ダンジョン・10階層 ○○○
「士燕く~ん。まだ駄目なの?早く早く~!」
「私、もう待ちきれないわ」
沙耶と琥珀は、我慢できずに士燕に懇願するように問いかける。が士燕は淡々と作業しながら
「まだだ。あと少し待て・・・」
と、待つように言う。だが士燕を挟むように沙耶と琥珀の反対側から
「はしたないのは分かってますが・・・私も早く欲しいです・・・」
「ここまで焦らされると勝手に反応してしまう。もう我慢の限界だぞ」
羽菜とローズまでもが士燕に急かす様に言う。そして・・・
「ふむ・・・良い感じだな。
よし!良いぞ」
士燕の言葉に自らの欲を満たすために4人は動き出した。
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こうなる1時間ほど前、士燕達は魔物を倒し途中休みを入れながら次の階層への道を探しながら歩き続けようやく10階層まで辿り着いた。
9階層までの戦いは基本、沙耶・琥珀・羽菜の3人に任せ数が多いときだけ士燕とローズが手を出す形式だった。
最初の方は士燕も戦っていたのだが魔物のあまりの弱さと戦いの幼稚さに面倒くさくなってしまった。とはいえレベリングに来ているので面倒くさくても戦わないというわけにはいかない。
なので3人だけで戦わせることにした。魔物との戦いに慣れてきたとはいえまだまだ甘いところが多い。士燕にとっては3人の技量を上げられ楽にレベルを上げることができる、一石二鳥なのでちょうど良かった。
だが、それでも魔物達との戦いは簡単に終わってしまった。
それもそのはずで士燕は異常なステータス、ローズはこの階層では高いレベル持ち、沙耶・琥珀・羽菜のレベルなら本来ちょうど良いはずだが成長上昇率UPによる効果でアークイデアの者達より同レベルでも高いステータスを持っており、なおかつ士燕とのトレーニングでレベル20台にしては異常なまでの武器レベルを持っているので全く問題が無かった。
それでも最初に比べ3人の技量も上がり、連携も上手くなってきている。その為士燕の指摘も大分少なくなってきたので無駄ではなかっただろう。
だがそのせいもあって10階層に下りて直ぐそれは起きた。
『くぅ~~~~・・・』
気の抜けるような音が鳴り響く。
「「「「・・・」」」」
音が鳴った方を向くと
「み、見ないで・・・」
と、顔を両手で隠し恥ずかしそうに下を向く琥珀が居た。それを見て沙耶が
「可愛い音だったから大丈夫だよ、琥珀ちゃん!
ねぇ、士燕君。私もお腹すいた~」
何が大丈夫なのか分からないが琥珀をフォローしながら己の空腹を訴える。士燕は羽菜とローズの2人を見るが2人も空腹なのかコクコクと首を動かした。
士燕はダンジョンに入る前に買った懐中時計(魔道具である為かなり高価だった)を取り出し時間を確認すると6時を回ったところだった。士燕の横からひょこっとローズが顔を出して懐中時計を見て時間を確認すると
「もういい時間だし今日は終わりにしないか?まだ初日なんだしそんなに焦ってもしょうがないだろ」
とベテラン冒険者っぽく士燕に進言するがその直ぐ後に
『くぅ~~~~・・・』
ローズのお腹の音が鳴った。そしてローズは顔を赤くし視線を逸らしながら
「・・・お、お腹がすいたから今日は終わりにしてご飯にしないか・・・?」
と、恥ずかしそうに士燕に言い直し琥珀同様に俯いてしまった。
士燕としては終わりにしても良かったが今居る場所が問題だった。何故なら今居る場所は10階層下りて直ぐの通路であり、他の冒険者達も通る可能性も否定できない。なので
「終わりにするのは良いんだが・・・流石にここで休む訳にもいかねぇだろ。取りあえず別の良い場所を探してからにしよう」
「そうだな。その方が良いな・・・」
士燕の言葉に賛同するが、お腹が鳴るほどの空腹なので直ぐに食べれないことに少し気を落とす。問題は無いと思うがやる気を出して貰う為に
「俺が飯を作ってやるからもうちょっとだけやる気を出してくれ」
士燕が飯を作る。そう聞いた途端4人は
「ふぉおおお!士燕君の作るご飯!」
「さぁ!行くわよ!」
