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9話 盗賊、初の人間との戦闘、その1

      転生した異世界で好き放題に生きていく

       ~チートじゃない?才能です!~

         1章 異世界の始まり

      9話 盗賊、初の人間との戦闘、その1

 

 (朝食の材料集めが魔人との戦闘になるとはな・・・)

 帝は来た道を走りながら考える。

 ユーナ、アイナ、ティナの女性3人とパーティーを組む事になった帝は3人の朝食を作る為、材料になりそうな物を探索して集めていたのだ。その最中、マイン、バースと名乗る魔人の2人と出くわし戦闘になってしまった。戦闘の結果としては帝の圧勝だったのだがマインには戦闘の意思が無く、終始バースと帝の戦闘を観察していた。帝はマインが何かを企んでいる気がして仕方なかったが、何もせずにマインはバースを連れて帝の前から立ち去ってしまった。取り敢えず戦闘も終わり朝食の材料も集まったので3人の元へと戻っている。


(まぁ、恩恵も色々と手に入ったし特に〈竜化〉なんて面白そうな恩恵が手に入ったから良しとするか!だが3人に魔人と戦闘になった事を言って大事だろうか?バースの反応だと人間と魔人は敵対している様だしどうするか?

・・・別に言わなくても問題はないか?もう立ち去った後だし。言うのも面倒だからいいや。取り敢えず朝食作って3人を起こして王都に向かうとしよう)


 帝が考え事をしながら走っていると野営地が見えて来た。だが様子がおかしい。3人が寝ている筈のテントが倒れているのだ。いくら何でも寝ていてテントが倒れれば起きる筈だ。そして起きたのなら外に居る筈だが3人の姿は見る限りでは何処にもない。帝がテントまで近づき中に3人が居ないのを確認する。


(3人共何処行った?俺を探しに森に?いやでもテントが倒れてるし・・・。まさか!魔獣に襲われたか!?いやそれも無いか。襲われたにしては馬は無事だし荷台が荒らされた形跡もない・・・本当に何処行った?)


オウル:マスター。〈探索者∞〉で捜せば良いのでは?


(・・・・・・確かにその手があったか)


帝はオウルに言われ〈探索者∞〉で3人を捜す。3人は直ぐに見つかったが結構離れている。どうやら森の奥の方に向かっている様だ。


(何で森の奥に向かってるんだ?ますます分からん。取り敢えず追うか・・・)


〈観測者∞〉を発動し3人の居場所を把握しながら駆け出す帝。


(・・・・・・結構走ったがまだ見えないな。そろそろ見えても良いはずだが・・・)


 帝は走ってはいるが森の中なので木々を避けながらだと速度が自然と落ちてしまう。帝が〈観測者∞〉で確認すると3人は距離的には視界に捉えられるはずだが森の中の為、視界がかなり悪く3人の姿は未だに確認する事が出来ない。

 帝が周囲を見渡しながら進むと木々の間の奥に人影が見えた。方向的に3人の位置と一致するので帝はそちらに走り出すが急停止して木の陰に隠れる。帝が木の陰から覗くと男達が何やらデカい袋を2人1組で1つ担いでいる。合計で3つの袋が担がれており担いでいる6人の他に4人の男達がいる。

 4人の内3人は袋を担いでる男達と同じような服装で見た感じ防具も統一されている。武器は短剣、長剣と別れている。だが1人だけ左目に眼帯をしており他の男達よりもガタイが良く背丈も高く背中に大剣を担いでいる。帝が様子を伺っていると男達は岩壁の前で立ち止まる。すると眼帯の男が壁に手をかざすと・・・壁が消え洞窟が現れる。帝はその様子を黙って見ている。すると男の1人が・・・。


