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12話 付与魔法と刻印魔法

     転生した異世界で自由気ままに生きていく

      ~チートじゃない?才能です!~


          2章 王都動乱

        12話 付与魔法と刻印魔法


 模擬戦を終えた帝達はフェン、ヨルン、ペイルの3人の装備を整える為、ローンの店に戻った。ローンはカウンターに居る。奥さんのティルンに片手を上げて「頼むぞ」とだけ言うと帝達を防具売り場に案内する。

 ローンの店の防具売り場は武器売り場にも劣らず多種多様の防具が並んでいた。軽装備、重装備と並び、それらが魔獣の素材を材料にした装備、鉱石を素材にした装備と分かれている。

 山の様な品揃えを目にした帝は目を輝かせた、まるで子供が欲しい玩具を目にしたかの様に。


「これは凄いな。フェン達3人が興奮したのが理解出来る。性能云々もそうだが目を惹く物がある」

「そうか!お世辞でもそう言ってもらえると作り手としては嬉しいな!」

 帝の言葉をお世辞と受け取ったローンはそれでも嬉しいと言い照れている。


「お世辞じゃ無い。丹精込めたのが良く分かる。かく言う俺も目移りしてしょうがない、フェン達の様に装備しない物まで手を出したくなる」

「そう言ってくれるのは嬉しいが防具は装備してこそだぞ?」

「あぁ。分かってる。防具・・・いや。武器もだが使ってこそだからな。使わないで取っておくならせめて大事に飾ってやりたい」

 そう言い帝は気分を変える為に下を向き一息付く。


「良し。話を戻すか!」

「そうか。なら3人の防具はどうするんだ?」

「そうだな。3人共、接近戦も出来る、魔法も使える、ならいっその事、軽装備だけで良い気がするが。素材は鉱石よりも魔獣の方が良いか?」

「軽装備かそれが良いだろうな。そうなるとオススメとしては胴体を鉱石系、手足を魔獣素材が良いが。最終的には装備者が動きやすい物が一番だな」

「だよな。取り敢えず3人の要望を聴きながら判断するか」

 そう言い帝はフェン、ヨルン、ペイルを呼び、どういった装備が良いのかを聴く。


「そうだな。儂はコレが良いぞ!」

 そう言いフェンが選んだ物は全身鉄製の騎士等が着ける甲冑。

「「・・・」」

「自分はコレかなぁ〜!」

 そう言いヨルンが選んだ物は魔術師や僧侶が着る様なローブ。

「「・・・」」

「私はコレ!」

 そう言いペイルが選んだ物は踊り子が着る様な大事な部分が隠れてるだけの衣装。

「「・・・」」

 3人が選んだ装備品は全くと言っていい程に、戦う事を度外視した物だった。流石の帝とローンも無言になってしまった。


「あー。一応聞くが、何でそれを選んだんだ?」

 帝は分かってはいるが一応フェン達に何故選んだのか聞いてみたら。

「カッコイイではないか!」

「可愛いから〜!」

「可愛いでしょ!」

「・・・」

 案の定の答えが返ってきた為に帝は頭が痛くなった。


「却下だ!」

「何故だ!?」

「何でぇ〜!?」

「何で!?」

「あのなー。お前らは近接戦闘するんだろうが!それを考えた上で選んだのか?違うだろ!?」

「うっ」

「え〜とぉ〜」

「それはっ」

「フェンに至っては動きづらいだろうが!?そもそも俺とローンの話を聞いてたか!?軽装備だって言ったろ!全くお前らは」

 帝はそう言うとローンに「済まないが適当に見繕ってくれ」と言い歩き出した。

「ん?ミカド何処へ行く?」

「他の4人の様子を見にな」

 帝が言う4人とはユーナ、アイナ、ティナ、シオンの事だ。4人はローンの店に戻ると「自分達のを見て来ますね」と言い、帝達とは別行動をとっている。


「流石に大丈夫だとは思うが・・・」

 そう言い帝の顔は少し怖ばっている。

「あぁ。さっきのがあるからなぁ」

 そう言うローンは苦笑しながらフェン達を見る。

「大丈夫だろ?4人は冒険者に成り立てって訳じゃ無いんだろ?」

「シオンは分からないが他の3人は違うな」

「なら尚の事大丈夫だろ。心配するな!」

 ガッハッハッ!と笑いながらローンは帝の背を叩いた。叩かれた帝は笑いながら「一応な」そう言うと片手を上げユーナ達の様子を見るべく歩き出した。


 帝が陳列棚を曲がるとその先でユーナとシオンが両手にローブを持ち相談し合っていた。

「こちらはどうでしょうか?」

「それならこちらの方が良いのでは?」

「確かにそうですね。ですが値段が・・・」

「あぁ。確かにコレはちょっと高いですね・・・」

「「う〜ん・・・」」

 どうやら2人はフェン達とは違い、ちゃんと考えている様だ。帝の心配は杞憂に終わりそうだ。

 帝は2人に近づき声を掛ける。

「ユーナ。シオン。何を悩んでるんだ?」

「「ミカドさん!」」

 帝に気付いた2人はローブを持ったまま帝に返事をし、手に持ったローブを帝に見せた。

「こちらのローブなのですがどれが良いと思います?」

「私はこちらの方が良いと思うのですが・・・」

 そう言い2人はローブを帝に見せた。ユーナの持っているのはどちらも白を基調としたローブで袖と裾の所に青色の線が入っいる。

 シオンの持っているローブはユーナの持っている物と比べると同じに見える。敢えて違いを言うならシオンの持っている物は袖と裾の所に文字の様な物が刻まれている。帝は見比べるが違いが分からないので、素直に聞くことにした。

