~想い~
「同じ思いで嬉しい…か……何でそう思えるんだ?」
その言葉にまた何時か同じことが起きてしまうのではないか……そんな不安が頭のなかを過る。
「何でって……それは、今もこうして記憶はなくしても貴方様といられる時間が…とても大切に感じられてるんです。
それは、私にとって貴方様が大切な存在であると言うこと……そんな方とまた同じ時間を過ごせることは嬉しいことで、凄く幸せなんですよ♪」
まだ瞳には涙が残ってはいたが、今はもう泣いてなどはいなかった。
ただただ綺麗な笑顔を浮かべて語った。
「そうか……そう思ってもらえるのはとても嬉しいんだが…俺はシルヴィを守れなかった……それになシルヴィは俺が殺したも同然なんだよ……もっと強ければ、もっとしっかりしていれば…………」
ハヤトの中では自分のせいで目の前の大切な人が一度死んでしまったことがトラウマになりかけていた。
「ふふ……記憶がないのでなんとも言えない部分もありますけど、きっと貴方様はなにも悪くなんてありません。」
「…何でそう思えんだよ……」
「だって今も私のことを思って色々と考えてくれてるのですよね?
そんな方が悪いなんてあるわけないじゃないですか。
それとも貴方様は私なんかいなければいいと思われるのでしょうか?」
わざとらしく首をかしげて問う。
「そんな風に思ってるわけないだろ。
出来ることなら、今も…これからも俺の傍にいてほしいと思ってる。
俺は俺のことを慕ってくれている奴を守ってやりたいんだ。
……それがどんなに険しい道だとしても関係ない。」
そこまでいい終えると、すぅっと息を吸い込んでは吐き出す。
「なぁ、こんな俺じゃ頼り無さすぎると思うが……」
(この先の言葉を言うのはちょっと勇気がいるな……けど、俺は今度こそシルヴィのことを……)
「……何でしょう?」
次の言葉をいいよどんでいるハヤトを不思議なものを見るように見つめて。
「……もう一度チャンスをもらえないか?」
喉でつっかえていた言葉を絞りだす。
「チャンス…ですか?」
「あぁ、俺にあと1度だけでいいからシルヴィを守らせて欲しいんだ……」
そう言うとシルヴィに向かって深く頭を下げる。
「俺のせいでシルヴィが一度死んでしまったことは変わらない事実で、とてもじゃないがそう簡単に許されるものではないのは分かってる。」
『それでも……』と
「守り抜きたいんだ……俺のことを慕ってくれた少女を……俺なんかのために1度死んでしまった少女を、今度は悲しませてしまうことが無いように……」
その言葉には冗談など一切含まれてなど無く、ただ本当にそう思ってるハヤトの必死な心と真剣な心が見てとれた。
「次こそは俺の命に変えてでもシルヴィを守り抜いて見せる……じゃダメか?」
そして少し頭をあげてシルヴィの表情をうかがう。
「…………嫌です。」
返答をするまでに少し間があったがしっかりと答える。
「そ、そうだよな……流石に俺なんかじゃ頼り無さすぎてダメだよな……」
シルヴィのそのたった一言にがっくりとうなだれる形で落ち込む。
「貴方様の命と引き換えにしてまで私はいきたいとは思いません。」
終わりだと思い込んでいたシルヴィの言葉には続きがあった。
「初めて私のことを守ってくれると言ってくれたこと……初めて異性のことを好きになる恋をしたこと……初めて異性である貴方様に裸を見られたこと……初めて好きな人と過ごせた時間……
たくさんの初めてを経験しました……そんな貴方様がいない世界なんてありえないんです……考えたくもないくらいです……。
もし、私を守ったことで貴方様が命を落とすとしたら、きっと生きている間ずっと後悔してしまう気がするんです。」
「ち、ちょっと待ってくれ……」
そう語りだすシルヴィに思わず口を出してしまい。
「はい…?私なにか変なことでも言ってしまったのでしょうか……?」
「いや、そうじゃなくてだな……思い出したのか……?」
語られていた思いのなかには忘れているはずの記憶の時のことが含まれていた。
「ふぇ?何をですか……?」
対してシルヴィは自覚がないのか首をかしげるだけで。
「記憶だよ……だってそうじゃなきゃ俺と過ごした時間とか、その……裸を見てしまったことなんて分からないだろ……。」
「あぁ……」
ハヤトに指摘されたことで理解したとたん、ぶわっと瞳から涙が溢れだす。
「お、おい、何で泣き出すんだよ……」
急に泣き出した彼女にどう対応すべきか迷い、あたふたしてしまい。
「だ、だって貴方様との大切な時間を思い出せたんですよっ!!嬉しくて嬉しくて仕方がないんです……うぅっ……」
そうしてまた泣き出してしまった彼女にハヤトは『そうか…』と一言だけ言うとそっと抱き締めてあげた。
こうしてあげるのが一番であると思ったから。
「ふえぇっ……うぅっ……あ、貴方様ぁ……も、もう思い出せないんじゃないかって怖かったです……うぐっ……」
抱き締められたことで迷惑かけないために抑えていたはずの感情が溢れだす。
そして一度溢れだすと自分の意思で止めることなんて出来なかった。
ぎゅっとハヤトの服を握りしめ、胸に顔を埋め子供のように声をあげて泣き続けた。
「怖かったな…けどもう大丈夫だからな…」
ハヤトは小さな子供をあやすように彼女の頭を撫でて優しく声をかけてあげた。
(ほんとシルヴィはよく泣くな……)
撫でている間も彼女ご少しでも落ち着けるようにずっと『大丈夫だ。』『俺がついてるからな』等と声をかけ続けていた。
(次こそは絶対に守り抜くんだ……一度は間違えたが二度と間違えないために手を離したりはしない……シルヴィをシア達を……そして綴との約束を守り抜くためにも……)
そう一人心なかで改めて誓った。