「何度見てもお頭の〈幻術魔法〉は凄いっすね!」と言い眼帯の男を見て感嘆の声を上げる。眼帯の男、お頭と呼ばれた男は・・・。


「褒めた所で何にも出ねぇからな?」

 そう言い、洞窟の中へと入って行く。男達が洞窟の中に入ると洞窟の入り口は再び岩に塞がれ入り口が見えなくなる。

 それを見ていた帝は安全を確認して木の陰から姿を現す。


(幻術か・・・面白そうな恩恵だな。奪うのは確定として・・・恐らく3つの袋の中身は3人だよな?〈観測者∞〉で袋の中身は確認出来ないが3人が洞窟の中にいると言う事は確定だろうな。幻術なら素通りできると思うんだが・・・)


 帝は洞窟の入り口のあった所まで行くと岩壁を手で触れてみる。すると吸い込まれる様に手首から先が消える。帝は恐る恐る歩みだす。中に入った帝は後ろを確認するが岩壁があるだけで外の様子は分からない。もう一度触れるとすり抜け外へと出られた。


(どうやら中に入ったら出れなくなると言う事は無いようだな・・・)

 

 帝は出入りできる事を確認すると壁伝いに奥へと歩みだす。洞窟の中は大人2人が横に並んで歩くとギリギリの幅である。一定間隔で壁に松明が掛けてあるがそこまで明るくなく3m先が見えるくらいだ。少し進んだ先に左右二手に分かれる道が現れる。

 帝は一瞬悩む〈観測者∞〉よると右の道の先に3人はいる様だ。3人を助けるのが最優先である事に間違いはないが反対の道から増援が来られると戦闘中もしくは逃げる際に面倒な事になると考えてしまう。帝がどうしたものか考えていると・・・。


オウル:マスター。〈探索者∞〉で洞窟の中の人間を確認したらどうでしょうか?味方、仲間は青で表示されますので数が分かりやすいかと思われます。赤なら敵、敵意のある者、つまりは敵対者です。


 その手があったな。そう思い帝は〈探索者∞〉を発動し洞窟内の人間を確認し始める。結果は青が3人、赤が33人、黄色が12人だった。


(やはり袋の中身は3人か赤が33人・・・以外に居るな。それに・・・黄色?黄色ってなんだ?)


オウル:黄色は中間。つまりマスターの行動次第で敵にも味方にもなると言う事です。恐らく3人同様に捕まった方々だと思われます。


(3人以外に捕まった人達が居るのか。・・・助けるのは構わないが12人は多いな。位置的に左の道に黄色が6人、赤が12人か・・・。良し。左の道に居る敵を殲滅しとくか!)


 帝は左の道へと進む。少し進んだ先に広い空間が現れる。この空間はかなりの光量があり隙を伺って侵入するのは難しそうだ。帝が中の様子を伺うと壁側に木箱が並べられていた。左右と正面に扉があり男2人が正面にある奥の扉の左右に立っている。その側で男6人がテーブルを囲み何やら話をしていた。


「今回は楽な仕事だったな!」

「確かにな」

「1人いた男がやたらと強ぇからどうしようかと思ったがな」

「あぁ。あの男か。確かに強かったな」

「スケルトンとは言え素手で全滅させる位だからな」

「だけど女共から離れてくれてラッキーだったな!お陰で仕事が楽だったぜ!」

 男達6人の話を聞いていた帝は内容的に自分の事を言っているのが分かった。


(・・・・・・俺の考えが甘かったせいで3人は攫われたのか。クソッ!・・・いや後悔するのは後だ。それよりも残りの4人は何処だ?扉の奥か?〈観測者∞〉の位置だと・・・両方?)


 帝は〈観測者∞〉により残りの4人の居場所を探る。4人は左右の扉の奥に2人ずつに分かれている。帝は面倒だと思いながらどうするかを思案していると・・・。左右の扉が開き中から男達が2人ずつ出て来た。


「いやーよく寝たぜ」

「ん?やけに速いな?」

「今日の仕事は終わったのか?」

「失敗か?」

 4人の男達は口々に語る。帝は〈神眼〉を発動して男達のステータスを確認する。


(平均にしてLv12か強くはないし恩恵は〈罠感知〉〈潜伏〉以外は待ってるな・・・。恩恵のLvも7と低い物ばかりだ。まぁ、12人全員のを奪えば役には立つだろう。その2つを奪うとしてこいつらはどうするか?生かしといた方が良いのか殺した方が良いのか・・・)


