11話 魔獣の使役と奴隷契約
転生した異世界で自由気ままに生きていく
~チートじゃない?才能です!~
1章 異世界の始まり
11話 魔獣の使役と奴隷契約
洞窟を出た帝たちは洞窟の前で話し合いを始める。
「それで、盗賊達はどうするんですか?」
「連れて行かないのは分かったがどうする気だ?」
「生かしてはおかないって言ってたけど置いて来ちゃったけど?」
ユーナ、アイナ、ティナがそれぞれ口にするが帝は気にせず洞窟の入り口の少し横に歩いて行く。
「動ける奴は居るし、ほっとけば死ぬだろうが万が一があるからな。少し離れて観ててくれ」
帝はそう言うと〈身体強化∞〉を発動させ10倍を指定する。そして入り口より少し離れた壁を全力で殴った。
ドンッ!
スゴイ音がしたと思うと帝が殴った箇所から壁一面にヒビが広がって行く。帝が続けてもう一度殴ると洞窟全体が揺れ始める。そして洞窟が崩れ始めた。洞窟が崩れ始めたのを確認した帝が振り返ると、その様子を見ていたユーナ、アイナ、ティナ、シオン、エルフ達は皆一様に口を半開きにして固まっている。因みにカーバンクルは帝の頭の上でずっとくつろいでいる。
「どうした?そんな顔して?」
帝が声を掛けると皆が一斉に喋り始めた。
「どうした?じゃないですよ⁉︎何してんですか⁉︎」
「洞窟を崩落させるとはな・・・」
「いや〜。ミカドって規格外だとは思ったけど、ここまでとは思わなかったな〜」
「ミカドさんはいつもこうなんですか?」
「「「ミカド様。凄いです」」」
(シオン以外のエルフ達は驚いてくれてるが他の連中には普通にけなされてるな。何故だ?)
「洞窟を崩落させた方が1人ずつ殺すよりも早いだろ?それに洞窟自体に用は無いしな」
帝は飄々と答え、盗賊の生き残りが居ないか〈探索者∞〉を発動し捜索する。結果、盗賊達は崩落に巻き込まれて誰1人と生きて居ないようだ。
帝が盗賊の生存を確認していると・・・。
「「「「「 ぐぅ〜〜〜」」」」」
可愛い音が辺りに鳴る。
帝が振り向くと皆一様に顔を赤くしてお腹を押さえている。いや、アイナとティナは全く気にして居ない様子だ。むしろ2人は顔を合わせると何かを企んだ顔をして帝の方を向く。
「ミカド〜。お腹減ったよ〜」
「私も腹が減ったぞ」
2人は何故か帝に腹が減ったと伝える。
「・・・何で俺に言うんだ?俺が作る訳じゃ無いんだからユーナに言うべきだろう?」
「最もな事を言うが、ミカドが助けに来たと言う事は私達3人が拐われた時、ミカドは一緒に居なかったと言う事だよな?」アイナが帝に詰め寄って行く。
「・・・そうなるな」
帝は言いながら後退して行く。
「じゃあ。質問だけど〜。その時ミカドは何処に居たのかな〜?何してたのかな〜?か弱い女の子3人を放置して〜。しかも寝てる状態で〜」
ティナがいつのまにか帝の背後におり、腰の所に抱きつき逃げられないようにする。
「・・・」帝は額に汗が出るのを感じた。
「それで?ミカドは見張り番だった筈だが見張り番をサボった挙句、私達を放置して何処で何をして居た?」
アイナが更に詰め寄る。
「・・・・・・朝食の準備をする為に材料を集めてました」
帝は朝食の材料を集めてた事だけを伝えて、魔人に出会い、戦闘になった事は伝えなかった。
「つまりは朝食を作る為に材料を集めてた訳だな?」
「じゃあ。ミカドが今日の朝食を作ってくれる訳だよね〜?」
「はい。そういう事になります」
帝は2人の圧力に負けて素直に従うことにした。
「そうと決まれば早くテントに戻って朝食にしよう!テントは私達が片付けるから、その間にミカドは朝食作っといてくれ」
「それじゃ。早く!早く!」
