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10話 盗賊、初の人間との戦闘、その2

      転生した異世界で好き放題に生きていく

       ~チートじゃない?才能です!~

         1章 異世界の始まり

     10話 盗賊、初の人間との戦闘、その2


(オウル。俺の使える魔法の中に防御魔法はあるか?)


オウル:〈風魔法〉の初級魔法。風の盾エア・シールド風の鎧エア・アーマー。中級魔法の竜巻の防壁トルネード・ウォール竜巻の鎧トルネード・アーマー。〈聖魔法〉の聖なる防壁ホーリー・ウォール絶対なる聖域アブソリュート・サンクチュアリがあります。


(その魔法の効果と効果範囲は?)


オウル:風の盾は自身の正面に風を生み出し遠距離攻撃を逸らします。風の鎧は自身に風を纏う事で全ての攻撃を逸らします。2つとも逸らすなので攻撃が当らなくなる訳では無いのでご注意下さい。竜巻の鎧は風の鎧の上位魔法で魔法の相性や術者のLvによりますが魔法攻撃を跳ね返す事が出来ます。竜巻の防壁は自身を中心に強風を発生させ外からの攻撃を逸らします。聖なる防壁も自身を中心に見えない壁を発生させ攻撃を防ぎます。絶対なる聖域は自身を中心に見えない壁を発生させ攻撃を防ぎ、術者が味方と認識した者のHPとMP、さらに傷を回復させます。回復量は術者の魔力により上下します。


(分かった。なら囲まれる前に・・・)


 オウルから魔法の効果を聞いた帝は男達に囲まれる前に防御魔法を発動させる。


絶対なる聖域アブソリュート・サンクチュアリ

 帝が絶対なる聖域を発動させると帝を中心に緑色の淡い光が発生し広がって行くと男達の手前で止まる。


「何だこの魔法?」

「見た事ねぇな?」

「防御魔法じゃねぇのか?」

 男達は絶対なる聖域を知らない様でどういう魔法か話している。すると奥に居る魔法使い風の男が・・・。

絶対なる聖域アブソリュート・サンクチュアリだと!?馬鹿な!!ありえん!!」

 魔法使い風の男は急に声を荒げた。

「どうしたマボス。急に声を荒げて?」

 お頭にマボスと呼ばれた魔法使い風の男は・・・。

「オルマウ・・・逃げるぞ。あのガキはヤバい、かなりヤバい・・・捕獲以前の問題だ」

 マボスにオルマウと呼ばれた盗賊のお頭は・・・。

「ヤバいって・・・ただのガキだぞ?何がどうヤバいんだ?」

「・・・あのガキが使った魔法。絶対なる聖域あれは・・・〈回復魔法〉の最上級魔法だ。より正確に言えば〈回復魔法〉の上、〈聖魔法〉を獲得した証である魔法だ」

 マボスはオルマウに説明をしているが横に居る貴族風の男はマボスの話を聞き興奮している。

「〈聖魔法〉を使える!?ならかなりの高値が付くはずです!」

 貴族風の男は下っ端達に「死なない程度に痛めつけて捕獲してください!金貨100枚上乗せしますから!」と言い出した。帝を諦める気は無いようだ。


「金貨100枚!!」

「マジか!」

「当分、遊んで暮らせんぞ!」

 下っ端達は金貨100枚と聞いて目の色を変えている。下っ端達は武器を手にして戦闘の準備を始めた。その様子を見ていた帝は・・・。


(下っ端18人、奥に3人・・・。まぁ1人は戦力にならないだろうが・・・。確認はしとくか〈神眼〉)



