~討伐クエスト~
「お、お待たせしました!!」
「お待たせ~!!」
数分経ったのちに宿屋の出入り口から、着替えたシアとリネスの二人が出てきた。
「意外に早かったな?
てっきりもう少しかかるもんかと思ってたんだがな。」
「急いで着替えてきたんですよっ!
待たせ過ぎたら悪いなって思ってるんですから。」
「別に責めるつもりは一切ないからな。
特にこの時間から出掛けるとか約束してたわけでもないしな。」
壁に寄りかかるように、腕をくんだ状態で待っていたハヤトは受け答えをする間もその体制のままで。
決して、シアやリネスに偉そうに接しているわけでも、この体制が楽だからと言う理由はない。
……そこにリリアとミミルが隣でハヤトを挟むように、前にはカティアが寄りかかるようにして密着していたためである。
「う、羨ましい…………はっ!////い、今のはその、別に心の声が漏れたりとかした訳じゃなくてですねっ!?////」
そんな光景を見てポツリと心の声が漏れ出たシアは、慌ててそれを否定するが、どう見ても本音が漏れてしまったことに動揺しているようにしか見えない。
「わかったから、落ち着けよ。」
「……そんな慌ててると逆に肯定してるようにしか見えないよシアちゃん……」
リネスはシアを少しあきれるように見ているように見えて心のなかでは
(うんうん、シアちゃんやっぱりかわいいなぁ~♪)
などと感想をのべていた。
「は、はい……///」
「それはそうと、そのハヤトくんに寄りかかるようにしている小さな子は誰かな?」
話題を変えるようにリネスがカティアの方を見て言う。
「あぁ、こいつか?」
ぽんっと手をカティアの頭におく。
「んみゅっ?旦那様……??この人たちはどちら様なのです??」
「そうだな……いちいち説明するのもめんどくさいし、時間もあまり無さそうだからギルドに向かいながらでいいか?」
「私は別に構わないけど??」
「旦那様の言うことなら何でもきくなのですっ!♪」
ハヤトの言葉にリネスは頷き、カティアはビシッと敬礼をするように姿勢よく返事をする。
「んじゃ、とっとといくぞ~。」
ほらギルドに向かうから歩け。と自分にくっつくリリアとミミル、カティアに促す。
「はーい!!」
「了解です!!」
ミミルとリリアは返事を返すと、ずっとくっついていたハヤトから離れ、ハヤトは三人ともが離れたのを見てギルド方面へと歩き出す。
そのギルドまでの距離を歩くなかで、リネスから先ほどの質問の話題がまた浮上する。
「それでその子はどうしたの?」
「……拾ってきた。」
質問にたいして一言そう答える。
「拾ってきたって……嘘だよね?」
「そうだな。本当は誘拐してきたんだよ。」
「えぇっ!!?う、嘘だよね?!」
ハヤトの何気ない返答を真に受ける。
「嘘に決まってるだろうが。
そんな真に受けられても俺が困るんたが……。」
「そう思うならやめてよ!?」
「それは無理な相談だな。」
きっぱりと即答で断言する。
「ど、どうしてかな??」
「どうしてって言われてもな……からかうのが面白いからか?」
自分でもどうしてなのかはよくわかないので、リネスに聞き返してしまう形になる。
「わ、私に聞かれても……」
私が聞きたいのに……とぼやく。
「とりあえず、今はその事はおいとくとして……本当はどうしたの??」
「着いてきたんだよ。」
「着いてきた??何を目的に??」
「それは俺が」
『それは俺がこいつの中で旦那??になったかららしい。』と答えようとしたのだが、横から話に入ってきたカティアによって遮られる。
「旦那様に着いていくのは当然なのですっ!!」
無い胸を張って堂々と言い切る。
「さっきも旦那様って言ってたけど……も、もしかして……??」
「そのもしかしてだ。」
肩をすくめて言う。
そして、リネスとシアの二人に宿屋を出てから帰ってくるまでの起きた出来事(リリアとミミルが発情期でいちゃいちゃしていたこと以外の)すべて話す。
「そんなことがあったんですね。」
「ハヤトくんって何かしら事に巻き込まれるよね。」