そう言いながらティナはミカドの背中を押して歩き始める。
帝が森の中を先頭で歩き、昨夜テントを張った場所を目指して行く。
「ミカドさん。すいません」
ユーナが帝の隣まで歩いて来て急に謝りだした。
「何がだ?」
「朝食を作って頂く事になってしまい」
「あぁ。その事は気にしなくていい。2人の言う通り作る為に材料を集めてた訳だしな」
「そうですか?ではお言葉に甘えてお願いしますね。ですが私に出来る事ならお手伝いしますので何でも言って下さいね?」
ユーナはそう言うと後ろで喋りながら歩いて来ている。アイナ、ティナ、シオン達の方へ向かう。
しばらく歩くと森を抜け、昨夜テントを張った場所が見えてきた。テントは倒れたままで他に荒らされた形跡は無かった。馬車もそのままで馬はのんびりと草を食べていた。
帝は朝食を作る準備を始める。〈倉庫∞〉から食材となる二角ウサギと朝告鳥を取り出し、首と足首に切れ込みを入れ逆さまにし血抜きを始める。血抜きをしてる間に甘い花と柑橘水を取り出す。
「ユーナ。水はどれくらいある?」
「桶に5杯くらいでしょうか?」
そう言いユーナは桶に水を入れ渡してくる。帝は確認するとユーナに指示を出す。
「鍋に半分くらい入れたら火にかけてくれ」
帝は指示を出しながら血抜きの終わった二角ウサギと朝告鳥を捌き始める。二角ウサギを角、毛皮、肉、骨と分け、朝告鳥は羽根、肉、骨と分けていく。この2種類の魔獣はオウルに聞いたところ、肉は柔らかく焼くだけでも美味いらしい、骨以外は素材として売る事で金になるらしい。骨は脆いので加工が難しい為、売っても安いらしい。その為帝は骨を削り串の様に加工する。
帝が流れる様に作業をしているとシオンとエルフ達が肉を見つめていた。帝はその視線に気付きふと思い出した。
(・・・エルフって肉が苦手なイメージだが大丈夫なのか?確認するか)
「エルフは肉が苦手なイメージがあるのだが平気か?ダメなら別の物を用意するが?」
帝がシオンに尋ねるとシオンは少し慌てながら
「だ、大丈夫ですよ!」と答える。
「苦手なら苦手と言ってくれ?無理に食べろとは言わないから」
「苦手では無いですが・・・私達も食べて良いのですか?」
「当たり前だろ?目の前で作っておいて食べるな、なんて言う訳無いだろ?それに捕まってたんだからロクな物も食べてないんじゃないのか?」
「ありがとうございます」
シオン達が帝に頭を下げてお礼を言う。その間も帝の手は止まる事なく調理を続けている。ユーナに頼んでおいた水が湧いたので朝告鳥の肉とユーナ達が持っていた玉葱と人参に似た野菜?を入れていく。灰汁を取りながら出なくなるまで煮込むと鍋からいい匂いがし始める。
帝は鍋に蓋をすると二角ウサギの肉を骨の串に刺すと鍋を沸かしている火の周りの地面に刺しながら並べて行く。焦げない様に気を付けながらじっくりと焼いているとテントを片付けていたアイナとティナが此方に向かって来ていた。
「やっと終わったよ〜。疲れた〜」
「流石に2人で片付けるのは時間がかかるな」
「仕方無いだろ?この人数の料理だからな、人手が必要なんだ」
「わかってはいるが・・・。それよりも朝飯はできたか?」
アイナはできたか確認してくるが鍋とその周りにある肉を見てできてると確信しているのだろう。妙にそわそわしている。
「おぉ!凄い美味しそう!早く食べようよ〜!」
ティナがいつのまにか鍋の蓋を開けて中身を確認している。
「そうだな。肉も焼けたみたいだし、少し遅いが朝食にするか」
帝が言うとアイナとティナは自分の取り皿に鍋の中身をよそい始める。
「そうガッツくな。2人が食う事を考えて量を多めに作ってある」
