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20話 暗躍する者達

     転生した異世界で自由気ままに生きていく

      ~チートじゃない?才能です!~


         1章 異世界の始まり

        20話 暗躍する者達


 帝達は王都に向かって歩いていた。と言っても歩いているのは帝とフェン達の3人。他の者は馬車に乗っている。


「・・・疲れた」


 帝は大分疲れていた。肉体的にではなく精神的に。理由は今朝早くからフェン達3人について追及されたからだ。

「大丈夫か主人よ?」

「疲れたなら休む?」

「お前達2人のせいで疲れたんだよ!」


 帝の気も知らず、フェンとペイルは首を傾げている。

「全く。何の為に口裏を合わせる様に言ったと思ってるんだ。全部台無しだ!」

「すまないとは思っているが、それは仕方ないだろ?」

「そうだよ。いつかはバレたんだから、それが早まっただけだよ?」

 帝の物言いに全く反省してる気配がないフェンとペイル。


「まぁ良い。もう済んだ事だ。それよりユーナ達に聞きたいんだが・・・」

「何ですか?」

「俺は王都について何も知らないんだが、王都に入る際に色々と確認とかするのか?」

「基本どの国でもしますよ?入国審査と言うやつですね。身分の証明書、各ギルドの登録を証明する、ギルドカードの提示をする事で入国出来ます。商人なら商業ギルドのカードを提示。冒険者なら冒険者ギルドのカードを提示と言った具合ですね。カードを持っていない場合には、入国料の支払いで入国出来ますね」

「俺と3人・・・いや。シオン達もカードを持っていないが、1人につき入国料はいくら払えばいいんだ?」

「確か・・・1人銀貨5枚だった気が・・・」

「・・・」


 ユーナの言う通りなら帝達は入国料を支払わないと入国出来ない。ユーナ、アイナ、ティナの3人は冒険者ギルドのカードを持っている為、入国料を払わなくても大丈夫だが、帝とフェン達3人、さらにシオンと5人のエルフと6人の子供のエルフは盗賊に捕まっていた為、所持品を全て奪われている。その為、身分証明などは勿論持っていない。つまり帝を含めた16人分の入国料を支払わなければならない。銀貨にして80枚か大銀貨8枚をだ。


「・・・俺の手持ちは盗賊のアジトから奪った金が大銀貨1枚と銀貨5枚しかない」

「大丈夫ですよ?お支払いしますから?」

「いや。だが、そんな金がどこに・・・」

「何だ帝忘れたのか?」

「何をだ?」

「ほら。帝の服を買うって言った時にウルフタイガーを売ってお金に変えたでしょ?あの時に売ったウルフタイガーが綺麗な状態だったから、金貨2枚になったんだよ!」

「そうなのか?」

「あぁ。だから問題ないぞ?」

「すまない。借りは必ず返す」

「あはは。そんな大金直ぐには用意出来ないでしょ?まぁ、確かに痛手だけど、期待せずに気長に待つよ〜」

「帝さん!?私達の分までお返ししなくても・・・」

「気にするな・・・と言っても無理な話か。ならシオン達を国に送った際にエルフの国の料理をご馳走してくれ。それなら良いだろ?」

「それくらいでしたら・・・」

「なら決まりだ!」

 帝の「借りは返す」にユーナ達3人は気長に待つと軽く返事した。これが後に問題となる事を知らずに・・・。更に帝はシオン達の御礼は国に送った際に料理のご馳走で良いと言った。これは面倒事になるのだが・・・。


 帝が王都について色々と聞いていると、道の先に大きな壁が見えて来た。まだ距離がある為、はっきりとは見えないが壁の一箇所、門と思われる場所に人影が並んでいる様に見えた。帝達が野営地を出発してから王都まで1時間位の距離だった。その為、まだ朝早いからなのか並んでいる人数は多くなかった。

