~冒険者登録~2部
「「なんですかこれっ!?」」
そう揃えて大きな声をあげるエリシアとリネスにハヤトはビクッと体が反応してしまう。
「な、何だよ行きなり大きな声だして!?」
原因はハヤトなのだが、当の本人は全く気づいていない。
「え、えっと、ですね……」
「そんなステータスみたら、誰だって同じ反応しますよ!?」
エリシアは、その事に少し思い当たるところがあるため曖昧な返答をするが、リネスはその出来事をみたことがないため全力で返答を返す。
「んぁ?ステータス……?……あっ……」
何気なく話を進めて登録をしていたため、ステータスが表示するされるのを忘れ、隠すことすら忘れていたことに今さら気づいてしまう。
「……ん~、見られたら、仕方無いよな……?」
意味ありげな台詞をもらす。
「も、もしかして、口止めのために変なことをするんじゃ……!?」
「いや、変なことなんかしないからなっ!!?」
リネスがなにか物騒なことを的確に言う前に全力で否定をする。
「そ、そうですか?ならいいのですが……」
はぁっと、安心したのか息を吐き出す。
(ん…?気のせいか?あれは、なにもされないとわかって安心してるんだよな……?なんか、残念そうにため息をついたようにも見えた気が……いや、きっと気のせいだな。リネスがそっち系なはずがない、よな……?
やばい、考えれば考えるほど不安になってきたぞ……よし、もうこの事を考えるのはやめよう……)
ハヤトは、リネスの反応を見てそんなことを頭のなかで考えてしまっていた。
「黙ってくれるならなにもするつもりは本当にないからな。
第一、シアもリネスも言わないって、秘密を守ってくれるって信じてるからな。」
「当然ですよ。
し、将来の旦那様の秘密をばらすはずがありませんから!///」
顔を真っ赤にしながらも、堂々とハヤトに向かって宣言をする。
「わ、私だってハヤトくんの迷惑になるようなことはするつもりありませんからっ!」
何故かリネスはエリシアに対抗するかのように宣言してくる。
「お、おう。
それに、シアには元々話すつもりでいたから、少し予定が早まっただけなんだよな。
そんでリネスは、まぁ、そのついでって感じになるな。」
「あはは、そうですよね。私はついいでですよね~……はぁ……」
分かりやすく落ち込むリネスにに対してハヤトは。
「でも、これからは秘密を共有してもらうんだ、これからはそんな対応するつもりもないし、何かあればリネスにも報告、相談はするからな。」
と頭を撫でながら、優しくリネスに言う。
「えへへ♪そうですか♪」
「うん、やっぱりリネスは笑顔の方がずっと可愛いと思うぞ。」
「ふふっ♪ありがとうございます♪ハヤトくんにそう言ってもらえて嬉しいですよ。」
先ほどまでとはうって変わって、今は笑顔を浮かべている。
リネスは元々美少女であり、そんな彼女が笑顔を浮かべるとより一層、可愛らしさなどを引き立てている。
10人中10人が可愛いか美しいと感じてしまうことだろう。
「そうか?ならいいんだけどな。」
「そろそろ本題に入りませんか?此処でずっと話してると怪しまれるのでわ?」
「うーん、確かに。エリシアさんの言う通りですね。
場所を変えて話した方がいいと思います。ここだと何時何処で聞かれてるか分かりません。
…………特にギルド長とか……。」
「やっかいごとはごめんだな。
でも、何処に場所を変えるんだ?まだ宿屋も見つけてないしな。」
「あ、そうでしたね。今から探しますか?」
「そうだな……。」
「あの、良かったらいい宿屋知ってますから、教えましょうか…?」
リネスは、おずおずと少し手をあげて提案をする。
「…なら、お願いしてもいいか?」
ハヤトはちょっと考えるそぶりを見せ。
「はい、任せてください!」
笑顔で可愛くガッツポーズをする。
(リネスは頼られることが好きなのか……?)
