~戦いの後に~
ハヤト達が盗賊都の先頭をした場所から少し離れたテントの中で、シルヴィは盗賊によって傷つけられた人たちの手当てをしていた。
(ふぅ……一人の治療をするだけでもかなり疲れますね……魔力の消費が半端じゃないですし…それに…この前の操られていた時のせいなのか分からないですけど、治癒に関する魔法、魔術にだけより多くの負担が掛かるように制限が課せられているような気分ですね……詳しくは分からないからなんとも言えませんけど……。
ん?足音がこちらに近づいてくるっ!?)
傷を癒しながら、ふと周りに意識を向ければこちらへと近づいてくる足音に気づき警戒を強めるが、すぐに警戒を解く。
何故なら、近づいていた足音の正体は今時分が一番に慕って居る人と、その人の仲間のものであるとわかったから。
「よっ、此方はどんな感じだ?」
と、それから時間が経たない内に、気さくにハヤトと萌衣がテントの中へと入ってきた。
「ご主人様、萌衣様、お疲れ様です。
私の方は、数名怪我をされた方と一名ほど…申し上げにくいのですが、恐らく盗賊らが連れてきたと思われる人がいらっしゃいまして……。」
シルヴィは軽く頭を下げると状況報告をする。
最初の方は普段通りの口調だったが、一番の問題であった者の話をしはじめてからは段々と言葉と言葉の間に少しの間が生まれ、歯切れも悪くなっていった。
「それの何が申し上げにくいんだよ。普通に荷物持ちとかじゃ……女性なのか?」
「はい…。」
出来ればそうであっては欲しくないと思っていたことも、シルヴィの表情と雰囲気だけで察してしまう。
まだ全てを聞いたわけでも、知ったわけでもない。
ただ、もしかしたらその可能性があるかもしれないと言うだけなのだ。
「まだちゃんと調べたわけでもないので、はっきりとしたことは言えません…今の私の力では、彼女がかなり衰弱されていて、心身ともに危うい状況に墜ちかけていた位でして……現在は治癒魔法と輪廻式術式を魔術陣で複合した『復元治癒魔法』によってそれなりに回復されている傾向が見られるのですが。
やはりそれでも、完治は難しく……ご主人様ならどうにか出来るのではと思いまして…。」
「そうだな…その女性の状態を自分の目で確認しないからには何とも言えないな。
その女性は今何処に居るんだ?」
「えっと、今は隣のテントでゆっくり休んでもらっています。」
「わかった。シルヴィは此処にいる人達の治癒とケアを頼む。一様萌衣さんもついてきてくれ。」
「了解いたしました。
どうかよろしくお願い致します。」
今度はハヤト達が入ってきたときとは違って深々と頭を下げる。
まさかそこまでその女性のことを心配しているとは思っていなかったので、少し驚きはしたものの、これもシルヴィの優しさがあっての行動なのだ。と感じ安心させるように「あぁ。任せとけ。」と言うつもりはなかった言葉が出てきた。
「ハヤト君はほんとあまいんだね。」
テントから出る最中後ろをついて来てくれている萌衣がボソッとハヤトにしか聞こえない声で呟いた。
「…あんな純粋な目でお願いされて断れる男なんているわけないだろ。
あれで断る奴は男じゃないな。」
などと可笑しな事を言い始めるハヤトを軽くジト目で見る萌衣がいた。
「あぁ、そうなんだね~。
ハヤト君って人は、他の女の子からもあんな風にお願いされたら聞いちゃうんだろうなぁ~。」
「ん~、それはないな。
誤解しているのかもしれんが、あんな風にお願いされて聞くのは俺が大切だと想っている人達だけだからな。
もちろんそれに萌衣さんも入っているわけだが。」
然り気無くそんなことを口にする。
「そ、それってどう…」
「さっ、早く治してやらないと命に関わるようなことだったら一大事だ。」
萌衣さんの言葉を遮るようにそう言っては、そそくさとその女性が休んでいるテントの中へと入っていった。
「少しは話を聞いてくれてもいいじゃないか……」
少し気分を落とした萌衣も後を追って中へと入る。
そこには布が敷かれた上に横になって眠っている女性の姿が見られた。
恐らく二十歳前半くらいの年齢なのだろうが、それよりも年をとって見えるほどに痩せこけていた。
「これは酷いね…こんな扱いするなんて…とても許されることじゃないよ。」
入ってから女性を見た第一の感想はそれだった。
「だな。まともに飯すら食わせてもらえて無かったんだろうな。
こりゃ、心身ともにやられるはずだな。まぁ、幸いと言って良いのかは分からんが、栄養失調や睡眠不足などから体調を崩しているだけだな。」
「と言うことは……?」
「身体的にはあまり問題ではないはずだ。一様、血液の循環をよくしたり、再生能力を良くするように施しておく。
問題は心の方が重症かもしれないってことだよな。」
「こんな風になるまであんな奴等に扱われてきたんだ。何かトラウマとかがあってもおかしくはないよな…もし、そうだったときはどうするかだな……。」と顎にてを当てて考えるようにぶつぶつと呟く。
「あ、ハヤト君彼女が目を覚ましたみたいだよ。」
考え事をしていて気づいていなかったが、萌衣が言うように女性の方を見ればパッチリ目を開けていた。
「なぁ、大丈夫か?」
とりあえず、何を話したら言いかわからず簡単にそれだけを口にした。
「……。」
女性はハヤトの方に目を向けると、口を動かして見せた。
「ん?すまない、聞こえなかったからもう一度頼む。」
その声はあまりにも小さく聞き取ることができなかった。
なのでもう一度頼むと、今度は限りなく耳を女性方へと近づけ聞き逃さないように心がけた。
「助けていただきありがとうございます……私はグランドガイア都市の国王の娘である、ルナリス・アルティーニと申します。」
声の調子事態は思っていたよりも元気そうではあった。恐らくあらかじめ処置をしてくれていたシルヴィのおかげであろう。
そんなことよりも、ハヤトには気になる点があった。
「グランドガイア都市の国王の娘ってことは……もしかして姫様ってことなのかっ!?」
ぶつぶつと喋りだしたかと思えば、急に叫び出すハヤトに萌衣とルナリスがビクッと反応する。
「は、はい…確かにグランドガイア都市で一様ではありますが、姫として活動はしております。」
「まじか…これはまた凄い人を助けてしまったみたいだな……」
とそんな事実に何処か諦め気味に呟いていた。




