~新たな旅の始まる前…?~
「予定よりちょっと早くついたな。」
「そうみたいですね…。」
待ち合わせをしている門の傍まで来たはいいものの、予定よりも少々早めについてしまった。
「…シルヴィちょっといいか?」
ハヤトはこの時間を使ってずっと心につっかえている事を済ませに行こうと考えた。
「はい?なんでしょうか?」
「用事を思い出したからここで萌衣さんを待っててほしいんだが…頼めるか?」
「……シアさん達を迎えに行かれるんですよね?」
「あぁ…。」
的を射た質問に短い返事を返す。
「後から来た私なんかが言えるようなことではありませんけど…ちゃんと謝ってあげてくださいね…?」
「分かってるよ…。」
そう言われてシア達に酷い言い方をしてしまったときと事を思い出す。
(あの時シア泣いてたな……ほんと今更すぎるが何やってんだ俺……バカにも限度があるだろうに……)
その思いに拳を強く握る。
「……ご主人様、一度握った手は話さないであげてくださいね。握られた手を離されるのはとても悲しくて、寂しいものですから……」
「もう離したりしねぇよ、絶対に……そう言う訳だから頼んだ。
その代わりに今度シルヴィのしたいこと聞いてやるから。」
力強くうなずき返す。
待っててもらう代わりにと、シルヴィのしたいこと…つまり、言うことを聞いてあげる提案をする。
「いいんですか?」
「あぁ。けど今度だからな?流石に今は無理だからな……。」
「分かってますよ♪」
「ならいいんだ。忙しい時じゃなきゃ何時でも言っていいからな?」
「はい!♪」
(何がいいでしょうか……ご、ご主人様とデート……///…だなんて不埒ですかね……//)
「時間もなくなるし、行ってくるな。」
表情がコロコロ変わるシルヴィを面白そうに見ていたが、時間があまりないことを思いだし早速向かうことにした。
「あ…はい、行ってらっしゃいませ♪」
「すぐ戻ってくると思うから、萌衣さんが来たら一緒に待っててくれ。」
「了解しました。
萌衣さんには何て言っておけばいいでしょう?」
「ん~、適当に用事ができたとでも言っておいてくれるか?詳しいことは直接話すから。」
「そのように説明しておきますね。」
「ありがとうな。んじゃ頼んだっ!」
一言礼を伝えて宿屋がある方向へと全力よりの速度で走った。
「さてと、ご主人様と萌衣さんが戻ってくるまで一人ですね……何してましょう……」
その後シルヴィはと言うと大してこれといってすることもなく外壁に腰掛けては、空を見上げていた。
「……此処にいるはずだよな……。」
ハヤトは先程荷物を取りに来ていた宿屋まで戻ってきていた。
今度は荷物ではなく、シア達と会うために来たのだが……。
「……。」
(中から複数の気配がするからいるのは確かなんだが……謝るだけじゃ許してなんてもらえないよな……。)
なんて事を考えていると、中からガタッ!と音がなったかと思えばドアが勢いよく開き2つの小さな影が飛び付いてきた。
「うぉっ!?」
それには流石のハヤトも反応することができずに飛び付くのを許してしまう。
「ご主人っ!!」
「ご主人様ぁ~!!」
飛び付いてきた二つの影はリリアとミミルの二人だった。
「ど、どうしたんだ……?」
行きなりの出来事に困惑していると、抱きついているリリアとミミル顔を上げ。
「どうしたじゃないよー!!ご主人が何処か言っちゃうから寂しかったし……怖かったんだよ……?」
「そうですよ……ご主人様まで消えてしまうんじゃないかって……お父さんとお母さんみたいに…………すっごく怖かったです……」
そう語ってくる二人の声はとても震えていた……声だけでなくその小さな体も震えてしまっていた。
(…リリアとミミルには両親が帰ってこなかった事があると言っていた……なのに俺は……ほんとバカだな。
こんな小さい子にまで、こんな辛い思いをさせて……何が守ってやるだ……今こうして二人の笑顔すら守れてないくせして……)
そんな思いに拳にどんどん力が入っていく。
「ご、ご主人……お顔が怖いよ……それに血が出てる…よ…」
怯えた声でリリアがハヤトの口から出ている血を拭う。
無意識に力が入り、そのときに口内を切ってしまっていたようで……。
「大丈夫だから気にするな。
それとごめんな……怖い思いさせてしまって……」
そんなことなど気にも止めずに、二人に謝っては頭を優しく撫でた。
「ご主人…………大丈夫だよ、こうしてちゃんと帰ってきてくれたからっ!!」
「ミミルも……ご主人様が帰ってきてくれたなら…それだけでいいんです……」
リリアとミミルは、抱き締める力を強めた。
「……俺がリリアとミミルの二人に怖い思いをさせてしまった事実は消えないんだ……」
優しく返してくれる二人に『それでも……』とハヤトが言葉を口にする。
「でもこうして帰ってきたの……それだけでとってもリリアは幸せなんだよ……♪ご主人がそばにいてくれるだけで……ね?ミミルちゃん♪」
「うん♪リリアちゃんが言う通り、それだけでミミルも…シアお姉ちゃん達も幸せなんです……♪」
先程までの今にも泣きそうな震えた声じゃなく、今は幸せそうに笑顔を浮かべて話している。
「そうか……」
短く返して再度二人の頭を撫でていると、開いたドアからシア、リネス、カティア達も出てきた。
「ハヤトさん、お帰りなさいませ♪」
こうなることが分かっていたかのように笑顔を向けるシア。
「もぉ、帰ってくるの遅いすぎない~?」
半分不満げに、半分嬉しそうにするリネス。
「旦那様遅かったなのです~?」
あまりなんとも思っていないカティアが迎えてくれた。




