14話 付与魔法
転生した異世界で自由気ままに生きていく
~チートじゃない?才能です!~
2章 王都動乱
14話 付与魔法
ローンは盛大に笑った後、真剣な顔をして帝に声を掛ける。
「それと話は変わるが。ミカドは両手で使う武器なら何が好きだ?」
「両手持ちか?それなら・・・」
「違う。左右別に持つなら、と言う意味だ」
「それなら刀だな」
「刀か・・・時間が掛かるな。それなら時間を貰うぞ?」
「俺は構わないが?何をするつもりだ?」
「お前専用の武器を作ってやる。だから3日くれ、鉄製で悪いがそこは勘弁してくれ。勿論儂が勝手にやる事だから代金は要らねぇ」
「別に構わないが良いのか?」
「あぁ、だがさっきも言ったが時間が掛かる。また3日後に来てくれるか?それまでには完成させとくからよ」
「そう言う事なら構わないが?」
「そうか。なら隣で付与と刻印の体験をして行け。儂は今から作業に掛かる」
「分かった。じゃあ3日後に取りに来る」
「あ、後長さはどうする?一般的な長さで良いのか?」
「それで問題無い」
「分かった。同じ長さの物を2本作っておく」
「あぁ、頼んだ」
そう言い帝達は付与や刻印を行う隣の工房へ向かう。
工房を移動するとティンクが付与魔法を行う為の作業台の前に立ち、進行を行う。
「刻印魔法は準備が有るのでまずは、付与魔法から始めましょうか。その間に兄さんは刻印魔法の準備をお願いします」
「分かった」
ガンツはそれだけ言うと刻印魔法を行う準備をしに行った。
「全く兄さんは愛想が無いんだから。すいませんミカドさん」
「別に気にしなくて良い。それより付与魔法は確か魔法陣を使って行うと言っていたが・・・。この魔法陣なのか?」
そう言い帝はテーブルの上にある魔法陣に視線を向けた。
「その通りです。中央の大きな魔法陣に付与を掛けたい武具を置きます。今回は体験なので付与する物はこちらで準備したナイフを使うのが通常ですが、ミカドさんが宜しければ先程お造りになったナイフを使いますか?」
ティンクの手にはナイフが握られている。大きさは帝がローンとともに作ったナイフと同じくらいだ。
「良いのか?」
「別に問題は無いですよ。体験する方の中には、稀に自分で用意した物に付与したいと言う方もいらっしゃるので。まぁ、体験したいと言う方自体が少ないですが。それに付与する魔法も〈補助魔法〉の〈武器強化〉ですし。
なので折角ならご自分で作られた物のが宜しいかと思いまして」
「なら御言葉に甘えようか。この真ん中の魔法陣に置けば良かったか?」
「はい。そちらに置いて下さい」
「この後はどうすれば良い?この小さい魔法陣に何かするのか?」
「付与魔法の体験と言っても基本的にはミカドさんは何もしないのですが、そちらの魔法陣に触れて頂きます。ミカドさんがやる事と言ったら魔力を流す事ですかね」
「魔力を流すだけで良いのか?」
「はい。取り敢えずは魔力を流すだけで大丈夫です」
「分かった。どれくらいの魔力を流せば良い?」
「少なくても僕の方で付与出来るので適当で大丈夫ですよ。多かったとしても問題無いので特に気にしなくても良いですよ」
「了解した」
ティンクと帝の会話が終わるとティンクが反対側の小さな魔法陣の前に行き手を置く。
「それでは付与を始めますね。僕側の魔法陣が光り出したら魔力を流して下さい」
「分かった」
帝が返事したのを確認するとティンクは手元の魔法陣に集中し始めた。帝がティンクの様子を見ていると、ティンク側の魔法陣が光り出したので魔力を流し込んだ・・・。
この時ティンクは失態をしていた。ティンクは帝が魔力を流す意味を説明しなかったが為に、帝は自分なりに適当な量の魔力を流してしまったのだ。
付与魔法において、付与を行う際の他者が行う魔力の供給の意味は付与を掛ける者の補助に他ならない。その為にティンクは帝の魔力が無くとも何の問題も無く、自身が使える〈補助魔法〉の〈武器強化〉を付与出来る。なので帝に十分な説明をしなかったのだが、魔力供給には他の意味もあるのだ。
それは付与を掛ける物の強化と付与する魔法の強化だ。ティンク自身はこの事を当然知っている。だがティンクは今までに付与魔法の体験で、魔力供給を受けても特に変化が無かったので気にしていなかった。その為、帝に魔力供給の意味を伝えなかったのだ。この場にローンが居れば、フェン達と帝の模擬戦を見ていた為に事細かに説明していたがローンは鍛治工房に残ってしまった。故に問題が発生するのは必然であった。
ティンクはいつもの付与魔法の体験と同じつもりでやっていたが、事の異常性に気が付いた。いつもなら魔力供給をしてもらっても魔法陣に変化は無いが、今回は魔法陣に変化が有ったのだ。
いつもなら魔力供給をしていても魔法陣が光り出したら、数秒の後に光が収まり付与完了となる。ところが今回は魔法陣が光り出したと思ったら、収まるどころか強く光り輝き出した。
(あ、あれ?な、何だかいつもの付与と違うけど?こ、これ大丈夫かな?)