静かに話を聞いていたシアと、ちょくちょく表情が変わっていたリネスはそんな感想を思う。
「そうか??」
「リネスさんの言う通りですね。
私とであったときも、結局ハヤトさんを巻き込んでしまいましたからね。」
「あぁ~、そんなこともあったな。
てか、あれは巻き込まれたって言うより、俺が突っ込んでいっただけのような気もするけどな。」
大したことでもなかった気がするけどな。と付け加える。
「それでもですよ。あくまでハヤトさんの中ではそうでも私たちからしたら驚異そのものでしたから。
最終的にハヤトさんが倒してくれなかったら村は崩壊しててもおかしくなかったんですよ。」
「そんなことも言ってたな……。」
「もぉ、ちゃんと覚えててくださいよぉー!」
自分だけが一方的に覚えていることが何だか悔しくて少し大きな声で怒ってしまう。
「わ、悪かった。」
「はぁ……私がハヤトさんに出会った時の思いででもあるんですから…これからはちゃんと覚えててくれなきゃ嫌ですよ??」
少々悲しげに、そして切なに願う。
「わかった。ちゃんと覚えておくから。」
「約束ですよ?」
「あぁ。約束だ。」
そこで指切りを交わす。
「えーっと、いい雰囲気のなか悪いんだけど……話戻してもいいかな?」
そこにリネスが割って入ってくる。
「あっ……す、すみませんっ!!///」
「あぁ、構わないぞ。」
慌てて謝るシアと、至って冷静に返すハヤト。
「結局のところ、カティアちゃんはハヤトくんをメロメロにするために着いてきてるってことでいいのかな」
「メロメロって……」
一瞬言葉が古すぎるだろ……と心のなかで突っ込みをいれてしまう。
「はいなのですっ!!旦那様をメロメロにして見せるなのですっ!!
あ、でも、旦那様が嫌な喜町になってしまわないように気を付けてするなのです!」
「ふあぁ~♪カティアちゃん可愛いなぁ~♪」
自分だけのことだけじゃなく、ハヤトのことまでちゃんと考えている健気な少女に思わず抱き締めて撫でる。
「あわわ……//」
「もう、いっそのこと付き合ってあげたらいいのに。
こんなにかわいいんだから♪」
「……今の段階じゃ着いてくるのとかは全然構わない。としか言えないな。
正直どうしたらいいとまだわからないからな。」
シアやリネスと付き合っているものの、決して恋愛と言うものを理解しているわけではないため、どうしたらいいのかがわからないままであるために。
「そっか……。
なら、せめて悲しい思いだけはさせてしまはないようにしなきゃだよ?」
「それはわかってる。
二度と俺のせいで、知っているやつらが悲しむ姿だけはみたくないからな。」
リネスのカティアを思っていった言葉に、ハヤトは現世での古い…とまではいかないが、死んでしまった年齢から数えて数年前に起きた出来事が頭をよぎる。
それのせいで一瞬だが感情が制御できずに、誰かに対するものではなく、あくまで自分に対する殺気が回りにまで漏れ出てしまう。
「ご、ご主人様……??」
そのハヤトが発する殺気の中でゆういつ声を発することが出来たのはミミルだけであった。
他の4名は殺気に抗うことができず、体が硬直してしまっていた。
そしてハヤトは、ミミルの声が聞こえたことで理性が戻り、漏れ出ていた殺気も霧散する。
「悪い……やっぱりお前らは宿屋に戻ってくれ……。」
「どうしてですか……?」
急に態度が変わってしまったハヤトにカティアが不安になる。
「いいから戻ってくれ……。」
「け、けど……」
ミミルは、何となく今の状態のハヤトを一人にしてはいけないような気がしていた。
「さっさと戻れっていってるだろうが!!」
言うことを聞かずに宿屋に戻ろうとしないミミルたちを見て思わず怒鳴ってしまう。
その怒鳴り声には少しだけではあるが殺気がこもっていて、ミミルたち5人は恐怖にビクッと体が反応した。
「今回だけでいいから一人にさせてくれ……」
ハヤトはそれだけを言い残し、ただ一人でギルドへと向かっていく。
ミミルたちは、その寂しげな後ろ姿を見ていることしかできなかった。