「俺には一緒に見えるがどう違うんだ?」

 帝の返答にユーナが答える。

「私の持っている方は付与魔法が掛けられているローブです。対してシオンさんが持っている方は刻印魔法が刻まれたローブです。違いとしては性能の差ですね」

 そう言いユーナは両手に持つローブを帝に見せ、右手に持つ方から説明する。

「私の持っているコチラは〈魔力強化〉が掛けられた物。そしてコチラは〈防御力強化〉が掛けられた物です」

 ユーナが自身の持つローブを説明するとシオンが自身の持つローブの説明を始める。

「コチラはユーナさんが先程言った、刻印魔法が刻まれたローブで性能はコチラから〈魔力強化〉、〈防御力強化〉となっています。

 性能と言うか機能としてはどちらも〈魔力強化〉、〈防御力強化〉になります」

 帝は2人の説明を聞いても良く分からない。違いとして分かったのは付与魔法か刻印魔法かの違いだけだ。


「そうなのか?それでその付与魔法と刻印魔法どっちの方が良いんだ?」

「「それは勿論、刻印魔法ですよ!」」

 帝の問いにユーナとシオンは声を大に揃って答えた。帝は2人の返答に驚いた表情をする。

「「すみません。声を荒げてしまい!」」

 2人は声を荒げた事を謝罪し、俯いてしまう。

「気にしなくて良いさ。それよりも付与魔法と刻印魔法はそんなに差が出るものなのか?」

「知らないのですか?」

「あぁ。全く分からない」

「そうですか。説明したいのですが、専門家の方が詳しいですし時間が掛かるので・・・」

「そうなのか?ならローンに聞いてくるさ。2人はそのまま選んでてくれ」

 そう言い帝はローンの下に戻って行く。


 帝がローンの下に戻るとフェン達3人とローンはカウンターの横にある椅子に座っていた。4人共何かを飲んでいるがローンは疲れ切った顔で座っている。

「疲れ切った顔をしているがどうした?」

 帝がローンに声を掛けるとローンは溜息を吐きながら答えた。

「どうしたもこうしたも無い。この3人に装備の説明をしながら選んでも「格好良く無い」だの「可愛く無い」だのと言って聞きゃしない!挙句に「性能が悪い」だの「効果が弱い」だのと文句しか言わん!」

「あ〜。迷惑かけたみたいだな。すまなかった」

 帝はローンの言葉にそれしか返す事が出来なかった。

「はぁ。それで?お前さんは何しに戻って来たんだ?」

「いやな。ユーナとシオンがローブを選んでいたんだが、付与魔法と刻印魔法で悩んでいてな。どう違うのか聞いたら専門家に聞いた方が良いと言われてな」

「そう言う事か。ならちょっと待て」

 そう言うとローンは椅子から立ち上がり店の奥に行くと、声を出す。

「おーい。2人共ちょっと来い!」

 ローンが誰かを呼んでいる。少し経つと歩く音が聞こえて来た。

「何だ親父?」

「どうしたの父さん?」

「この客が付与魔法と刻印魔法の違いを聞きたいんだとよ」

 店の奥から来たのは2人のドワーフだった。1人は額に拡大鏡の様な物を付けており、腰には色々な道具が掛けられている。

 もう1人は眼鏡を掛けており、手には革製の手袋をしている。

「こいつらは儂の息子だ。こっちが上のガンツでそっちが下のティンクだ」

 ローンが呼んだのは2人の息子だった。拡大鏡を掛けたのがガンツで眼鏡の方がティンクとの事だ。


「それでアンタが付与魔法と刻印魔法の違いを聞きたいのか?見た感じ冒険者っぽいがそんな事も知らないのか?」

「兄さんお客様に失礼だよ!」

 ガンツはどうやら機嫌が良く無いのか、元からこういう態度なのかガラが悪い印象だ。

「気にしてないさ。それに冒険者の癖に知らないって言うのも事実だしな。と言うよりも冒険者に成り立てだから、知ってる事の方が少ないと思ってるしな」

「成り立て?まぁ良い。それで付与魔法と刻印魔法の違いが知りたいだったか?」

「あぁ」

「教えるのは構わないが長くなるぞ?」

「問題無い」

「じゃあ。まず刻印魔法ってのは武器や防具に特殊な魔法陣、刻印を刻んで発動させる魔法の事だ。刻み方には2つの方法がある。

 1つ目は魔獣から取れる魔石を砕いて、特殊な液体に付ける事で出来る塗料で魔法陣を描く事。

 2つ目は武器や防具を削る事で直接魔法陣を刻む、彫る事だ。魔法陣自体は同じ物を使うが彫る方が圧倒的に難しい。効果は彫る方が高い。刻印魔法はこのくらいだな。付与魔法の事はティンクの方が専門だからそっちに聞け」