リネスにとってはある思いがあって喜んでいるのだが、ハヤトはそんなことは露知らず検討違いなことを考えてしまう。
「案内しますので冒険者カードを受け取って、しまっておいてください。
もし、無くしたりすると再発行にお金がかかったりしますので気を付けてください。」
「わかった。無くさないように気を付けるよ。」
「私も気を付けておきますね。」
「ちょっと、何か入れ物買うまでは一緒にしまっておいてくれるか?」
ハヤトはエリシアがつけているポーチ等持ってないため、とりあえずはエリシアと一緒にしまっておいてもらおうと冒険者カードを渡す。
「いいですよ♪」
エリシアはハヤトから冒険者カードを受け取って、腰につけているポーチに自分のと一緒にしまう。
「それでは移動いたしましょうか?」
「ん、そうだな。シアは大丈夫か?」
「私は何時でも大丈夫ですよ。」
「そんじゃ移動するか。リネス、案内頼むからな。」
「分かりました♪」
ふふ~ん♪とリズムよく歩き部屋を出ていくリネスの後をハヤトとエリシアは着いていく。
冒険者ギルドを出たハヤトたちは、リネスのもとでエルドマール街にあるおすすめの宿屋を案内してもらうついでに食べ物屋や服屋、武器や等の生活に必要な見せなどを教えてもらいながらも、目的地である宿屋へと到着する。
「ここが私のおすすめする宿屋ですよ。」
案内された場所には、看板にラヴィットと大きく書いてある建物がある。
大きさは冒険者ギルド程ではないが、近くにある建物と比べると一回りほどは大きな建物である。
「へぇ、ここがリネスのすすめる宿屋か。」
「なかなか大きい建物ですね~。」
「はい、ここラヴィットはこの街でも上位を争うほど人気がある宿屋ですから。」
「そんなに人気があるのか。」
「そうですよ。料理が美味しいのはもちろんですが、一番の理由は店主さんが美人で優しいところです。
泊まりに来たお客さん達からは、一度も苦情などはないみたいですから。」
「それはかなり期待できますね!」
エリシアは、料理が美味しいと聞いた辺りから目が輝いているのを、リネスもハヤトもバッチリと見てしまっていた。
(……今度なんか作ってやるかな。同じものはなくても似たような食材はあるだろうしな……)
(エリシアさん……かなり大人っぽいのに子供みたいなところがあって可愛いですね……美味しいケーキ屋でも紹介しましょう♪)
リネスとハヤトはそんな思いを抱く。
「では、中に入りましょうか。」
「あぁ、そうだな。」
中へ入ると、優しい木の匂いに奥の方から香ばしかったり、甘い臭いがしたりと、食欲をそそるような香りがしてくる。
「今の時間はちょうど、晩御飯を作っている時間帯ですから。」
「だからこんな良い匂いがするのか。これはかなり食欲が湧いてくるな。」
「そうてすね!早く受付しましょう!」
エリシアはと言うと、ハヤトの横にたち少し上目がちに見て服の裾を引っ張っている。
「あら、可愛いお嬢さんだね。そんな急がなくてもお客さんに料理はちゃんと出すからね。」
とのれんがかかっている場所から、慎重が高めでスタイルの良い女性が出てくる。
「…はうぁっ……////」
そんな言葉を聞いて、冷静に戻ったエリシアは急に恥ずかしくなり顔を赤くしてハヤトの後ろに隠れてしまう。
「こんばんはミツハさん。」
「あら、リネスちゃんじゃない。お仕事は終わったのかい?」
「はい、終わりましたよ。」
「それはよかったよ。それで、こちらの人たちは?」
「あっ、この人たちは新しく登録された冒険者様で、ハヤトくんとエリシアさんです。
なんでも、宿屋を探していたみたいなのでここを紹介させてもらいました。」
「ほぉ、かっこいい兄ちゃんと、お嬢ちゃんは冒険者だったのかい。
家で好きなだけゆっくりしていきな。
もちろんちゃんと料金はいただくからね。」
「そこはちゃんと支払いますから、大丈夫ですよ。」
ニコッと、愛想よく微笑みながら言葉を返す。
「うぅっ……///」
エリシアまだハヤトの後ろに隠れてしまっているままで。
「兄ちゃん達は、部屋はひとつで良いのかい?」
「ええ、構いません。」
「そんじゃ、御一人様一泊で食事も含めて銅貨10枚になるけど何泊するんだい?」
「とりあえず、一ヶ月でお願いします。」
「一ヶ月だね。なら二人で銀貨6枚になるけど、リネスちゃんの紹介だから銀貨4枚で構わないよ。」
「そんな安くしてもらって良いんですか?」
「大丈夫だよそんくらい。若いもんがそんなこと気にしない気にしない気にしない。」
