ダンジョン・7階層 追跡者
士燕達は7階層の1つの部屋で冒険者達に睨まれていた。
あの後、テンパる羽菜を落ち着かせ、何とか出発する事が出来た。
そして士燕が魔物の気配を感じ取り向かってみるとまたしてもオークの集団だった。
士燕はレベル20まで上がりステータスが異常にまで上がった沙耶・琥珀・羽菜の3人だけで戦わせることにした。
琥珀は言わずもがな、オークを一太刀で切り倒していく。
そして沙耶・羽菜も魔力が上がったことにより魔法一発でオーク達を倒していった。
そこに戦いなど無く有るのはただの蹂躙だった。
オーク達を殲滅した後5階層で他の魔物とも戦ったがそれら全て、士燕・ローズだけでなく3人もアッサリと倒してしまった。
士燕としてもレベル20を越えただけでここまでアッサリと終わるとは思ってもなく、3人の成長につながらないため魔物がある程度強くなるまで一気に進むことにした。
5階層は最早戦う価値が無くなったので次の階層への階段を見つけ6階層に向かった。
だが6階層に居る魔物は5階層と大して変わらなかった。なので次の階層への階段を探すことになった。
6階層に入って1時間ほど歩き7階層へ繋がる階段のある部屋を見つけその部屋に入ったとき士燕が扉の方へ厳しい視線を向ける。それに気付いた4人がどうしたのかと思い士燕と同じように視線を送るが、4人は何故士燕が厳しい視線を向けるのか分からず首をかしげる。
扉から視線を外し4人の方を向いた士燕。そして
「少しこの部屋で休んでから行くか・・・。
ダンジョンに入って暫くたったからな。疲れただろ?」
4人に問いかける。
4人に反対はなかった。沙耶・琥珀・羽菜は初めてのダンジョンと慣れない戦いで少し疲れていたので笑顔で喜んだ。ローズにしてもこの先何があるか分からないので、休めるときに休むことに賛成だった。
4人の賛同を得た士燕は、宝物庫から人数分の机と椅子を取り出す。さらにティーカップとお湯の入ったポット、クッキーが乗った皿を取り出し机の上に置く。
スキルである宝物庫はアイテムボックスと違い時間の概念が無い。その為食べ物や冷たい水等を何年も宝物庫に入れてもそのままの状態で取り出すことが出来る。
士燕がお茶の準備をしている最中4人は大人しく椅子に座って待っていた。
そして士燕がティーポットにお湯を注ぎ蒸らした後、人数分注ぎそれぞれの前にティーカップを置く。4人は士燕にお礼を言って自分好みの砂糖とミルクを入れ一口飲む。
「美味しい・・・。
やっぱり士燕君の入れた紅茶が1番ね」
「本当だよね~。
ん~、クッキーも美味し~。このクッキーも士燕君が焼いたの?
紅茶と合ってて、スッゴい美味しいよ」
「それにしても・・・ダンジョンの中でこんなお茶会が出来るとは・・・。
ホント、士燕様々だな」
「本当ですね。
ありがとうございます。士燕君」
4人のお礼を聞きながら士燕は5人で楽しくお茶会を始めるのだった。
お茶会を1時間ほど楽しんだ後片付けをし出発することにした。片付けと言っても士燕が触れて宝物庫に入れるだけだが・・・。
7階層に下りてまた歩き出す。
少し歩くと士燕は気配を感じ取る。感じ取るが黙って歩き続けた。
士燕が気配を感じ取って少し歩いた時
「!!。士燕・・・」
「ローズも気付いたか」
ローズも気配を感じ取り士燕に小声で話しかける。
全く気配を感じ取れない3人は、士燕とローズの雰囲気から何かを感じ取り緊張感を高め士燕の方を向く。
緊張感を直ぐ高められた3人にちょっと驚いた顔をするが、直ぐに真顔に戻る。そして
「大きな声を出すな、後も向くな。
俺達は今、後を付けられている。人数は30人ほどだな・・・」
士燕の言葉に3人は驚く。だが士燕の指示のおかげで後ろを向かず、大きな声も出さずに済んだ。
そして小声で
「本当に?