オルマウ Lv35

種族 人間 職業 盗賊

HP 1917 MP 902 ATK 1421 DEF 1281 AGI 2098 MAG 878 LUK 922

〈敵感知Lv39〉〈剣術Lv38〉〈潜伏Lv41〉〈格闘術Lv36〉

〈幻術魔法Lv31〉〈毒攻撃Lv29〉〈統率者Lv22 〉

〈威圧Lv31〉


マボス Lv32

種族 人間 職業 魔法使い

HP 929 MP 1985 ATK 534 DEF 657 AGI 776 MAG 2011 LUK 880

〈火魔法LV34〉〈風魔法Lv31〉〈土魔法Lv31〉

〈詠唱短縮Lv41〉〈精神回復Lv32〉〈補助魔法Lv23〉


マルク Lv11

種族 人間 職業 奴隷商人

HP 210 MP 210 ATK 178 DEF 162 AGI 232 MAG 3640 LUK 2008

〈奴隷術Lv45〉〈幸運Lv43〉〈観察眼〉


(・・・貴族じゃなかったのか。奴隷商人、それで3人を捕まえたのか・・・。いや、それよりもLvに対してMAGとLUKが異様に高いな。・・・関係ないか。オウル。ユーナ達に被害が出ずに済む攻撃魔法はあるか?)

 

オウル:被害を出さないとなると〈風魔法〉の風の弾エアショットが最適かと思われます。ですがこの人数ならマスターが直接戦闘を行うのが一番最適だと思われます。


(確かに俺が直接戦う方が一番速く安全か・・・)


 オウルとの会話を終えた帝は下っ端達の前まで歩いて行くと絶対なる聖域アブソリュート・サンクチュアリとの境界を跨いだ。

 それを帝の目の前で見ていた下っ端の1人が「馬鹿かコイツ?防御魔法の結界から出たら意味が・・・」無いだろと続く筈の言葉は続かなかった。

 下っ端の男の言葉は「パンッ!」と言う破裂音によりかき消された。

 離れた所に居る、オルマウ、マボス、マルクの3人、それと捕まっている、ユーナ、アイナの2人は離れていた為に下っ端の頭が弾けたのを確認する事が出来たが何故弾けたのかは分からない。5人が帝を見ると帝の右手が肩の高さまで上げられていた。5人は帝が何かをした事だけは理解する事が出来たが何をしたのかは分からない。帝の近くに居た下っ端達は何が起きたのか分からず立ち尽くしている。

 帝は立ち尽くしている下っ端達を無視して〈創造者〉の恩恵を発動し両手に剣を創り出した。両手の剣は黒を主体としているが右手の剣には赤い波紋があり熱気を放っている。左手の剣には青い波紋があり冷気を放っている。そう帝が創り出したのは炎と氷の相対する2本の魔剣だ。下っ端達は帝が武器を持っている事に気づくと仲間が1人殺された事にも気づき騒ぎ始めた。


「何が起きた?」

「頭が破裂した?」

「それよりもあいつ武器なんて持ってたか?」

「あの武器何処から出した?」

 下っ端達は帝を見て思いを口にするが帝は気にせず両手の剣を振るい始める。

 下っ端達は帝が動いた事に反応が遅れ、逃げる暇もなく次々と斬られ戦闘不能に陥る。炎の魔剣に斬られた者は傷口が火傷を負い止血されるが切傷と火傷の痛みで苦しみ、氷の魔剣で斬られた者は傷口が凍りつき止血され切傷と凍傷による痛みで苦しんでいる。