アイナとティナは自分達の分だけよそうと串も片手で2、3本ずつ持っていく、ユーナはシオンとエルフ達の分をよそっており、帝はシオン達に串を渡している。
「「美味〜い!」」
アイナとティナが食べた途端急に叫んだ。
「何だ!このスープは!美味すぎる!」
「この肉も凄いよ!中まで火が通っているのに全然硬く無いよ!それどころか噛むと口の中に肉汁が広がるよ!」
どうやら2人はお気に召したらしい。2人を見ていたユーナとシオン達も気になっている様子だ。
「どうした?食べないのか?遠慮なく食べてくれ!」
帝が言うとユーナとシオン達はゆっくり食べ始めた。
「何ですか⁈このスープは⁈こんなに美味しいスープは初めてですよ!」
ユーナがスープを大袈裟に褒めている。シオン達を見るとシオン以外のエルフ達は皆が口々に美味しい!と言っているがシオンだけ俯いてプルプルと震えている。
「な・・・」
「な?」
「何これ⁈何これ⁈こんな美味しいの王宮でも食べた事無いよ⁈どうしたらこんなに美味しくなるの⁈こっちのお肉はキチンと火が通ってるのに全然硬く無い⁈ただ焼いただけなのになんで⁈どうして⁈」
( ・・・シオンがおかしくなった⁈変な物が混ざってたのか?でも同じ物を皆食べてるしな・・・)
帝がシオンがおかしくなってしまった原因を考えていると・・・。
「「「「シオン様⁈口調が⁈」」」」と周りのエルフ達に言われ慌てて口元を手で押さえるシオン。そして佇まいを直すとコホンッと咳払いをして・・・。
「どの料理も美味しいですね。王宮でもこんなに美味しい物は食べた事が無いです」
「「「「・・・・・・」」」」
帝、ユーナ、アイナ、ティナの4人が黙ってしまう。少し間を開けてそれぞれが喋り出す。
「ま、まぁ。王宮でも食べた事が無い程の料理を帝が作ったと言う事だな!」
「そ、そうですよ。帝さんの料理はそれだけ美味しいと言う事ですよ!」
「そ、そうだよ帝!王宮でも出ない程の料理の腕って事だよ!凄いよ!」
(3人は何が何でもシオンの口調については触れないつもりらしいな。なら敢えて触れてみるか?面白そうだし・・・)
「まぁ。料理を褒められるのは嬉しいが、俺としては口調が変わる程に料理が美味かったと言う事の方が嬉しいな」
帝がそう言うとシオンは顔を真っ赤にし両手で顔を覆い隠す。顔を隠しているが耳の先まで真っ赤にしているのが丸見えだ。顔を隠したまま顔を左右に振り嫌々みたいな動きをしている。帝が可愛いなと思いながらその光景を見ていると・・・。
「ミカドさん!何で口調に触れるんですか⁈わざわざ言い直すと言う事はそれだけ恥ずかしかったと言う事てすよ!」
「そうだぞ!ミカド!恥ずかしいから言い直したと言うのにわざわざ掘り返すな!」
「ミカド〜。駄目だよ?乙女心を分かってあげないと〜」
ユーナ、アイナ、ティナの3人に駄目出しを言われるが・・・。
「・・・言っとくが3人がトドメを刺したからな?」
言われた3人はシオンの方を見ると膝を抱えて俯いてしまっていた。3人は他のエルフ達と共にシオンのフォローを始めるがシオンは俯いたまま回復する気配が無い。その為、帝もフォローを始める。
「シオン。触れといて何だが、口調の事は気にするな?俺は別に変とは思わなかったぞ?寧ろ可愛いと思ったくらいだ。
それに口調は個性だろ?まぁ、詳しくは分からないが王族だから丁寧な口調で無ければいけない、その為に口調の矯正が必要なのは、分からなくは無い。ふとした拍子に素が出ると言う事はその口調がシオンには合ってない事の証明だろう?なら別に無理して変える必要は無いんじゃないか?」
帝がそう言うとシオンはゆっくりと顔を上げた。そして上目遣いで帝の顔を見るとゆっくりと口を開いた。