 帝が男達を生かすか殺すか考えていると・・・。


「にしてもよ。後から攫って来た3人。イイ体してたなぁ」「確かにな。だけど1人はガキだったろ?」

「バーカ。違ぇよ。アレはハーフリングっつう小人族だ。」

「アレがハーフリングか!俺初めて見たぜ!」

「恐らくだがあのハーフリング。あのなりで成人してるはずだぜ?」

「マジか!?」

「ハーフリングは別として、確かに赤髪と黒髪の女はイイ体してたなぁ」

「あぁ。あの2人はイイ体してたぜ」

「あ〜あ。俺らはあの体を味わえないんだろうなぁ」

「だろうな。お頭が遊んだら依頼人に渡しちまうんだろうな〜」

「でもハーフリングなら可能性あるんじゃないのか?」

「確かにな。アレなら売り物にならねぇから俺らにも回って来るかも知れねぇな?」

「だけどなぁ?体つきはガキだぜ?」

「まぁ。でも犯れれば良いんじゃねぇ?」

「違ぇねぇ!」

 男達は3人の事を話すと下卑た笑いをする。

 話の内容からするとこいつらは3人を攫うように依頼された様だ。だが先程お頭と呼ばれていた眼帯の男は攫って来た女性達を犯し楽しんでから依頼人に渡している様だ。話を聞いていた帝は拳を強く握りしめ怒りを露わにしている。


(・・・決めた。こいつらは皆殺しにする。1人として生かしはしない)


 帝は岩陰から出ると〈強欲な剥奪者〉と〈身体強化∞〉を5倍で発動して男達の方へと歩き出した。


「あぁん?何だてめぇ?」

「何処から入りやがった?」

 男達は帝に気づき一斉に立ち上がる。男の1人が帝へと歩みより目の前に立つと胸倉を掴む。

 そして「おい。ガキ!何処から入りやがった!?」

 帝を怒鳴り散らした。それを見ていた男達も帝を取り囲む様に集まり始める。すると集まった男の1人が。


「ん?こいつあの3人と一緒に居た男じゃねぇのか?」と言うと他の男達も。

「あぁ!確かに!言われゃそうだ!」

「3人を助けに来たって事か?」

「カッコイイねぇ!」

「王子さまってか!」

「いくら強くてもこの人数相手じゃ無理だろ?」

「「「「「ハハハハッ!」」」」」

 男達は帝を取り囲んだまま警戒もせずに喋っている。


「で?この状況でどうするよ?王子様?」

 帝の胸倉を掴んでいる男がそのセリフを言い終わったと同時に帝は胸倉を掴んでいる男の顔目掛けて右拳の裏拳を放った。それだけの事だったが胸倉を掴んでいた男は頭が弾け帝を掴んでいた手が離れその場に仰向けに倒れた。それを見ていた男達は何が起きたか分からず立ち尽くしている。その隙に帝は右側に居た男に全力で蹴りを放つ。蹴られた男は後ろに立っていた男2人を巻き込みながら凄い勢いで岩壁にぶつかると弾けて血の花を咲かせた。一瞬で仲間4人を殺された男達は我に返り、帝の来た道目掛けて逃げ始める。


「何だコイツ!?」

「ば、化物!?」

「に、逃げろ!」

 帝は足元の死体を無造作に掴み上げると逃げる男達目掛けて放り投げる。後ろに居た男達はそれに気づき身を屈めて避けるが前を走っていた男2人は気づかずに飛んできた死体の直撃を受ける。直撃を受けた2人は背骨が折れ勢い良く転んだ。その隙に帝は男達の前に〈縮地Lv92〉で先回りし逃げ道を塞ぎつつ転んだ2人の首を思いっきり踏み、首の骨を折り絶命させる。

 身を屈めてた男達はその光景を見て震えが止まらない。次は自分が殺されるその考えが頭をよぎっているが男達はその場から動くことが出来ないでいる。黙って帝を見ていた男達は目の前に帝が居ない事に気づくが時すでに遅く、帝は4人の間を走り抜け首の骨を無造作に握り潰して行く。

