10話 模擬戦。決着
転生した異世界で自由気ままに生きていく
~チートじゃない?才能です!~
2章 王都動乱
10話 模擬戦。決着
帝はフェンとペイル目掛け蹴りを放つ。フェンとペイルは首を傾げる事で回避を試みるが、ヨルンが尻尾を引いた為に帝の蹴りが届くことは無かったが、代わりにフェンとペイルは無駄な動きを行なってしまった。
ヨルンが右手を離さないのを良い事に帝は右腕を動かし、体勢を変えるとフェンの胴体へ再び蹴りを放った。
「ガハッ!?」
フェンは帝の蹴りを受け訓練場の端まで吹き飛んだ。
「「フェン!?」」
ペイルとヨルンがフェンを心配して呼ぶと、2人の耳に帝の声が入って来た。
「戦闘中によそ見か?」
「なっ!ガッ!?」
「くっ!」
帝はフェンを蹴り飛ばすと再び体勢を変え、2人の頭目掛け踵落としを放った。ヨルンは反応すら出来ずに直撃を受けた。この時ヨルンは帝の右手に巻き付けた尻尾の力を緩めてしまった、それを機に帝はヨルンの拘束から逃れていた。ペイルは体を右にずらす事で、頭への直撃は避けたが左肩に受けてしまう。
帝から思わぬ攻撃を受けたペイルは体勢を崩しながらも後方へ跳ぶ事で帝から距離を取り体勢を整える。同じ様に帝も距離を取る為後方へと跳んだ。
「くっ。油断した!」
ペイルは攻撃を受けた左肩を摩りながらもフェン、ヨルン、帝の3人の様子を伺う。
フェンは既に立ち上がり両手で大剣を持ち直し構えている。ヨルンは未だに起き上がらない。この時ヨルンは頭に直撃を受けた為に軽い脳震盪を起こし気絶していた。
(フェンは大丈夫そう。ヨルンは・・・気絶してる。どうする?時間はおそらく後10分くらい。
それまでにご主人に一撃入れるか、木剣を2本破壊しないと負けになる)
ペイルがどうするか考えているとフェンが攻撃に出た。
「おぉぉぉ!」
フェンは今まで以上の雄叫びを上げると〈超加速〉を発動し、帝に接近しながら〈砲哮〉を連続で発動する。
「な!?〈砲哮〉って連続で発動出来るのか!?」
帝はフェンの〈砲哮〉の連続発動に驚愕する。帝は恩恵の効果は分かっても、細かい使い方は分かっていないのだ。〈砲哮〉は実際には性質上、連続発動は出来ない。帝が知っている〈砲哮〉の効果は「使用者の咆哮を空気の砲弾として放つ。威力は声量により増減する」だ。
その為、帝は「〈砲哮〉は大声を出して攻撃するだけ」の恩恵と認識していた。だが実際の〈砲哮〉は発した咆哮の威力を分散して放つ事が出来るのだ。簡単に言うと10の力を10として1回だけ放つか、1として10回に分けて放つかだ。
そして今までフェンは〈砲哮〉を単発で放っていた。それが帝に誤解させていたのだ。
(〈砲哮〉の連続発動!?しかも1発1発の威力は今まで通りだと!?この威力と数は木剣では捌き切れない!なら!)
帝は反撃に出ようとフェンの放った〈砲哮〉を躱すべく体勢を低くし、駆け出そうとするが・・・。
「させないよぉ〜!」
「なっ!?」
気絶から復活していたヨルンが帝の胴体に尻尾を巻き付け動きを阻害する。
「ヨルン、でかした!」
「ナイス!今の内に攻める!」
ヨルンが帝の動きを阻害した事で恐らく最後の好機と感じた、フェン達は一気に攻め立てる。ペイルは魔刃を飛ばしながら大鎌を構え帝の右側から、フェンは両手の大剣を大上段へと構え帝の左側から、ヨルンはその場から動けない為に、体を伸ばして帝の頭上から双剣を胸の前で構えて降下する。
(くっ!さっきとは違い胴体に巻き付かれているから両手しか動かせん!脚を動かせば即座に体勢を崩される!どうする!?)
