構造に問題あり。
私は14歳になった。
14歳…と言ってもいいのかな?
とりあえず14年、生きている。
…ドラゴンとして。
あの日、私を卵の殻から出してくれたのは母様だった。
卵の殻が割れ始めたのに全く出てくる気配がない私を心配して覗き込んだところ、固まっている私を見つけたらしい。
感動の対面のはずだったのに、我が子が恐怖の表情で打ち震えてるとか…申し訳なさ過ぎる。
でもさすが私の母様。
そんな私のことも「可愛い~!!」(実際はまだ言葉が分からなかったので「#△&※~!!」状態だったが。)って抱き締めてきたんだけど。
そう。私は「卵の殻」を破って出てきたのよ。
そして母様の大きな大きな姿を見て泣き叫んだとも!
ドラゴンだから?涙は出なかったけど、気持ち的には大号泣。
ピギャーーーーーーーーーーーーー!!
(いやーーーーーーーーーーーーー!!)
叫んだ瞬間、私もやっと自分がドラゴンだってことに気がついてまたまた大号泣。(ドラゴンだから涙は…以下略。)
ピギャーーーーーーーーーーーーー!?
(ウソでしょーーーーーーーーーー!?)
そんな私を微笑ましそうに眺める母様…さすがです。
私の体は鱗…ではなく、うっすらと茶色の毛で覆われていて、角は2本。
瞳は母様譲りの水色だ。
鱗じゃなくて良かった。
爪は鋭く手は…短かった。
そう!手が!短かったのよ!!
そうだよね、毛は生えてるけどドラゴンてどっちかっていうと爬虫類だもんね…。
でもさ!でもさぁあぁ!
前世の私のほっそりとした腕(ごめん、うそ。いたって標準の腕)が!短くなってしまったもんだから使いづらくて使いづらくて…。
果実を掴んでもそこに口が届かない。
届きそうで…ぐぬぬ…やっぱり…届かないっ!!
首が長いのに手元に口が届かないとかどういうこと!?
神様、ドラゴンの構造設計間違えてますよ!!
母様はそんな私を見て綺麗な目を細めている。
そしてそれこそほっそりとした腕の先の白魚のような指で果実を掴み、口に持っていき上品に齧る。
そう!母様は人の形になれるのよ!!
なんで!?ズルい!!
ある程度の魔力がつくと人型になれるらしいけど、今のところその兆しはない。
いつになるんだろう…?
母様は300年近く生きており、記憶も大雑把だ。
いつ頃人型になれるようになったのかは覚えてないらしい。
100年後とか勘弁してほしい!
私も早く手で食べたい…。
とにかく今は魔法の特訓に特訓を重ねる日々なのである。
人型の母様はとてつもなく美しい。
20代くらいに見える。…300歳近いのに。
白銀のストレートヘアに、水色の瞳。
それを縁取る睫毛も白銀。
肌は白く透き通るようで、それはもう人外の美しさ!(実際人ではないが。)
ドラゴンの時は白銀のストレートヘアで4本の角の美しいドラゴンだ。
そしてとてつもなく大きい。
私が翼を広げて1メートルいくかいかないかなのに対し、母様は30メートルくらいある。
そう、色も大きさも角の数も全然違うのだ。
…本当に実の親子だろうか?
と、軽く聞いてみたら人型の母様にぎゅむぎゅむ抱き締められた。
「当たり前でしょう!!私の子はイリィちゃんだけよ!!」
…死ぬかと思った。
母様はドラゴンなので人よりも力が強いのだ。
もう一度言います。死ぬかと思った。
私の現世の名前はイリーネ。
母様はイリィちゃんと呼ぶ。
そして母様の名前はイリス。
「私の愛称もイリィよ!イリーネちゃんとお揃いね!」
と、満面の笑みで言う母様。
「偶然ね!」みたいな顔してるけど名前つけたの母様だから。
そんな天然な母様と森の奥の奥の奥にある山の洞穴でのんびりふたり暮らし。
今日もいい天気だなぁ。
愛称とかは適当です。
すんません。