 帝が並んでる人達を見ると商人や冒険者と思わしきグループがおり、他には旅人と思われる格好をした獣人や亜人がいた。ユーナの話ではこの王都、トレランシアは他の国々とは違い、人種差別がそこまで酷くは無いらしい。それでも差別は有るらしいが他とは違い、国の法律でそれなりに守られているとの事だ。

 帝達が列に並ぶと先に並んでいた者達が、帝達の馬車にエルフ、シオン達が乗っているのに気付いた。そしてコチラを見ながら小声で話す。


「おい!見ろよ!アレってエルフじゃ無いのか!?」

「エルフ!?マジかよ!初めて見たぜ!」

「本当にエルフかよ!それに見ろよあの獣人!エルフもだが獣人2人もめちゃくちゃ美人だぜ!」

「おぉ!凄えなぁ!」

「それより何であんなにエルフが居るんだ?」

「そんなの知るかよ」

「・・・奴隷落ちとかか?」

「だとしたら貴族共の依頼とかで運んできたんだろ?犯罪奴隷って事は無いだろ?」


 帝は並んでいる者達の会話を聞いていて、少しイラついていた。奴隷についてもユーナから聞いてはいた。この世界は帝のいた世界、地球とは違い、奴隷制度が普通にある。奴隷と言っても様々だが、罪を犯した者がなる犯罪奴隷、一般の家庭が財政難の為に子供を身分の高い者、貴族等に売る奉公奴隷だ。前者は自業自得の為、存外に扱われるが後者は身分がハッキリとしている者に買われる為、存外に扱われる事はそうそう無い。買った者がクズで無い限り。

 そして他にも奴隷はある。闇奴隷だ。コチラは攫ってきた者を闇市場や裏オークションで販売される。闇奴隷は金で簡単に取り引きされる為、購入者の身分が関係無い。その為、存外に扱われる事が多い。しかしながら売買の際に偽装された証明書がある為、国の法律でも中々捕まえる事が出来ないでいる。


 帝はイラつきながらも我慢し、順番が来るのを待つ。並んでいた人数が少なかった為、意外と早く順番は回って来た。

 帝達を見た門番が質問をし、代表としてユーナがギルドカードを渡しながら答える。

「王都には何しに?」

「受注した依頼の報告と道中保護した方々の報告です」

「保護したと言うのはエルフの方々か?」

「いえ。他の4人もです」

「そちらの方々も冒険者か?身分証等は?」

「すまない。俺を含めた4人共所持していない」

「そうか。であれば入国料1人銀貨5枚だ。16人合わせ銀貨80枚か大銀貨8枚になる」

「ではコチラで」

 そう言いユーナは門番に金貨1枚を手渡す。

「確かに。おい!お釣りを!」

 金貨を受け取った門番は別の門番に指示し、お釣りを持って来させる。

「お釣りの大銀貨2枚です!」

「ありがとうございます」

「それではお通り下さい」

 そう言うと門番2人は道を開けユーナ達を通す。王都の街中を見渡した帝は綺麗な街並みに驚いていた。


「どうだ帝?王都の街並みは?」

「凄いな。驚いたぞ」

「ふふ〜ん!そうでしょ!凄いでしょ〜!」

「何でティナが偉そうなんだ?まぁ、凄いのは事実だから仕方ないが・・・。取り敢えずギルドへ行かないか?」

「そうですね。まずはギルドで依頼の報告と帝さんの登録ですね」

 王都に着いた帝一行は冒険者ギルドへ向けて歩き出す。



 ・・・時は少し遡る。帝がフェン達3人と世界樹の結界から出た時、世界に激震が走った。各国にいる強者達は突如出現した、膨大な魔力を感じた。・・・帝の魔力だ。

「「「「「な!?」」」」」

 そして各国の上位者達は緊急の会議を開く為、幹部に招集を掛ける・・・。


 壁一面に様々な動物の絵画が飾られた一室。部屋には絵画の他にも調度品が飾られているが、どれもが模様に動物が使われている。部屋は四方50m程あり、かなり広い。そして部屋の中央には円卓があり、13人の獣人が囲んでいる。此処は人間国家、王都トレランシアから東に向かった先にある国。獣人国家の王都ベスティア、その王城にある会議室。