 帝は下っ端達、全員を戦闘不能にするとオルマウ達の方へと歩み始める。オルマウとマボスはそれぞれの武器を手にして戦闘態勢に入っている。


「・・・オルマウどうする気だ?通路はあいつの防御魔法の範囲内だから通る事が出来ないぞ?」

「破壊は出来そうか?」

「無理だな。あの魔法を破壊しようにも俺らじゃ火力が全然足りない・・・が手が無くはない」

「どうすればいい?」

「あの魔法はかなりの集中力を必要とするはずだ、だから奴の集中を一瞬でも切らす事が出来れば魔法は自然に解除されるはずだ」

 2人は帝を相手に逃げる気の様だ。だがマルクは・・・。

「その男を殺さないで下さいよ!?その男は高く売れる!必ず捕まえて下さい!」

 逃げるどころか帝をまだ捕まえる気でいるらしい。「・・・オルマウあいつはどうする?」

「知るか、あんな馬鹿は放って置け。逃げるのが最優先だ」

「了解だ」

 2人は話し合いを終えると戦闘を開始する。

 オルマウは大剣を片手で持つと〈幻術魔法〉の分身アバターを発動しオルマウが3人に増える。マボスは〈補助魔法〉の攻撃強化アタッカー防御強化ディフェンダー速度強化スピーダーの3つを〈詠唱短縮〉の効果で次々とオルマウを対象に発動してゆく。オルマウの補助を終えると〈火魔法〉の火の弾ファイア・ショットで帝への牽制を行いオルマウを援護する。

 マボスの〈補助魔法〉により強化されたオルマウは分身と共に帝へと接近し3方向から大剣を振るうが、帝は両手の剣で左右のオルマウを一太刀で切り伏せるが左右のオルマウは分身であり煙の様に消えてゆく、帝は正面のオルマウを炎の魔剣で上下に両断した・・・がそれはオルマウが分身に隠れてさらに発動していた分身だった。オルマウは帝が怯んだと思い大剣を横薙ぎする。マボス、それにユーナ、アイナ、ティナ、シオンの5人はこの一撃で帝が死ぬと確信した。オルマウもこの一撃で帝の体を両断できると確信しさらに腕に力を込める。そしてオルマウの放った一撃は・・・空を切った。

 マボス、それにユーナ、アイナ、ティナ、シオンの5人は離れて見ていた為に帝がオルマウの背後に移動しているのが見えた。いや、正確には移動した後の姿を確認したのだ。攻撃を放ったオルマウは目の前に居たはずの帝を見失った。オルマウの背後に移動した帝は〈強欲な剥奪者〉を発動し、氷の魔剣でオルマウの胴を目掛け横薙ぎに払った。オルマウは帝に気づいておらず容易く攻撃を受けてしまった。帝の攻撃でオルマウは体を上下に両断されるが傷口が瞬時に凍りつき止血されてしまい絶命する事が出来なかった。帝はそのまま反転しマボスへと接近する。

 マボスは咄嗟に右手を突き出し魔法を唱えるが間に合わない。帝は氷の魔剣を上段から振り下ろし、マボスの右手を肩口から切断する。マボスは左手で傷口を抑え膝をついた。帝はマボスへと近づき炎の魔剣を突き付けながら喋り始める。


「・・・まだ、続けるか?」そう言ってはいるが帝の顔は無表情ながらも殺意を放っている。

 問われたマボスは・・・。

「・・・お、俺たちの負けだ。このアジトに有る物は全部やる!だ、だから、命だけはどうか・・・」

 マボスが帝へ命乞いをしていると。

「何を勝手な事を言っているのですか!?前金を払っているのですよ!?金次第で何でもすると言ったのはあなた方でしょう!?たかが子供1人に何をしているのですか!?」

 マルクがオルマウとマボスを怒鳴り散らす。帝がマルクの方を見ると、いつの間にか移動しておりアイナとユーナの側に居た。剣を手にしておりユーナに切っ先を向けている。


「こうなったら!仕方ありません!そこから1歩でも動いたら、この娘を殺しますよ!?」

 マルクはそう言いながらユーナの喉に剣を突き付ける。それを見た帝は氷の魔剣を〈倉庫∞〉にしまい、マルクの方を向くと〈縮地Lv92〉を発動してマルクへ接近し、マルクの喉を左手で掴むと力を入れ、壁に押し付ける。


