神《ネル》の世界
魔方陣が現れ教室が光に包まれた後、士燕は何も無く誰一人居ない白い世界に居た。だか士燕は一点をしばらくの間見続け
「はぁ、いい加減出て来い。そこに居るのは分かってんだよ」
ため息と共にそう言い放った。その直後、士燕が見続けた場所に不意に少女が現れ
『どうして私が此処に居るのが分かったの?』
と問いかけてきた。
「教える必要があるか?」
『無い。けど私は知りたい』
「教える気は無いな」
『どうしても?』
「ああ」
『そう・・・ならいい』
そんな問答しながら士燕は油断なく少女を見ていた。少女は腰まで伸ばした長い青い髪に青い瞳、見た目10歳前後の小柄な少女だった。士燕が見ていたように少女も士燕を見つめていた。お互いがお互いを見つめそれが何時までも続くかと思われたがその均衡を少女が破った。
『ごめんなさい』
不意に少女が謝罪し始めた。
「待て!一体何の謝罪だ?それに此処は一体何処なんだ?あの時教室に現れた六芒星は何なんだ?」
『此処は私の世界・・・。貴方の意識だけを私が此処に呼んだ。へきささむ?・・・が何なのか良く分からないけどあの時あの場所に現れたのは、貴方達の世界からこっちの世界・・・[アークイデア]に呼び寄せる為の魔方陣』
「ヘキサグラムだ。つまり俺は異世界に呼ばれたということか?その[アークイデア]とやらに?」
『・・・』
少女が無言で頷く。
「此処には俺しか居ないが呼ばれたのは俺だけか?」
『違う。あの場所に居た全員が[アークイデア]に呼ばれた』
「なら、なぜ此処には俺しか居ない?お前があの魔方陣とやらで俺達を呼んだのか?そもそもあんたは一体何者なんだ?」
『私の名前は[ネル]、アークイデアの神の1柱。貴方達を呼んだのは私じゃないけど・・・私にも責任がある。そして貴方だけ呼んだのには貴方にお願いがあるから』
「神・・・ねぇ。まあそれはどうでも良い。俺に願いがあるって言ったがその願いを俺が叶えるとして、・・・ネルだったか?ネル、お前は対価に何を俺に渡す?悪いが俺はタダ働きをする気は無い」
神と名乗られても本来なら頭のおかしい馬鹿だとしか思えない。実際、士燕も普通ならそう思って一蹴するだろう。だがネルの纏う雰囲気が普通の人のものでは無い事に士燕は直に気づき否定せず話を進めた。
『私が叶えられる事なら何でもする・・・だからお願い』
「・・・いいだろう。報酬はあんたの願いをかなえ終ってからでいい。まぁ、俺にできるか分からんけどな。それで俺はなにをすればいい?」
『貴方達はほぼ確実に戦う事を望まれる。今の私には貴方の意識しか呼び寄せる事しかできなかった・・・。だから貴方には戦う事を拒否して貴方から私に会いに来てほしい。その為に私の持つスキルを貴方・・・』
「士燕だ」
『え?』
「俺の名だ。士燕と呼べ」
『士燕士燕・・・』
ネルは俯きながら何度も士燕の名前を繰り返し
『分かった。士燕には私のスキル[宝物庫・神][鑑定眼・神][ステータス隠蔽・神]を上げる。本当はもっとあげたいけど今の私にはこれが限界なの。スキルの性能と使い方だけど・・・』
スキルの性能と使い方を聞き終えて士燕は、一番重要なことを聞き出した。
「スキルの事は分かった。で、ネルの元に来いと言ったが何処に行けばいいんだ?」
ネルが答えようとしたその時2人がいる場所が歪みだし
『もう時間が無いみたい・・・貴方の意識を此処に留める事も限界』
そうネルが言った途端、士燕の体が薄まり始めた。
「何だ?体が薄くなってる?」
『士燕の意識が体本体に戻り始めているの。お願い士燕!!私に会いに来て!!今の私達にはもう貴方に頼るしかないの!!』
「待て!俺の質問に答えろ!俺は何処にむか・・・」
最後まで言い切れず士燕はその場から居なくなった。そしてその場にはネルだけが残り
『お願い士燕・・・貴方だけが私達の最後の希望』
そう呟くきネルもその場から居なくなった・・・