真実の推測と士燕の戦い
あの後士燕は直ぐ正気に戻ったが3人の間で話し合いが勝手に進んでおり強引に同行されることになった。勿論、最初士燕は断った・・・断ったが沙耶と琥珀が泣きそうになるので断るに断れなくなり最後は許可をした。
女の涙には勝てない士燕さんだった・・・。
そして今士燕達は城の門を出て直ぐ城下町も抜け外の街道を少し外れた場所を歩いている。そしてある程度城から離れたところで羽菜が士燕に聞きたいことを聞き始めた。
「真上君質問なのですけど王様と女王様は一体どんな嘘をついていたんですか?先生には全然わからなかっんですけど」
沙耶と琥珀も知りたいのか真剣な表情で士燕を見る。
「あいつらは他の2つの国シシガミとアラクネがカグライの神ネルを殺したと言っていたな?だが皆はそのネルの力の一部を貰ったと言っていた。・・・おかしいと思わないか?俺達はシシガミとアラクネの神を殺しその力を奪って元の世界に帰れると言われた。なら何故シシガミとアラクネの連中はネルを殺してその力を奪わなかった?」
しっかり者の琥珀はそれだけで士燕が言いたいことを理解したようだが沙耶と羽菜はまだ理解出来ないようだ。
「シシガミとアラクネの人達が力を奪えることを知らなかったとか?」
沙耶が言うが
「俺もそれは考えたが、もしそうだとしたら王と王女は何故力を奪えることを知っている?1番考えられる可能性はカグライの奴等が神を殺しその力を奪い皆に力を渡したってとこだろうな。勿論それだけならまだ違う可能性もまだある。だがあいつらは俺の「嘘」と言う言葉にたいして明らかな動揺があった。それにあいつらの目には狂気の色が見えた。これだけであの国を信頼しない理由は十分だろ」
3人は何も言えなかった。沙耶はキラキラした目で、琥珀は尊敬の目で、羽菜は驚愕の目で士燕を見ていた。そして羽菜は
「あの短い間で其処まで考えていたんですか!?でも、それなら他の子達があの城に居るのは危険です!!戻って皆さんに知らせないと!!」
慌てながら士燕に言うが
「止めとけ。どうせ意味が無い」
「真上君!?」
「あいつらのことだ。俺が其処まで考えていたと言っても反感するだけだよ。まともに話を聞くとは思えない。それに2つの国を潰すまでは邪険には扱わないと思うぞ。一応貴重な戦力らしいからな。まぁ、潰した後はどうなるかは知らんけど流石にそこは俺の知ったことじゃない」
士燕はクラスメイト達をバッサリ切り捨て歩き始める。3人は戻ってクラスメイトに士燕の言葉を伝えたいが自分達は強引に士燕に同行を許して貰ったこと、そして今は大丈夫と言うので後ろ髪を引かれる思いだが士燕の後ろを歩き始めた。
10分程歩いた頃士燕が唐突に立ち止まり後ろを振り向く。その目はかなり厳しい。沙耶、琥珀、羽菜は、何故立ち止まったのか分からず理由を聞こうとした・・・だが聞く前に士燕は懐から長さ10㎝程の漆黒の四角い棒を取り出した。3人はますます困惑するが次の瞬間その顔に恐怖が浮かぶ。士燕が取り出した棒を強く握ると10㎝程の漆黒の刃が出て来たからだ。そして士燕は
「此処らで良いだろ?其処にいる奴等、さっさと出て来いよ。城から着いてこられてこっちは良い迷惑だ」
と静かにだがハッキリと聞こえる声で言った。そして
「・・・何故分かった?俺達の尾行は完璧だったはずだ」
木の裏から10人程の男が剣を持ちながら出て来た。
「はっ!!あの程度で完璧とは笑わせるな。臆病者がいるテメェ等が俺に気づかせないとか無理に決まってんだろ。雑魚共」
士燕は挑発しながら答える。
「ま、待って下さい真上君!!何なんですかこれは!?それにこの人達は一体!?」
羽菜の疑問も当然だろう。ただ歩いていたら生徒の1人が刃物を取り出しその後、剣を持った男が10人も出て来たのだから。羽菜はとにかくテンパっている。
「決まってんだろ。俺を殺しに来たんだよ」
なんてことは無いように答える士燕。
「こ、殺すって何でですか!?それに何で真上君は落ち着いているんですか!?」
さらにテンパる羽菜。
「最初から付いてきてたのに気づいていたんだから慌てる必要も無い。それだけ。こいつらが付いてきた理由は2つ。恐らく俺が他の勇者共と一緒にこの世界に来たことを他の誰かに知られたくないからだろうな。もう1つの理由・・・と言うかこっちの理由が本命だと思うが俺が嘘に気付いたからだ。勇者共に真実を知られたくないから・・・だろ?」
「さぁどうだろうな。理由がどうあれ貴様は此処で死ぬんだ。女共は特に聞かされてないが俺達が可愛がってやる。だから安心して殺されな」
士燕とリーダーらしき男の会話を聞いてますますテンパる羽菜。沙耶と琥珀は戦力にならないことを理解しているのか羽菜を連れて後ろに下がる。だがその目には恐怖が無くしっかりと士燕を見ていた。これには士燕も不思議だった?士燕は学校で喧嘩等、不祥事を起こしたことなどない。なのに何故この状況で信頼されているのか。
(まぁ、一緒に戦うとか言われるより良いか)
「直ぐ片付ける。動かずに其処に居てくれ」
と3人に声をかけ男達に意識を集中させる。だか男達はその余裕が気に入らないらしく
「何余裕ぶっこいてんだガキが。知ってるぜ!ステータスが一般人よりかなり低いんだろ。こんなんが勇者の1人とはなぁ。何ならテメェの目の前でこの嬢ちゃん達を犯し・・・」
「黙れ」
男に最後まで喋らせず士燕は殺意を解放する。その瞬間周りの空気が一瞬で変わった。この世界には魔物も居る。男達もカグライの騎士として魔物と戦ってきたし盗賊やここ最近ではシシガミやアラクネの騎士達・・・人相手とも戦ったこともある為普通の殺意なら問題なかった。たが
「な、なんだこれは・・・」
「う、動けない・・・」
「あ、ああ・・・」
士燕の殺意は普通では無かった。男達は体を震わせ足が竦み動けないだけで済んでいるが一般人がこの殺意を受けたら一瞬で正気を失うか死んでいただろう。因みに一般人(神の力を持っているが)である沙耶達は、何も無いのかキョトンとしている。それもそのはずで士燕が殺意をコントロールし3人の周りのだけで殺意を放っていないからだ。
男達は動けないながらも何とか動こうとするが
「へぇ。俺の5割の殺気を受けているのにまだ正気を保ってられるか」
士燕の言葉を聞き男達は絶句した。
(こいつ今なんて言った?これだけの殺意を放っといて5割だと?一体こいつは何も・・・)
リーダーらしき男とその直ぐ後ろ横にいた男達の思考はそこで止まる。
「死ね」
士燕は一瞬で男達に近寄り持っていた刃で3人の首を掻っ切る。そして3人の人生もそこで終りを迎えた・・・