「皆。急な招集すまないな」

 そう言う彼はライガーと呼ばれる、獅子と虎の珍しい獣人にして獣人国家の王、ライオネスだ。


「陛下。此度の招集は例の件(・・・)ですか?」

 彼女は獣人国家、最強の集団、12獣団を統べる長。ドラゴニュートのドランだ。


「例の件、あの魔力だね?」

 彼はラビットマンのラビィだ。


「そうだ。此処に居る者は感じただろうが、その魔力についてだ。単刀直入に聞こう・・・どう思う?」

「どうっと言われましても・・・彼の者が敵なら叩くしか無いのでは?」

 彼はボアマンのオーグ。


「オーグの言う通りだぜ!敵なら叩く!それだけだろ!?」

 オーグの意見に賛同する彼はウェアタイガーのタイガだ。


「へ、陛下が言ってるのは、そ、そう言う事じゃ無いと思いますぅ」

 オドオドした感じの答えを言う彼女はパーンのメレア。


「はぁ。陛下が言ってるのは、いきなり出現した事についてじゃ無いの?」

 溜息を吐いた彼女はハーピィのピリア。


「2人は短絡し過ぎだよ?」

 オーグとタイガに言う彼女はコボルトのムイ。


「・・・自分は何とも」

「・・・ゴズに同意」

 ゴズキのゴズと呼ばれた彼に、同意した彼はメズキのメズだ。


「ゴズとメズは考えるの苦手だからね。まぁ、僕も分からないけどね」

 ゴズとメズ同様に分からないと告げる彼はナーガのナルガ。


「出現した事については分からないけど、トーマは何か気付いたんじゃない?」

 そう言う彼女はエイプマンのキャイア。


「・・・」

 トーマと呼ばれた彼、ラットマンは黙っている。


「トーマよ。どうなのだ?」

 ドランに問われたトーマはゆっくりと喋り始めた。


「出現した理由は自分にも分からないです。ただ・・・」

「ただ、何だ?」

「出現した膨大な魔力の側に、3つの膨大な魔力が有ったのが気になって・・・」

「確かに感じたが、最初のよりは弱かっただろ?」

 タイガが最初のよりは弱いと言う。


「・・・最初のに比べればね。だけど・・・」

 トーマは何か言いづらいのか、ハッキリとしない。その様子にイラついたタイガが怒鳴る。


「何だ!?ハッキリと言え!」

「・・・魔力が出現した方角にはトレランシア。その側には世界樹の森があるのは知ってるでしょ。・・・そこの守護者は3体(・・)何だよ」

「「「「!!!」」」」

「ふざけんな!守護者が結界から出たってのか!?」

 タイガがトーマに怒鳴りながら立ち上がった。


「・・・タイガ座れ。陛下の御前だぞ」

「だが!」

 ドランが制すがタイガは聞かない。そしてドランが殺気を放ち、再び告げる。


「・・・聞こえなかったか?私は座れと言ったんだ」

「わ、悪かったよ・・・」

 殺気を当てられたタイガは、謝りながら座り直した。

「・・・トーマよ。話の先を続けよ」

「・・・後に感じた3つの魔力が守護者の場合、最初の魔力はいったい誰なのか?目的は何なのか?」

「確かにな・・・。普通なら創世神なのだろうが、守護者を結界から出す理由が無いか・・・。調べる必要があるな。ナル頼めるか?」

 ドランが言うと、ドランの影から猫型の獣人であるネコマタのナルが出て来る。

「了解にゃ」

 それだけ言うとナルは姿を消した。


「それでドランよ。どうするのだ?」

「・・・正直言って、関わらないのが一番でしょうね」