「・・・本当にそう思う?」
そう言い帝の様子を伺っている。
「あぁ。さっきも言ったが無理に合わない口調にする必要は無いだろ?」
帝が言うとシオンはコチラを見たまま動かない。
「・・・一応言っとくが可愛いと言うのも本当だからな?」
帝は少し間を開けて後頭部を右手で掻き照れながら言った。それを聞いたシオンは再び耳の先まで赤くすると少しだけ俯き、帝に顔が見えない様にする。そしてか細い声で・・・。
「あ、ありがとうございます・・・」とだけ言った。
帝とシオンのやり取りを見ていた他のエルフ達は笑顔で見守っているが、ユーナ、アイナ、ティナの3人は無言で帝を睨みつけていた。帝は睨まれる理由に心当たりが無いので素直に聞いてみる。
「・・・何で俺は睨まれているんだ?」
「「「・・・別に?」」」
3人はそれだけ言うと食器の片付けを始めた。それを見ていたエルフ達はクスクスと笑うと片付けの手伝いを始めた。
(何なんだ?俺が何をした)
因みにカーバンクルはその間、帝の側で何かの木の実を食べていた。
片付けが終わり食後の休憩に帝以外の面子で雑談をしていると盗賊のアジトでの話になっていた。するとアイナが突然、帝の方を振り向き話かけてきた。
「そう言えばミカド!戦闘の時に使っていた二振りの剣は何なんだ⁈魔剣か?いいや魔剣だろ!と言うよりも出せ!見せろ!」
「分かったからまず落ち着け!」
そう言うと帝は〈倉庫∞〉から火と氷の魔剣を取り出しアイナに渡す。
「剣にしては軽いな?だがこの軽さならば片手でも使えるな」
魔剣を受け取り軽く振り出すアイナ。それを見てティナも「私も持ちたい」と言い出しアイナが手渡す。
渡されたティナも「確かに軽いね〜」と言い軽く振っている。皆が持ちたいと言い出し魔剣は各々の手に周り試し振りされる。手元に戻って来たので〈倉庫∞〉に仕舞おうとすると・・・。
「その魔剣の名は何て言うんだ?」とアイナに質問された。
(名前?名前なんて考えてなかったな・・・。そもそも怒りに任せて造った魔剣だから恩恵も能力も分からないし。取り敢えず・・・)
「火の魔剣がフレイムで。氷の魔剣がアイスだ」と適当な名前を付けて説明する。
「フレイムにアイスか良い名前だな」
(良い名前なのか?適当に付けた名前だから分からないが・・・。まぁ、この世界の事はまだよく分からないし良い名前と言うなら良い名前なのだろう)
「その魔剣はどんな恩恵が付与されているんだ?良ければ教えてくれないか?」
「別に構わないが・・・」
そう言い帝は魔剣のステータスを開示した。
火の魔剣フレイム(創造されし剣)レア度SSS
〈不壊〉〈火属性〉〈攻撃力強化〉〈斬撃強化〉
〈火属性強化〉〈重量軽減〉
氷の魔剣アイス(創造されし剣)レア度SSS
〈不壊〉〈氷属性〉〈攻撃力強化〉〈斬撃強化〉
〈氷属性強化〉〈重量軽減〉
(・・・まぁ。予想通りの壊れた性能だな。この能力なら苦戦する相手を探す方が難しいくらいか)
帝が魔剣の能力を確認していると一緒に見ていたアイナ達が突然声を荒げた。
「何だ⁈この魔剣は⁈」
「凄いってレベルじゃ無いですね・・・」
「帝も規格外だけど武器も規格外とはね〜」
「凄いです!正直言って私達エルフの里の宝剣と同等かそれ以上の性能ですよ!」
(どうやら怒りに任せて造った魔剣はエルフの里の宝剣と同等かそれ以上の性能らしい。・・・使うの控えた方が良さそうだな)
「こんな性能の魔剣、何処で手に入れたんだ⁈」
「アイナ〜。そんなの遺跡かダンジョンに決まってるじゃん」
「そうですよ。こんな性能の魔剣が売ってる訳が無いじゃないですか?」