帝が考えている間に3人はタイミングを合わせたようで、3人の攻撃が同時に襲い掛かる。
帝に3人の攻撃が同時に襲い掛かった瞬間、帝の体と脳は帝の意思に関係無く、慣れ親しんだ動きを帝に取らせた。
帝は木剣を頭上へ放り投げ、右拳をペイルへ、左拳をフェンへと突き出した。
(皇王流格闘術。拳撃の型、壱式。砲尖華!)
すると衝撃波がペイルの飛ばしていた魔刃の1本にぶつかり破壊した。
「なっ!?だけど魔刃はまだある!」
ペイルは帝の放った攻撃に驚くが魔刃を1本壊された位と気にした様子は無い。だが帝の放った攻撃は魔刃に当たった直後、勢いそのままに弾けた。まるで散弾の様に飛び散ったのだ。
飛び散った攻撃は残りの魔刃を全て破壊し、魔刃に当たらなかった攻撃がペイル目掛け数発飛んでいく。
「ぐっ!?」
ペイルは予想外の事に動けず、帝の攻撃をまともに受けてしまった。咄嗟に大鎌で防御するが、大鎌ごと後方へと吹き飛んだ。
同様の事が帝の左側から接近していたフェンにも起きていた。帝の放った攻撃がフェンの〈砲哮〉の1つに当たり消し飛ばし、飛び散った攻撃が周りの〈砲哮〉に当たり消し飛ばす。そしてフェンへと飛んだ攻撃は、防御出来ずに受けたフェンに直撃し、その体を後方へと勢い良く吹き飛ばした。
「がっ!?」
続けて帝はヨルンの胸元に構えられた双剣目掛けて右拳を頭上に突き上げた。
(フェンとペイルに何が起きたか分からないけど直撃は不味い!)
ヨルンは突き出された拳にそのまま双剣で応えた。そして帝の拳が双剣に触れる瞬間、ヨルンは突き出された拳が握られていないのを視認した。
(あの握り方?は何?)
ヨルンが見た握り方は空手で言う所の平拳と呼ばれる物だった。
ヨルンが平拳を知らないのも当たり前だ。そもそもこの世界においては戦闘において殴ると言う事の常識は、ガントレットや鎧などの防具を身に付けた状態での拳を握りしめた打撃なのだ。故に平拳を知らなくてもしょうがない。それ以前に帝が手に付けているのは籠手だ。籠手は拳を護るための防具なのだから殴ってくると思わなくてもしょうがない。
(皇王流格闘術。拳撃の型、砲拳!)
そして帝の平拳が双剣に触れた瞬間。ヨルンを衝撃が襲い、訓練場の天井目掛けて吹き飛ばした。
「がっ!?」
吹き飛ばされたヨルンは天井にぶつかる直前で止まり、地面へと落ちる。帝の胴体に巻き付けた尻尾が伸びきった為に天井にはぶつからずに済んだのだ。
ドスンッ!
フェン達3人の決死の攻撃を阻止した帝。3人は何とか立ち上がり武器を構えるが・・・。
「・・・時間だ」
審判を務めていたローンから終了の時間だと告げられる。
「「「なっ!?」」」
3人は終了を告げられ肩を落とす。勝利条件を達成できなかったのだから模擬戦は帝の勝利だからだ。
「くっ!もう少しだったのだが!」
「最後の攻撃は決まったと思ったのにぃ〜!」
「ってかご主人の最後の攻撃!何アレ!?魔刃に当たったと思ったら飛び散ってそのまま飛んできたんだけど!」
「隠し玉にも程がある!あんなモノが想像出来るか!?」
「それもだけどぉ〜。自分が受けたアレ何ぃ〜?触れた瞬間、吹っ飛ばされたんだけどぉ〜?」
フェン達3人は帝の最後に放った攻撃に文句を言いながらユーナ達の下に歩いて行く。
「・・・」
その後ろを黙って帝はついて行く。
「皆さんお疲れ様です」
「最後のは惜しかったな」
「残念だったねー」
「手に汗握る、素晴らしい戦いでした!」
フェン達がユーナ達の下に辿り着くとそれぞれが労いの言葉を送る。その間も帝が黙っているのに気付いたローンが声を掛ける。
「どうしたミカド?試合に勝ったんだ嬉しくないのか?」
「・・・」
声を掛けられても黙ったままの帝を見たローンは茶化し始めた。
「そうか後悔してるんだろ!?わざと負ければ良かったと思ってるんだろ?そうすれば嬢ちゃん達と即結婚だもんな!だが勝っちまったから婚約止まり、それを勿体なことしたと思ってるんだろ!」
ローンの言葉が聴こえたユーナ達やフェン達が帝を見る。皆が見る事で帝はようやく、口を開いた。
「・・・後悔、と言えば後悔か。終わった後に言うのは悪いんだが、今の試合は俺の負けだ。最後に使った技、アレは使うつもりが一切無かったものだ。分かりやすく言うなら3人の勝利条件の一つ、俺に本気を出させるを達成と言ったところだ」
「いや、ミカドよ。そうは言うがな?今のは・・・」
「主人よ。言いたい事は分かった」
ローンが何かを言おうとしたがフェンが遮った。
「だが儂等にもプライドがある。故に勝ちを譲られるのはお断りだ!」
「そうだよぉ〜!」
「確かにね。勝ちになるのは嬉しいけど譲られるのと、掴み取るのでは意味が変わって来るしね!」
「3人の言いたい事は分かるが・・・」
「そこで提案がある」
「提案?」
「あぁ。先の模擬戦は準備運動とし、これからが本番でどうだ?
