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15話 鍛治屋の秘密

     転生した異世界で自由気ままに生きていく

      ~チートじゃない?才能です!~


          2章 王都動乱

         15話 鍛治屋の秘密


「まずはこの特殊な塗料でタオルに魔法陣を描く」

 そう言いガンツは塗料の入った器と筆、それとタオルを帝に差し出す。


「描く魔法陣はこれだ」

 ガンツが見せたのは魔法陣が記載されたページを開いた本だ。


「この本は?」

「これは刻印魔法と付与魔法に使う魔法陣が載ってる本だ」

「そんなのが有るのか」

「そりゃそうだろ。魔法陣が分からなきゃ付与も刻印も出来ねぇからな」

「それもそうか」

「まぁ、オリジナルの魔法陣を創り出す奴も偶に居るがな」

「魔法陣は創れるのか?」

「創ると言っても既存の物を組み合わせた物で、一から創る訳じゃねぇぞ?例えば〈攻撃力強化〉と〈防御力強化〉の魔法陣を組み替えたうえで2つの効果を発動する魔法陣にするって物だ」

「いや、それでも凄い事だろう?ただ魔法陣を足せば良いって訳じゃ無いんだろうし」

「いや、まぁ。そうなんだが・・・。当然だが効果は1つの物に比べると弱くなるぞ?」

「それはしょうがないだろ?そりゃ同様の効果のが良いに決まっているがそれは我儘だろ?刻印の経験者が言うならともかく、何も知らない素人が言うのはお門違いだ」

「・・・出会って短時間の付き合いだが、お前が変わり者だって事がよーく分かったよ」

「そうか?」

「あぁ。他の奴は「2つも付いてる癖に1つの物より効果が弱い何て役に立たねぇ」って言うからな。まぁ、稀にお前みたいに理解してる変わり者も居るがな。まぁ良い。取り敢えず作業を始めるぞ」

 そう言うとガンツは板に魔法陣を描き出した。


(それ)に載ってる通りに魔法陣を描くだけだから説明はしねぇぞ」

「分かった」

 それだけ言うとガンツは〈清潔〉の魔法陣が載ってるページを開いて黙ってしまう。帝は言われた通りタオルに魔法陣を描いて行く。


「これで良いのか?」

 帝がタオルに魔法陣を描く作業は数分程で終わった。


「初めてにしては上出来だ。なら次は板に〈鑑定〉の魔法陣を刻むぞ」

 ガンツは帝の前に魔法陣を刻む為の道具を置いた。


「魔法陣を刻む際の注意点だが、1つ目は深く掘り過ぎない事だ。深く掘り過ぎると板の耐久性が下がって長持ちしない。

 2つ目は、指先に気を付けろ。当然だが掘るには刃物を使う。本にばかり気を取られるな。まぁ、要は怪我に気を付けろって事だ。

 他はそうだな・・・。特にねぇかな。じゃあ、作業始めんぞ」

 そう言いガンツは作業台の前に行くと椅子に座る。帝が座るのを確認するとガンツは道具を手に取り作業を始めた。

 帝はガンツが用意した道具を手にすると本に記載された魔法陣を

板に彫り始める。


ゴリッ ゴリッ ゴリッ


 工房内に板を削る音だけが響く。工房内に居る者は誰一人として喋る事をしない。帝は作業に集中しているからだが、ティンクは単に2人の邪魔をしたくないので喋らず、フェン達3人は見た事の無い作業を興味深く見ているからだ。

 しかしガンツは作業をしながらも帝の様子を見ていた。


(こいつ本当に初めてやるのか?手際は良いし、彫る速度も早い。

 何より彫る魔法陣が正確だ。本当に何者なんだ?)


