初めての嫌な貴族
その後は特に問題なく進み10日かけようやく目的の街にたどり着いた。街の検問を通りすぎ馬車が領主の屋敷にたどり着く。
「ようやく着きましたね。士燕さん護衛ありがとうございます。報酬とお父様に紹介したいので着いてきて下さい」
エリーゼに付いていき屋敷に入る
「「「「お帰りなさいませ。お嬢様」」」」
館に入るとたくさんのメイドが、並んでおり士燕達は圧倒されていた。エリーゼ達にとっては普通らしく「ただ今戻りました」と声をかける。そして1人のメイドがエリーゼに声をかける
「お嬢様お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。此方の方々は?」
「彼らには盗賊に襲われているところ助けて頂いたのです。メイド長。お父様は何処に?書斎ですか?」
「!!そうですか。本当にご無事で何よりです。皆様お嬢様を助けて頂きありがとうございます。それと旦那様ですが・・・今は客間でお客様と話をされています」
「そうですか。それならお話が終わるまで待っていた方がよろしいですわね」
「その方がよろしいかと・・・。何よりお相手がザフノフ様ですので」
話し相手の名前を聞いてエリーゼは顔を露骨に歪め
「それは・・・困りました・・・」
「今日お帰りになられるようなのでそれまでお部屋でお休みになられては」
「そうさせて貰うわ。士燕さん達も一緒に来てください、ザフノフ様に気づかれたくないので」
士燕達はエリーゼに付いて歩き出すがそうそう上手くいかないのが世の常だ。
「エリー!!帰って来ていたのか!?」
エリーゼ達の前にある扉が開き1人の男が出て来た。
「ただ今戻りましたお父様。予定より遅くなってしまって申し訳ありませ
ん」
男はエリーゼの父親ガラドらしくエリーゼを見て仏頂面から笑顔に変えた。
「いやいい。お前が無事で良かった。ん?そこの彼等は?」
「実は途中で色々ありまして・・・」
「お久しぶりですねエリーゼ嬢。相も変わらずお美しい。」
エリーゼが士燕達のことを説明しようとしたら1人の男が姿を現した。
「ご機嫌ようザフノフ様。お元気そうで何よりです」
「お久しぶりです。ザフノフ様」
エリーゼとロイドも挨拶を返事を返すが
「汚らしい獣人風情が!!この私に話しかけるな!!」
ロイドに向け叫び散らす。これだけで士燕達はザフノフに会いたくない理由を理解した。そしてそれを聞きザフノフの騎士、ロイド、士燕以外の全員は非難の目をザフノフに向けるがザフノフ本人は気づかない。それどころか
「ところで騎士の数が少ないようですが盗賊か魔物に襲われましたかな?全く、主を護れない騎士など愚の極みですな。どうです?私の妻になれば私の騎士がしっかりとお守りしますよ」
騎士達まで侮辱し始めた。ザフノフの騎士達はニタニタと笑みを浮かべエリーゼの騎士達は悔しさに顔を真っ赤に染める。
「ふっふっふ。まあ今日は帰らなければならないので返事はまた今度聞くとしましょう」
そう言って玄関に向かおうとしたが沙耶、琥珀、羽菜を「ほぅ」と気持ち悪
い笑みを浮かべ
「中々の上玉だな。よし!!お前達3人私の側室にしてやろう!!」
「「「「は?」」」」
士燕達は何を言ってるのか分からずポカーンとした。
「おい、どうした?この私の側室になれるのだぞ。感謝して早く私のそばに来い」
ニタニタと気持ち悪い笑みで3人に命令口調で言うがその3人は
「おい。あの豚がいくら気持ち悪いからって俺の後ろに隠れるなよ」
「だって~本当に気持ち悪いんだもん」
「その通りね。正直視線すら合わせたくないわ」
「ちょっとあの視線で見られるのは気持ち悪いので遠慮したいです」
士燕の後ろに隠れ言いたい放題だった。本人達は聞こえないように小言で喋っていたが周りにはバッチリ聞こえていて、エリーゼ、ガラド、ロイド、騎士達は笑いを堪えている。一方ザフノフは
「き、貴様等!!この俺を誰だと思ってやがる!!」
