~聖竜2~
「もう一度聞くが、本当にあんな名前でよかったのか??」
ハヤトは、これから来るであろう冒険者達から逃げるために、さっきまでいた岩だらけの場所から離れている最中なのだが、何回言ったかわからない言葉をまだ繰り返していっていた。
「何度聞いてくるのですか……シルヴィアンカって名前、私は可愛いくてとってもいいと思ってますよ。」
空を飛ぶ純白のドラゴン、シルヴィアンカは下を走るハヤトに少しだけ呆れつつも律儀に言葉を返す。
「な、ならいいんだが……。」
『……あとでセンスがないとかで文句は受け付けないぞ……??』などと偉そうにいってはいたが、気に入られなかったらどうしようと言う不安があった。
そして、純粋にいい名前を付けてもらって嬉が層にしてくれているシルヴィアンカを見ても、対する不安が完全に消えたわけではなかった。
「貴方様は心配しすぎなのでわ??」
「いや、だってな……なんせ初めてのことだからな……」
「付けてもらった本人が良いって言っているのですから。
貴方様はなにも気にしなくてよろしいのですよ??
……でも、それが貴方様の良いところの一つのような気もしますけどね……」
最後だけハヤトに聞こえないて声でポツリと呟く。
「ん?最後何かいったか??」
ハヤトがこちらに顔を向けてくる。
「い、いえ、何も言ってませんよ。
…あ、そろそろ街のようなものが見えてきましたよ!」
話をそらすために、現状報告をする。
「見えてきたならもう少しだな……ちょっと飛ばすぞっ!!」
本当ならば、先ほどいた岩が大量にあった場所『元・アリーナ』からエルドマールまではとてもじゃないが、一日以内で帰れる距離ではなく、何日も日を跨ぎながらも行かなくてはならないほどの距離がある。
だが、ハヤトとシルヴィアンカの二人は魔術など一切不使用の純粋な走りと飛びだけでその距離をたった一時間弱で走破(飛破)しようとしていた。
「……ところでシルヴィアンカ、じゃちょっと呼びにくいな……シルヴィでも構わないか?」
「貴方様から付けていただいた名前ですから、好きにお呼びください♪」
「そう言うことならそう呼ばせてもらうが……シルヴィは擬態とかってできるのか?」
「一様できますけど、私自身がまだ成体と言うわけではないので人の姿に擬態するとなるとそれに角と尻尾が生えたような姿になってしまうんですよね……」
『何かすみません。』とシルヴィは謝ってからしゅん…となる。
「いや、そのくらいならなんとかなるから大丈夫だ。」
「ど、どうするのでしょうか?」
気になるのか、ドラゴンの姿の状態なのでかなり大きな顔が目の前まで迫ってきている。
「近すぎるから、もう少し離れろ。」
「す、すみません!!」
急いでさっと離れる。
「んで、どうするのか。だっけか?
そんな気になることか??」
「それは気になりますよっ!」
「そ、そうか……」
(シルヴィなら、教える分には構わないか。)
「単純に幻術を使うだけだ。」
「幻術ですか…………え?今幻術って言いましたか?」
なぜか目を見開いて見返してくる。
「そうだが、それがどうした?」
「い、いえ……ちなみにですけど、それってどのくらいの効果が期待できるものなのでしょうか?」
「効果か……そこまで使ったことあるものではないからよくわからんが、恐らく俺の魔力が尽きるまで効果は持続するんじゃないか?」
「魔力の方はどれ程あられるんですか?」
「魔力か……たしか最後見たときには300万ちょいはあったと思うが。」
「300万!?な、なにかの冗談ですか……??」
それが普通のことであるようにハヤトは言うが、シルヴィアンカからすれば数値が規格外過ぎで驚きでいっぱいになる。
「冗談何かじゃないぞ?
でなけりゃ、シルヴィを助けるときに使った、原霊に直接魔力を媒介にして使う古代魔法何て使えるわけないだろうが。」
その通りで、古代魔法は威力が強力なのと引き換えに魔術とは比べ物にならないほどの魔力を必要とする。
それを使用することを可能としたのはハヤトの馬鹿げた『魔力量』があってのものだった。
「そ、そうですよね……」
(も、もしかして、私ものすごい人に助けられたんでしょうか……)
「一旦この話は終わりにするぞ。
気になることがあるならまたあとで聞いてくれ。そのときに答えられる範囲でいいなら答えてやるから。」
「あ…は、はい。」
「人間に擬態かしてもらっていいか?
今幻術かけても、恐らく擬態するのと同時に効果がなくなるだろうから。」
「わかりました……『擬態』」
シルヴィアンカの体が白い靄のようなものに包まれると、みるみるうちに小さな形へと変化していき、ある一定の大きさまで来ると次は人のからだと同じような体型に形成される。
「はぁ……案の定か……。」
靄のようなものが消える頃には、シルヴィアンカはほぼ人間と変わらない姿になっていた。
角と尻尾が生えていることを除けば…だが。
それとは別のことでハヤトはため息をつく。
「元々ドラゴンに服を着る習慣なんてないよなそりゃ……」
そう、今ハヤトの目の前には、人に姿を変えた全裸のシルヴィアンカが立っていた。