「がっ!」

 マルクは喉を掴まれた為に剣を手放してしまい。両手で帝の左手を掴み抵抗するが力の差がある為、全く意味をなさない。

 帝は左手に力を入れながら、ドスの効いた声で話す。

「・・・お前、今なんて言った?俺にはユーナを殺すと聞こえたんだが?聞き違いか?」

 帝から更に濃厚な殺意が放たれる。帝は殺意を放っているが本人は無意識の為にコントロールが出来ていない。その為、この空間に居る者全てが帝の殺意をその身に受けてしまう。至近距離で受けたユーナとアイナは気絶してしまい、少し離れているマボスでさえ既に意識を失っている。入口の方に居るティナやシオンでさえ体の震えが止まらず、歯がカチカチと音を鳴らしている。その側で戦闘不能になっていた下っ端達は既に意識を手放してしまっている。そして帝に首を掴まれたままのマルクは意識を失い失禁している。場を支配していた帝の殺気が薄れてゆき霧散する。

 帝は心を落ち着かせるとマルクを投げ捨て、ユーナとアイナに繋がっている鎖と阻害の首輪を破壊して外す。帝は2人を壁際に寝かせると周囲を見渡し確認する。


(確か後6人捕まってる筈だが見当たらないな・・・。〈探索者∞〉で捜すとするか・・・)


 帝は〈探索者∞〉を発動し捕まっている筈の残りの6人を捜す。〈探索者∞〉で捜した結果はユーナとアイナが繋がれていた壁の少し離れた右側の壁の向こうだった。帝は反応のあった壁の前まで来ると壁を触って確認する。壁はただの岩壁でこの洞窟の入り口の時の様に〈幻術魔法〉で隠されている訳では無かった。帝は力を入れ壁を押してみる。するとズズズッと音を立てて壁は奥に動いた。岩壁は後ろ側が扉になっており右側に開いて行く。扉の先は光量が確保されており中の様子が視認できる。中にはシオン達が捕まっていた牢屋が2つ並んでいる。右側の牢屋には木箱がいくつか積まれている。そして左側の牢屋には探していた6人が囚われていた。

 帝は左側の牢屋に近づいていく、牢屋の中は緑色の髪をした子供たちが6人いた。囚われている6人は帝を見て怯えている。帝は牢屋の扉を力づくでこじ開けると中の6人に対して「安心してくれ。俺はシオンに頼まれて君たちを助けに来た」帝がそう言うと子供の1人が「シオン様は無事なのですか!?」と食い掛る勢いで詰め寄って来た。

 帝は少し引きながら「あ、あぁ。シオン達、別の所に捕まっていた6人は無事だ。シオン達もこの部屋の外に居る。それに盗賊達は全員倒したから安心して出て来てくれ」

 帝はそう言うと部屋を出て行きシオンを呼ぶ。シオンとエルフ達は帝に呼ばれ部屋の前まで来る。そして部屋の中から子供たちが恐る恐る出て来るとシオン達は子供たちに駆け寄り抱きしめる。子供たちはシオン達に抱き着くと泣き出した。

 帝はティナを呼びもう1つの牢屋の中の木箱を確認してゆく。木箱の中は盗賊が襲った者達の物であろう武器や防具、服に装飾品が入っていた。

 木箱の中を確認していると「ミカド、助けてくれてありがとう」ティナが帝にお礼を言った。

 帝は「気にするな、と言っても無理だろうが・・・仲間を助けるのは当たり前だろ?」と素っ気なく答える。

「それはそうだけど・・・それでも!帝のおかげで私は命が助かったんだし、お礼を言うのも当たり前でしょ?」

 ティナはお礼を言うのは当たり前だと返す。帝は照れるのを隠しながら「分かった。感謝されとく」と言い「うん。感謝する」と言いティナは木箱の確認の続きをする。

 帝が木箱の中を確認していると「ミカド!ちょっと来て!これ見てよ!」ティナが呼ぶのでそちらへ行き木箱の中身を確認すると小さな檻が入っていた。

 檻の中には手の平サイズの耳の長いリスの様な生き物が入っている。帝は檻を取り出し中の生き物を観察する。生き物は全身が白の体毛で覆われており、見た目はリスだが耳がウサギの様に長く、目は赤い、そして生き物にはある筈の無い物が額の位置に付いていた。赤く光る宝石だ。