「何故だ?神以外なら取り込めば力になるだろう?」

「力にはなるでしょうが、守護者の魔力を超える者ですよ?友好的ならともかく、対応を間違えた時、我が国や大陸、最悪世界が滅びかねません」

「ふむ。そうなると・・・」

「はい。様子見が最適かと・・・。それに他国も動くでしょうから、その対応次第でこちらも動く。これが我々には得策かと思われます」

「他国の対応次第か・・・」

「はい。後はナルの情報次第ですね・・・」



 此処は王都トレランシアから南にある、森の奥に存在する国家。亜人国家、森都ナトゥーラ。

 森都ナトゥーラは世界樹の森の中に存在する国家だ。その為、国に所属する者達はLvが高く、強者揃いだ。亜人国家に向かう者も強さを求められる為、それなりの強者ではないと亜人国家には辿り着けない。

 森都ナトゥーラの王城は巨大な樹木を削り、作られた王城だ。森都も森の中にあるので建物は全て木材で出来ている。そして森都ナトゥーラには巨人が存在する為、王城は勿論、かなりの大きさの家が建っている。王城の会議室もかなりの広さがあり、巨人でも余裕だ。そして会議室には12人の亜人達、12亜将が集まっており、それぞれが自分の席に着いている。上座にある玉座には亜人の王である、カルラも座っている。


「皆、先の魔力には気付いたか?」

 亜人王のカルラが12亜将に聞くと、皆が渋い顔をし、2体いる巨人の内の1体が口を開く。

「王都トレランシアの近くで感じた魔力ですな」

 彼は大巨人(アトラス)の亜種である魔眼大巨人(バロール)のバール。12亜将のリーダーだ。


「あの魔力は異常ですね・・・」

 次に喋った彼女は魚人(マーメイド)の上位種の歌魚人(ローレライ)のレイラ。


「魔力の量もだが質もだな・・・」

 彼は巨人(ジャイアント)の上位種である、大巨人(アトラス)のアトス。


「最初の魔力も異常だが、後の3つもだろ?」

 彼は大蛇人(ピュトン)のピトー。蛇人(ラミア)の上位種だ。


「トレランシアの近くなら人間か?」

 彼女は上位鬼人(ハイオーガ)のオルガ。


「トレランシアは人間の国家じゃが獣人も亜人もいるからのぉ。一概には言えんよのぉ」

 髭をさすりながら言う彼は上位槌小人(ハイドワーフ)のドルン。


「確かに魔力だけでは、種族までは特定出来ないな」

 彼は竜翼人(ドラグナー)のドナー。翼人(バードマン)の亜種だ。


「では獣人か亜人の可能性も有ると言う事か?」

 彼女はセレア。戦馬人(セントール)馬人(ケンタウロス)の上位種だ。


「亜人なら害は無いでしょうが・・・」

 彼女は上位長耳人(ハイエルフ)のエル。


「馬鹿か?亜人だとしても害が有るかも知れんだろ?」

 こちらは上位黒長耳人(ハイダークエルフ)のエリア。


「馬鹿とは何ですか!?」

「馬鹿だから馬鹿と言っただけだ!?」

 2人は仲が悪い。2人と言うよりはエルフとダークエルフの2種族だが・・・。エルフは魔法に特化しており、ダークエルフは物理攻撃に特化している。その為なのか仲が悪い。


「はぁ・・・また始まったよ」

 頬杖をつきながら溜息を吐いて2人の喧嘩を見ている彼は吸血鬼人(ヴァンピール)のバン。半吸血鬼人(ドラキュラ)の上位種だ。半吸血鬼人は日光が苦手な為、夜行性が多いが吸血鬼人は平気な為、普通に生活している。


