~夜営戦~
「はぁ……まぁ、完全に開眼していないとはいえ、使える能力自体はあるんだろ?」
チート過ぎる能力に多少呆れつつ。
「そうですね……視力を何倍にも強化するものや、魔力の流れを探知するもの…あとは、相手の能力を解析したり、少し先の未来を見るものと言った感じでしょうか。」
何となく分かってはいたが、全てが開眼していない状態でもチート能力満載だった。
「完全じゃないとはいえ、十分すぎるくらいに強い能力が開花してるんだな……」
「必ずしも全てが強いと言うわけではないんですよ。
場合によっては何の意味も果たせなかったり、かえってそれが自らを不利的状況に陥らせてしまうことだってありえるんです。」
「へぇ、てっきり恩恵しかないと思ってたが違うんだな。」
ハヤトが知っている限りの知識では魔眼が反則クラスに強いと言う情報だけで、弱点などは全く知らなかった。
「それに、私の持つ魔眼は先程申したように『万能の魔眼』は多種多様の能力を備えた魔眼です。
多種多様の能力を持つと言うことはその分魔力を多く使うわけで他の魔眼と比べて燃費が物凄く悪いんです。
ですから、常時使用や複数同士使用などと言ったことがあまりできないんです。」
話を聞く限りでは、複数の能力を同時に扱う場合は消費魔力が数倍にも跳ね上がるようで、常人が使用したりでもすれば一瞬で魔力枯渇を起こしかねないらしく、最悪死に至ってしまう程に消費魔力が酷いようだ。
「そう言うことならあまり使用は控えるようにしないとダメだな。」
顎に手を当てて考えるように。
「すみません…あまりお役にたてず……。」
「気にすんな。こればかりは仕方ないことだからな。
とりあえずは、シルヴィが見つけてくれた灯り火が消えてしまわないうちに突撃するぞ。」
これ以上この話題を続けてもシルヴィが自分を責めてしまいそうなので少々強引に話を終わらせ、今から突撃するように伝える。
「そうだね、せっかくシルヴィ君が見つけてくれたのに見失っては元もこもないからね。」
「そうですね、では早速向かいましょう。」
三人は再度目的の場所へと向かうために気配を消したまま音をたてないよう気を付けながら、最速で駆け抜けて行く。
気づけばあっという間に先程まで遠くに見えていた灯り火が今は目の前に見えるほどに近づいていた。
ハヤト達は、近くに立ててあったテントの影に身を隠しす。
「パッと見はただの夜営にしか見えないけど…ど…っ!」
「静かにっ!」
ハヤトは、小さな声でそう言うと『どうしようか?』と言いかけた萌衣の口に手を当ててそれ以上言葉を発することがないようにし、テントの影から人の声がした方向を注視する。
「……話し声がするね……」
真剣なハヤトの表情に何となく察した萌衣は回りの音を聞き取ることに集中すれば、僅かに小さく人同士の話し声が聞こえてくる。
「あぁ……恐らくさっきの悲鳴をあげた人達を襲った盗賊と言ったところだろうな…数は……声色からして三人ほどと言ったところか……」
一言一句逃さぬようにずっと聞き耳をたてていたハヤトが呟いた。
「声だけで人数がわかるのか君は…」
常人離れしたハヤトの聴覚と聞き分け能力に若干ではあるが驚く。
「慣れれば簡単だぞ。気配が完全に消せる相手や状況でも、声はそう簡単には消すことはできないから、出来るようにしても損はないぞ。」
元々複数人の会話を同時に聞き取ることが得意だったハヤトは、こちらの世界に来てはそれが一段と強化されていて、些細な声でも聞き取るができるまでになっている。
――と言ってもそれは無意識に聴覚に魔力を集中させ強化しているのもある。
「んー、私は遠慮しておくよ。
……とてもじゃないけど私には出来そうにないからね。」
「そうか?
萌衣さんなら的そうな気がするんだが……っと、そんなこと話してる時じゃないな。
どうする?聞いた限りの会話の内容的には夜営していた冒険者パーティーを襲った盗賊で間違いはないようだが。
なんなら先にシア達のところに戻っててくれても構わないが。」
「いやいや、ハヤト君とシルヴィ君を置いて一人先に帰るなんてするわけないじゃないか。」
軽く首を左右に振って何いってんの?と言いたげな表情と仕草でハヤトを見て言う。
「私もご主人様を置いて行くだなんてことするはずがありません。
例えそれがどんな状況であったとしてもです。」
シルヴィもハヤトの目をしっかりと見て、嘘ではないと気持ちを伝える。
「――もしかしてハヤト君は私とシルヴィ君がそんなことをするように見えるのかな?」
最後に萌衣がこんな状況だと言うのに、ハヤトの事をからかうように少しにやけ顔で覗き込むように見てくる。
「そういう訳じゃないんだが…ただ俺は二人の事を第一に考えてだな……。」
「ハヤト君はもう少し私たちののことを信用してくれても良いんじゃないかな~?」
萌衣が若干呆れ気味に返す。
「同感ですね。
私たちだってそれなりに力をつけています。普通の冒険者や盗賊相手に遅れをとるようなことは絶対にありません。」
萌衣に賛同するようにシルヴィも言ってきた。
「…そうだな。」
二人の言ってきたことに、ハヤトもそれもそうだな。と頷く。
(もしものことがあっても、俺が守れば良い話だもんな。)
「って、今はこんなこと話してる場合じゃないからな。
シルヴィ、萌衣さん、二人はバレないようにここから数メートル先の左と右それぞれについてくれ。
つき次第、俺が状況を確認して二人に手で合図を送る。
それと役割としては、俺と萌衣さんで盗賊の足止めと殲滅を担当する。
その間にシルヴィは冒険者たちを助け出してくれ。多分何処かのテントに詰め込まれているはずだ。」
変な方向へとそれつつあったが、元の目的へと話を戻す。
「こんなことじゃないけど……了解。」
「承知いたしました。」
ハヤトの説明を聞き終えた二人はそれぞれ返事を返すと、持ち場へとつく。
「二人とも持ち場についたみたいだな……あとは盗賊らが油断していてくれれば一番良いんだが、そうはいかないよな。」
様子を見る限り、盗賊と思われる人達は雑談をしつつも厳重に回りを警戒している。
「……仕方無いか。多少強引になるだろうが囚われている人達の命には変えられないな。
……よしっ!」
少しの間目をつむり神経を集中させる。
そして目を開けると同時に、突撃する時の合図を手で送ると同時にテントの影から駆り出す…。
「「……っ!」」
合図を確認したシルヴィと萌衣もハヤトとほぼ同時に駆り出した。
それぞれがしっかり役目を果たすように、萌衣とハヤトは驚き慌てふためいて本能が遅れた盗賊たちに向かって、シルヴィは人の反応が確認できたテントから捕らわれた人達を助け出すために。