ティンクが内心焦っているが、帝はこれが普通だと思っているので特に気にした素振りもない。
ティンクが焦っている間に光りは収まり始め、徐々に弱くなって行き消えた。ティンクは急いでナイフを手に持つと〈鑑定〉を始める。ティンクは付与魔法が失敗したと思ったのだ。だが結果は失敗では無かったが問題となった。
「な、何これ!?」
ティンクが〈鑑定〉をすると驚く事になっていた。
「・・・失敗か?」
帝はティンクが驚いた事により付与魔法が失敗したと思い不安そうに尋ねた。だがティンクから返って来たのは別の答えだった。
「い、いえ。付与魔法自体は成功なのですが、ナイフがおかしな事になっていて・・・」
そう言いティンクはナイフを帝に差し出す。ティンクがナイフを差し出して来たので帝はティンクの手元にあるナイフを見る。帝はナイフの見た目がおかしい事に気が付いた。付与する前はナイフは銀色に輝いていた筈だ。鉄を材料にしたのだから当然なのだが、手元にあるナイフは黒く輝いていた。
「ん?黒?確か銀色だったよな?」
「は、はい。間違いなく銀色でした」
「何で黒くなってるんだ?」
「お、恐らくですが、ミカドさんの魔力が想定以上に多かったのでナイフが変質したんだと思われます」
「良くある事なのか?」
「とんでもない!付与魔法を掛けた物が変質する何て聞いた事も見た事も無いですよ!」
「何が原因なんだ?」
「恐らくですがミカドさんの供給した魔力量だと思います」
「流した魔力量が多すぎたと言う事か?だが多い分には問題無いと言っていただろ?」
「その筈なんですが・・・。実際に今まで供給される魔力が多くても特に変化が無かったのですが・・・。
何故今回はこの様に付与した物に変化が訪れたのか僕にも分からなくて・・・。〈鑑定〉の結果もおかしいですし」
「〈鑑定〉の結果?」
「はい。〈鑑定〉の結果では黒鉄のナイフとなっていまして」
「黒鉄?」
帝は気になったのでナイフを対象に〈魔眼〉を発動する。
黒鉄のナイフ
〈所有者固定〉〈武器強化〉
付与魔法の際に供給された魔力量により、鉄から黒鉄へと変質したナイフ。使用の際に流した魔力量によって〈武器強化〉の効果が上昇する。
「・・・」
帝は〈魔眼〉によって見た結果が信じられなかった。しかしティンクの〈鑑定〉では武器の説明部分が見れない為、別の部分で驚いていた。
「まさか〈武器強化〉を付与したのに〈所有者固定〉まで付く何ておかしいですよ!」
そうティンクは武器の説明ではなく、武器に何故だか付与されてしまっている〈所有者固定〉の部分に驚いているのだ。
(ティンクにはこの武器の説明部分が見えていないのか?)