「若いもんがって……ミツハさんも十分若いじゃないですか。」
二十代後半ほどだろうかと考える。
「あら、これでも三十代後半なんだけどね。
お世辞でも、そう言ってもらえて嬉しいよ。」
「お世辞なんかじゃないですよ。お肌とかきれいですし、とても三十代後半にはみえませんよ。」
「もぉ、何言ってるんだい//誉めてもなにもでないからね。」
そんなことを言われて、満更でもないかのように少しだが顔を赤くしている。
「ハヤトくん、ミツハさんお話はまた今度にしたらどうですか?」
「リネスちゃんの言うとおりだね。もう時間も遅いし、あまり話してる場合じゃないね。」
「すいません、なんか時間を使わせてしまって。」
「いいって、あたしが楽しくて話してただけだしね。とりあえず、ほら部屋の鍵だよ。」
とポケットの中から602と書かれた鍵を取りだし、ハヤトに渡す。
「ありがとうございます。これ料金です。」
ハヤトはそれを受けとると、ミツハに礼を告げ、銀貨4枚を代わりに渡す。
「はいはい、毎度あり。それで晩飯はどうするんだい?十一時までなら何時でも作ってあげるよ。」
ハヤトは宿屋についている時計を見て、まだ九時を回ったばかりなのを確認する。
「そうですね、十時位にお願いして良いですか?」
「構わないよ。出来たら呼びにいくからね。」
「はい、分かりました。」
「あ、ハヤトくんお話の件なんどけど、これ……」
と耳打ちをする形で話してくるリネスから鍵を渡される。
「何だこれ?」
「私の部屋の合鍵です。」
「合鍵……?」
「はい、私もここの宿屋でお世話になっていますので。合鍵も無くしたときを考えて念のためミツハさんに頼んで作ってもらっていたんです。」
「俺に渡して大丈夫なのか?」
「良いんですよ。
……ハヤトくんとは特別ですから。」
最後の一言は聞こえないほどの小声で呟く。
さすがにハヤトもそんな小さい言葉まで聞き取ることはできず。
「そうか?ならいいんだけどな。とりあえずまた後でな。」
「また後でですね。」
ハヤトはいまだに後ろに隠れているエリシアを連れて、自分達が泊まる部屋に向かう。
それをリネスは見送っていると、後ろからミツハに話しかけられる。
「リネスちゃん、もしかしてだけど……」
「はい?なんですか?」
リネスは、少し首をかしげながらミツハの話を聞いている。
「あの兄ちゃんのこと好きなんじゃないのかい?」
「…………はいぃっ!!?な、なな、何いってるんですかっ!?///」
リネスは、ミツハのその急な台詞に顔を真っ赤に染める。
「あら、こりゃ図星かい?」
「うぐっ……」
「いいねぇ、青春してるねぇ~♪」
ミツハはニコニコとリネスをからかうかのように言葉を続けて。
「……た、確かに好きですけど……ハヤトくんにはエリシアさんがいますから……」
叶わない恋ですよ。と言葉を続けようとするもミツハの言葉にさえぎられる。
「お姉さんからのアドバイスだよ。例え好きない人に相手がいたとしても、諦めちゃダメだからね。
諦めなければきっと良いことがあるさ。人生なんてどう転ぶかわからないからね。」
真面目な表情でリネスの目を見据えて話す。
「……そうでしょうか?」
「そうだよ。だから、諦めようなんて考えるんじゃないよ?」
「…分かりました。ハヤトくんに振られるまで、私諦めませんから!」
ミツハに説得されて、意気込んで宣言をする。
「その意気でだよ。」
「ありがとうございます、ミツハさん。」
「いいって、あたしとリネスちゃんの仲だからね。」
「ふふ♪それでは、私もちょっと用事がありますので失礼しますね。」
「あいよ。晩飯は兄ちゃん達と一緒の時間で良いかい?」
「はい、同じ時間でお願いします。」
「了解~。」
ミツハは乗れんの奥へと移動する。
「あ、早く戻って部屋を片付けないと!ハヤトくん達が来ちゃうよ!?」
パタパタと急いで自分の泊まっている部屋へと駆けていく。
急いで戻り、部屋の鍵を開けようと鍵を取りだし、指し口に差し込むが。
「あれ?鍵が開いてる……?も、もしかしてハヤトくん達が!?」
慌ててドアを開けて部屋の中にはいると、ハヤトとエリシアではなく、全身黒色のマントで覆われた人が立っていて、それを見たときリネスは固まってしまう。
「うっ……」
その隙を見た全身黒色のマントで覆った人は、リネスの背後を取り手刀で意識を刈りとる。
「くくっ……これで……」
意識を失ったリネスをかたで担ぐと、不気味な笑い声を小さくあげて、部屋にある窓から外へと消えていく。