「早く!早く良い場所を見つけましょう!」
「ふふっ!士燕のご飯!楽しみだな!」
テンションをMaxまで上げ士燕を置いていく勢いで歩き始めた。
何故ここまでテンションを上げられるかというとこのメンバーの中で士燕が1番料理が上手いからだ。
イセネまでの道中で全員1回は飯を作っていた。
ローズは肉を切る、焼く、塩をかける、食う!という感じの男の料理的しか出来なかったのでそれ1回切り作らせなかった。
羽菜はローズよりマシだが、そんなに料理が得意でもないので羽菜も1回切り作らせなかった。
沙耶と琥珀は料理が好きで得意だった。2人の作った料理は10人食べれば間違いなく10人美味いと言うほどだ。
だがそんな2人より士燕の方が料理が上手く何より知識も2人より上のため士燕が作った料理が4人の中では1番好評だった。
しかし士燕は面倒くさがりあまり飯を作ろうとしないし、沙耶と琥珀が料理好きで作りたがるので基本的には2人が飯を作っていた。
そんなこんなで滅多に食べられない士燕の手料理。その効果は抜群で歩き始めて10分ほどで突き当たりにある休むには最適な部屋を見つけることが出来た。
中には運良く魔物も冒険者も居なかったのでさっさと中に入り士燕は宝物庫から薪・調理器具・具材・テントを取り出した。
そしてテントはローズ主体で4人に建ててもらい士燕は羽菜に薪に火を付けてもらい調理を開始した。
調理を開始して暫くすると部屋の中に良い匂いが漂い始め4人が集まってきた。
「ふわぁ~。良い匂いだよ。
士燕君コレはもしかしなくともカレー?」
「まぁ、向こうの香辛料とは違う物だからモドキだけどな」
「なる程・・・。士燕君コレは何を使っているのかしら?」
沙耶と琥珀は料理好きなだけあって士燕に色々質問を仕始める。士燕は香辛料を炒めながら質問に答える。
「カレー?それはお前達の世界の食べ物か?」
「そうです。私達の世界で嫌いな人は老若男女居ない食べ物なんですよ」
「へぇ!つまり世界一美味い食べ物って事か!?楽しみだな!」
「えっと・・・まぁ、それは人それぞれですね・・・」
ローズは羽菜にカレーのことを聞き多少勘違いするがカレーに興味津々だった。
士燕は炒めていた香辛料を鍋にぶち込みグルグルとお玉で回していく。回していると
「士燕く~ん。まだ駄目なの?早く早く~!」
「私、もう待ちきれないわ(お腹がすいて)」
沙耶と琥珀は我慢できずに士燕に懇願するように問いかける。が士燕は淡々と作業しながら
「まだだ。あと少し待て・・・」
と、待つように言う。だが士燕を挟むように沙耶と琥珀の反対側から
「はしたないのは分かってますが・・・私も早く欲しいです・・・(ご飯が)」
「ここまで焦らされると勝手に反応してしまう(ぐぅ~~~)。もう我慢の限界だぞ(空腹の)」
羽菜とローズまでもが士燕に急かす様に言う。そして・・・
「ふむ・・・良い感じだな。
よし!良いぞ」
カレーが出来上がり士燕が声をかけると4人一斉に動き出し準備を終わらせテーブルに着いた。
士燕は鍋をテーブルに置き1人1人にカレーをよそっていく。そして全員に行き渡り
「「「「「いただきます」」」」」
食べ始めた。元々この世界に『いただきます』何て言葉は無かったが士燕達が言い始めたらローズも真似して言うようになった。
沙耶・琥珀・羽菜は久しぶりに食べるカレーに、ローズは初めて食べるカレーの美味しさに、夢中になっていた。
「もぐもぐ、これがカレーか!確かに美味い!」
「もきゅもきゅ、ねぇ~、カレーは美味しいよね」
「ぱくぱく、作り方は分かったから今度は私達が作ってあげるわ」
「ぱっくんぱっくん、でも士燕君、ルー無しで香辛料からカレーを作れるなんて凄いですね」
「ぱっくぱっく、ん~まぁ、ちょっとした伝手があってその時に色々覚えたんだ」
「へえ~いいな~、もきゅもきゅ」
「ねぇ士燕君。ぱくぱく、またご飯を作るときに色々教えて貰っても良いかしら?」
「別にぱっくぱっく、良いぞ」
「「やった!ありがとう」」
こんな会話をしながら夕食を楽しみこの日の探索を終えるのだった。
次回から暫く更新が遅れます




