理由
「・・・どうゆうことだ?何でテメェ等が知っていた?」
士燕は沙耶と琥珀にナイフを押し当てる。
「ま、真上君、な、何をして・・・」
「黙れ。あんたに聞いてねぇよ」
生徒の危機に羽菜は士燕に話しかけるが士燕は取り合わない。一方、沙耶と琥珀の顔には恐怖の色は無く少しの悲しみがあった。
「やっぱり覚えてないよね・・・」
「真上君、覚えてない?3年前にあった拉致事件の事を」
士燕は琥珀の言葉に少し考えた後2人の首に当てていたナイフを下ろした。そして小さくため息をつきながら
「そうか・・・。あの時の2人が立花さんと森海さんか・・・」
「想いだしてくれた?」
「ああ・・・。全くどんな偶然だよ・・・」
士燕が想いだしたことが嬉しいらしく笑顔になる2人。だが羽菜は何が何だか全然分からず
「え、え、どうゆうことですか?」
と3人に聞き沙耶と琥珀が答える。
「あのね先生、私と琥珀ちゃんは3年前に拉致事件に巻き込まれて大きな船に乗せられたの。私達以外にも輝君や他の子供達もいて、それで私達より小さい子も居て大声でずっと泣いてたら犯人の1人に五月蠅いって言われて殺されちゃったの・・・」
「私達はそれを見てみんなパニックになったわ。それで犯人達が苛立って数が多すぎて五月蠅いからもう何人か殺すって言い始めたの。正直此処で死ぬって思ったわ・・・。でもその時真上君が助けに来てくれたんです」
「俺は依頼であのカス共を始末してくれと受けただけだ。別に助けに行ったわけじゃない」
「それでも私達が助かったのには変わりないわ」
「うんうん。それに真上君不安がる私達の為に自衛隊の人達が来てくれるまで船に残っていてくれて、私、優しい人なんだなぁって思ったよ」
3年前の事を話していたが次第に話す内容が士燕の事になっていき羽菜が話を戻そうと
「皆さんにそんな出会いが有ったんですね。2人が真上君によく話しかけていたのも?」
「そうだよ。入学式で初めて見たときに直ぐ分かったんだ!!本当はお礼を言いたかったんだけどあの事件の事を他の人にあまりしられたくないし、真上君も知られたくないと思ったから言えなかったの。真上君と私達だけで話したかったけど輝君が何時も私達のそばに居たからそれも出来なくて・・・。」
「それでも真上君と仲良くなればお礼を言うチャンスもあると思って何度も話しかけたわ。最初は助けてくれた感謝と憧れだった。けど何度も話しかけている間に私達は気づいたら真上君が好きになっていたわ」
「そうなんですね。実際いつ頃好きだって実感したのですか?」
話を戻そうとしていた羽菜まで話に入っていった。恋愛話は羽菜も大好きなようだ。士燕は(役に立たねぇ)と思いながら
「悪いが2人の想いには答えられない」
士燕の言葉を聞き沙耶と琥珀はショックを受け
「ど、どうして?もしかして他に好きな人がいるの?」
「違う。俺は殺し屋だ。だからそんな恋愛ごとに現を抜かす暇は無い。それに俺には人を好きになる感情?感覚?がよく分からないんだ。だから答えられない」
沙耶の言葉に答えた士燕は2人を見る・・・見るが、2人は悲しそうな顔では無く笑顔を見せていた。
「そっか~。でも、それなら私達がまだ好きでいても問題ないよね?」
「は?」
「ふふ。覚悟してね真上君。絶対に私達に振り向かせてみせるわ」
「ま、待て。俺の話を聞い・・・」
2人は「頑張ろうね琥珀ちゃん」「勿論よ。絶対に諦めないわよ」など話しており士燕の言葉など聞いていなかった。羽菜は微笑ましそうに2人を見ている。そんな羽菜に士燕は
「先生・・・。生徒の悩みを聞いてくれ・・・」
「え?あ、はい。何でしょうか?」
「何でこうなった・・・?俺はなんて答えりゃ良かったんだ・・・?」
