表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/48

13話 異世界の事情

転生した異世界で自由気ままに生きていく

~チートじゃない?才能です!~

1章 異世界の始まり


13話 異世界の事情


 馬車は御者台に3人乗れる為、ユーナ、アイナ、ティナが乗っている。後ろに7人くらい乗れる広さだが、少しながら荷物がある為、6人が定員だった。

 帝達は現在助けたシオン、エルフ達を含め12人いるが内6人は子供のエルフの為、抱いていれば問題無い。その為1人は馬車に乗れないのだ。

 そして帝は馬車には乗らず、馬車の後方を追従する様に歩いている。そしてその頭の上にはカーバンクルであるカリスが当然の様に乗り尻尾を左右に揺らしている。

「ミカドさん。すいません」

「ん?何がだ?」

 突然シオンが帝に謝罪をしてくるが、意味が分からなかったので聞き返す。

「私達を助けて頂いた為に馬車に乗れず歩かせてしまっている事です」

「何だそんな事か?別に嫌々歩いてる訳じゃないから気にしなくて良いぞ?それに女性1人だけ歩かせる訳にはいかないだろ?」

「それはそうかも知れませんが・・・」

「それに俺が降りている方が何かあった時に直ぐに対処できるだろ?あと俺には馬を操作出来ないから御者は出来ない。なら乗ってても意味が無いから、かわりに周りに気を配ってるさ」


 帝が馬車に乗らない理由は二つある。一つは言った通り、御者が出来ない事にある。その為、帝が乗っていても役に立たないのだ。因みにシオンや他のエルフ達は皆が御者をする事が出来る。もう一つは単純に女性だらけの中に帝が乗って居ると1人だけ男が居る事になる。それが帝には耐えられそうに無かった為、帝は乗るのをやめた。別に乗ろうと思えば乗れない事は無かったのだ。荷物を帝の恩恵である〈倉庫∞〉に仕舞えばスペースができる。そうすれば人が1人乗る事は出来たのだが、帝はそれを言わなかった。