「2人共止めないか!?会議中だぞ!」

 止めに入ったのは毒蛇髪人(ゴルゴン)のゴルン。彼女は蛇髪人(メデューサ)の上位種だ。

「2人共、喧嘩は後にしろ」

 リーダーであるバールに言われ、エルとエリアの2人は渋々ながら喧嘩を辞めた。


「はははは!2人は相変わらず仲が悪いのだな」

 カルラは機嫌良く笑う。

「「お見苦しい所をお見せしました!」」

 エルとエリアの2人はカルラに謝罪をする。

「良い良い!気にするな。「喧嘩する程仲が良い」とも言うしな!だからと言って喧嘩ばかりして内政を怠るでは無いぞ?」

「「は!」」

 カルラは2人の喧嘩も気にせずに、それだけ言うと話を戻した。


「それであの魔力についてだが・・・」

「今の所は静観するしか無いのでは?」

「やはり、そう思うか?」

「場所的には人間、獣人、亜人の可能性が高いですが他の種族の可能性もゼロでは無い以上、仕方が無いかと・・・」

「他の種族の場合は戦闘になる可能性が高いか・・・」

「正直なところですと、可能性の話をしてしまえばキリが無いですが、人間で有れば我等としては交渉がしやすいので助かりますな」

「では調査隊を出し探るか?」

「その際はトレランシアに居る亜人達に「出来るだけ情報を集めるように、但し対象者を見つけてもこちらからは絶対に手を出すな」と指示した方が良いですね。敵対してはこの国が滅びかねませんから」

「そうだな・・・。では我等亜人はその者と友好的な関係を目指すとしよう!」

「仰せのままに!」



 此処は王都トレランシアから北に向かい、海を渡った別大陸。この大陸全てが悪魔と魔人が住む魔族国家デルモートだ。デルモートの中心に国であるパンデモニウムがあり、北に極寒の大地、東に暴風が吹き続ける渓谷、南に死へと誘う広大な樹海、西に灼熱の大地があり、4人の大悪魔が東西南北を支配している苛烈な環境だ。比較的安全なのは海に面した浜辺ぐらいだろうか。