 ガンツが帝の作業を見ながらも考えている間に作業は進む。


「こんなものか?」

 帝が本に記載された魔法陣通りに彫り終わり一息ついた。帝が一息ついているとガンツが帝の彫った板を手に取り確認する。


「・・・初めてにしては上出来だ。いや出来過ぎなくらいだ」

 ガンツは素直に帝の彫った板の出来具合を褒める。


「そうか?」

「あぁ。売り物にしてもいい位だ」

「それは言い過ぎだろ」

「言い過ぎじゃねぇ。本職の俺が言うだから間違いねぇ!」

「そ、そうか」

 帝はガンツの気圧される。


「取り敢えず動作の確認をしておくか」

 ガンツはそう言うと板の上に先程作ったタオルを置き、板に魔力を流す。


タオル 

〈清潔〉


「ちゃんと問題無く動いてるな。タオルの方も無事に成功してるな」

 ガンツは確認するとタオルと板を帝に差し出した。


「ほらよ。両方共、成功だ」

「あぁ」

 帝はタオルと板を受け取る。


「タオルの方は効果が切れたら家に来い、同じのが売ってるからな。板の方は魔法陣に傷が付かねぇように大事に使えばいつまでも使える」

「分かった」

「これで体験は終わりだが、何か質問があるか?」

「それならあの本は何処に行けば手に入る?」

 帝は作業台の上に開かれたまま置かれた、魔法陣の記載された本を指差して言う。


「あれか?あの本なら商業ギルドに行けば買えるが。何だ買うつもりなのか?」

「あぁ。付与魔法と刻印魔法に興味が湧いた」

「そうか。ならついでに鍛治の本も買った方が良いんじゃねぇか?」

「鍛治の本?」

「そうだ。お前さんの鍛治を見てたが俺やティンク(あいつ)よりも才能が有ると思うぜ。それに楽しそうだったからな」

「そうだな、鍛治も楽しかったな。買うだけ買ってみるか」

「まぁ。分からん事が有ったら聞きに来い。暇な時なら幾らでも相手してやるからよ!」

「その時は頼む」

「あぁ!それで次に来るのは3日後だったか?」

「そうだな」

「楽しみにしてると良いぞ?親父が専用の武器を作るなんて中々ないからな。まして親父の方から言い出すなんてな」

「そうなのか?」

「知らないのかって。そう言やお前は冒険者に成り立てだったな。

 うちの親父は堅物で有名なんだ。高ランクの冒険者だろうが貴族だろうが気に入った奴にしか専用の武器は作らねぇ。ただの武器なら素材の持ち込みと金次第で作るがな」

「すまない。違いが分からないんだが・・・」

「専用の武器ってのは〈所有者固定〉が付いた物だ。武器に限らず防具や魔道具なんかもだがな」

「作る際に違いって有るのか?」

「俺には分からん。親父が言うには「勘」だと言ってたな。ティンクは他に聞いたか?」

 ガンツに声を掛けられたティンクは考えながら答えた。


「うーん。僕も父さんが勘って言ってた事以外には聞いた覚えは無いかな?」

「勘か・・・。そうなると経験によるものなのかもな」

「まぁ。親父は長年やってるからな」

「僕達はまだまだと言う事ですね」

 ティンクも分からないらしい。


「なら武器を取りに来た時に本人に詳しく聞いてみるか」

「まぁ。勘って言う気がするがな」

「ですね」

「それじゃそろそろ行くか」

 そう言うと帝は店内に戻る為、歩き出した。ガンツとティンクもフェン達の後ろから付いてくる。


 帝達が店内に戻るとカウンターに居るティルンが気付き話しかけてきた。


「やっと戻って来たね。話し相手が居ないから暇でしょうがなかったよ」

そう言い、ティルンは帝達にお茶を出してくれる。


「ありがとう。でも話し相手ならユーナ達が居るだろ?」

 帝はティルンが出したお茶に礼を言いながら答えるが、ユーナ達は見た限りカウンターの側には居ない様だ。


「嬢ちゃん達ならまだ見て回ってるよ?」

 ティルンは言いながら売り場の方を指差した。帝がティルンの指差した方を見ると、陳列棚で姿は見えないが話し声が聞こえた。


「・・・嘘だろ。いくら何でも長すぎだろ?」

「女の買い物は長いもんだよ?」

「それにしたって長すぎだろ?どれくらいの時間が掛かったか分からないが、鍛治の時間はかなり掛かってる筈だぞ?」

「何だ知らないのかい?鍛冶の作業場には特殊な結界が張られてるんだよ」

「特殊な結界?」

「そうさ。鍛治には時間が掛かるだろ?だから国が認めた鍛治屋には特別に結界が張られるんだ」

「どんな結界何だ?」

「何でも結界の中の時間が10分の1になるらしいよ」

「なっ!?」

「だからあんたらが店の奥に行ってから戻って来るまで2時間くらいしか経ってないよ」

「・・・凄いな。その結界」

「だろ?ただ国に認可して貰うのが大変でね」

「だろうな。それだけの効果のある結界なら当然だ。因みにその条件って何なんだ?」

「まずは当然だけど鍛治師の腕が良い事、具体的に言うなら最低限ミスリルの加工が出来る事、納品の期日を守ってること。

 次にこれも当然だけど店の評判が良い事、「品揃えが良い」とかだね。品揃えが良いって事は色んな武具が作れるって事だから鍛治師の腕が良いってことに繋がるしね。

 最後に金額が適正で有るかだね」

「最初の2つは分かるが最後の金額が適正って言うのは?」

「そのまんまの意味さ。頼んだ物が異様に高かったり、逆に安過ぎたりしたら変だろう?」

「安い分には良いんじゃないか?」

「あんたねぇ。本当に冒険者かい?相場よりも安いって事は素材をケチってるって事になるんだよ?」

「それもそうだが。安いなりに理由があったりするだろ?出来が少し悪いとか、弟子の作った物だから安いとか?」

「あのねぇ。いいかい?そもそも出来の悪い物は売ったりしないし、弟子の作った物だとしても売れる出来なら相場の価格で売るんだよ!」

「そう言うものか?」

「そうだよ!はぁー。あんたどんな所に住んでたんだい?」

「俺の居た所では普通だったんだがな?」

「あんたの言うのが食材とかなら分かるけどね。鍛治師がそれをやったら直ぐに店が潰れるよ!」

「そ、そうか」

 帝の言う事は帝の居た世界、つまり地球では日常茶飯事だ。その為、帝はついついその感覚のまま言ってしまったのだ。


「まぁ。話を戻すけど鍛治師が国に認可されるにはそれだけ大変って事さ」

「太っ腹な国だな」

「何言ってんだい?この国だけがやってる訳じゃないよ?」

「そうなのか!?」

「どんだけ田舎に居たんだい・・・。まぁ、この国が太っ腹なのは認めるけどね。何せ認可される条件は国によって違うから。他の国だと絶対服従する事が条件ってとこも有るくらいだしね」