「分かりました。では今夜の野営の番は私達が勤めますのでゆっくり休んで下さい!」

 シオンが両手で拳を作りやる気満々になる。


「申し出は有難いが流石に悪いし俺もやるぞ?」

 帝はシオンの申し出をやんわりと断るがそれを聞いたシオン達は暗い顔をする。

「・・・私達では役に立ちませんか?ミカドさんに比べれば微々たる物ですが私も他の子も魔法は使えますし見張りくらいは出来ると思うのですが・・・」

 そう言いシオンと他のエルフ達の耳が少し垂れる。どうやらエルフの耳は気分により上がったり下がったりする様だ。

 帝は慌て言い直す。

「違う違う!役に立たないと思ってる訳じゃなく!見張りは大変だろ?だから女性だけに任せるのは気が引けるから俺もやるって意味だ!」

 話を聞いていた。ユーナ達が喋り始めた。


「そうですよ。御者を手伝ってくれるのに見張りまで任せるなんて悪いですよ」

「ユーナの言う通りだ。見張りだって楽じゃないんだ。それに人数が増えた分、他の者はゆっくり寝れる。それだけでありがたい」

「そうだよー。御者に見張りまで手伝ってくれるだけで有難いんだよ?」

 3人がシオンを納得させる為に思いを口にする。

「それにミカドは御者が出来ない分、他の事で役に立たなきゃいけないんだから、ミカドの仕事を奪っちゃ駄目だよ?」

「確かにな。役に立たないミカドが出来る事を減らしては可哀想だぞ?」

「2人共そこまで言わなくても良いのでは?ミカドさんだって御者をやらない訳では無くやれない訳ですし」

「まぁ。ミカドは今まで一人旅だったからな。馬車が必要無かったんだろ?その分見張りは得意だろうから任せておけば良い」

「まぁ。見張りが得意なミカドは私達3人が寝てる間に持ち場を離れて、何かをしてる間に私達3人は攫われたけど?挙句私は死にかけたけど?」

 3人は帝のフォローをするがアイナとティナは場を和ませる為に帝を馬鹿にする。本当の事の為、帝は反論出来ないでいた。


「・・・」

 帝が黙っていると・・・。

「ミカドさん?今夜の見張りは途中で居なくならないで下さいね?」

「シオン。それは冗談か?それとも本気で言っているのか?」

「フフッ。どちらでしょうね?」

 シオンの言葉に質問した帝だが笑って誤魔化された。


(シオンが本気で言う訳は無いだろうから冗談だと思うが事が事なだけにな・・・)


 そう考えながら歩く帝。


 その後、馬を休ませつつ、ユーナ達は御者を交代しながら王都に向かうが道中特に何も起きなかった。その為馬車に乗ってる組は他愛もない話で盛り上がったりしていた。そして日が傾き夕焼けが目立ち始めた頃、御者をしていたティナが馬車を止めた。

「暗くなる前に野営の準備始めようか?」

「そうだな。ミカドとユーナは食事の準備を頼む。シオン達はテントの準備を頼む。私とティナで馬の世話と馬車の点検をしておく」

そう言い終わると皆がそれぞれの役割を果たす為に動き出す。シオン達はテントを立てる為平らな所を探して、テントを立て始めた。アイナとティナは馬から馬具を外して水と餌を与えると、馬車の点検を始める。ユーナと帝は馬車から食事に必要な物、調理器具や食器を下ろし食事の準備に取り掛かる。


「ユーナ。食材は足りるか?」

 帝は肉、野菜、等の食材を切りながらユーナに尋ねた。

「野菜は足りると思いますが・・・。お肉は今日の夕飯で無くなると思います」

「分かった。なら後で森に入って確保して来よう」

 そう言い、帝は調理を再開した。


「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 帝達は夕飯を食べ終え食休みを始めた。ユーナとシオンがお茶の様な飲み物を皆に配っている。帝は受け取り、飲みながら肉の話をしようと考えていると・・・。

「ミカド。夕飯は肉が少なくなかった気がするが?」

「私もそれは思ったよ〜」

 アイナとティナが先に予想通りの事を聞いてきた。

「肉はあれで全部だ。残りは無い・・・」

「何故だ!」

「何で!」

 帝の言葉を遮り、アイナとティナが詰め寄って来る。

「待て!話を最後まで聞け!肉が無いから見張りをしている時に俺が森に入って肉を取って来るって言おうとしたんだ!」

 2人が詰め寄って来た為、帝は慌てて答える。

「見張りをしている時に?またサボるのか?そして私達を危険に晒すのか?」

「また攫われるとかは嫌だよ〜」

「流石に私もそれは嫌ですよ」

 ユーナ、アイナ、ティナの3人が帝の言葉にそれぞれ反応する。

「・・・何で俺が見張りをサボるのが前提なんだ?」

「違うのか?」

「違うの?」

「違うんですか?」

 ユーナ、アイナ、ティナの3人が首を傾げながら返答する。違う!と言いたい帝だが既に前科がある為に強く言い返す事が出来ない。


「・・・まぁ。その反応はサボった事実がある以上、仕方がないが少しは信用してくれないか?」

 帝が困った顔をしながらそう言うと3人は慌てて冗談だと言った。

「冗談なら良いんだが・・・。話を戻すと皆が見張りをしている間に俺が1人で森に入り肉の調達をしてくる。この人数なら魔獣が出ても対処は出来るだろうからな」

 帝は見渡しながら説明した。


「アイナとティナが前衛を出来るし、ユーナとシオンは〈回復魔法〉と〈補助魔法〉が使える。他の娘は魔法が使えるから遠距離からの攻撃に最適だしな、パーティーとしては前衛が足りないが充分に戦える組合せだ」