 奥に立っていた2人は目の前で起きている事、仲間の死に行く姿を黙って見ている事しか出来ず呆然と立ち尽くしている。帝は2人へと近づいて行くと右に立っていた男を無造作に殴る。それだけで殴られた男は絶命する。左に立っていた男の腹を蹴り絶命させる。帝は扉に手を掛けるとを力任せにこじ開け中に入る。

 開けた先は暗く松明が1つだけ壁に掛けてあるだけだ。奥に牢屋があり中には6人の人影が確認できる。帝が牢屋の前まで歩み寄り中を確認する。暗くて良く見えないが女性が6人だと思われる。女性とおぼしき人影たちは帝の姿が確認できない為、牢屋の隅に寄っている。帝が牢屋の中を確認していると1人が「貴方は誰ですか?」と震えた声で帝に問い掛けて来る。


「俺は捕まった仲間を助けに来たんだが、探してたらあなた達を見つけた。見つけた以上は助けるつもりだが・・・他にも捕まってる人たちは要るのか?」

 他にも6人いる事を知っている帝だがそれを知っているか確認する。すると帝に問い掛けた女性が此方に近づいて来る。近付いて来た女性の身長は帝より少し低いので170㎝くらいだ。それよりも女性の姿を見た帝は驚き固まる。女性は薄い布の様な服を着てはいるが扇情的な姿をしているのだ。帝が固まっているのをよそに女性は話始める。


「この場に居る私達の他に確か・・・女性6人と男性5人が捕らわれている筈です。売られたり、殺されたりしていなければですが・・・」

 そう言うと彼女は俯いてしまう。帝は我に返り女性の話を聞いて考え込む・・・。


(女性6人、男性5人の合計11人か・・・。〈観測者∞〉で調べた限りだと黄色が6人いる。捕まっている人間と考えると数的に恐らく女性6人だろうな・・・。彼女も男性達が生きている可能性が低いと考えているのだろう)


 帝はこちらの世界に来る前ゲーム、アニメ、漫画で得た知識では盗賊や人攫いは女性を攫った場合、犯したり売ったりするが男性は基本的には殺されると思っている。まぁ。例外が無い訳ではないがその可能性は限りなく低いと思っているのだ。帝が考え込み黙っていると・・・。


「あの。助けて貰えるならそろそろここから出して欲しいのですが・・・」

 女性は申し訳なそうに帝に声を掛ける。無意識なのだろう。女性は少し前屈みになっている為、上目遣いで帝の顔を覗いている。その為、胸が見えそうになっているので帝は視線を逸らすと牢屋の扉に手を掛け引いてみる。扉は鍵が掛かっており「ガンッ!」と音をたてた。


「開けるから離れててくれるか?」

 そう言い力を入れる帝。

 それを離れながら見ていた女性は「鍵は見張りのどちらかが持って・・・」います。と続くはずの言葉が出なかった。

 何故なら女性が言い終わる前に「ガキャッ!」と凄い音を立てて扉は帝によって破壊されたのだ。

 帝が扉を破壊する様を見ていた女性たちが呆然としていると。

「出て来て大丈夫だぞ?」

 今しがた破壊した扉を横に退かしながら帝が優しく言うが女性達は一向に出て来ようとしない。帝は首を傾げる。そして思い至る。


(・・・もしかして。いや、もしかしなくても格好のせいだろうな)


 帝は女性たちの格好を見て出て来ない理由は、彼女たちの格好が原因だと考えた。この部屋が暗く良く見えないとは言え、隣の部屋に行けば光量がある為、その恰好は否応にでも帝の視線に晒される事になる。その為に彼女たちは出て来ないではなく、出て来れないのだと帝は考えた。


「少し待っててくれ」

 そう言い帝は部屋から出ると右の扉を開けて中に入る。この部屋は先程殺した盗賊たちが出て来た部屋だ。盗賊たちは「よく寝た」と言っていた為、帝はこの部屋が寝床だと思い変えの服もしくは服の代わりになる物があると思いあさり始めた。

