~拉致~
あぁ、前回ので書きそびれましたが、
読者の皆様、新年明けましておめでとうございます(ノ´∀`*)
今年も【異世界転生~全属性魔術師~】をよろしくお願いいたします(*´ω`*)
「さてと、これくらいで良いですかね。」
シアは、自分が泊まる部屋に入ってからここに来るまでに買った雑貨屋や生活用品をの整理をしている。
ハヤトはその横で来る途中の店で買った小さな魔石を床の上に書いた魔方陣の中心において何かをしている。
「ハヤトさんは何をしてるんですか?」
「ん?あぁ、ちょっとした仕掛けをな。」
「仕掛け…ですか?」
「町の中にある宿屋だからって危険がないとは限らないからな。
結界でも張っておこうと思ってな。」
「どのような結界を張ってるんですか?」
「とりあえずは、盗聴、衝撃、侵入者を阻害するものだな。
もちろん、俺達や害の無い者だけは通すようにしてるからな。」
話を聞いていたシアは、なぜか固まっている。
「どうしたシア?」
「あっ、いや…ハヤトさんってそんなこともできるんだなって思いまして……」
そんなことを言うエリシアの顔は少し赤く染まっている。
「んまぁ、今はまだこんくらいしかできないけどな。」
作業を続けていたハヤトは、結界の準備を終えると立ち上がり服などの小物を部屋に元々ついていた棚などになおしていく。
「よし、そろそろ準備はいいか。シアは大丈夫か?」
「私は何時でも大丈夫ですよ!」
「そんじゃリネスのところに行くか。」
「はい。」
ハヤトとシアは話をするために自分達の部屋を出て、受け取った鍵にかかれている番号の部屋へと向かう。
「んーと、ここら辺の部屋のはずなんだけどな……?」
「ハヤトさん、あの部屋じゃないですか?」
シアが指差す先にはドアが開きっぱなしになっている部屋があり。
「お、あれだな。にしてもなんでドアが開きっぱなしになってるんだ?」
「閉め忘れ……でしょうか?」
少し首をかしげて答える。
「いや、さすがに閉め忘れは無いだろ……」
何かあったのか……?等と考えていると。
「うっ……」と小さい声が聞こえる。それはくぐもっていてあまりよくわからなかったが確かにリネスのものだった。
「くくっ……これで……」と誰の声かは分からないが、そちらも少し聞き覚えのある声で。
「シア!」
「はい!」
それを合図に部屋の中へと駆けるが、見えたのは気絶したリネスを担いで窓から去っていた黒いマント姿の者だった。
「今のは……」
「黒いマントの方は分からないが、リネスが何者かに連れていかれたのは確かだな……」
ハヤトは表面上落ち着いているように見えるが、内心はものすごく焦っていた。
「今から追いかけますか?」
「いや、たぶん追いつけないだろ。俺の勘だが、あいつはかなり手練れなはずだ…」
(俺の並外れたステータスでも、きっと撒かれて終わるだろうな。)
それは、高レベルの索敵を持つハヤトだからこそわかることであり、自分のステータスでもそう思わせられる謎の人物に寒気を覚える。
「なら、どうするんですか!早く助けないと……リネスさんに何かか起きる前に!」
余裕がなく焦っているのはハヤトだけではなかった。
シアも同じ心境だった。普段ならそんな大きな声もあげることがなかったほどに。
「安心しろ。俺だってこのままで終わらせるつもりなんてない。
リネスはシアの友達で、俺の友達でもあるんだ。」
(あの時に誓ったからな。守ってやるって。)
それは、友達だからだけではない。
(過去の話を聞き、その時のことを思い出して瞳に涙滲ませ、体を震わせていた彼女の姿を見て、こんな悲しい涙を流す彼女を見たいんじゃない。
俺が好きな彼女の素敵な笑顔を何時までも、ただ何時までも見たいと思ったから……
だから守ってやりたいと思ったんだ……)