 帝はそう言いながら話を続ける。

「それで俺が森に入るのは良いんだが、俺はこの森について何も知らないんた。だから森にいる魔獣や生態、出来れば森の広さなんかの情報を貰えると助かる」

 そう言い話を終える帝。


 帝の話を聞いていたユーナ達は驚愕の表情をしている。帝は変な事でも言ったかと思い首を傾げるが思い当たる事が無いので分からない様子だ。異世界から来た帝は知らないが、実はこの世界に存在する知恵ある者がこの森の事を知らない訳が無いのだ。

「ミカドは本当にこの森を知らないのか?」

「知らないな」

「この森を知らない人初めて見たよ」

「そんなに有名なのか?」

「この様子だと本当に知りませんね。まぁ、知らない振りをする理由が有りませんしね」

「???」帝の頭上に?のマークが出ていそうな様子を見て皆が苦笑いをする。

「話すのは構いませんがこの森を話すには昔話をしなくてはいけないので少し長くなりますよ?」そう言いユーナは話を始めた。


 この世界。女神の星屑(セア・ヘズィーフ)は創世神が創り出した内の一つの世界。この世界には人間・亜人・獣人・魔獣・魔人・悪魔・天使・竜・精霊の9つの種族が創造され、各種族の生活を豊かにする為に創世神は魔法を与えた。魔法は火・水・雷・土・風・光・闇の7種類を基本の属性として、そして創世神は9つの種族を束ねる為、神を創った。

 神は束ねる存在の為、種族には数えられる事は無い。天使は神に仕え束ねる手伝いをする役目を与えられた。悪魔は種族ではあるが魔人と魔獣を束ねる役目を与えられた、同時に魔人と魔獣は天使と同様に手伝いの役目を与えられた。神と天使は天上から、悪魔と魔人と魔獣は地上からそれぞれ人間・亜人・獣人の繁栄を見守りながら束ねており、竜と精霊は他の種族の手助けをして平和に過ごしていた。しかし平和は突然終わりを告げた。神が創世神に反乱を起こしたのだ。反乱を起こした神を止めるべく悪魔は魔人と魔獣を従え神と戦った。天使は神に仕えている為、神に従い悪魔達と戦った。人間・亜人・獣人の3種族は両者の戦いの余波でその数を減らしていった。竜と精霊は3種族を守る為に神・悪魔の両者と戦う。3種族は竜と精霊と共に戦う決意をした。そして世界が三つの勢力に三大勢力に分かれ戦争が始まってしまった。創世神はこの事に酷く心に傷を負った。


 そして戦争を終わらせる為に創世神は三大勢力の前に姿を現し「全ては自分の責任だ」と告げ、全ての罪を背負う事で戦争を終わらせた。事実、創世神への反乱は終わりを告げ、戦争は終わった。そして創世神は「せめてもの償い」と言い、戦争によって傷付いた世界を回復させる為に世界樹と呼ばれる巨大な樹木を世界の中心に植えた。その大きさは雲より高く、山を見下ろしている。幹はそびえ立つ山々が虫の様に見える太さだ。一本でそのサイズの世界樹を創世神は9本植えた。中心の1本を8本の世界樹が等間隔で囲んでいる。等間隔と言っても1本1本の距離は各世界樹からは見えない程の距離に離れている。そして世界樹の1本1本は大地を豊かにし、戦争で傷付いた世界を癒していく。そして創世神はこの世界を去り、再び世界に平和が訪れた。


 帝は話を黙って聞いていたが疑問に思い喋り出した。

「その話とこの森に何の関係があるんだ?」

 ユーナはこの森について話すのに昔話を始めたが、この森の事は出てこなかった。その為、帝は疑問に感じた。

「この話には続きがあるんだ」

 アイナがそう言うとユーナが再び話始めた。


 世界樹により大地が癒され各種族が繁栄をして世界が再び平和を迎えていた時、三大勢力の各種族を束ねていた、神・悪魔・竜は一つの考えが脳裏をよぎった。それは「世界樹を独占する事でより種族は繁栄するのではないか?」と言う考えだった。その考えは即座に行動に移された。

