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MAD JAZZ MESSENGERS  作者: mojito
3/7

3. Since We Met


支土リョウは優しく俺に微笑みかけてきた。

まるで別人のように丸くなっていた。


俺の知っている支土リョウは荒っぽく、人に微笑みかけるような人間ではなかったはず。


「久しぶり、元気にしてたか?まだ楽器続けてたんだな」

俺は当たり障りのない挨拶をした。


「なんだかんだね」

支土リョウは笑った。


俺たちはすっかり話し込んでいた。

得体の知れぬ嫌悪感は消えていた。


もう店の客は俺しかいない。


「久しぶりに合わせてみないか?」

支土リョウは俺にセッションを申し込んできた。


「ずっと弾いてないからさあ 遠慮しとくよ」


「なんとなくでいいからさ、せっかく会ったんだから」


「じゃあちょっと...」


渋々、俺は承諾した。


マスターに備品のギターを借りる。

年季の入ったGibsonのフルアコだ。

そいつをオールドのFenderにぶちこむ。


チューニングを合わせ、軽くコードを鳴らす。


FEELING GOOD


暖かくて優しい音は俺をやる気にさせた。

昔に戻った気持ちになっていた。


「wish upon a starどうかな...?」

俺が支土リョウに言うと笑顔でアイツは頷いた。


イントロのフレーズを弾く。


そして、テーマに突入した。


アイツの強烈なベースが優しく腹をえぐる。


なんなんだ?

とても数年振りとは思えない。


アドリブに入る。


俺はコードトーンを織り交ぜたフレーズを気持ちを込めて弾く。

それに応えて優しくて強烈なベースラインが叩き込まれる。


静かだけれども狂ったベースソロが空間を支配する。


気づけばテーマに戻っていた。

俺は完全に世界に入り込んでいた。



絶頂。エクスタシー。恍惚感。



久しぶりに会った気がしなかった。

俺の全てを知っているような、そんなベースをアイツは弾いた。


昔にバンドを一緒にやっていたから、というレベルではなかった。


セッションを終えて、俺は軽く挨拶をして帰路に着いた。


「楽しかったよ、またな」



また交流を持ちたい、という気持ちが湧いていた。

それと同時に嫌悪感も湧いていた。あまりにもピッタリすぎた。

2つの感情が複雑に入り混じっていた。


結果として、俺は連絡先を交換しなかった。

交換してはいけない、という直感が俺を支配したのだ。




そして、その日を境に、俺はまた眠れなくなっていた。


眠れない。


眠れなくなっていたのだ。

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