~エルフの里~1部
「取り合えず、歩き始めたはいいものの、全くなにもないなぁ~」
かれこれ数十分は歩いたはずだが、見えてくるものは、木ばかりで。
「さて、あとどのくらい歩けば、人に会えるかね?」
独り言をぶつぶつ言いつつも歩き続けていると
「おっ!あれは村じゃないのか!?」
目の前には、村一体を高い木の柵が覆っており、そこそこ太い木で作ってあるので簡単には壊れないくらいの耐久はあるだろうと推測できる。
「さてさて、第一村人がいい人だといいなぁ」
そんな期待を持ちつつ、村の入り口の方へと近づいていき
「すいませーん、道に迷ったんですが今日ここに泊めてもらえませんか?」
近づいたはいいものの、村の入り口であろう場所は、固く閉ざされており。
待っているだけじゃ開くのが何時になるのか分からないので、なかに聞こえると思うくらいの声で泊めてもらえないかを訪ねる。
少しして、ギイィ…と鈍い音を出しながら、入り口が少し開き、その隙間からこちらを見てくる人が一人だけいて
「迷い人か?」
「はい。そうです。
もう暗くなってきたところで、こちらの村を見かけまして、よろしければ明日の朝まで泊めていただくことは可能でしょうか?」
「……一晩であれば、構わないですが。
取り合えずなかに入ってください。」
そう言われて、人一人とおれるくらい開いた入り口から中へと入り。
「ようこそ、エルフの里へ」
先程、入り口を開けてくれた、男性で
ぱっと見20代くらいに見える、がたいのいい体をしており、エルフと言うだけあって耳がとがっている。
「エルフの里でしたか。
もしかして、お邪魔でしたか?」
自分が知る限りでは、たしかエルフは人種から忌み嫌われていた気がする……だから、森のなかに身を潜めているとかどっかの本で見たような……
「いえいえ、そんなことはないですよ。
ただ、ここら辺に人間が来るのは珍しいものですから。
ただでさえ周りがこんなところですからね。」
「そうなんですか?」
「はい。少し前から何故かここら周辺は、他の場所と比べて強い魔物が出るようになったので並大抵の人間ではこれるような場所では無いのですよ。
たまに例外で、Aランク冒険者とかが来ることはありますが。」
「少し前からですか。
なんか人為的なものを感じますね。
それと、Aランク冒険者とはなんでしょうか?」
「村のみんなもそう思ってはいるのですが、これがまた大変でしてね。
貴方、冒険者ではないのですか?」
何故か、少し驚いたような顔で訪ねてきて
「違いますね、、少し離れたところの村から出てきたものですので……」
さすがに、異世界から転生してきたとは言えず
「ふむ、そうでしたか、、
てっきり、冒険者とかかと思ってましたよ。
にしても、よくここにたどり着けましたね?
ここら辺は魔物が結構出てくるはずだったのですが。」
「自分は、全くと言っていい程見かけなかったですよ?たまたま運が良かったんじゃないんですかね?」
本当は、結構近くに魔物はいたのだが、ハヤトがチート過ぎる力を持っているがゆえに無意識に気配を感じとり、魔物が比較的少ないルートを通ってきたのだが、当の本人は露知らず。
「運が良かっただけなんですかね。
まぁ、何はともあれ無事なのはいいことですからね。
それで、今日1日泊めてほしい、と言うことでしたよね?」
「はい、そうですね。」
「それは、先程もいったとおり構いませんが、明日朝ここからでたあとは何処かに向かう予定はあるのですか?」
「うーん……あっ、そのさっき言っていた冒険者?とやらになるためにはどうしたらいいのですか?」
「冒険者になるためには、冒険者ギルドってところで登録するのが一番手っ取り早いですね。」
「冒険者ギルドですね。
ちなみに、一番近いところでその冒険者ギルドがあるのはどこですか?」
「ここからだと……エルドマール街と言う街が一番近いと思われますよ?」
「では、明日はそこに行きたいと思います。」
「道とかは知っているのですか?」
「いいえ、全く知りませんけど?