「えっと・・・多分何と答えても結果は同じだったと思いますよ。まぁ『恋する乙女は強し』ってことですよ」
士燕は頭に手を当て深いため息を吐くのだった・・・。
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あの後、追っ手が来る可能性が有るので話は歩きながらする事にした。
「真上君、1つ聞いても良いかしら?」
「答えられることなら」
「私達に殺し屋だって事を話しても良かったの?」
「ああ。その事か。別に問題ねぇよ」
「どうしてかしら?理由を聞いてもいい?」
「理由は3つ。知ったからってどうしようも無いだろ。元の世界に戻れる可能性も分からないしな。2つ目はまた追っ手やら何かが来たとき俺はまた殺す。その時いちいち言い訳を考えるのが面倒くさい。3つ目・・・これが本命だったけど俺を恐れて城に戻ってくれたらなと思ったからだよ」
1つ目の理由を聞き3人は少し暗い顔をするが3つ目の理由を聞き沙耶と琥珀は
「えへへ。目論見が外れて残念だったね真上君!!」
「何処までも私達は付いていくわ!!」
士燕の腕に抱きつきそう答えた。
「でも何故真上君は殺し屋などやっているのですか?先生は親御さんが悲しんでると思います」
羽菜はまだ士燕が人を殺したことに納得していないらしい。たが士燕は
「それは無いな。そもそも俺の家族・・・というか俺の一族は殺し屋を家業としてるからな。それに悲しむもクソも俺以外の一族全員、俺が5歳の時死んでるしな」
「あ・・・。す、すみません・・・。辛い過去を思い出させてしまって・・・」
羽菜は申し訳なさそうに士燕に謝るが、士燕は「気にしてない」と言いながら歩みを進めていく。少し雰囲気が暗くなり始めたので沙耶が話題を変えようと
「ねぇねぇ真上君。あれから結構歩いたけど私達何処に向かってるの?」
「いや、知らねぇ」
「「「えっ!?」」」
3人がポカーンとする
「いや、俺だってこの世界は初めて来たんだし何処に何があるかなんか知らないし・・・」
「なら、1回城下町に戻ったらどうかしら?」
「それは得策じゃ無いな。何が起きるか分からないし」
「じゃ、じゃあどうするの?」
「俺1人なら1週間位の徹夜、絶食は余裕だから何とか成ったんだけど・・・3人は無理だよな?」
「絶対に無理だよ」
「無理ね」
「無理ですね」
「だから今街道を歩いてるんだ。街道を歩いてりゃその内に誰かに会うだろ。そしたら町の場所を聞いて其処に向かおうと思ってる」
士燕の方針に納得し4人は歩き続ける。途中休憩を挟みながら2時間ほど歩いたとき
「ん?・・・3キロ先辺りで戦闘が行われてんな。とりあえず向かってみるか」
「何で分かったの?」
「何で分かるの?」
「何で分かったんですか?」
3人は士燕に問い掛けるが
「話は後だ、取りあえず向かうぞ。向こうに着いたらあんた達は姿を隠してろ。俺は状況を見て介入する」
士燕の言葉に
「うん、分かったよ!!頑張ってね!!」
「分かったわ。気をつけてね」
沙耶と琥珀は素直に応じるが羽菜は
「介入するって・・・駄目です!!危険です!!それに・・・真上君はまた人を殺すつもりじゃ・・・」
「何言ってんだよ、当然だろ。殺らなきゃこっちの誰かが死ぬかもしんねぇし、これを逃せば次に誰かに会える保証も無い」
「ですが!!」
羽菜は1歩も引かない。時間が勿体ないと思い士燕は
「先生言ったよな。俺のやり方が気に入らないなら城に戻れと。これ以上くだらない問答してる暇は無い」
と少し口調を強めていい、3人が付いてこれるスピードで走り出した。沙耶と琥珀も士燕に付いて走り出し、羽菜は少しの躊躇いの後3人に付いて走り出した。
前回から少し投稿を遅らせました。仕事しながら2、3日で投稿はキツい・・・。すみません・・・