「好き、か……」
「どうしました?」
隣でずっと黙ったままでいた自分のことを心配そうに見つめていたエリシアがいて。
「んや、ちょっと思ったことがあってな。」
ハヤトは静かに拳を固めて
(異性として好きなのかはまだ分からないが、ただひとつはっきりとしてることはあるな……)
「俺の大切なものを傷付ける奴は絶対に許さねぇ。」
守ってやると言ったはずなのに、今こうして守ってやれてない状況に自分の不甲斐なさを感じている。
助けられたとしても、リネスに何か言われるだろうな…と考えるが、それでもと……
(文句だろうと罵倒だろうとあとでいくらでも聞いてやる。
だか今は、大切なものを…俺とリネスの友達であるリネスを助けるために……)
「シア、悪いがここで待っていてくれ。」
「で、ですが……」
エリシアとしても今すぐ助けにいきたいのだろう。
その気持ちは、ハヤトもよくわかっている。だが……
「頼む…。」
ハヤトはエリシアに深く頭を下げる。
「シアがリネスのことを今すぐにでも助けにいきたいのは俺も同じ気持ちだからよくわかる。
けど、一緒に助けにいって、もしシアまで同じ状況にあったら…二人ともを助けることができないかもしれない……
シアの強さを疑ってる訳じゃない。だけど、その可能性を捨てきれないんだ。」
そうなってしまうかもしれない未来に怯えているハヤトを見てエリシアはゆっくりと優しくハヤトを抱き締める。
「ハヤトさん…私はハヤトさんの力になってあげたいんです。
里を救ってくれた恩人とかではなくて、大切で大好きなハヤトさんのために……。」
「シア……」
「だから、そのためになら何だってします。例え私の命を捧げるようなことでも……。」
「…ありがとう。」
「ふふ。どういたしまして♪」
「でも、自分の命を軽く扱うような発言はダメだな。」
子供に注意をするかのように、軽くでこぴんをする。
「あうっ!べ、別にそんな風にいった訳じゃないですよ!?」
「だとしてもだ。シアにはずっとそばにいてもらうからな。」
「ふふ♪ならこの命大切にしないとですね♪」
「あぁ。そうしてくれ。」
そんな話をしながらも、リネスを助けるための準備を終わらせ。
「…ちゃんとリネスさんと帰ってきてくださいね?」
「当たり前だ。」
最後にそれだけを言い残し、窓の外へと駆け出る。
「さて、追い付けないなら、溜まり場かアジトを潰すしかないよな。」
追いかけても、巻かれてしまうとわかっているなら別の方法を考えたハヤトはその考えに行き着き、さらに逃がさないよう捕まえるために策を考える。
「まずは、リネスとあの黒マント野郎の居場所を突き止めないとな。
んまぁ、もう大方の場所はつかんでるけど……確実に、だな。」
ハヤトは自分が持てる力を使いリネスらの居場所を洗い出す。
索敵術と無属性に属する結界を混合させたオリジナル魔術。
「【索敵結界】」それは索敵術の限界を越えて回りの情報を集め知ることができる人間離れしたもので、伝説の魔術として後世へと語り継がれていった。
「リネスはっと……建物のなかにいるのか?」
頭のなかに浮かび上がる索敵結界により鮮明に作られた地図のようなものには、ハヤトから結構離れた場所の建物の密集している場所にリネスと恐らくあの黒マントの奴の気配の反応が見られ。
「けど、建物の数のわりには他にあまり生き物の反応がねぇな……廃墟街か……?
黒マント野郎の気配の近くに複数の反応が見られるけど、リネスみたいに捕らわれたやつらか、仲間のどっちかしかないよな。
一応警戒レベルをあげていくか……」
ハヤトは自分自身にVITを底上げするためのエンチャントをかけ、錬金術により刀を造り出すし腰へとさげる。
「これで間違っても速攻でやられることはなくなるだろ。
待ってろよリネス……」