でもまぁ、きっとどうにかなりますよ」
「きっとって……よろしければ、村の者にご案内させますよ。」
「いや、ですがそこまでしてもらう理由は無いですし。」
「気にしないでください。
滅多に来られない客人を無下に扱うことはできませんから。」
「……なら、お願いしてもよろしいですか?」
流石にそれを言われると、断ることもできず
「はい、構いません。
明日朝、暇なものに……そう言えば御名前を伺っていませんでしたね。」
「俺は、神咲ハヤトといいます。」
「神咲さんですね。私はエルフの里の村長のシルエと申します。」
「シルエさんですね。覚えておきます。」
「それで、明日町に向かわれる際に、神咲さんのところに暇なものを向かわせますので」
「何から何まで、ありがとうございます。」
「礼には及びませんよ。
それと、神咲さんは客人ですから、おもてなしをしたいと思うのですが、大丈夫でしたか?」
「全然構いませんが、そこまでしなくてもいいのでは?」
「それに関しては、昔からの風習、掟とでも申しておきましょうか?
ここ、エルフの里へと訪れた客人にはおもてなしをするようにと、前村長にも言われていましたので。と言っても、主に人種相手にだけと言う感じですけどね。」
「何故エルフが人間におもてなしをすると言う掟があるのですか?」
「私も前村長から聞いただけなので詳しくは知らないですが、何でもかなり昔の話みたいですけどエルフの里が強力な魔物に襲われて村長が対応してたんですが、それでもなお魔物の方が上だったみたいで、どうしようもなく里が壊滅しかけたところを偶然訪れてきた人間が、その魔物を倒し救ってくれたみたいで、それからは人間が訪れてきたときは手厚くおもてなしをするようにと決まりができたみたいですね。」
「へぇ~、てかエルフでも倒せないって、その魔物やばすぎません?自分の記憶が間違ってなければ、エルフって風の魔術と弓を主に使った戦闘スタイルで、両方とも種族のなかではトップクラスのはずだったと思うのですが」
「そうですね、エルフは右に出る者が居ないほどと言っていいほど風の魔術と弓の腕には自信がある一族であるのですが。
それでも、その時の魔物には敵わなかったみたいですね。」
「そんな強い魔物なら、逃げると言う手もあったんじゃないですか?何処からか迫ってくるのがわかるわけですし。」
「そうだね。でも、その魔物は気配も魔力も目の前に来るまで一切感じられなかったみたいなんですよ。」
「そんな魔物が存在するんですか?」
「私が知る限りではそんな魔物に出くわしたことはないし、噂程度しか知らないですね。
それと、あるものの話によると、何もなかったところに急に現れたとか言ってたらしいですね」
「それって、そのタイミングできた人間怪しくないですか?」
「神咲さんもそう思いますか?私もそう思ったのですが、私以外誰にその事を話しても、そんなことあるはずがないと言われるんですよ。
まぁ、今更その事を話しても仕方ないですよ。
その人間も寿命を考えれば亡くなっていますよ。」
「普通に考えたらそうですね。
今更気にすることでもないかもしれませんね」
「あ、もうこんな時間ですか、私は村のものと御馳走を用意してきますね」
「あまり、無理がない程度でお願いしますよ」
「大丈夫ですよ。食料は沢山ありますから。
神咲さんは、この先まっすぐいったところに一回り大きな家が有りますのでそちらに向かってください。
そこのものには、すでに伝えておりますので。」
あちらですよと指を指しており
「あ、はい、わかりました。」
「では、後程。」
そう言い終えると、そそくさと住人が集まっている方へと向かっていった。
「ふぅ、優しい人で良かったなぁ。
取り合えず、シルエさんが言ってた方向に向かってみるか。」
ハヤトは先程シルエさんが指を指していた方向へと歩を進めて
「……こっちであってるよな?」
シルエが言っていた少し大きめの建物を探しながら歩いているが、なかなか見つけられず、本当にこっちであってるのか?と思い始める。
