6. 666
俺は支土のバイクの後ろで揺られていた。
もちろん会話なんてする気も起きない。
会話をしようとしたところで声なんて聴こえない。
大きい声を出す気力も無い。
しかし、震えは止まっていた。
少なくともコイツがバイクを運転している間、俺は安全だ。
...
支土の体を掴んだまま思いっきり横に飛び出してバイクを転倒させて逃げよう。
そうしたとして、逃げ切れるのか?
すぐに追ってきたらどうする?
ヘルメットを被ってるコイツにダメージを与えられるのか?
武器も何もないぞ...
自信が湧かなかった。
それでも機をうかがっている中、
いきなりバイクが止まった。
「一休みしようぜ」支土が笑った。
ドライブインと言われる施設だ。
ネットで見たことがある。80年代に栄えた文化らしい。
人が一人もいない。見たこともない自販機が何台もある。
アーケードゲーム、パチンコ、スロットの台もある。
「これがうまいんだ」と言ってトーストの自販機に金を入れる。
ニキシー管が暖かい光を放ち、カウントを始める。
「とりあえず、そこのテーブルにでも座ろうぜ」支土は冷たい缶コーヒーも俺に渡した。
二人でトーストを食べて、コーヒーを飲む。
「なんで銀行爆破なのさ?」素朴な疑問を俺は聞いた。
「俺の友達が過労で自殺したから」支土は真顔で答えた。
「そいつの名前は?」知らないだろうけど俺は聞いた。
「ジョーちゃん」
「え?ジョーちゃん?」俺はその名前に聞き覚えがあった。
「昨日死んだんだよ」
俺の旧友で連絡を取っていなかった唯一の親友。確かに銀行員だった。
本名を確認するとピタリと当たっていた。
吐き気がした。
ジョーちゃんが死んだ事実に、ただ吐き気がした。
が、何故か俺はジョーちゃんが死んだことを知っていたような気がした。
何故か不思議で煙にまかれたような気持ちだった。
それでも叩きつけるような悲しみが俺を襲った。
...
そういえば、こいつもジョーちゃんと繋がりがあったのか。
俺とジョーちゃんは中学からの付き合いだ。
世間は狭いのかもしれない。
でもなんで俺が二人の関係を知らなかったんだ?
当時から2人の口からお互いの名前は出てこなかった。
まあ、そんなもんか。
でも何かひっかかる。目眩がする。
そんな目眩の中、2人ぼっちのドライブインでアーケードゲームの音が鳴り響いていた。
支土は静かにタバコに火をつけた。