~シルヴィの想い3~
「なぁ、なるべく早く答えてくれると、しないといけないことがあるから助かるんだけど?」
今回の件について報告しないといけないことや、何だかんだで置いていってしまったシア達のこと確認したい気持ちもある。
それに、猫爽綴についてのことも、もっと詳しく調べなくてはいけない……ハヤトにとってはそれが一番最優先事項だった。
最優先事項があるとはいえ、その代わりに何かを疎かにすること等はない。
「ど、どうしても答えなくちゃいけませんか……?」
どう答えるか考えている間もこちらをずっと見つめているハヤトに問う。
「いや、嫌なら無理に答えてもらう必要もないな。
基本的に相手が嫌がることはしたくないもんだからな。」
そう言ってシルヴィに背を向け、ギルドへ入っていこうとする。
「ま、待ってくださいっ!!」
大きな声でハヤトを呼び止める。
「なんだ?」
顔だけをシルヴィの方に向ける。
「そ、そのですね……」
(ゆ、勇気を出して言わなくちゃ……絶対後悔しちゃいます……たとえこの気持ちが貴方様に届かないとしても……でも、今までこんな気持ちになるだなんて思っても見ませんでした…それも私の方から伝えるだなんて……)
「私は、貴方様のことが大好きなんだと思います。友人や知人に向けるような好意ではなく、異性に向ける好意のように気がするんです……。」
自分の今の気持ちを伝えることを決意し、ゆっくりと長いとも短いともとれる時間のなかで、確実に思っていることを一言一句間違えることなくハヤトの目を見てはっきりと伝える。
「あくまでもそんな気がするだけなんですけどね……」
伝えはしたが、自分のあやふやな気持ちを伝えてしまったことに、少しぎこちない笑顔をハヤトに向けて。
「正直に言うとですね、あんまりよく分かってないんですよ……その…生まれてから今まで誰かに恋をしたことなんて一度もなかったものですから、この気持ちが恋なのかどうかわかりません。
でも、出会いはどうであれ私は貴方様に心を奪われたような感覚になったんです。
こんな私なんかにも条件があるとはいえ『命に変えてでも守り抜いてやる。』だなんて言われたら誰だって惚れちゃいますよ。
そんな優しくて、強い貴方様にだからこそ好きになったんだと思います。」
そんな中途半端な気持ちをこのような場で言うのはダメなような気もするが、それでもやっぱり伝えてよかったと何処かで感じていた。
「……シルヴィのその気持ちはすごい嬉しいんだが、それに答えを出すのは"今は"まだできないと思う。」
答えを出せないことに対して『悪いな』と少し頭を下げて。
「い、いえ!気にしなくて大丈夫ですよ!!だから、頭をあげてください。」
頭を下げられたことに動揺して、すぐにでも上げてもらうようにお願いをする。
「貴方様がそう言うのも何となくわかっていたことですから。」
予想はしていたことではあるが、実際に言われるとやはり悲しくなってしまう。
「そうか……」
(今は優先したいことがあるからな、それが終わるまでは答えは出せないだろ……まぁ、俺に心がりがあったりしたら分からないけどな。
つうか、こっちの世界に来てそんなたってないはずなのに俺に対して好意抱く奴がいすぎる気がするんだが……)
「なぁ、シルヴィはこれからどうするつもりなんだ??」
「私ですか?そうですね……ギルドに報告が終わったあとは用済みでしょうから、一人で何処か遠くにでもいこうかなと思ってますけど。」
(できることなら貴方様には迷惑をかけたくないですから……例え付いていきたくても、それを言ってしつこい女だと思われたくないですよね。)
「…付いてくるつもりはないのか?」
それは小さな声ではあったが、決して聞こえないほど小さいわけではなく。
「え……?今なんて言われましたか……?」
自分が求めていた台詞が聞こえたことに一瞬『はい!』と答えそうになるが、もしかしたら聞き間違いなのかもしれないと思って聞き返す。
「だから、付いてこないのかって聞いたんだよ。」
一拍間を開けてもう一度シルヴィに言う。
「い、いいんですか……?」
聞き間違いでなかったことに喜びを覚えるが、表にその気持ちを出すことはせずに心なかにとどめる。
「シルヴィが付いてきたいならだが……けど、無理についてくる必要なんてないからな。」
「無理にではないです!!むしろ喜んで付いていかせてもらいたいです!!」
嬉しい感情の勢いに任せてハヤトに抱きつく。
「お、おい!?」
そんなシルヴィに文句を言うわけでもなく、突き放すでもなく、驚くだけで、あとはその場に身を任せるだけで。
「あ、す、すみません……」
シルヴィは行きなり抱きついてしまったことに謝りはするものの離れることはせず。
「……もう少しこのままでいさせてください…………。」
そう告げてくるシルヴィに抵抗することもなく、ただただ抱きつかれるだけの時間が流れゆく。
本当はすぐにでも離してもよかったが、そんなことできるはずがなかった。
……それがどこからきているものなのか、ハヤトにはよく分からなかった。
……けれど、どうしてあげたら一番いいのかは知っていた。
だから、涙を流し抱きついてきた彼女を静かにそっと抱き締め返すのだった。