 帝は大量の布切れを持って彼女たちの元へ戻ると「これを使うと良い」そう言い布切れを牢屋の前に置くと部屋を出る。彼女たちは帝が出て行くのを見届け各々布切れを手に取り身に纏って行く。

 実際は、彼女たちは格好を気にしてたのではなく扉を力づくで壊した事に驚いていただけなのだが帝がわざわざ用意してくれたので使わせてもらう。

 帝は部屋を出ると彼女たちの準備が出来るのを待つ間に部屋の中を物色し始める。木箱の中は血の付いた武器・防具それに服、他は液体の入った瓶と食料が多数を占めていた。

 帝は木箱の中身を使えそうな物、中身の入った瓶と食料だけ残して残りの要らない物を全てその辺にぶちまける。そして中身の入った木箱を〈倉庫∞〉にしまい始める。帝が〈倉庫∞〉に木箱をしまい終わると女性達が丁度、部屋から出て来たところだった。

 女性達の姿を明るい場所で見た帝は再び驚き固まる。女性の長い髪の間から覗く耳は長く尖っていたのだ。帝が固まっていると「あの!助けて頂きありがとうございます!」帝と話した女性が先頭で頭を下げてお礼を言うと他の女性たちも頭を下げてお礼を述べる。お礼の声に帝が正気を取り戻す。

 そして女性たちを見ると皆、同じ様に耳が長く尖っていた。因みに女性たちは皆、緑色の髪をしており髪型はバラバラだ。先頭の女性が頭を上げ帝に自己紹介を始める。


「申し遅れました!私はエルフ族の皇帝フォン・リューベルの娘シオン・リューベルと言います。それで貴方のお名前をお聞きしても?」

 先頭の女性、シオン・リューベルは名乗ると帝の名前を聞いて来た。

「あぁ。すまない。まだ名乗ってなかったな。俺はみかど皇王かみたかみかどだ。あ、帝が名前な?」帝が名乗ると。

「ミカド?変わったお名前ですね。ミカドさんは冒険者の方ですか?」シオンは疑問を口にする。

「いや、まだ冒険者じゃない。冒険者になる為、仲間と一緒に王都を目指してたんだが俺が目を離した隙に攫われたらしくてな」事の顛末を軽く話す帝。


「攫われたと言う事は仲間の方は女性の方ですか?」

「あぁ。そうだ。それよりも、仲間を助けに行きたいんだが?」帝は話を切ろうとするが・・・。

「それでしたら。私にも。いえ。私達にもお手伝いさせて下さい!」シオンはそう言い力強く帝の手を握ってくる。帝は〈神眼〉でシオンのステータスを確認する。


シオン・リューベル Lv22

 職業 魔法使い 種族 森精人エルフ22歳

HP 703 MP 937 ATK 291 DEF 314 AGI 791 MAG 887 LUK 541

〈聴覚Lv21〉〈詠唱短縮Lv18〉〈同時思考Lv18〉

〈敵感知Lv21〉〈精神回復Lv12〉〈補助魔法Lv13〉

〈回復魔法Lv10〉〈風魔法Lv19〉〈土魔法Lv15〉


(・・・エルフは魔法が得意なイメージだったが得意と言うより魔法特化型か?それとも職業が魔法使いだからか?後ろにいる娘たちも職業が魔法使いだから比べられないし。Lvは後ろの女性たちが平均15、シオンが22か・・・。それよりも首のあれは?)


 帝がシオンたちの首に黒い首輪がされているのに気付き見ていると。それに気づいたシオンが帝に首輪の説明をしてくれる。


「これですか?これは阻害の首輪と言い。これを着けていると恩恵が発動出来なくなります。捕まった際に着けられてしまいました。鍵は誰かが持っていると思うのですが・・・」

 そう言い部屋の中を見渡すシオンと女性達・・・。視線の先はあちこちにある盗賊たちの死体や壁に付いた血痕だ。


「あぁ。すまない。盗賊達こいつらが仲間の事を言っててな、頭に血が上って・・・やり過ぎてしまった。」

 帝は鍵を探すのが大変になったと思い謝るが・・・。

「いえ。この人たちは下っ端の様ですから鍵は持って無いでしょうし・・・」

 シオンから意外な言葉が返って来た。

「それじゃ首輪外せないだろう?悪いが・・・」それじゃ戦力にはならないぞ?と言い掛けて、帝はふと考える。


(・・・着けるだけで恩恵が発動出来ない?首輪なのに?・・・特別な恩恵付きか?)