 帝がマジマジと生き物を観察していると・・・。


「多分だけど・・・カーバンクルだと思う」

 ティナが自身なさげに答える。

「カーバンクル?」帝が首を傾げながらティナの方を向く。

「うん。カーバンクル。前に図鑑で見た事があるけど・・・実物を見るのは初めてだから自信は無いけど。でも特徴が一致してるからあってると思うよ?」

 ティナが図鑑で見た特徴と一致すると言う。

「特徴?」と帝が聞くと「そう。確か図鑑で見たのだと額の所に赤い宝石がついていてぇ、白い体毛で耳が長くてぇ、目が赤い魔獣だって書いてあった」と図鑑の内容を思い出しながらティナが説明してくれる。

「それでカーバンクルだったか?こいつは危険な魔獣なのか?」

 帝が檻の中のカーバンクルを見ながらティナに聞くと。

「図鑑に書いてあったのだと、全く危険は無いみたいだよ?」とティナが答える。

 ティナの話を聞いた帝が檻の入り口を力任せにこじ開ける。


「フーッ!フーッ!」


 カーバンクルは歯を剥き出しにして威嚇しているが檻の隅から動こうとしない。

 帝はカーバンクルを掴もうとして指先を噛まれる。

「痛っ!く無いな?あぁ、DEFとATKの差か」

 そう言いカーバンクルの体を優しく掴み檻から出す。その間カーバンクルは帝の手を引掻いていた。

 帝は気にせず持ち上げる。


「ん?」

 帝がカーバンクルを持ち上げると右後ろ足の毛に血が滲んでいた。

「怪我してるのか?」

 そう言い帝は上級回復ハイ・ヒールを唱えカーバンクルの怪我を治す。カーバンクルの怪我を治すと帝は掴んでいた手を放し足元に放す。カーバンクルは地面に降り立つと帝に威嚇するが急に丸まり自分の後ろ足を確認し怪我が治っているのに気が付くと帝の体を勢いよく右肩まで登ると帝の右頬に頭をこすり付けてくる。


「怪我を治した途端に懐いて現金な奴だな~」

 帝はそう言いながらも笑顔でカーバンクルの頭を指で撫でる。カーバンクルは嬉しそうにして帝の指に頭を押し付けてくる。

「ミカド?その子どうするの?飼うの?」

 ティナがカーバンクルを見つめながら聞いてくる。

「危険は無いんだろ?なら別に問題は無いだろ。俺が責任もって育てるさ」

 帝が喋ってる間カーバンクルは帝の頭の上に移動していた。

「いやねぇ。その子は危険じゃ無いけど図鑑には【カーバンクルの額の宝石を手に入れた者は富と名声を望むままに手にする事ができる】って書いてあったんだ。だからその子を狙っていろんな奴が襲ってくると思うけど・・・」

 そう言いティナは難しい顔をする。

「・・・因みにカーバンクルは宝石を取られるとどうなるんだ?」

 ティナは少しの間を置き「・・・図鑑には死ぬって書いてあった。それが原因でカーバンクルは大昔から種族問わず狙われたらしいよ」

 帝はティナの話を聞き。

「そう言う事なら尚更こいつを守る為に、俺が面倒を見なきゃいけないな」と言いカーバンクルを手に乗せ頭を撫でる。

「ミカドがそこまで言うなら私は別に構わないよ?ユーナとアイナも良いって言うと思うけど一応聞いた方が良いかもよ?」

 ティナはそう言いカーバンクルを撫でようと手を伸ばすが・・・。


「フーッ!フーッ!」

 カーバンクルは帝の頭の上に逃げティナを威嚇する。

「何で!?何で私には威嚇するのさ!?」

 ティナはカーバンクルに威嚇され、肩を落とし目に見えて落ち込んでいる。

「まぁ。そのうち慣れるだろ?それまでの我慢だ」

 帝はそう言いティナを慰める。


 帝とティナはユーナとアイナが目を覚ましたかを確認する為、牢屋部屋?を出る。そこにはシオン達、囚われていたエルフ達がシオンを先頭に並びこちらを見ている。2人が出て来るのを確認すると・・・。