怒りで顔を真っ赤に染めわめき散らすが「や~ん、怖~い」「士燕君助けて」沙耶と琥珀はそう言い士燕の腕に抱きつき士燕は士燕で
「いや・・・知らねぇよ。ただの豚じゃねぇの?・・・あ!豚と一緒にしたら豚に失礼か」
士燕の言葉にガラドはまずいと思い士燕を止めようとするが遅かった
「このクソ餓鬼が!!おいお前等!!このクソ餓鬼を殺せ!!女共は俺の物だ!!傷つけるな!!」
士燕の言葉に堪忍袋の緒が切れ自分の騎士達に命令する。
ガラドは自分の騎士達に士燕を守るように指示を出そうとするがエリーゼとロイドに大丈夫だと止められる。
そしてザフノフの騎士が剣に手が触れた瞬間士燕から莫大な殺気が放てられる。その殺気に当てられ騎士達は膝をつき震えながら四つん這いの状態になる
「おい!!お前等何やってんだ!!早く殺せ!!」
ザフノフが騎士達に命令するが士燕の殺気に動けない。士燕はあえてザフノフに殺気を当てなかった。殺気を当てる以上の恐怖を与えるためだ
「おいおいどうしたよ?テメェ等の主人の豚が命令してるぜ?武器も持ってない俺を殺すことも出来ねぇのか?情けねぇ奴等だな」
ザフノフがエリーゼの騎士を侮辱したようにザフノフの騎士を侮辱しながらザフノフに近寄る
「ひっ!!く、来るな!!それ以上近づくなら殺すぞ!!」
「へぇ、面白いな。どう俺を殺すんだ?ほら、さっさと殺してみろよ?じゃなきゃ俺がお前を殺すことになるぜ」
ザフノフは恐怖のあまりその場で尻餅をつく。そしてザフノフの目の前までたどり着きナイフを取り出し首に近づける
「や、止めろ!!俺は公爵家の息子だぞ!!そんな俺にこんなことをして許されると思っているのか!!」
「公爵家の息子ねぇ・・・。ならその権力でどうにかしてみろよ。ほら、どうした?何もしねぇって事は死にてぇのか?」
士燕はナイフを首に当てほんの少しだけザフノフに殺気を当てる
「ひいっ!!」
ザフノフはあまりの恐怖の為ガクガク震え始め失禁してしまった。
「その辺で止めたまえ」
士燕が声の主を見る。士燕を止めたのはガラドだった。
「何でだ?此処で殺っちまった方が後腐れないだろう?」
「それでもだ。此処で殺されると後々私達が困る」
士燕とガラドは無言で睨み合い
「ッチ。しゃあねぇな。おい豚。さっさと消えろ」
士燕は殺気を消しナイフを仕舞いながら3人の元に戻っていく。ザフノフは顔を真っ赤に染めながら立ち上がり士燕を睨みながら
「覚えてろクソ餓鬼・・・。絶対殺してやる」
そう言い残して騎士を連れて立ち去っていった。ガラドはザフノフが館から出て行くのを見て
「ふぅ。留まってくれてありがとう」
「別にいいさ。だが、俺が言うのも何だが本当に帰して良かったのか?」
「ああ。この館で殺されると証拠が残ってしまう。それでは公爵家に何をされるか分からないからな。それより、エリー達と少し話がしたい。悪いが客間で待っていてもらえるかな?」
士燕はOKしメイド長に客間に案内される。その間出された紅茶を飲みながらガラド達を待っていた。
10分程たった頃ガラド、エリー、ロイド、そして燕尾服を着た犬の獣人の4人が入ってきた。そして士燕達の正面にガラド、エリーが座りロイドと犬の獣人は2人の後ろに立つ。
「待たせたね。詳しい事はエリーに聞いたよ。私はこの街[イカルガ]の領主でありエリーの父親のガラド・アルカードだ。エリー達を助けてくれた事感謝する」
そう切り始めガラドは頭を下げる
「私からもお礼を言わせて下さい。私はこの館の執事でありロイドの父ロゼと申します。この度はありがとうございます」
ロイドの父親ロゼも感謝の言葉をかけ頭を下げる
「頭を上げて下さい。私達は当然のことをしただけです」
羽菜が頭を上げるように言う。その間士燕は目を閉じて何かに集中しているようだった。ガラドとロゼは羽菜の言葉で頭を上げ
「そうか、ならそうさせて貰おう。それでエリー達の護衛の報酬だが今用意させている。明日には用意出来るので待って貰いたい」
「明日ですか。では宿をとらないといけませんね・・・」