だとしたら何で付いてきてるのかな?」
「さぁな。
ただ、この人数で付いてくるんだ。交友的じゃ無いことは確かだろうな」
「士燕君、いつから付けられてるの?」
「6階層で休憩した部屋に入る少し前からだ」
「どうする?
このまま無視して進むか?」
「・・・いや、この先何があるか分からないし何時までも付けられるのも鬱陶しい。
もう少し進んでまだ付いてくるようならこっちから仕掛けよう」
「それって、大丈夫何ですか?」
「向こうが何をしたいのか分からないしな。だったらこっちから仕掛けた方が有利だ。
これから成るべく魔物を避けて行くぞ。戦ってる最中に乱入されると面倒だ」
士燕の言葉に納得し頷きを返す。
士燕は成るべく魔物とも会わないようにルートを選びながら進んでいく。暫く歩いていたが後ろを付いてくる者達は、一定の距離を保ったまま士燕達の後を付いてきていた。
その事を4人に伝えながら士燕は目的の場所に向かって歩き出す。その目的の場所は、扉が1つしか無い大きめの部屋だった。
そして部屋に入り部屋の中心で立ち止まり扉の反対側に居るだろう者達に向けて
「何時まで付いてくるつもりだ?さっさと出て来いよ」
そう切り出した。
そして士燕の言葉を聞いた者達が次々と部屋に入ってくる。その数は士燕の予想通り約30人。全員男で人族が殆どだが4,5人ほど獣人と魔人も混じっている。
その内の人族の1人が語りかけ始めた。
「まさか気付いていたとはなぁ。だが必死こいて逃げた場所が行き止まりの部屋とは。
くっくっくっ・・・。こっちに取っちゃ好都合だ」
男はそう言って自分の武器を構え始める。周りに居る男達も武器を構え始めたり魔法を放つ準備をする。
その様子を見て士燕は
「ハァ~。何だよ、お前等の目的もコイツらか?悪いがコイツらはお前等と行く気は無いみたいなんだよ。さっさと諦めろ」
心底面倒くさい感じを隠すこと無く男達に語りかけた。
そんな士燕に対して男達は
「ああっ!!調子のんなよクソが!!
テメェは俺達の仲間に手を出したんだ!!落とし前はつけて貰うぞ!!」
怒りで顔を赤くしながら叫び喚く。
士燕は男の言葉に覚えが無いので首をかしげる。そんな士燕対して男達は怒りを更に募らせる。
「このダンジョンの入り口手前でテメェがぶっ飛ばした奴とそれに巻き込まれた奴等だ!!」
その言葉に5人は「ああ~」と言いながら納得した。
「巫山戯やがって!!テメェはここで痛い目みせてやらぁ。そんで女共は迷惑料として俺達が貰ってやる」
続けて発された言葉に士燕を除く4人は小声で
「それって・・・ただの逆恨みだよね?」
「そうですね。責任を士燕君に押し付けてるだけです」
「ああ。そもそも先に手を出してきたのはあっちだしな」
「何て言うか・・・小さい人達ね」
周りに聞こえないように話しているが男達にバッチリ聞こえていた。
「この女共がぁ・・・。
覚悟しとけよ・・・。このガキを躾けた後ぶっ壊れるまで犯してやるよ!」
男達は顔色を怒りで赤からどす黒い赤色にしながら5人を睨みつける。だが何人かは4人を犯すのが楽しみなのか気持ち悪い視線を4人に向けている。
それに沙耶・琥珀・羽菜・ローズは気付いたが、面倒くさくなりそうだから黙っていた。・・・沙耶を除いて。
「うう~・・・あの人達、気持ち悪いよぅ~・・・」
あまりの気持ち悪さについ言ってしまった。
先程より更に小声だが1番近くに居た男には聞こえたらしく
「このクソアマが!!」
と、叫びながら距離を詰め沙耶に斬りかかってきた。
それを目の前にして沙耶は動けないで、ただ見ていることしか出来なかった。
そして男は沙耶に剣を振り下ろした・・・