 パンデモニウムの中心にある王城の会議室では7人の悪魔が円卓を囲んでいる。この7人は各々が7つの大罪と呼ばれる魔族の頂点に君臨する魔王だ。


「んで?緊急の招集って聞いたが何の様だ?つまらねぇ事だったら殺すぞ!」

 早々に目くじらを立ている彼は憤怒を司るラースだ。


「いっつも怒鳴ってうるさいなぁ」

 食べながら喋る彼女は暴食を司るグーラン。


「貴方はいつも何か食べてるわね?」

 グーランに言う彼女は色欲を司るラスティ。


「そう言うラスティは男を食べてるだろ?色んな意味で」

 彼は強欲を司るグリエラ。


「もう〜帰って良い〜?」

 椅子にもたれかかっている彼女は怠惰を司るロウズ。


「いや。会議始まってないから!」

 ロウズにツッコミを入れている彼女は嫉妬を司るエルビィだ。


「はぁ。相変わらず協調性が無いなお前達は・・・」

 溜息を吐いた彼は7つの大罪のリーダーである傲慢を司るブライ。


「皆。取り敢えず黙れ」

「あぁぁぁぁ!?命令すんじゃねぇよ!殺すぞ!」

「殺す?俺をお前如きが?」

 その瞬間ブライから凄まじい殺意が放たれた。

「・・・本気で俺に勝てると思っているのか?ラース」

「い、いや。悪かったよ」

 ラースが謝るとブライから放たれた殺気が霧散する。

「・・・会議を始めるぞ」

 ブライが会議の開始を宣言する。


「皆も気付いただろ。先刻出現した魔力についてだ」

「・・・アレはヤバいわね。私達を超えてるわよ?」

「それもだが・・・」

「後に出た3つの魔力・・・でしょ?」

「あ〜。後の3つは〜守護者の魔力に似てたよね〜」

「あぁ。確かに似てたな。アレ(・・)よりは反応が弱かったけどな」

「問題は結界から出た事だ。どうやって出たのか、何の為に出たのか。・・・アレ(・・)も結界から出るのか」

「どうやったかも〜、理由も分からないけど〜、最初の魔力が原因なのは〜確実だね〜」

「殺せば済むって言いてえ所だが、あの魔力はヤバイな。俺ら全員でも無理だぞ?」

「いや。最初の方は反応が消えたから、やり合う事は無いだろうが、そうなると後の3つがな・・・」

「野放し?どうするの?」

「この大陸に来ないなら放置だろ?」

 魔王達がそれぞれの意見を述べていると、会議室のドアがノックされ、見張りが入り来訪者が来た事を告げた。

「・・・許可する」

 ブライが許可を告げると、見張りが戻り来訪者が姿を現した。


「会議中に申し訳ありません。至急皆様にご報告したい事がございまして」

 入室したのは全身が黒い毛に覆われた大型の猿だ。そう、かつて帝が遭遇したマインと言う名の魔人だ。


「あ!マインちゃん!お土産は!?」

 そう言うと席から飛び上がりマインの下に走り出したグーラン。

「申し訳ありません。今回はこれだけしか収集出来ませんでした」

「まぁ。しょうがないか。至急報告したい事が出来たんでしょ?」

「はい。先ずは皆様に此方を見て頂きたく・・・」

 そう言うとマインは首の所から、小さな黒い石を取り出すと魔力を流し、円卓の中心へと転がした。

「映像記録魔石か」

「何が記録されてるの?」

「道中遭遇した人間です」

「人間?勇者か!?」

「いえ。本人は違うと言ってましたが、あの強さは異常でした。何よりも同行していたバースが・・・」

 マインがそこまで言うと映像が映し出された。


 映像が終わると魔王達は黙り込んでおり、会議室は静寂に包まれた。リーダーであるブライが口を開こうとした時。

「アハハハッ!バースちゃん弱〜」

「バースが弱いのは当たり前。所詮は魔人」

「・・・」


 いつの間にか会議室の入口に3人の女性が立っていた。


「「「「「「!?」」」」」」

「・・・御三方いつの間に?」

 ブライに御三方と呼ばれた3人。右からイルネス、ラプラス、パンドラと言う名の悪魔だ。しかも3人は7つの大罪の魔王を1人で相手が出来る程に強い。


「映像が始まった頃からいたよ〜?」

 ブライの質問にパンドラが答えた。

「そんな事よりさ〜。さっきの人間ヤバくない?確実に手加減してるよね〜」

 パンドラが映像を見て、帝が本気を出していなかったと断言する。

「アノ動きはわざとスキを作ってる動き。バース程度じゃ相手にならない」

 イルネスが帝がわざとスキを作ってると言う。

「・・・」

 ラプラスは黙ったまま何も喋らない。


「ラプラス?どうしたの〜?」

 黙ったままのラプラスにパンドラが尋ねるとラプラスはようやく喋り始めた。

「・・・マイン。映像に映っていた人間とはどの辺りで出会いましたか?名前は?どのような恩恵を所持していましたか?」

「人間の国、王都トレランシアの近くにある森の中で出会いました。申し訳ございません。名前もどのような恩恵を所持しているかも分かりません」

 ラプラスの質問に対し、マインは出会った場所しか答えられなかった。


「・・・そうですか」

「・・・ただ。どのような恩恵か分かりませんが同行したバースの恩恵が消失(・・)しました」

「「「「「「「!!!」」」」」」」

 マインの言葉に皆が驚愕する。

「恩恵の消失だと!?あり得ねえだろ!」

「にわかには信じ難いな・・・」

「だけどバースの〈竜化〉が時間前に解けた理由が、恩恵の消失なら納得できるな」

「だけどあり得るの?恩恵を消失させる恩恵なんて?」

「俺の〈強欲〉はステータスは奪うが恩恵は奪えないしな。〈暴食〉とも違うしな・・・」

「そりゃそうだよ。僕の〈暴食〉は食べないと駄目だもん」

 皆が言うなか、ラプラスが自身の考えを口にする。

「グーランに近い能力、いえ恐らくはグーランよりも上位の能力でしょうね・・・」

「グーランよりも上位?あり得んの?仮にもグーランの恩恵〈暴食〉は大罪の恩恵だよ?」

「・・・私も知りません。ですがそれ以外あり得ない。それ以前に!あの人間を視たら(・・・)2つの未来しか視えなかった(・・・)!」

「・・・それってヤバくない?」

「ラプラスが2つしか視えないのは異常」

 ラプラスと言う悪魔は片方の眼で対象者を見る事で、対象者の未来や過去を視る事が出来る。両眼を開いてる時は過去も未来も視る事が出来ない。因みに右眼で未来、左眼で過去を視る事が出来る。そして通常は未来を視た際にはいくつかの未来が視える、だが帝を映像越しに視た未来は2つしか視えなかった。


