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MAD JAZZ MESSENGERS  作者: mojito
2/7

2. Somethin' Else


あれから1週間。

何も変わらない1週間を過ごしていた。


そりゃ狂った夢を見た日はモヤモヤと気持ち悪さが頭から離れなかったさ。

でもな、忙しいとそんなことどうでも良くなる。俺は事件と関係がない。



...紹介が遅れた。

俺は寺田弦。27歳。

訪問販売の営業の仕事をしている。

楽しい楽しい独身貴族だ。埼玉に一人暮らし。

趣味は酒。ペットボトル焼酎に溺れる日々。


悩みは眠れないことだ。

仕事、生活のストレスが原因なのか。根本的な原因はわからない。

得体の知れぬ不安と言えばいいのだろうか。

眠れなさすぎて、あまりの疲れで現実感が無かった。

疲れてるのに眠れないんだぜ。困るよな。



そうだ、1つ変わったことがあった。

大きく変わったことだ。


あの狂気的な夢を見てから以前よりも眠れているのである。


眠れるか、眠れないか、それが一番の問題だ。

世間に興味は無い。


...


いつもと変わらず残業。

毎月追われる到達不可能なノルマ。

外回りから戻っていつもの事務作業だ。

金曜日。PM8時。仕事を放り投げて早めに会社を出る。


世間で言う華金。

最近眠れていて、多少上機嫌だった俺は久しぶりに店で酒が飲みたくなった。


キャバレーZEN。

今は珍しいハコバンがいる店だ。

ハコバンとは生演奏で客を躍らせるバンドのことだ。店がバンドを雇っている。

まだそんな店があるなんて珍しい。



そういえば紹介し忘れていた。

俺は昔、ギターを弾いていた。もう最近は弾いていないが。バンドも組んでいた。

キャバレーZENはその繋がりで昔に通っていた。


なんとなしに数年ぶりに店を訪ねた。


「いらっしゃい久しぶり」


落ち着いたマスターが出迎える。

昔より少しやつれていた。白髪だらけだ。


客は3組ほどで繁盛しているとは言えない。


「お久しぶりです。とりあえずビールで」


年季の入った懐かしいカウンターに座る。

マスターは無口だ。

特に喋りたいこともなかったので黙ってビールを飲む。


丁度、バンドが演奏を始めるところだった。



バンドを見た瞬間、衝撃が走った。


目眩がした。



支土リョウ。



俺と昔にバンドを組んでいたベーシストがそこにいた。

古びたウッドベースを抱えている。

高校の同級生。

喧嘩別れしたあと連絡も取っていなかった。


何故だ?


とてつもなく嫌な感覚に陥った。

何故か久しぶりに会った気がしなかった。


言葉で言い表せない、感覚的な嫌悪を感じた。


ピアノトリオの演奏が始まる。


得体の知れない感覚から全く耳に入ってこなかった。


帰りたいけど帰りたくないような。

支土リョウと話したいけど話したくないような。


そんなことをずっと考えていた。


数曲やったのだろう。

気持ちも落ち着かぬまま、いつの間にか演奏は終わっていた。


演奏を終えた支土リョウは俺に気づいてカウンターにやってきた。



「よお、久しぶり...」



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