「何だ、まだ宿をとっていなかったのか?ふむ。なら今夜はこの館に泊まるがいい。ロゼ、メイド達に客人達の部屋を準備させてくれ」
ガラドはロゼに命令を出しロゼは頭を下げ部屋を出て行く。
「良いんですか?私達みたいな一般人を泊めて?」
琥珀の質問は最もだがカラドは
「はっはっは!!エリー達を守ってくれたのだ。それにザフノフの奴にあれだけ恥をかかせてやったのだ。正直爽快だったぞ。まぁなんだかんだ言ったが私は君達を気に入ったのだ」
笑いながらぶっちゃける。ガラドがザフノフの名を出し沙耶は
「はい!!質問です!!ザフノフって偉そうって言うか嫌味が凄いと言うか・・・何者なの?」
「ザフノフか・・・あいつは公爵家の1人息子だ。奴はとあるパーティーでエリーに一目惚れしたらしくエリーを嫁として寄越せと言ってくるのだ・・・」
ガラドは苦虫をかみ潰したような顔になり答える
「断れないの?」
「勿論断ったさ。あんな奴にエリーを幸せに出来るとは思えん。それにエリーの相手はもう決まっているしな」
「お父様!!私の相手は私が決めます!!」
ガラドの言葉にエリーゼが反論するが
「駄目だ!これはもう決定事項だ」
「そ、そんな・・・」
ガラドはそれを否定しエリーゼは顔を暗くする。
「旦那様・・・エリーゼ様のお相手はどんな方なのですか?」
ロイドが声を震わせながらエリーゼの相手を聞く。
「うむ。中々の好青年で、性格も悪くない」
「そ、そうですか」
「何よりエリーが小さい頃からの知り合いだ」
「・・・」
「そしてエリーの事を常に第一に考えてくれている奴だ!!」
最後は若干イライラしながら答える。
「そ、そのお方ならエリーゼ様を幸せにしてくれそうですね・・・」
ロイドも顔を暗くしそう答える。だが此処でガラドがぶち切れ
「これだけ言ってもまだ分からんのか!!エリーの相手はお前だロイド!!」
「「えっ?」」
「全くお前達がお互いに惹かれ合ってるのはこの屋敷に居る者なら皆気付いておるぞ」
「「え、ええーーーーー!!」」
2人の絶叫が屋敷中に響き渡る
「ロ、ロイドも私のことを!?」
「お、お嬢様も私を!?」
2人は顔を向かい合わせ目と目が合った途端に顔を真っ赤に染める。屋敷に居る全員は両想いな事に気付いていたのにこの2人は両想いなことに気づかない鈍感共だったようだ。
「で、ですが旦那様!私は貴族でも何でも無いただの執事ですよ!?」
「ふん、本来なら貴族の息子に嫁がせるのが貴族としては普通だろう。だがそんなことより私はエリーに幸せになって貰いたい。それにロイド、お前ならエリーを幸せにしてくれるだろう?」
「旦那様・・・。はい!!勿論です!!」
ロイドの言葉にガラドは心からの笑顔を見せエリーゼは口元を手で覆いながら嬉し涙をこぼす。
沙耶、琥珀、羽菜の3人は拍手をしながら祝福の言葉を2人に掛けていた。
「だが、問題はザフノフだ。どうにかしようにも奴は公爵家の者だ。伯爵家である私より権力が高い。どうすれば・・・」
ガラドの言葉に沙耶が
「士燕君どうにか出来ないかな?」
と話しかけられ士燕は目を開けて
「ん?ああ。俺のやり方でやって良いならどうにでも出来るぞ」
「本当か!?」
「ああ。その前に1つ聞きたいんだが西にある森には何かあるのか?」
「?いやあそこは何も無い只の森のはずだが・・・何かあったのか?」
「特に何かあったわけじゃ無いんだがあの豚が森の中で留まってるみたいなんだ」
士燕が集中していた理由はザフノフがあのまま帰るとは思わなかったからだ。故に殺意をかなり広げてザフノフの動向をうかがっていたのである。
「本当か?何故あんな所に?」
「さぁな。あの性格じゃ理由は知らんけどろくな事考えてなさそうだな」
「否定出来んな」
「まあ良いや。さっきも言ったが俺のやり方で良いなら条件次第でやっても良いぜ」
ガラドは士燕の[条件次第]に反応し顔を強張せながら
「条件とは一体何かね?出来る範囲で良いなら聞こう」
と言い、士燕はその言葉に笑みを浮かべ条件を切り出した