ある程度加減を覚えてきたハヤトは見張りがいない外壁まで近づくとたった一回の跳躍だけで数十メートルある外壁を余裕で乗り越えてしまう。
その後は冗談抜きの全力でリネスのもとへと向かう。
「んっ……こ、ここは……?確か、自分の部屋に戻って……えっと……」
気絶から目覚めたリネスは回りを見渡すが場所に全くの見覚えが無い所で、自分の記憶を探ってみるが部屋に黒いマント姿のだれかがいたところまでしか思い出せずにいるが、それでも今時分がとらわれていると言うことだけは分かる。
「大丈夫…ハヤトくんならきっと……」
冒険者ギルドでのハヤトの言葉を思い出す。
(あのとき守ってくれるって言ってくれたんだ……だからきっと助けに来てくれるはず……)
「あら、やっとお目覚めですか?」
後ろに立っていた黒いマント姿の者に言葉をかけられる。
「あ、貴方は何者ですか……?」
「私ですか?それはあなたがよくご存じのはずですよ?」
黒いマント姿の者はリネスに顔を見せるためにマントを脱ぎ去る。
「え……エリス先輩?」
「そうですよ、リネスさん♪」
エリスはニコッと微笑む。
それは可愛らしいものであるはずなのだが、場所が場所であるためそのような感情は抱けなかった。
「どうしてエリス先輩がこんなことをしてるんですか?」
リネスにとってエリスは冒険者ギルドの中で一番仲の良い先輩で来てから今までずっと良くしてくれていたのでとても信じられないでいた。
「どうして、ですか?……色々あったんですよ。」
それを言うエリスの目はとても悲しいものだった。
「エリス、お喋りも程々にしなさい。」
「あ、す、すみません…。」
そこにはいつの間にかもう一人黒いマント姿の人が立っていた。
声は中性で男性か女性の判断はつかなが、伸長の高さからして恐らく男性だろう程度しかわからない。
「君も静かにしないと殺すからね?」
「ひぅっ……」
リネスは純粋な殺気に当てられ思わずすくみ涙ぐんでしまう。
「それに、客人も来たみたいだしね。」
黒いマントの男の人?は、自分達がいる建物から見て恐らくエルドマールがある方向だろうか、そちらを見ていた。
リネスもその方向を見てみると、人影のようなものがぼんやりとだがものすごいスピードでこちらへと向かってきている。
それは、最後に一回の跳躍を終えると天井が崩れている部分から建物内に侵入してくる。
「リネス無事か!?」
侵入してくるなりずくにリネスを見つけ、声をかけてくる。
「ハヤトくん!!」
「へぇ、どうしてこの場所が分かったのかな?」
「さぁ?つかお前らみたいなクズに教えるわけ無いだろ。」
「ははっ、酷い言われようだね。」
「本当の事だろうが。」
(なんなんだこいつ……)
ハヤトは隙があれば速攻で終わらせ、リネスを連れて帰ろうと思っていたのだが目の前にいる黒いマント姿の者は全くといって良いほど隙がなく、下手に攻めるとカウンターを受けて終わるだろう。
とハヤトはそう感じてしまった。
「それで、君は何をしに来たのかな?」
「リネスを助けに来た。それ以外になにもねぇよ。」
「それは困るなぁ?彼女は大切な生け贄だからね。」
「生け贄…?何のためのだ。」
どんな理由があろうと許さないが、相手が何をしようとしてるのか目的を知るために聞き出す。
「何のためかって?それはね、魔物を呼び出すためのだよ!」
「はぁ?」
「魔物を呼び出して、エルドマールを消し去るのさ。
きっと楽しいよ!魔物に怯えて逃げ惑う人間達…勇敢に立ち向かう冒険者達も強大な魔物の前ではただ虐殺されるだけ……とっても面白くて楽しいじゃないか!!」
「あ、貴方は何を考えてるんですか!?」
そいつが何をするか知ったときリネスは声を荒げて喋る。
「人を楽しい何て理由で殺してはいけません!
