「うむ」
と、頷きリオナさんが代表して見せる。
「これは・・・無事のご帰還嬉しく思います。念の為馬車の中を拝見させて頂いても宜しいですか?」
と、問われたのでリオナさんが馬車の中に伝え数瞬後扉が開いた。
「確認致しました。それとこちらの男性は?」
「盗賊に襲われていた所を助けて貰ってな、道に迷っていたようなので連れて来たのだ」
「そうですか。身分証と銀貨3枚出してくれ」
「あー、田舎から出て来たばかりで身分証を持ってないんだけどその場合はどうしたらいいんだ?」
「そうか、それなら仮の身分証を発行する事になる。仮の身分証の有効期間は10日間だからそれをすぎる前にギルドなどで身分証を作って持って来てくれ、過ぎると罰金になるのでな、金は持って「私が出そう」る・・・宜しいのですか?」
「うむ、恩人だしな。この街に案内したのは私であるしこれくらいはしておかなければな」
「そうですか。それではお通り下さい」
動き出した馬車の後をついて行く。なお、俺だけ木の板を渡された。多分仮の身分証。
◇◇◇◇◇◇
「ありがとう、助かったよ。無一文だからどうしようかと思った」
街の中に無事入れた。
今は領主の館に向かっている。事情説明と恩賞を渡す為に俺も着いてきてくれと言われた。
「気にする事はない。助けて貰った礼だからな。まあ礼としては少し少な過ぎるが当主様から幾ばくかの謝礼が貰えるはずだから其方に期待していてくれ」
「そうするよ」
◇◇◇◇◇◇
「君が娘を助けてくれた人かね」
う、うむ。凄いプレッシャーだ。誰か助けて。