 そう言いガンツは空いている椅子に腰掛けた。

「まったく兄さんは・・・。え〜と、それじゃ付与魔法について説明しますね。付与魔法はその名の通り武器や防具に魔法を予め付与する事で、魔法を発動させる事です。付与する方法は刻印魔法と同じで2つあります。

 1つ目は僕の様な付与術師が直接付与する方法。

 2つ目は付与術師を仲介して他者が魔法を付与する事です。先に兄さんが言いましたがどちらも武器や防具に行う魔法です。ここまでで質問はございますか?」

「じゃあ「武器や防具に行う魔法」と言ったが魔道具とは違うのか?」

「良い質問です!結論を言うと魔道具とは別物です。専門では無いので詳細は説明出来ませんが、魔道具とは作る工程で魔石を道具に埋め込み、魔石を動力として動く物の事を言います。

 魔石を動力として作動すると考えるなら刻印魔法は似た物と言えますが」

「どう言う事だ?」

 帝の質問にガンツが答える。

「刻印魔法の刻み方の1つは魔石を使うって言ったろ?刻印魔法は刻んだ魔法陣に魔力を流す事で発動するんだよ。だから刻印魔法と魔道具は似た物なのさ」

「成程な。だがそれなら同じ扱いで良いんじゃないのか?」

「まぁ。それだけ聞いたらそう思うわな。だが刻印魔法と魔道具には決定的な違いが有る」

「決定的な違い?」

「あぁ。魔道具も刻印魔法も魔石を消耗するんだ。魔道具は魔石を交換するだけで再使用が可能だが、刻印魔法は交換が出来ない。つまり刻印魔法は効果が切れたら只の武器や防具になるって訳だ」

「再度描く事が出来ないと言う事か?」

「そうだ。別の効果の魔法陣を描く事は出来るが同じ魔法陣を描く事は出来ない。同じ物だと魔法陣同士が干渉して発動出来ないんだ。それに別の魔法陣を描くとしても効果によって描ける範囲が変わる、だから刻印の効果が切れたからと言って別の刻印を入れる奴は居ないな」

「それだったら直接刻んだ方が良いと言うことか?」

「そうとも言えねえな。確かに直接刻んだ方が効果が切れる事は無いが、代わりに刻める物が限られる」

「刻める物?」

「刻印魔法と付与魔法は2つの方法があると言ったが、それぞれが同じ魔法陣を使うんだ。例えば刻印魔法で〈防御力強化〉を刻む場合、描くにしても彫るにしても同じ魔法陣だ。付与魔法だと魔法陣自体は変わるが自身で付与するにしても、他者が付与するにしても同じ魔法陣を使う。つまり魔法の効果も魔法陣の種類も一緒と言う事だ」

「つまり刻印魔法も付与魔法も後付けする事、自体は出来なくは無いが物が限られると言う事だな?」

「正解だ。だから刻印魔法は描く方が良いのか、彫る方が良いのかは一概には言えねえのさ」

「付与魔法は自身で付与と他者が付与と言ったがどう違うんだ?」

「それは単純に魔法の差ですよ。付与魔法は魔法を付与する為の魔法です。僕で言うなら僕が使える魔法は〈補助魔法〉だけです。つまり僕自身が付与する事が出来るのは僕が使える〈補助魔法〉の中だけです。ですが僕を仲介して他者が魔法を付与する場合、例えば父さんが付与する場合だと父さんは〈火魔法〉が使えるので、父さんが発動出来る範囲なら〈火魔法〉を付与出来ます。まぁ、それでも付与出来る魔法の種類は僕の腕次第になりますが」

「説明を聞いた感じだと、どちらにも短所と長所が有ると言うことか。自身で行うなら手間暇の掛からない付与魔法と言う印象だな」

「その考えで合ってるな、自身で行うなら付与魔法の方が金が掛からない。まぁ、魔法が使えるっていう前提があるがな」

「因みに付与術師も刻印術師も珍しい職業ですが、経験すれば誰でもなれる職業ですよ」

「そうなのか?」

「えぇ。冒険者がなるのはかなり珍しいですが、居ないわけでは無いですし。ただ先程申した通り、魔法が使えるかお金が有る方がなりますが。興味がおありなら体験しますか?体験するだけならうちの店でも出来ますよ?お高いですが」

「確かに興味あるな。因みにいくら位だ?」

「付与の体験が金貨2枚、刻印の体験が金貨5枚になりますが」

「それくらいなら試すのも良いか。なら両方とも頼む」

 そう言い帝は金貨7枚を差し出した。

「ありがとうございます。それではコチラにどうぞ」

 そう言いティンクは店の奥に帝を案内する。

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