~初めての冒険者クエスト4~
「……ちょっとやりすぎたか?」
『星夜の瞬き』を使ったあとの本来ならコブリンがいた場所にはその姿が確認することができず、その上地面が大きく削られている。
「ご主人ー!いまのなに~!全く見えなかったよ!?」
「み、ミミルも全く見えませんでした……何をしたんですか……?」
1歩も動かず、たった一太刀でコブリンを消滅させ、かつ地面までもえぐってしまうその技に興味を持ち尻尾をふるふると左右に振って問いかてくる。
と言うより、その技よりも二人が興味津々なのはそれを使いこなしていたハヤトの方であった。
「普通に……ではないか。
『星夜の瞬き』つってな音速を越える速度で複数回敵を切りつけるものなんかだが、まぁ見えなくて当然だよな。
それにここまで威力が高いとは思ってなかったな。」
そう言うとまたえぐれた地面の方に目を向ける。
「ふぇ~、よくわかんないけど、ご主人強い~!♪」
聞いてきたわりにはなにも理解できずにただ抱きついてくるリリアと
「あ、あの間に何度も攻撃していたのです!?」
自分が見た感じでは一太刀にしか見えなかったものが本当は何度もの斬撃が行われていたことに驚きを覚えている。
「あぁ。そうゆう技だからな。」
それを聞いて開幕速攻で使ったら絶対勝てるのでは?と考えるミミルだが、その考えはハヤトの次の言葉でそうでないことを確信する。
「開幕速攻で使えば必ず勝てるじゃないのか。って考えてるだろ?」
「ふぇ?!な、何でミミルが考えてることがわかったのです!?」
「今の話と、ミミルの顔を見れば大抵のやつはわかるだろ。顔に出すぎなんだよな。」
「あうぅ……」
「そんで、その疑問に対する答えなんだが……ほぼ無理だな。」
「ど、どうしてです?」
ほぼ無理と言う言葉になぜなのかを聞く。
「『星夜の瞬き』はな、速度が早いってメリットがある代わりにデメリットが存在するんだよな。
それがすごい致命傷なんだよ。」
苦虫を潰したような表情で受け答える。
「デメリット……ですか?」
「使うときにモーションが入って発動までに2秒弱かかるんだよ。それと、発動している間はその場から動くことができないって・もあるんだ。
相手が格下なら大してデメリットではないんだが……もし格上となるとな……たった1秒ですら命取りになりかねないからな。」
「そ、そうなのですか……」
「だから、あんまり誰相手にでも使えるものではないんだよなぁ……いや、隙さえ作れれば使えなくもない…のか?
今はそんなことどうでもいいか。
とりあえず戦って見せたが、次は二人でやれそうか?」
「う~ん……わかんないけど、ご主人が応援してくれるならがんばれる~!♪」
「ミミルもご主人様が応援してくれるのなら……」
「ちゃんと応援してやるし、近くで見守ってるから頑張れ。」
ぽんっと二人の頭に手をのせて軽めに頭を撫でてやる。
「えへへ♪リリア頑張る~!」
「はう~♪ミミルも頑張るのです!♪」
ここでもにぱぁ~っと元気で可愛い笑顔を向けられたハヤトは心の中で『可愛くて癒されるな……つかこれ、端から見たら危ないやつに見えなくないか……?』と、今の状況を見てそんなことを考えてしまった。
「ご主人どうしたの??」
「ご主人様……??」
黙りこんでしまっていたハヤトを心配して顔を覗き込んでいたリリアとミミルの頭をまた撫でる。
「なんでもないから気にすんな。
ほら、コブリン探しにいくぞ。」
「はーい!」
「はいです!」
ハヤトが歩きだすとそれに着いていくようにリリアとミミルが横に来るとぴったりとくっつく。
「おい、そんなくっつかなくても……まぁいいか。」
気にすることを止めてそのまま森のある方へと歩を進めていく。
森のなかを歩き2分ほどたった頃……
「お、いるな。」
樹木が生い茂る少しおくの方に先程と同じ数のコブリンがうろちょろしているのが見える。
「ミミルは大丈夫だと思うが、リリア力加減には気を付けろよ?最小限回りの自然とかに被害がないようにしてくれ。」
「う~ん、よくわかんないけど気を付ける??」
「み、ミミルはご主人様の頼みでしたら何でも成し遂げて見せます!」
小さな握りこぶしを作って構えて見せる。
「お、おう。頑張れ。」