「それは実質、奴隷じゃないのか?」

「まぁ、お国事情って訳さね」

「教えて貰って良い事なのか?」

「周知の事実だよ。商業ギルドも知ってる事だし、余程の問題が無い限りは他国が口出し出来る事じゃ無いからね」

「成程。鍛治屋の秘密って訳じゃ無いのか」

「そんな大層なものじゃ無いよ!」

 そう言いティルンは盛大に笑った。


「どうかしましたか?」

 どうやらティルンの笑い声が聞こえた様で、陳列棚な影からユーナが顔を出し、こちらを見ていた。


「ミカドさん。どうでした?」

「お話は終わりましたか?」

「あぁ、色々と聞けたよ」

 ユーナとシオンが帝の下に来て尋ねる。2人が言っているのは刻印魔法と付与魔法の事だ。2人に言われた帝がティンクとガンツに刻印と付与の詳しい話を聞きに行ったのだ。


「それで2人は何を選んで居たんだ?」

「ローブの他には杖などを見ていました」

「私は杖と弓を見ていました」

「決まったのか?」

「いえ、見ていただけですので・・・」

「買うのはちょっと・・・」

 ユーナとシオンは見ていただけの様で買う気は無いらしい。


「まぁ、無理に買う事は無いが必要な時に後悔しない様にな?かといって無駄な物ばかり買わない様にな。どっかの3人みたいに」

 そう言い帝はフェン、ヨルン、ペイルを見た。言われた3人はそっぽを向き素知らぬ顔だ。

 その様子を見ていたティルンが声を掛ける。


「そう言いなさんな。そっちの3人は鍛治屋に来んの初めて何だろ?見た事の無い武器や防具が面白くて堪らないのさ。まして女なんだから必要な物が多いのさ」

「いや、日用品なら分かるが武器や防具は別だろ!」

「アッハッハッハッ!そこは男の器量ってやつさ!」

「むぅ〜。納得がいかん」

「それでこの後はどうするんだい?武具の他にも何か買うなら用意するよ?」

「なら〈清潔〉が刻印されてるタオルを10枚ほど頼む」

「「「「!?」」」」

「そんなに買ってくれるのかい?」

「あぁ、便利だからな」

「そうかい。ちょっと待ってな、持ってくるから」

 そう言いティルンはカウンターから立ち上がると陳列棚に向かって行った。


「えっと、ミカドさん?」

「何だ?」

「宜しいのですか?」

「何がだ?」

「刻印が施された物ですと安くても大銅貨1枚しますよ?それを10枚となると銀貨1枚ですよ!」

「そうか。なら、ガンツ」

 帝はユーナに言われた後、ガンツに声を掛ける。


「何だ?」

「体験で作った様な板は売ってるのか?」

「有るには有るが・・・。まさか買うつもりか?」

「あぁ、そのつもりだ」

「・・・板1枚で銀貨1枚だ」

「なら5枚頼む」

「「「なっ!?」」」

「それくらい有れば皆んなに持たせる事も出来るだろ」

「・・・用意する」

 そう言いガンツは店の奥に行った。


「あ、あのミカドさん?」

「何だ?」

「板と言うのは・・・」

「あー。それはな・・・」

 そう言い帝は〈倉庫♾️〉から体験で作った〈鑑定〉が付与された板を取り出して皆んなに説明する。


「確かに便利だな」

「そうだね。このサイズの板なら持ち歩くのにも邪魔にならないし」

「便利には違いないですが・・・」

「この板1枚で銀貨1枚・・・」

「ミカドはこれを私たちに持たせるつもりなの?」

「そうだが?」

「けど1枚余るよね?私、ユーナ、アイナ、シオン。後1枚は?」

「フェン達に持たせるつもりだ」

「儂等か?」

「フェン達も〈鑑定〉は所持して無いだろ?俺は有るから別に要らないが、予備が有る分には困らないからな」

「成程。了解した」

「待ってください!そんな高価な物を私持ち歩きたく無いのですが!」

「私もです・・・」

 ユーナとシオンは板の値段を聞いて持ち歩きたく無いらしい。


「なら別に持ち歩かなくても良いぞ?」

「良いのですか?」

「あぁ。無理矢理持たせる気は無いからな。有れば便利だと思っただけだからな」

「よ、良かった」

「良かったですね」

 ユーナとシオンは安心したのか胸に手を当て、ホッと一息吐いた。帝達が話しているとティルンとガンツが戻って来た。



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