 神は天使を、悪魔は魔人と魔獣を、竜は精霊と人間・亜人・獣人を束ね、再び戦争が始まった。今回の戦争は先の戦争よりも激しく、世界を傷つけ、各種族は数を減らしてゆく。戦争の中、世界樹も傷を負うが桁違いの大きさの為に大した被害ではない。そして戦争が続く中、竜が束ねる勢力に問題が起きた。人間・亜人・獣人の3種族が竜に対して反乱を起こした。竜は精霊と共に反乱による多大な被害を受けた。結果として反乱は成功した。この反乱により戦線は崩壊し竜は精霊と共に戦線を離脱せざるを得なかった。

 そして戦争は意外な結末を迎えようとしていた。3種族は他の種族に比べると決して強くはない、しかし3種族は他の種族よりも弱い代わりに繁殖能力に長けていた。他の種族は他種族とでは繁殖能力が著しく低下してしまうが、3種族は他種族とでも繁殖能力は低下せずに繁殖する事が出来る。その中でも人間は一番繁殖能力に長けていた。その為、3種族は他種族を捕らえては人間が繁殖を行い数を増やしていった。更には他種族との間に産まれた子は両親の力を受け継ぎ、戦力の増加にも繋がった。嬉しい誤算で3種族は戦力の増強をしつつ物量に頼った戦法で他種族を圧倒し始めた。そして3種族が他種族の制圧を始め戦争が終わりを迎えた時、それは突然起きた。


 何の前触れも無しに空に亀裂が出来る。亀裂は音も無く広がって行くと隙間から光の柱が降り注いだ、光の柱が消えると其処には創世神が降臨していた。創世神の創り出した世界は自然豊かな緑が多く、生き物が過ごし易い、美しい世界だった。しかし戦争の被害により美しかった世界は変わり果てた姿となっていた。先の戦争を終わらせた際に創世神が新たに植えた9本の世界樹、それらは所々に傷を負ってはいるが植えた時のまま世界に根を張りそびえ立っていた。そして世界樹を中心に大地は荒れていた。それは世界樹を中心に戦争が始まった証だった。創世神は世界を見渡し、世界中にある戦争の被害を見ると哀しみと同時に憤慨した。そして創世神は世界を再生させると共に全ての生き物を破壊し創り直した。その後、創世神は再び世界樹を取り合い戦争が起こらぬ様に各世界樹に守護者を配置した。

 そして守護者が世界樹を守りながら世界の平和を保つ様に役目を与えると創世神は再び世界を去った。


 しかし創世神はこの時重大な事を忘れていた。各種族に知恵を与えたままだったのだ。その為に再び各種族は争いを始めた。戦争程の大きな争いでは無かったが種族間での争いが頻繁に行われたのだ。神・悪魔・竜は他の種族を束ねていただけあって戦闘能力が高かった為、世界樹の守護者達も苦戦を強いられた。そして3度、創世神は現れた。

 創世神は哀れみの表情で各種族を見た。そして各種族を束ねていた、神・悪魔・竜の3種族を世界から隔離して、簡単には手が出せない様にした。更には世界樹の周りに広大な森を創り、他の種族が簡単には近づけない様に様々な魔獣を解き放った。それでも創世神は各種族から知恵を取り上げるのを悩んだ、悩んだ末に各種族の一部の者だけ知恵を残して、取り上げた。結果、各種族は意思の疎通が容易に出来なくなり、争いは激減した。そして創世神は世界を去る際に「次に現れる時は世界を消す」そう言い残して消え去った。


