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MAD JAZZ MESSENGERS  作者: mojito
1/7

1. A Night in Tunisia


愛。夢。幻想。友情。背徳。温もり。裏切り。


全部ぶっこわしてやる。

片っ端から全部。

そう、全部だ。


もうこりごりなんだよ。

くだらねえ。


Where you goin’ with...?


ほな、さいなら。



誰かが今日も死んだ。


...

俺は優しく抱きしめる。

ぶっ壊したいものを優しく。優しく。優しく。


今、俺は銀行の柱を愛おしく抱きしめている。

通行人は俺を奇怪な目で見る。


今は深夜だ。

頭のおかしい酔っ払いか、ジャンキーに思われているだろう。

大粒の涙をこぼしながらウワンウワンと柱を抱きしめる。



何故抱きしめるかって?

そんなの俺も知らねえんだ。

抱きしめたくなったから、抱きしめている。


抱きしめるのが大好きなんだ。

落ち着くからさ。


ああ、とーっても落ち着く。ひんやりしている。

すべすべしている。

ああ、この柱は、誰が、どうやって、どんな物語の中で作ったんだ?

作った人間はどんな思いで作ったんだろう...

まだ生きているのか?まだ健康なのか?

どんな育ちで...どんな会社で働き...どんな家族がいて....

子供もいるのかな...


どんな、どんな...どんな...


そんな訳のわからないことに思いを馳せる。


...

ああ、満足した。

欠落していた何かが埋め合わされるような...

この先に起こるコトを考えると何故か心がホカホカする。



手を離すと、抱きしめていた周囲が歪み出す。

チカ、チカ、チカと7色の光の点滅を伴って歪み出す。


ぐにゃり。ぐにゃり。


俺は幻覚を見ているのか?

実際に歪んでいるのか?


どうでもいい。

とにかく俺は満足したんだ。



それにしても、ここはどこなんだ?

知らない街だ。


とりあえずぶらつこう。


家にポツポツと明かりがついている。

暖かい光だ。それを見ていると何故か苛立ってきた。

風も冷たい。


喉が乾いたな。今すぐ何か飲みたい。



コンビニが目に入る。

コーヒーとタバコを買う。

外に出て、タバコに火をつける。

煙の行方に目をやる。


ああ。星が綺麗だ。

とっても星が綺麗。


タバコを吸い終わる頃、遠くで鈍い爆発音が聞こえた。

煙が上がる。


残っていたコーヒーをゆっくりと飲む。

相変わらず星が綺麗だ。


街が途端に騒がしくなる。

赤の光と甲高いサイレンが寂しく響く。



ほーらみてみろ、ぶっこわれた。

なんでだって?そんなの俺も知りゃしねえ。

俺は誰だ?誰なんだ?


疲れたな。家に帰ろう。でも俺の家はどこなんだ?

どうでもいいや。


おやすみ。


__________________



俺は飛び起きた。

夢。AM6:06。


いつもの俺の部屋だ。

不眠症に悩まされている俺は昨夜、睡眠薬を飲んでようやく眠れたのだった。


それにしてもなんて狂った夢なんだ。

自分でも考えたこともないようなイカれた夢。


胸糞悪い。最悪な気分だ。

相変わらず寝た気がしない。


とりあえず朝食を食べよう...

仕事に行かなくちゃ...


パンをトースターに投げ入れる。

テレビをつける。


相変わらず暗いニュースが流れている。

どうでも良い。聞き流す。


現場映像が映っている。


ん?


なぜか俺はこの場所を知っている。


え?なぜだ?

俺がやったのか?


いや、そんなはずはない。

ありえない。事件現場は遥かに遠い場所。

馬鹿げた話だ。


でも確かに夢で見た景色...

夢の記憶も曖昧になり始めていた。


覚えているコトをノートに書きなぐる。


意味不明。


歯を磨いて、シャワーを浴びる。


気持ち悪い。

とにかくわけがわからない。

違和感が頭から離れない。


なんだかボーッとする。

眠りが浅すぎて疲れているんだな。


もう家を出る時間だ...



俺は頭が混乱したまま、会社へと向かった。


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