「確かにこの性能なら遺跡かダンジョンにしか無いでしょうね」
やはりこの魔剣の性能はぶっ飛んでいるようだ。
「因みに売ってたとしたら幾ら位すると思う?」
「そんな事は有り得ないでしょうが・・・。そうですね・・・。王金貨、いえ星金貨でも足りるかどうか。少なく見積もっても一国が用意できる金額を超えていますね」
(成る程。王金貨、星金貨がどれ位の額か分からないがとんでもなく高いと言うのは伝わったな)
オウル:マスター。星金貨はこの世界での通貨で一番高額な通貨です。因みに下から順に銭貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、王金貨、星金貨となっています。大銀貨までは10倍で一つ上の通貨に変わります。金貨からは100倍で上の通貨に変わります。
(なんとなくだが高価な物と言う事は分かったかな?まぁ、地球とは価値観が違うだろうからその辺はどうでも良いが後々問題になりそうだから王都に着くまでに〈所有者固定〉を付けておくか?)
「ミカド。金額は置いておくにしてこの魔剣はそうそう使わない方が良いぞ?」
「確かにそうだね〜。危ない奴らに目を付けられるしね〜。その辺のなら大事だろうけど王族や貴族が相手だと面倒だからね〜」
「分かった。まぁ、余程の事が無い限りは使わない事にするさ」
そう言い帝は魔剣を〈倉庫∞〉に入れた。
「ところでミカドさん?カーバンクルに名前を付けないのですか?」
「名前?」
「はい。名前を付けないと魔獣は言う事を聞きません。現在カーバンクルはミカドさんに懐いてるだけですので言う事を聞かない可能性が有ります。それに魔獣は使役しないと王都に入る事が許可されませんし、カーバンクルなら使役されていないと分かったらまず捕獲され殺されてしまいます」
「そうなのか?だけど使役ってどうすれば良いんだ?使役の仕方なんて知らないぞ?」
「ちょっと待って下さいね。確か荷物の中に使役の石があったと思うので・・・」
そう言うとユーナは馬車の荷台に積んである袋を漁り始めた。
「確かこの袋に・・・ありました!」
そう言い手に小さな白い石を持って戻って来た。
「これが使役の石か?」
帝はユーナから使役の石を貰うとつまみ上げ観察する。使役の石は3cm程の大きさで白と言うよりは透明に近い白だ。
太陽の光にかざすと薄っすらとだが透けている気がする。
「使役の石は名前の通り魔獣を使役する為の石です。使役したい魔獣によって石のサイズは変わりますがカーバンクルならこのサイズで大丈夫だと思います」
「それで?使役するにはどうすれば良いんだ?」
「使役の石をカーバンクルにかざし「我と使役の契約をしたまえ」と唱えると石が光だし、成功すれば石が砕け散ります。それで使役完了です!」
「失敗するとどうなるんだ?」
「大丈夫だと思いますが・・・。失敗すると石が黒く染まり使用する事が出来なくなります」
「それだけか?何か悪い事が起きるとか、そう言うのは無いのか?」
「強い魔獣なら失敗した際に使用者が死ぬ事が有りますが・・・。そういった事が起きないように成功確率を上げてから行いますので失敗の話は全然聞きませんよ?」
「成功確率はどうやって上げるんだ?」
「いろいろありますが・・・。一般的には魔獣を弱らせる事でしょうか?後は懐いてる魔獣なら確実に成功するので懐かせる事ですかね」
「そうか取り敢えず分かったしやってみるか!」
そう言い帝は側にいるカーバンクルに使役の石をかざし「我と使役の契約をしたまえ」と唱える。すると石は光だして砕け散った。
「成功です!後は名前を付けて完了です」
「名前か・・・」
(カーバンクル、緑、リス・・・あ!)