「これが創世神話と呼ばれ、語り継がれる昔話です」

 そう言いユーナは話を終えた。

「この森は最後に出てきた、広大な森という事か?」

 帝がそう尋ねると・・・。

「話ではそう言われていますが、実際は謎です」

「謎?どう言う意味だ?」

 ユーナの謎という言葉を聞いて、帝は聞き返すが・・・。

「先程も言いましたが、この森は話的には世界樹に近付かせない為の広大な森と言われています。ですがこの森には世界樹の様な言い伝えに残る程の大きな木が見当たらないのです」

 それを聞き帝は謎の意味を理解した。話の通りならこの森は世界樹の周りにある広大な森に間違いは無い。だが世界樹が話の通りの大きさなら、森の何処に居ようが見える筈だ、それこそ森に入らなくったって見える筈だ。しかしこの森にはその様な巨木は見当たらない。その為ユーナは謎と言ったのだ。

「魔法で見えない様になってるんじゃないのか?」

 帝は思いを口にするが皆の反応はイマイチだった。

「何故、世界樹が見えないのか?この事については世界中の学者が考えている議題の一つです。議題では世界樹は本当にあるのか?世界樹は枯れ果てたのでは?などと色んな話が出ています」

 世界樹が議題になっている事に驚く帝だが、御構い無しにユーナの話は続く。


「先程ミカドさんが言った。魔法で見えない様になっているについてですがこれは調べようが無いです。理由としてはいくつかありますが、まず魔法で見えない様にしたのが創世神であれば私達ではどうにも出来ないからです。次に仮に魔法を使ったのが、他の者なら魔法の維持をどうしているのか?神話通りのサイズの木をどんな魔法で見えなくしているのか?などが挙げられます!更には・・・」

 ユーナが帝に詰め寄りながら興奮気味に話し始めたところでアイナがユーナの肩を掴んだ。

「ユーナそこまでだ。その話はまた別の機会にしてやるとして、今はこの森についてだろ?」

 アイナがそう言うとユーナは座り直し、コホンッ!とワザとらしく咳払いをし、話を戻した。


「それでですね。この森は神話に出て来た広大な森の一つで様々な魔獣が潜んでいます。森の奥に行けば行くほど魔獣は強さが増していき、生態も変わって行きます。その為森の奥は高ランクの冒険者や勇者しか近づく事が出来ません」

 ユーナの話が終わり、たくさん喋った為、ユーナはお茶を飲み始めた。だが帝はユーナの話に気になる言葉が出てきた。そして無意識に口に出していた。

「勇者・・・」

 その言葉にアイナが食いついた。

「ミカド!まさか勇者の事も知らないのか!勇者だぞ!?冗談だろ!冗談だよな?!」

 アイナは先程、世界樹の話で興奮したユーナよりも興奮している。目が血走り、鬼気迫る表情だ。帝が驚き後退しようとするが、アイナが帝の両肩をがっちり掴み離そうとしない。それを見た、ユーナとティナがアイナを両脇から掴み、帝から引き剥がす。