「何が視えたの?」

 パンドラが恐る恐るラプラスに聞いた。

「1つはこちらから手を出さ無ければ、私達魔族から観ても世界から観ても平和な日常。もう1つは・・・魔族の絶滅」

「は!?嘘でしょ!?」

「私だって信じたく無いです!ですが!視えたものはどうしようもありません!」

 ラプラスの言葉にパンドラが声を荒げ、ラプラスも声を荒げて信じたく無いと言う。


「魔族の絶滅は具体的にはどうなる?」

 ラプラス告げた未来を具体的にと聞くイルネス。

「・・・この大陸が地図から消えます。大陸に居なかった者は見つかり次第、殺されます」

「・・・何それ。どうすんの?先に殺す?」

「駄目。手を出したらアウト。手を出さなければ平和。なら絶滅の条件は恐らく手を出す事」

 イルネスがパンドラを止め、ラプラスの告げた絶滅の条件を推測する。


「ではこの人間については様子見ですか?」

 ブライが今後の帝に対する対応の確認をする。

「・・・それしかないですね」

「ですが!我等が人間如きに様子見など!」

「ラース。止めろ!」

「だが!」

「ふ〜ん。ラースちゃん。私達の決定に逆らうんだ〜?」

「いい度胸。だけど雑魚の癖に生意気」

 ラースの言葉にパンドラ、イルネスが魔力を膨れ上がらせて、殺意を込めた視線を向けた。

「い、いえ。そう言う訳では・・・」

「パンドラ、イルネス。2人共止めなさい」

 ラプラスの言葉にパンドラとイルネスは渋々言う事を聞き、殺意と魔力を霧散させた。


「ラース。様子見に納得がいかないのは分かります。ですが手を出せば滅びるのですよ?」

「そ、それは・・・」

「それにこの人間の魔力の質は、先程の膨大な魔力と一緒ですよ?それを踏まえてどうするつもりですか?」

「こ、この場にいる。全員で迎え撃てば・・・」

「本気で言ってるのですか?あの魔力が彼の本気だと思ってるんですか?」

「ラプラスどう言う事?あの魔力が本気じゃないの?」

「アレはほんの一部ですよ。私が視たのはアレの10倍は軽く有りましたから・・・」

「アレの10倍は無理。魔族全員で掛かっても無駄」

「・・・10倍?無理でしょ?勝ち負け以前の話だよ?」

「だから様子見なんです!」

「・・・分かりました。それでは様子見と言う事で、皆には伝えておきます」

 ブライの返事を聞いたラプラスは頷き返すと会議室から消えた。パンドラとイルネスも居なくなっていた。


 残った魔王達も会議室を後にした。そんな中でラースは怒りを露わにしていた。

「納得いかねえ!?俺ら魔族が人間如きに様子見だと?ふざけんな!手を出したら滅びる?だったら滅ぼされる前に殺せば良いだろが!」

 そう言いながら去って行くラース。その後姿を見つめる魔王2人。グリエラとエルビィだ。


「グリエラはどうするの?」

「どうするかなー。他の奴等は動かねえよなー。まぁ、いつも通りにしてるかな?」

「私もいつも通りにしながら様子見かな?」

 そう言うと2人も城を去って行った・・・。

読んで下さってる皆様ありがとうございます。長くなりましたがようやく1章が終わりました。

2章では王都で帝が色々とやらかす予定でいます。

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