「あ、もしかしてあの家のことかな?」
ぶつぶついいながら歩いていると、少し先の方に他の家の比べて大きいのが建っているのを見つける。
近づいて見てみると離れたところこら見るよりまた一段と大きく感じて
「シルエさんは、先に伝えてるって言ってたから……
すいませが、どなたかいませんか?」
勝手にはいるわけにもいかず、多分中に誰かいるだろうと思いあまり煩くならない程度の声で声をかけてみる。
数分待つと
「…………神咲様でしょうか?」
家の大きなドアから、全体的に落ち着いた黄緑色の色ワンピースの様なものを着た女性のシルフが出てきて。
「村長から伺っております。
私、エリシアと申します。以後お見知りおきを……」
エリシアは、ハヤトに向かってワンピースの裾をつまみ持ち上げ右足を一歩後ろへ下げ同時に頭も少し下げる。ハヤトはこれまでこれ程綺麗で美しい礼を見たことがない。
それほど完璧な礼をことなくこなすエリシア。
「あ、知ってるとは思いますが、俺は神咲ハヤトです。神咲でもハヤトでも呼びやすい方で呼んでくれて構いませんよ。」
「お客様のことを呼び捨てにすることは出来ませんので、神咲様のままでお願い致します。」
「別に構いませんが。
それで、エリシアさんはこの家とどのような関係が?この家に仕えているとかそんなんですか?」
「違いますよ?
ここは、私の家ですよ。……何か可笑かったでしょうか?」
「い、いえ、そんなことはないですが、まさかこんな立派な家の持ち主とは思わなかったので。」
「まぁ、普通はそう思われますよね。それと、私の家ともうしましたが、あくまでも《今は》ですよ。」
「今は……?」
俺はその言葉の意味が分からず、首をかしげる。
「はい、私エルフはエルフでも、ハイエルフと言う種になります。
簡単に言いますと、エルフの上位互換みたいなもので、エルフと比べて耳が長いのが特徴ですね。」
エリシアは、自分の耳がハヤトに見えるように向けて。
「ハイエルフなのはわかりましたが、それだけが理由じゃないんですよね?」
ハヤトは何となくだが話し方的にそれだけではないと感じ。
「感が鋭いんですね?
確かに、ハイエルフと言う理由だけではありません。
ここ、エルフの里は周りが森で囲われています。ですので、魔物なのが多く危険な場所でもあるのです。」
「なぜわざわざそんな危険な場所に里を作ったのでしょうか?」
「それについては昔から伝えられていることですが、度々人間にエルフが拐われて《奴隷》として様々な所に売り飛ばされる。と言うことがあるのです。
だから、危険があるけど人があまり近づきにくいこの森に里を築いたのです。」
「そんなことが…でも自分はいれてもらえましたよ?」
「それは、そんなことがあったからって全ての人間を恨むのは筋違いだと理解していますから。
なかには本当にいい人も居ますからね。」
「エルフの方々は、心が広くてお優しいんですね。」
「お褒めいただき嬉しいのですが、全員が全員そんな風に思っているわけではないのですよ。
家族や子供、最愛の人を奪われて人間に復讐しようとする者もいます」
「当然ですよね。自分がその立場だったら、同じことを考えますよ。」
「そうですね、私もその立場だったら同じことを考えますね。
それでも、全ての人間にたいして恨みを、復讐をしようとするのは、私は間違ってると思います。」
「エリシアさんは、特にお優しいんですね。」
「そんなことないですよ//」
自分だけが褒められる経験が少なかったエリシアは、ハヤトから優しいですねと誉められて少し頬を紅くして照れてしまう。
「あ、そろそろなかに入りましょうか。詳しくはなかでお話いたします」
今更、かなり話が脱線していたことに気がつく
「そうですね。暗くもなってきましたしね。」
空を見ると、オレンジがかった色をしていて、少し星も見えている。
「すいません、長々と話してしまい……」
ドアを開け、中へと入るときに、前を歩いていたエリシアが顔だけ後ろを向き申し訳なさそうに謝ってきて。