 帝は〈魔眼〉を発動してシオンに着けられた首輪を見る。

 

 阻害の首輪 レア度C

〈頑丈LV50〉〈MP消費激増〉

 

(・・・恩恵の名前からしてヤバいよな?)


オウル:〈MP消費激増〉は武器・防具専用の恩恵です。この恩恵が付いた武器・防具を身に着けると魔法や体技を発動する際にMPの消費量が通常の100倍になります。呪われた武器・防具に付与されている事が多いです。


(100倍か・・・そりゃ魔法の発動できないな。俺なら関係なさそうだが・・・。だけど武器・防具専用の恩恵なら俺の〈恩恵剥奪〉で奪えば消失するんじゃないのか?)


オウル:その通りです。武器・防具専用なのでマスターが〈恩恵剥奪〉を使用してもこの恩恵を獲得する事はありません。


(そうか。それなら簡単に首輪を外せるな)

 

 帝がオウルと会話をしている間。途中で言葉を止めたられたシオンは役に立たないと言われると思い、どうするか考えていたが帝が急に自分の方へと歩いて来たのを見て思考を止める。

 帝はシオンの首輪に手を伸ばす、一瞬シオンが体をビクつかせたが抵抗する気は無いようだ。そして帝は首輪に軽く触れると〈恩恵剥奪〉を発動して〈頑丈LV50〉と〈MP消費激増〉を奪うが両方共、武器・防具専用の恩恵なので消失してしまう。恩恵の無くなった首輪を帝が両手で軽く引っ張るとパキッ!っと簡単に割れてしまった。シオンと女性たちは驚愕の表情で帝を見ている。首輪を無造作に放り投げ、後ろに居る女性たちの首輪も外して回る帝。


「助けて頂いた上に首輪まで外して頂き本当にありがとうございます!」

 シオンと女性たちは頭を下げ再びお礼の言葉を告げる。


「気にしなくていい。助けると言った以上は助ける。それに戦力は少しでも多い方が良い。まったく戦えない訳じゃ無いだろ?それでシオン・・・さん達は何が出来る?」

 敬語は今更かと考え、せめて敬称はつけようと思いつけたが、呼ばれた当の本人は気にした様子もなく。

「敬称はつけなくて良いですよ?シオンで結構です」敬称は不要と言ってくる。


「分かった。それでシオン達は何が出来る?」

 〈神眼〉で確認したので所持恩恵は分かっているがどんな魔法が使えるかまでは分からないので確認する。

「そうですね。私は風・土・補助・回復の初級魔法をいくつか、彼女たちは属性にバラつきがありますが初級魔法をいくつか使えます」

 シオン以外の女性たちは1つの属性魔法しか持っていないが火・水・雷・土・風と見事にバラけている。

「それなら彼女達は魔法で援護射撃、シオンはその後ろで支援をしてくれ」シオン達の戦い方を指示した帝は「そろそろ行くか」と言い歩み始める。シオンが帝のすぐ後ろを歩き、他の女性達がその後ろをついて来る。


 洞窟を進んで行くと道が二手に分かれている。左の道は壁に松明が掛かってはいるが数が少なく、かなり暗い。右の道は対照的に松明が多く掛けてあり光量が確保されている。帝は〈探索者∞〉と手に入れたばかりの〈罠感知Lv84〉を発動する。ユーナ、アイナ、ティナの3人は左の道に居る様だ。

 右の道は〈罠感知〉が反応し、いくつかの罠が何処にあるのか帝には鮮明に分かる様になる。帝が恩恵での確認をしていると「どちらの道に行きますか?・・・恐らく左の道だと思われますけど・・・」シオンが小声で話し掛けてくる。