ちょっとさい先不安かもな……等と考えて入間にもコブリン共がこちらに気づき近づいてきている。
「ほれ、早く倒さないと襲われるぞ?」
(本当はあんまり戦わせたくはないんだがな……)
それはハヤトの本心で実際戦わせることに少し躊躇していた。
それは、冒険者登録するときのリネスのした話がどうしても頭から離れず、もしエリシアやリネス、リリアミミルにそんなことが起きたらと思うと不安が離れることがなかった。
「ご主人、いってくるね~!」
「すぐに倒して戻ってくるのです!」
先程までと比べて二人からは全く恐怖が感じられない。
ハヤトが目の前で戦って見せたこと、それによりもし自分達に危機が訪れてもきっと助けてくれるだろう。と言う思いから精神的にかなり安定している。
「あ、あぁ、怪我するなよ。」
(……まぁ、何が起きたとしても俺が守ってやればいいか。もし、俺がいなくても大丈夫なようにそばで見ていられるうちに少しでも自分達だけても対処できるようになってもらわないとな。)
「よぉ~し、リリアちゃんご主人様にいいところ見せるために頑張るよ~!」
「ミミルちゃんはご主人のことだいすきだもんね~!」
「ふえぇ~!?そ、そんなことないよー!?///」
「ご主人大好きなミミルちゃんのためにも頑張るからね~♪」
「も、もぉ~、からかってないでいくよぉー!///」
「は~い♪」
リリアは顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらコブリンに向かうミミルを見てにこにこしながらそのあとについていく。
やはりと言うべきか、霊狼族と言うだけあってまだ小さい二人でもその身体能力はとてつもなく機敏で素早いものであり、あっという間にそれぞれコブリンの背後をとることに成功している。
「すぅ……いきます、『影縫い』!!」
ミミルが先に一呼吸整えてコブリンに対して攻撃を仕掛ける。
『影縫い』は、対象を影と縫い付けることで行動を封じるもので、それを喰らったコブリンはいきなり目の前の標的が消えたこと動きが封じられたことに動揺している。
「んと、確か語りかけるようにだから……『風の精霊様……コブリンを倒してください!』」
そう言葉を紡ぐ。ただそれだけのことなのだが、1つの風が発生したときを境に行動を封じられていたコブリンから少しずつ生気が薄れていき、ついには感じられなくなる。
まるで水中に酸素がなくて、呼吸がままならずじわりじわりと死んでいくように……離れたところから見ていたハヤトはそのように思えた。
「……中々惨い殺しかたするな……別にミミルにはそんな意図は無かったんだろうけどな。」
恐らくではあるが回りの被害が皆無なことと、音もなしにコブリンが死んだことから、そこの酸素を無くしたか空気を圧縮して呼吸をできなくしたかのどちらかだろうと踏んでいる。
「どちらにしろ惨いことに代わりはないか。
それに古代魔法か……中々興味深いなぁ……一先ずそれは置いといて、リリアはどう戦うか、だな。」
ミミルの方は三頭が終了したのを確認して、次はリリアの方を見る。
「そ~れぇ~!!」
大きく威勢のいい声とともに、おもいっきし棒で殴りかかっていた。そりゃもうとても豪快に。
「グギャッ!!」
だが、そんな大振りの攻撃が簡単に当たるわけもなく、コブリンに避けられてしまう。
コブリンはそのまま反撃するように手に持っている20センチほどのナイフをリリアの方へと向き降り下ろす。
「おっそいんだからぁ~!『聖なる雨』」
反撃されることを踏んでいたリリアは手に持っていた棒を離して魔術を唱える。
眩しく輝く光の雨がコブリンの頭上からこれでもかと降り注ぐ。
それが止む頃にはコブリンがいたはずの場所に姿は見られなくなっていた。
「こりゃ、もうちょい苦戦するかと思ってたんだが……こうもあっさり倒すとはな。
それでも反省点はあるからあとで話しておか……ん?」
二人の先頭も終わり、一旦休憩を挟むついでに反省会もしようと考えていたハヤトの辺り一体を大きな影が包み込む。
何かと上を見上げる。そこにはハヤトたちがいる地上から遥か上空に悠々とその大きな翼をはためかせる1つの巨体があった。
「おいおい、嘘だろ……」
それを見たハヤトはただただ唖然とするだけだった。