「カリスってどうだ?」
そう言うとカーバンクルは喜び帝の頭の上まで駆け上がった。
「喜んでるみたいだな」
「名前気に入ったみたいですね」
「カリスか良い名前だね〜」
帝が頭の上にいるカリスの頭を撫でているとシオンが「ミカドさん。カリスちゃんのステータス確認しといた方が良いのでは?使役した魔獣のステータスは使役者が好きに開示出来ますし、私が気になります!」と言ってきた。
「そうだな。カリスがどの位の強さか見ておくか!」
そう言い帝はカリスのステータスを開示する。
カリス Lv 7
種族 カーバンクル(使役魔獣)
HP 217 MP 221 ATK 191 DEF 199
AGI 201 MAG 222
〈不運Lv90〉〈幸運Lv 11〉
(・・・見事に運だけの恩恵だな。ステータスも平均的だが低いな。ステータスだけならゴブリンやオークに勝てるかもしれないが恩恵がな・・・。〈不運Lv90〉ってカンスト寸前だし、名前がなぁ・・・)
オウル:〈不運〉とは名前の通り不運が起きる恩恵です。起きる頻度はLvが高くなる程、頻繁になります。
( 〈幸運〉もあるがどうなるんだ?)
オウル:〈幸運〉と〈不運〉の両方を所持している場合はLvの高い方が発動確率が優先されます。つまりカリスの場合9割の確率で〈不運〉が発動し1割の確率で〈幸運〉が発動すると言う事になります。
「〈不運〉がLv90⁉︎これは酷いな」
「〈幸運〉はLv 11ですか・・・。これでは〈不運〉ばかりが発動してしまいますね・・・」
「〈不運〉も〈幸運〉も常時発動の恩恵だからどうにもならないしね〜。認識発動の恩恵なら発動する、しないを選べるのにねぇ〜。だけど、まぁ、10回に1回は〈幸運〉が発動する訳だし発動しないよりは良いのかなぁ?」
「もしかしてカリスちゃんが大人しいのって〈不運〉のLvが高いのを何となく理解してるからですかね?」
「どう言う事だ?」
「つまり〈不運〉のLvが高い為、何かする度に悪い事が起きる。だから悪い事が起きない為に大人しくしている方が良いと本能で理解しているのかなと思いまして・・・」
「一理あるな。まぁ、カリスに聞かないと分からないが・・・。カリスの恩恵はどうにもならないから仕方ないとして、1つ確認したいんだが?良いか?」
「「「「確認?」」」」
帝はカリスの話を終わりにし、気になった事を皆に確認する。
「あぁ。ふと思ったんだが、確かエルフは珍しいんだよな?そうなるとシオン達をこのまま王都に連れて行くと騒ぎにならないか?」
「「「「あ!」」」」
帝の疑問は予想通りだったらしく皆が同じ反応をし慌て始めた。
「やっぱりか・・・。そうなると魔剣以上に目を付けられるな。それこそ奴隷商人とかに絡まれる気がするぞ?」
「ど、どうしましょう?」
「せっかく助けたのにそれでは意味が無いしな」
「ミカドが居れば捕まる事は無いと思うけど・・・。万が一離れた時に狙われたら私達3人じゃ、どうにも出来ないし・・・」
帝の発言に対して皆がそれぞれ思いを口にするが答えは出ない様だ。
帝は考え込むが答えは出ない。そこで帝はオウルに聞いてみる事にした。
(オウル。どうにか出来ないか?)