「何故そう思う?」帝はシオンに質問をする。「私達エルフは〈聴覚〉と言う恩恵があるのですが、左の道の先から僅かですが人の声が聞こえます」それを聞き帝は〈神眼〉で確認した時に見た恩恵を思い出す。

 「なら、左に進むとしよう」

 帝はシオンの言葉を聞き左の道を進み始める。シオン達は帝の後をついて行く。横道や分かれ道も無く、しばらく道なりに進んで行くと帝にも人の声が聞こえて来た。曲った先から光が漏れている。どうやら此処も最初の空間同様にかなりの光量が確保されている様だ。帝が曲がり角から中の様子を伺う。


「オラオラ~最初の威勢はどうした~?」

「あまりやり過ぎるなよ?死んじまったらつまらねぇからな」

 空間の中央辺りで、やり過ぎるなと言われた男の足元には人がうずくまっている様に見える。男達に取り囲まれている為よく見えない。それを遠巻きに男達が笑いながら見ており、少し離れた所でお頭と呼ばれていた男と魔法使いの様な男、それに身なりの整った貴族の様な男がいる。木箱をテーブルの代わりにして3人は瓶を片手に笑いながら見ており、時折瓶の中身をあおっている。瓶は帝が回収した物と同じ瓶だ。奥の壁にユーナとアイナが猿轡さるぐつわをされ、さらに手枷と首輪をされて壁に繋がれている。2人の近くにティナの姿が無い。

 帝は〈探索者∞〉を発動させティナを探す。〈探索者∞〉の結果は帝を再び怒りに奮い立たせた。男達に取り囲まれ痛めつけられていた人物はティナだった。帝はシオンの方を向き「ここで待って居てくれ」そう言うと岩影から出て行く。「ミ、ミカドさん!?」シオンは止めようとしたが間に合わなかった。


 帝が岩陰から出て空間に踏み入ると最初に気付いたのはお頭と呼ばれていた男だった。お頭の様子に気付いた他の2人も帝に気付いた。

「おめぇ。何処から入った?」

 お頭の声に気付いた下っ端達が帝の方を向く。

 下っ端たちもこちらに気付き、遠巻きに見ていた男達が武器を手にして帝を取り囲む様に動き始める。


「「ん!ん~~~!」」

 ユーナとアイナも帝に気づき何かを言っているが猿轡をされている為、何を言っているか分からない。

「こいつ確か、そこのハーフリングと一緒に居た奴じゃないか?」

「あぁ、そういや居たな。離れてくれたお陰で仕事が楽だったぜ」

 3人を攫った際のメンバーと思われる男達が帝を見て3人の仲間だと他の男達に伝える。

「こいつらを助けに来た訳か?」

「そう言う事だろ?じゃなきゃ此処まで来ないだろ?」

「それもそうだな」

「なら、コイツは要らねぇから返してやるよ!」

 そう言うと帝の方にティナを力強く蹴り飛ばした。


「うっ」

 帝の足元まで飛ばされたティナは力なく呻き声を上げる。

「ティナ!」

 帝はティナを抱き上げる。

 ティナは体中に傷を負っており、殴る蹴るの執拗な暴行を受けた痕が出来ていた。顔もあちこち腫れており、手足も骨が折れている。無事な箇所が無いくらいだ。帝は上級回復ハイ・ヒールを発動しティナの傷を治し始める。


「へぇ、〈回復魔法〉が使えるのですか、なら高く売れそうですね。追加で払いますので捕獲してもらえます?」

 貴族風の男がお頭と呼ばれている男に尋ねている。

「仕方ねぇな。お前ら聞いての通りだ!そいつは殺すな!」

 貴族風の男とお頭と呼ばれた男で話が付いたらしい、帝を殺すなと指示を出している。

「ハーフリングはどうしやす?」下っ端が尋ねると・・・。「それは要らねぇから、殺すなり犯すなり好きにしろ」

 お頭と呼ばれている男は下っ端たちにそう告げた。それを聞いていた帝は怒りを通り越し殺意が沸き上がるのを感じた。


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