そしてルールも変える」
「どう変えるつもりだ?」
フェンの提案を帝は受け入れるつもりで確認をする。
「ルールと言うよりは条件だが、儂等の勝利条件はさきと一緒で時間内に主人から攻撃を受けない事。時間は先程よりも短くし、10分にする」
「分かった。それで構わな・・・」
「まだだ。最後に主人には・・・本気を出してもらう!」
「!?」
フェンが出した条件は時間の短縮、そして帝が本気を出すと言うものだ。
「いや、だがそれは・・・」
「先程の最後の攻撃は咄嗟に出た本気なのだろう?だが儂等は主人の本気の攻撃を知らん。だから先程の攻撃が本気と言われても信用できん。それこそ勝ちを譲るための口実としか思えん」
「それはそうだが・・・」
「故に今度は本気を出してもらう。それが条件だ」
「・・・」
帝はフェンの出した条件に対しての理由を納得するが、それでも直ぐには首を縦に振る事が出来ない。
「主人は最初に言ったな?「本気を出せば直ぐに終わる」と。どうしても全力を出すのが嫌なら、主人は先程の武術?だけを使い戦うと言うならどうだ?」
「それは・・・」
「これなら全力では無いにしろ。主人の本気の一端を見る事が出来るだろう」
「・・・分かった。その条件をのもう」
帝はフェンの出した本気の一端を出すと言う条件をのんだ。
「なら直ぐに始めるか」
「そうだな。だがその前に準備をすませる」
帝はそう言うと身に付けている籠手とグリーブを外しユーナ達に預ける。フェンはどう意味か分からないので確認をする。
「主人よ。防具を外してどうするつもりだ?」
「付けた時に確認したから大丈夫だとは思うが、本気を出すにあたって防具が破損する可能性があるから念の為に外すんだ。それと・・・」
そう言うと帝は魔法を発動させる
「絶対なる聖域」
帝から緑色の淡い光が広がる。光は訓練場の端まで到達すると広がりを止めた。
「絶対なる聖域、結界の類か?」
「確か範囲内に居ると回復する結界だったと思うよ?」
フェンが「絶対なる聖域」を結界かと聞くとペイルが効果を説明する。
「ペイルの言う通りだ」
「それでぇ〜。主人は何でこんな結界を発動したのぉ〜?」
「理由は簡単だ。俺が本気を出すからだ。正直言って久々に本気を出すからな、上手く手加減出来るか自信が無い」
「それはつまり儂等を心配してのことか?」
「そうだ」
「・・・主人よ。儂等を心配してくれるのは有り難いが、少々傲慢では無いか?」
「傲慢?俺がか?」
「そうであろう?主人が強いのは儂等3人共知っておるが、主人が本気を出した程度でここまでする事か?」
「・・・」
フェンが帝の行動に対し、傲慢だと言うと帝は黙ってしまった。
そして帝が口を開く。
「フェンの言いたい事は分かる。だが最初に言ったぞ?「俺が本気を出したら直ぐに終わる」と。それでも未だ納得がいかないならさっさと始めるとしようか?」
帝はそれだけ言うと訓練場の中央へと向かって歩き出した。