「「「助けて頂きありがとうございます!」」」

 エルフ達が一斉に頭を下げて帝にお礼を告げる。お礼を言われた帝は・・・。

「気にするな、それに助けた時に言っただろ?仲間を助けに来たらたまたま見つけたってな。要はついでに助けただけだ、だから気にするな」

 帝はそう言い、顔の前で手を振る。

 それを帝の隣で聞いていたティナは・・・。

「いやいや、いやいや!ついで!?ついでで助ける量の人数じゃないよ!?それにその特徴、皆エルフ族じゃん!?」

 ティナが捲し立てるように帝に食い掛り、シオン、エルフ達を指さして慌てている。

「いや、人数はたまたま多かっただけだし、それにエルフってそんなに珍しいのか?」

「珍しいってレベルじゃないよ!?エルフは基本、他種族とは関わらないから存在自体が伝えられてる程度だよ!?昔は人間と交易してたって聞いた事あるけど、かなり昔だし」

「へぇ~。そうなのか?」

 ティナの話を聞いた帝がシオンに確認をする。

「えぇ。かなり昔ですが・・・。確か三百年くらい前だったと思いますよ?」

「そんなに前なのか。てかエルフは長命って聞くけど具体的にはどれくらいだ?」

「ん~。個人差はありますが平均三百年くらいですかね?」

「三百年か。中々に長いな。ん?寿命が三百年?交易も三百年くらい前?って事はシオンのじいさんの代で交易を切ったって事か?」

「そうですね。おじい様の代で交易を切ったと聞いています。理由までは分かりませんが・・・」

 帝とシオンの話を聞いていたティナはシオンを見てプルプル震えている。

「え?おじいさんの代で交易を切った!?それって・・・王族!?」

「はい。あ、まだ名乗ってませんでしたね。私はエルフ族の皇帝フォン・リューベルの娘シオン・リューベルと言います」

 シオンはティナに名乗ると帝の方を向き直ると申し訳なさそうに話始めた。

「ミカドさん。お願いがあるのですが・・・。先程ミカドさんは王都に冒険者になる為に向かわれていると仰いました。

 その後で構いませんので私達をエルフの里まで送って頂けませんか?流石に私達だけでは無理だと思いますので・・・。送って頂ければ報酬も出しますので駄目・・・でしょうか?」

 シオンは両手を胸の前で合わせ、少し前屈みになり上目遣いでお願いしてくる。帝はシオンのポーズにより強調された胸に一瞬目を奪われるが視線を直ぐに戻すと・・・。

「俺は構わないが・・・」

 そう言いティナに視線を向ける。

「私も別に良いけど・・・一応2人にも聞いといた方が良いかな?」

 そう言い気絶したままのユーナとアイナを見た。

「なら、そろそろ起こすか?他にも聞かなきゃいけない事があるしな」

 そう言い帝は2人に近づいて行くと肩を揺すり起こそうとするが2人共、寝息を立てて全く起きる気配が無い。帝は2人の鼻を摘まむ、すると2人はプルプルと震えだし、カッ!っと目が見開かれた。2人は体を起こすと肩で息をし、息を整える。


