拾いもの
前回からものすごぉく、時間が経ってしまいました…。
「あら?」
いつもと変わらない午後。
棲みかとしている洞窟で、母様が魔法で出した日だまりのような光の下、まったりとくつろいでいた。
「どうかした?」
頬に細い指を添えて考え込んでいる母様に問う。
「………ちょっと出てくるわ。イリィちゃんは待っててね♡」
「…?」
…行っちゃった。
まぁ、母様がマイペースなのはいつものことだしね。
私は16になった。
前世で死んだ年だ。
家族は悲しんだに違いない。
なんて親不孝なんだろう…。
遺した家族を想うと今も尚、胸が苦しい…。
死んで初めて命の大事さを痛感した。
もう遅い…ハズだった。
でも幸運にも私はこうして転生した。
ならば大事にしたい。
自分のことも。
家族のことも。
「まぁ、今の私はそう簡単には死なないけどね!」
長命なうえに傷の治りがめちゃくちゃ早い。
あれ?傷なんてあった?
ってくらい早い。
ドラゴンの治癒力ヤバい。
「お待たせー♡」
「おかえ…り!?」
私は振り返って絶句した。
なぜって…母様が右手に引きずっているものは。
黒こげで血塗れの人間だったからだ。
「ピギャーーーーーーーーーー!!」
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首根っこ捕まれ、引きずられる…人間。
顔は火傷なのか半分以上爛れており、爛れていない部分も煤で汚れている。
恐らく男性だろうが、年齢や顔の造りは判別できない。
洋服も焼けたのかボロボロで、左肩に大きな傷がある。
これは…とてつもなく大型な動物の爪跡…?
止血がしてあるのか…もしくはすでに血が出切ってしまって…死亡しているのか。
血は流れてはいないが回りには黒いものがべったりと張り付いており、生存は絶望的に思える。
……とてつもなく大型な動物?
バッと母様の顔を見る。
母様はにこにこしたまま、こてん、と首を傾げた。
まさか…?
「母様…まさか人間を狩ってきたんですか…?」
「…人間は不味そうだから食べないわ」
うん、良かった。
理由が微妙だが母様が狩ったわけではないらしい。
「落ちてから拾ってきたのよ?」
…人間って落ちてるものなんだなぁ…。