「アイナ!落ち着いて下さい!」

「どうどう。アイナ落ち着きなよ〜」

 帝から引き剥がされたアイナは、お茶を飲んだ事で何とか落ち着きを取り戻した様だ。

「すまない。ミカド。だが本当に勇者を知らないのか?」

 落ち着いたアイナはミカドにもう一度確認をする。


「悪いな。全く知らない」

 帝の一言にアイナは見て分かる程にガッカリしている。

「そうか・・・。知らないのか・・・」

 そう言うとアイナは急に顔を上げ嬉々として話し始めた。

「知らないのなら、私が勇者について教えてやろう!」

 帝はユーナやティナを見て、目で助けを求めが・・・。

「知らないなら聞いといた方が良いと思うな〜」

「私も聞いといた方が良いと思います。聞いておいて損は無いと思いますよ?それにミカドさんにも関わって来ると思いますので」

 そう言い2人はアイナに話の続きを言う様に促した。

「では話すぞ!」そう力強く言うとアイナは話し始めた。


 勇者とは人族を他種族の侵略や危機から守る為に存在する人族の最高戦力の一つだ。

 勇者は8人おりそれぞれが剣・槍・斧・槌・弓・杖・銃・格闘に特化した使い手達だ。各勇者はそれぞれが高ランクの冒険者であり、かなりの強者だ。そもそも勇者とは特別な条件を満たす事で、就く事が出来る職業の一つだ。条件は不明だが満たしさえすれば、誰でも勇者になる事が出来る。他にも特別な職業はある、例えば賢者と呼ばれる職業だ。賢者は各魔法の恩恵を獲得する事で就く事が出来る。言うのは簡単だが各魔法の恩恵を獲得するのは容易な事では無い。

 そもそも各属性の魔法には人それぞれの適性があり、基本的には生涯その属性しか使用しない。何故なら適性以外の属性は獲得が難しいからだ。だが努力次第では適性以外の属性も獲得する事は出来る。話を戻そう。つまり勇者とは人族が夢見る、最高位の冒険者の事だ。


 そう言いアイナはドヤ顔で話を終えた。帝は話の中で疑問があったので質問をする。

「なぁ。勇者は人族が夢見る。って事は他の種族に勇者はいないのか?」

 帝の質問に対して今度はティナが口を開いた。

「勇者になるには特別な条件があるって言ったよね?その条件の一つが、人族である事なんだよ。だからって他の種族に勇者がいない訳じゃないよ?まぁ。正確には勇者じゃ無いけどね」

「勇者はいるが勇者じゃない?どう言う意味だ?」

「えっとぉ。さっきも言った通り勇者は人族じゃないとなれない、けど他の種族にも勇者並みに強い人がいる。だけど人族じゃないから勇者とは呼ばないだけなんだよ〜」

「じゃあ。何て呼ばれているんだ?」

「え〜と・・・。ゴメン。忘れた」

 帝の質問にティナは忘れたと言い、笑いながら左手で頬を掻いている。するとシオンが話し始めた。

「亜人は12亜将と呼ばれる亜人王、獣人は12獣団と呼ばれる獣王、魔獣は8魔星と呼ばれる魔獣王、魔人は8魔将と呼ばれる魔人王、悪魔は7つの大罪と呼ばれる魔王、天使は7つの美徳と呼ばれる天使長、竜は8大竜王と呼ばれる竜王、精霊は12星座と呼ばれる精霊、神は12神将と呼ばれる神、と各種族ごとに呼び方や人数が違ったと思いますよ?」

ティナの代わりにシオンが教えてくれた。

「種族じゃ無い神や知恵があるとは思えない魔獣にも居るのか?それに魔王って、勇者か?」

 帝はシオンの説明で不思議に感じて聞き返した。

「魔獣にも知恵がある者はいますよ?でないと魔獣同士で争いを始めてしまいますから、神は種族ではないですが勇者の様に強い者をそう呼ぶそうです。魔王は人族で言う勇者の事なので魔人たちの呼び方に意を唱えられても困りますが・・・」

 シオンはそう言い困った顔をする。


「いや、すまん。別に困らせたかった訳じゃ無いんだ。ただ俺が知ってる魔王って人族の明確な敵ってイメージがあってな」

 帝の説明に皆、納得した表情だ。

「なるほど。そのイメージはあながち間違ってはいませんね。先程、アイナが説明しましたが勇者は他種族から人族を守る存在なので他種族の勇者たちが人族の敵と言う言い方は間違ってないかも知れません」