「いえいえ、気にしていませんよ。と言うより、話をふったのは俺ですから。逆に申し訳ないです。」
「ふふ、神咲さんはお優しいんですね。
では、両成敗と言うことでいいですかね」
「それで構いませんよ。俺に落ち度があるのは確かですからね。」
そんなこんな話しているうちに、家のリビングへと着き。
「どうぞ、こちらにお座りください」
いくつかあるうちのひとつの椅子を引いて、座られるように促し
「すいません、失礼します」
「それで、先程のお話の続きなのですが、私はハイエルフであり、ここの里の《守人》をしているのです。」
ハヤトと対象の席に座り話始めたエリシアは、自分が里の守人と言うことを話す。
「その、守人とは何なのですか?」
「この里に障壁を張り、魔物などから守る者のことです。
障壁には、衝撃はもちろん魔法や認識阻害効果があります。
あまり強いものには効果は薄いですが、それでも並大抵のものなら効果は十分に発揮してくれるものです。」
「へぇ、そのようなものがあるんですね。」
(ん……でも、俺は普通に遠くからでも見えていたような……あ、そうかチート過ぎる能力のせいか……)
「どうされました?」
一人でそんなことを考えていたら、困っているように見えたのかエリシアが心配してきて。
「え?…あ、大丈夫ですよ。」
「なら、いいのですが。
それで、守人には重要な役目があるので、このような他のとこと比べて頑丈な家に住まわせるのです。」
「だから、《今は》と言っていたのですね。」
「はい。でも、もうすぐそうじゃなくなるんてすよ。」
「どういうことですか?」
「守人は、最大10年毎に代わっていくのです。
ずっと、死ぬまでそのものを守人にして拘束するようなことはしたりしないんです。
あくまで、次の守人が決まるまでの期間と言う感じですね。」
「で、エリシアさんに代わる次の守人が決まったと言うことですか。」
「そうゆうことになりますね。
やっと、外に出れたりすることができるんですよ。楽しみです……!」
ハヤトは今のエリシアが、ただただ遊びたくて仕方ない子供のように思えて。少し笑ってしまう。
「な、なに笑ってるんですか!?//」
と笑っていると、エリシアが自分が笑われているのに気づき、少し恥ずかしがるような照れているような感じで、テーブル越しにハヤトに顔を近づけて。
「あ、すいません、エリシアさんのことを見てたら、小さい子供がワクワクしているように見えて、それが可愛くてつい……」
「わ、私が可愛い!?な…な、なにいってるんですか!!?」
「え?俺は本当のことをいっただけですか?」
(子供なんて言って気にでもさわったのかな……)
「ふえぇ///」
(ど、どうしよう!?かわいいなんてはじめていわれたよ!?)
などとエリシアが顔を真っ赤にしていると。
ドゴオォォォーン!!となにかが崩れるような大きな音が外から聞こえてきて
「な、なんだ!?」
「と、取り合えず神咲さんはここで待っていてください!!私が何があったのか確認してきます!」
「大丈夫です、俺もいきますよ!」
「で、ですが……」
どうするべきか考えているようで
「俺も男です。あまりたより無さそうに見えるかもしれませんが、力には自信があります。エリシアさんのことを守ることは出来ると思いますから、頼ってください。」
「……わかりました。確認しに行きますから、一緒に来てください!」
「はい!しっかりエリシアさんのことしっかり守りますね!」
ハヤトは何があってもいいように、来るときに持っていた木刀とは別に、もう一本家から位置を拝借し、石剣を造り上げる。
その光景を、エリシアはこっそりと見ていた。
(ま、守りますねって…素直に嬉しいですね。それより、なんなんですかあれは……土魔術ではないようですし……錬金術……?伝説で聞いたことはあるけど…………神咲さん…貴方は一体何者なんですか……)
そんなことを考えつつ、ハヤトと共に外へとかけて行く。