帝としては〈所有者固定〉が何故だか付いてしまっている事よりも、説明部分にある「〈武器強化〉の効果が上昇する」の方が驚きなのだ。この説明の意味はそのままの意味なのだろうが、そうなると今度は「流した魔力量によって」の部分に問題が発生する。つまりこの武器は魔力を流せば流す程に能力が上がると言う事だ。
この世界での常人がどのくらいの強さか分からない帝だが、それでもこの武器の異常性は理解出来た。何せ魔力量によっては世界最強の武器になりかねないからだ。
「・・・これはどうすれば良いんだ?」
「ど、どうと言われても困りますが・・・。と、取り敢えずは他の人に知られる前に〈所有者固定〉をしてしまいましょう!そうすれば万が一、盗まれたりしても使う事が出来なくなりますから!」
「〈所有者固定〉はどうやってやるんだ?」
「〈所有者固定〉は特に難しくは無いです。〈所有者固定〉が付いている物に魔力を流す事で、魔力を流した者が所有者として固定するだけです」
ティンクの説明を聞いた帝は、取り敢えず言われた通りナイフに魔力を流してみる。するとナイフは一瞬だけ光り、元に戻った。
見た目には変化が無いので帝は〈魔眼〉を発動した。
黒鉄のナイフ 所有者 皇王 帝
〈所有者固定〉〈武器強化〉
〈所有者固定〉は無事出来た様で、ナイフの名の横に所有者の名前である帝の名前が記載されていた。ティンクも〈鑑定〉で確認した様で、「成功した様ですね」と声を掛けて来た。
「〈所有者固定〉は出来たみたいだ。後の問題は何故材質が変化したかだが・・・」
「それは僕じゃ分からないので、父さんに聞いてみないと分からないのですが・・・。父さんは鍛治仕事の合間に話を掛けられるのを嫌がるので、武器を取りに来た時に聞いてもらうしか無いですね」
「うん?いや、待て!ローンは3日後と言っていたぞ!?まさかその間ずっと工房に篭りきりで作業する気なのか!?」
「そうですね。父さんは鍛治の合間に必要最低限の飲食しかせず、休憩も取らずに作業を続けます。母さんも何度も注意したのですが、父さん曰く「集中が切れると作品の出来が悪くなる」との事で止める気は微塵も無いみたいです。
まぁ、僕も兄さんも父さんに似て作業に集中すると周りが見えなくなるので、強くは言えないんです」
そう言いながらティンクは苦笑をした。
「まぁ、俺がどうこう言える立場じゃないか。工房のを見ていたから分かるだろうが俺も同じで、集中すると周りが見えなくなるからな」
そう言い帝も苦笑する。
「確かに先程の様子からすると、ミカドさんも僕ら親子と同じ様ですね!」
ティンクがそう言うと帝とティンクは笑い合った。2人の様子をガンツはジト目で見ながら声を掛ける。
「・・・親しくなるのは悪い事じゃねぇが。側から見てると、お前ら気持ち悪ぃぞ?」
「そうかな?」
「そうか?」
「・・・はぁ。まぁ、いい。刻印魔法の準備が出来たぞ」
ガンツはそう言い帝を呼んだ。
「さっきの鍛治を見た限りだが、お前さんは人に教わる時にこっちがいちいち説明するよりも実際に見せた方が飲み込みが速いタイプだろ?」
「どうなんだろな。自分じゃ分からん」
「わかんねぇって事はそう言う事だ。実際、人にあれこれ説明された事は無いんじゃねぇのか?」
「・・・言われてみるとそうかも知れないな」
「だろ?なら俺からもあーやれ、こーやれとは言わねぇ。分からねぇ事があったらその都度聞いて来い」
そう言うとガンツは刻印魔法の作業を始める。
「取り敢えずは先に描く方をやる。刻印を描くのはこのタオルだ。
描く刻印は〈清潔〉だ。〈清潔〉の効果は〈清潔〉が付いてる物は汚れ難いと言った効果だ」
「便利だな」
「まぁ〈清潔〉を付けるなら使い勝手が良いのはタオルだな。一応言っとくが汚れ難いだけだからな?汚れるには汚れるぞ」
「あぁ。分かってる」
「なら良い。で次が刻む方だが、こっちは幾つかあってその中から選んで貰う。因みに刻むのは全部この板だ」
そう言ってガンツは板を出した。板は四方10cm程の物で至って普通の木の板だ。
「この板は何か特別な物なのか?」
「ただの木の板だ。刻めれば何だって大丈夫だ。説明に戻るが刻む候補は3つある。
1つ目は〈体力回復〉これはこの木の板に座る、と言うか乗ってさえいればどんな態勢でも良いんだが、徐々に体力が回復する物だ
2つ目は〈魔力回復〉これも〈体力回復〉のと同じで乗ってさえいれば魔力が徐々に回復する
3つ目は他の2つとは用途が違うが〈鑑定〉だ。これは乗せた物の鑑定を行う事が出来る。まぁ、大した情報は見れないがな」
「〈体力回復〉は分かるが〈魔力回復〉って何だ?〈精神回復〉とは違うのか?」
「あぁ、それか?名称が違うが効果に違いはねぇよ。武器や防具に付いた恩恵の中には偶にあるんだよ。名称が違うが効果は同じって物がな」
「成程な」
(〈精神回復〉も〈魔力回復〉も効果は同じ。つまりはどちらの効果も「MPの自動回復」と言う事か・・・)
帝が考え込んでいると・・・。
「で。どれにするか決まったか?」
「あ、あぁ。なら〈鑑定〉で頼む」
「・・・やっぱりお前は変わってるな」
「ん?どう言う事だ?」
「体験する奴はみんな〈体力回復〉か〈魔力回復〉を選ぶんだよ。
冒険者だと体験に金を出すなら便利な方が良いしな。貴族なんかは〈鑑定〉は金を払えば良いから、態々〈鑑定〉を選ぶ奴はいねぇな」
「そうなのか?まぁ、俺は〈回復魔法〉が使えるから〈鑑定〉の方が便利に感じただけ何だがな」
「・・・〈回復魔法〉使えんのかよ。いや、もう良い。取り敢えず作業を始めるぞ」