「「ミカド!」さん!」2人は落ち着くと立ち上がり帝に詰め寄る。

「寝てる時に鼻を摘まむなんて殺す気ですか!」

「私達が何をしたって言うんだ!恨みでもあるのか!」

「殺す気も恨みも無いぞ?こういう状況でなければいつまでも見ていたい可愛い寝顔だったぞ?」

 2人に詰め寄られた帝は無意識に思った事を口にする。


「「か、可愛い!?」」

 2人は急に言われ顔を赤くする。ユーナは頬を両手で抑え首を振っている。アイナは両手で顔を隠しうずくまり「う~」と唸っている。

 帝は2人を見た後ティナとシオンを見て「何か変な事言ったか?」と聞く。

 シオンは「あ~。ミカドさんはそっち側なんですねぇ」と言い、ティナは帝の服を引っ張り「私は?私は?」と聞いてくる。

「ん?普通に可愛いと思うが?と言うか質問を質問で返されると困るって・・・聞いて無いな」

 ティナは可愛いと言われ「えへへ~」と笑いながら顔を赤くしている。

 帝は何なんだと思いながらシオンを見た後ユーナとアイナを見て「2人に聞きたいんだが・・・」


「・・・そうだな。別に良いんじゃないか?それに助けるだけ助けて、じゃあ後は自分たちで帰れと言うのは酷すぎるしな」

「そうですね。私も構いませんよ?それに別の盗賊が現れないとも限りませんしね」

 2人が正気を取り戻した後、帝は3人を助けに来たらシオン達を見つけたのでついでに助けた事とシオンの頼み事を話した結果2人は問題無いようだ。帝はもう1つの問題を確認する為ティナの方を見る。ティナは帝の視線に気づくと、言えば?と言う雰囲気を出している。

「えっと・・・もう1つ伝えないといけない事があるんだが・・・」そう言うと部屋の隅から小さな影が飛び出して来て帝の後頭部に飛びついた。小さな影は帝の頭頂部まで登るとその姿を現した。ユーナ、アイナ、シオン、エルフ達はその姿を確認すると一斉に叫んだ。


「「「「カーバンクル!?」」」」


一斉に叫んだ事によりカーバンクルは帝の頭の上で「ビクッ!」とする。

「カーバンクル!?本物ですか!?」

「カーバンクル・・・伝説の生物じゃないのか?」

「カーバンクルが何故このような場所に?」

「初めて見たけど・・・可愛い」

 それぞれが想いを口々にする。

「このカーバンクルを保護したいのだが良いか?」帝は左肩まで下りて来たカーバンクルを撫でながらユーナとアイナを見て確認をする。

「保護ですか?」

「別に構わないが?何故確認をする?」

「パーティーを組んだんだから仲間に確認するのは当然だろう?」

「ミカドさんは律儀ですね」

「そうだな。別に危険がある訳じゃないのだろう?」

「カーバンクル自体に危険は無いが、こいつの宝石を狙って来る奴がいくらでもいると思うぞ?」

「なるほど。その為の保護ですね」

「そういう理由なら、保護しなくてはな」

 ユーナとアイナもティナ同様に問題は無いようだ。するとシオンが小さく手を上げる。


「あの~。ミカドさん?取り合えず、この洞窟から出ませんか?」

「そうだな。もう用は無いし取り敢えず出るか」

 そう言い帝は皆を連れて出口へ向かおうとすると・・・。

「ところでミカド?ここの盗賊達はどうするの?憲兵に突き出す?」とティナが歩きながら聞いて来た。

「突き出すと言う事は連れて行くと言う事か?そんなの面倒だろう?」

「じゃあ。どうする?絶対に仕返しに来るよ?」

「流石にそれは面倒だぞミカド?」

 ティナとアイナが嫌そうな顔をして言う。

「2人共間違ってるぞ?何で俺が盗賊共を生かす前提になってるんだ?」

「「え?」」

「あいつらは俺の仲間に手を出したんだぞ?生かしておく必要が何処にある。それにシオンの話だと他にもエルフが居た筈だ。だが、牢屋には居なかった。つまり売られたか殺されたかだ」

 帝の言葉を聞いていたシオンが暗い顔をして俯いてしまう。

「そんな奴らを一緒に連れていけると思うか?」

「確かにそれは無理だな・・・」

「そうだね」

ティナとアイナは盗賊達を連れて行かない理由に納得したようだ。

「ですが私たち出口に向かってるんですよね?」

 ユーナが何で?と言う顔で質問してくる。

「取り敢えず洞窟を出てからだ」

 そう言い帝達は洞窟の出口を目指して歩いて行く。

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