オウル:マスターが先程奪取した〈奴隷術〉で王都を出るまでの間マスターの奴隷にすると言うのどうでしょうか?〈奴隷術〉が掛かっていれば万が一に捕まっても奴隷の居場所は分かります。それに奴隷からの解放もマスターの意思で簡単に出来ますので。
(〈奴隷術〉か・・・。提案するだけしてみるか)
帝はオウルに聞いた事を皆に提案してみた。
「一時的な奴隷ですか・・・」
「成る程な。それならどうにかなるか・・・」
「提案の内容も凄いけど・・・。それよりもミカドが〈奴隷術〉を持ってるのが一番驚いたんだけど?」
「それに関しては何も言えないな・・・。知らない間に所持していたとしか言えないが?」
「知らない間、と言う事は巻物で獲得しいたとしか思えないですね」
「巻物?」
「巻物は遺跡やダンジョンで手に入る物で中身は恩恵に関して書かれていて、中身を見た者に書かれている恩恵を付与する事が出来る物です」
(成る程、巻物でも恩恵を獲得出来るのか)
「ミカド?巻物なんて何処で手に入れたんだ?」
「アイナ?そんなの魔剣手に入れた場所に決まってるじゃん。中身は鑑定をしないと、どんな恩恵か分からないから偶然開いて見ちゃったとかでしょ?」
(巻物は鑑定しないと分からないのか面倒だな・・・)
「あの〜。それも気になりますが奴隷の件について何ですが・・・」
「あぁ、すまない。それで構わないか?」
「それなんですが・・・。王都を出るまででは無くエルフの里に帰るまでにしてもらえませんか?」
シオンは一時的な奴隷を王都を出るまでではなくエルフの里に帰るまでと言い出した。
「理由を聞いても?」
「はい。王都に居る間はそれで構いませんが、万が一王都を出た後に攫われたらと考えまして・・・。奴隷の解放はミカドさんの意思との事ですし、いつでも解放出来るならその方が安全かなと思いまして・・・」
「確かにその方が安全か・・・。分かったシオン達がそれで構わないなら俺としては何も問題はない」
帝かシオンの提案を受け入れ〈奴隷術Lv45〉を発動するが・・・。何も起きない。
「???。何も起きないぞ?」
「ミカドさん?奴隷にするには〈奴隷術〉の奴隷契約を発動しないと意味ないですよ?」
「そうなのか?流石に使った事が無いとやり方が分からないものだな」
帝はそう言い再び発動させようとすると・・・。
「ミカドさん!待って下さい!」
「今度は何だ?」
「奴隷契約には主人になる者の血が必要です。因みに1滴で十分ですよ」
「そうなのか?奴隷契約って面倒だな。まぁ、いいや血が必要なんだな?」
帝はそう言い〈倉庫∞〉から魔剣を大量生産した時に作った。名も無き剣(創造されし剣)を取り出し指先を軽く切った。指先から血が数滴、地面に垂れる。そして帝が奴隷契約を行う為〈奴隷術〉を発動させると、帝を中心とした魔法陣が発生する。魔法陣の中にはシオン達、エルフの全員の他にユーナ、アイナ、ティナの3人も入っている。
「ミ、ミカド⁈」
「待って、待って!」
「ミカドさん!待って下さい!」
ユーナ、アイナ、ティナの3人が魔法陣の中に入っている事に気付いていない帝は〈奴隷術Lv45〉の奴隷契約を発動してしまう。魔法陣が光だす。そして魔法陣が消えた後、魔法陣の中にいた帝以外の右手の甲に奴隷の証である奴隷紋が浮かび上がった。