もちろんどんな理由があってもダメです…それでも中には罪を犯してしまう人もいます。
ですが、そんな人でも私は変われると思います。
あなた達もまだ遅くないはずです。だから今すぐこんなことは辞め、あがっ!?……」
「君に話して良いなんていった記憶はないんだけどな!」
黒マントは、少し離れていたところに立っていたのだが、気づいたときにはリネスの目の前にたっており、その右手に握られているナイフのようなものには滴るほどに赤黒い血がベットリとこべりついている。
その先には、右肩から多量の血を流すリネスがいて。
「リネスっ!!」
「君はもうちょっと冷静になろうね?これだけのことで乱れすぎだよ。」
その光景をみたハヤトは来る前に作った刀で黒マントを殺すために進もうとした瞬間、リネスの目の前にいたはずなのだがそいつの声は後ろから聞こえてくる。
「ぐはっ…っ!!」
急に口の中が鉄の味で一杯になり吐き出してしまう。
そして、良く見ると自分の腹部の辺りから一つの鋭い鉄の塊が生えている。
「は、ハヤトくん…っ!!」
「ぐっ……い、いつの間に……」
「僕は優しいからね。特別に教えてあげるよ。
答えはね【転移】だよ。」
「転移か……そりゃ、一瞬で移動できるわけだ……」
(こいつの転移範囲は目に見える範囲か、一度見たとこなら何処にでも行けるのか……どちらにしろ驚異に変わりはないな……それに元々のステータス高過ぎだろ……)
一瞬で移動してきたこともだが、自分の高いステータスをいとも簡単に貫かれたことに驚いていた。
「ほら、せっかく教えてあげたんだからもっと楽しませてよ?」
ハヤトに突き刺していた鉄の塊、剣を引き抜く。
「ぐふっ……」
その反動でまた血を吐き出してしまう。
少しふらついてしまうが力をいれて倒れないようにする。
「君もその変わった剣を構えなよ?早く僕を倒さないと彼女が死んじゃうかもしれないよ?」
(そうだな…リネスの刺された肩からはいまだに血が流れ出ているし、急がないと血が足りなくなって死に至る可能性が高い……かといって不用意に手を出すと何をされるかわからないからな……)
「くそが……殺ってやるよ。」
「さぁ、いくよ!」
その掛け声と同時に黒マントの姿が消える。
(こいつの使う転移は目で見るだけでは捉えることはできない……
なら、他の方法で捉えれば良い…。)
音、震動、気配、空気の変化をいっぺんたりとも感じ逃さないために目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませる。
ハヤトはただ静かに目を瞑り立っている。この時間をとても長く感じているが、実際は1秒すら経っておらず。
そんな風に感じていると、自分から見て右斜め後ろ辺りの空気の流れが不自然に変わったのを感じ、そちらに振り向きハヤトの感覚で少し経つとそこに黒マントが現れる。
「なっ!?」
まさか転移先がばれるとは思っていなかったのか、ハヤトと目があったとき余裕の笑みから驚愕の表情に変わる。
「まさかこんなに早く自分の固有能力が攻略されるとは思ってなかったか?」
相手に逃げられないうちに腰に下げていた刀を抜刀し下から上えそして上から下へと2つの斬撃を放つ。
音速を超えたそれは衝撃波を生み出し、黒マントの両腕を切り落とすだけでは終わらず、後方にある複数の建物をも切り裂いて行く。
「うぐぐっ……っ…………あ、っぁ……あの一瞬で、2撃も……どう、やって……っ…」
両腕を切り落とされバランスを崩し倒れそうになるのを耐え行き絶え絶えに言葉を絞り出す。
恐らく出血の量を見る限りそう長くは持たないだろう。
「どうやってって、もうすぐ死ぬお前にいったところでどうするんだよ?」
ハヤトとしては全力では危なさそうだったので手加減して刀を振り抜いただけなのだが。
「そう、だね……」
「…死ぬ前に俺の全力を見せてやる。」
何を思ったのか、その言葉だけを良い終えると抜刀した刀を鞘に戻し再度抜刀の構えをとる。
そして、ゆっくりと柄に手を添える……
「【抜刀術・紅雨】」
柄に手を添えて後は、手から刀に特殊な魔力を纏わせ抜刀する。
たった一回の抜刀。
誰がどう見てもそう見えることだろう。
だがハヤトの放ったそれは、刀に纏わせた魔力を幾つもの斬撃波として放つものであり、狙われた者は同時に幾つもの斬撃を受け雨のように血を散らすことから紅い雨、【紅雨】と呼ばれるようになった抜刀術である。
黒マントはというと、声を出す間も無く絶命している。
「よし…リネスは……まだ全然間に合うな。」
死んだことを確認すると、リネスのもとへと急いで駆け寄り、安全を確認し終えると聖魔術の一つである回復術を使用する。
無いものを復活させるのではなく、他の箇所から必要なものを補って治す。
元の世界の知識を持つハヤトだから出来ることであり、この世界の魔術師が使う回復術とは全く異なり速度も効果も桁違いのものであった。
「す、すみません……」
「リネスは気にしなくて良いよ。」
血を少し流しすぎてまだまともに歩けなさそうだったので、ハヤトが背負うことになり。
「それで、エリスさん?事情を説明するために着いてきてくれますよね?」
「は、はい。」
「ならそこはひと安心ですけど……これは一体……?」
リネスを背負うなり、自分の両脇にくっついている二人の獣耳娘を見る。
「ご主人!お腹すいた!」
「ご、ご主人様……お、お腹すきました……あぅ……」
ハヤトは、どうしてだ……?と考えるばかりだった……。