「確かにな。まぁ、敵と言っても他種族全てが人族の敵では無いからな」

「そうだね〜。神話通りの関係性じゃない訳だしね〜」

「どう言う事だ?」

「知らないの?人族は亜人や獣人の他に竜族や精霊族とも交流してるよ?」

「そうなのか?!」

「う、うん。まぁ、どの種族も良好なのは一部だけで全体じゃないけどね」

「一部とは?」

「え〜と・・・。ユーナ!細かい話は任せた!」

どうやらティナはまたも忘れたらしい。説明役をユーナに押し付けた。

「はぁ。まぁ、良いですけど。先ず亜人ですが長耳人(エルフ)長耳黒人(ダークエルフ)吸血鬼(ヴァンパイア)蟲人(バグマン)単眼巨人(サイクロプス)は他種族との交流を好き好んで行いません。別に嫌いと言う訳ではなく、必要性があまり無いからです。

 次に獣人ですが獣人は戦闘型(バトルタイプ)補助型(サポートタイプ)に分かれまして、補助型の獣人は好意的ですが、戦闘型は一般的に人族を否定的ですね。人族以外もですが、彼らは弱肉強食のルールがあるので強さ的に自分達より弱い者を対等に見ません。獣人同士なら問題無いですが他種族全てをまず下に見ます。

 次に精霊族ですが火精人(イフリート)雷精人(ジン)土精人(ノーム)は人族が嫌いです。理由は分かりませんが下手な事を言うと襲って来ます。

 最後に竜族ですが彼等は少し特殊でして8大竜王の他に属性龍王と呼ばれる龍王達がいるのですが8大竜王は他種族全てが嫌いですが、属性龍王は人族、亜人族、獣人族、精霊族にかなり好意的です。その為、8大竜王と属性龍王は常に対立しています。

 神、天使族は基本的に他種族とは関わり合いを持ちません。ですが極稀に他種族の前に現れ力を授けるそうです。

 悪魔族、魔人族、魔獣族は基本的に他種族を敵視しています。ですが噂によると極一部の者は他種族と共存したいと考えているそうですよ?噂なので真偽は分かりませんが・・・」

 そう言い終え、ユーナは冷めたお茶を飲み、一息つく。

「・・・まぁ。各種族の勇者と関係性なんかは分かったがこの森についてはかなり広いと言う事しか分からなかったな」


「「「「「あっ!?」」」」」

 帝の言葉に対して皆が驚きの声を上げた。


「まぁ。別に問題は無いだろう?ヤバそうな奴には近づかなければいいし、いざとなったら逃げればいいし、何とかなるだろ」そう言い立ち上がる帝。

「それじゃ、ちょっと行ってくるな」

 そう言うと森へと駆け出す帝。


「ミカドさん!」

 ユーナが帝を呼ぶが、声は届かず帝は森の中に入って行った。


「いや〜。あっという間だったね〜」

「止める間もなかったな」

「ミカドさん大丈夫でしょうか?何の装備も無しに行ってしまいましたが・・・」

「ミカドなら大丈夫だろ?〈倉庫〉に武器はあるし」

「いえ。強さに関しては森の奥まで行かなければ、問題ないでしょうが・・・」

「なら、何が問題なんです?」

「・・・森が広いので、道に迷わないかと思いまして」

「「「あっ!」」」


 皆は帝の強さを疑ってはいないので魔獣相手に心配はしていないが、森の脅威は魔獣の他に森の大きさにある。森の中は景色が変わらない為、方向感覚を失いやすい、おまけに今は夜だ。ただでさえ森の中は視界が悪いのに見づらい夜に入るのだ、何の用意も無しに夜の森に入っては、通って来た道なんて直ぐに分からなくなってしまう。

「あ〜。過ぎた事は諦めよう!」

「ミカドなら何とかするだろ!?」

「ミカドさんを信じて待つしかないですね。今から追いかけても絶対に追いつけないですし、何より探しに行って私達が道に迷ったら意味が無いですしね」

「そうですね。ミカドさんなら何とかするでしょうし、私達は見張りをしていましょう?」

 皆が帝の心配をするが、帝なら何とかするだろと言う事で落ち着き、皆で談笑しながら見張りをする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