8話 魔王の手下にして魔人族との戦闘
転生した異世界で好き放題に生きていく
~チートじゃない?才能です!~
1章 異世界の始まり
8話 魔王の手下にして魔人族との戦闘
森の中から現れたのは体長3mはあると思われる全身が黒い魔獣だった。
(・・・何アレ?やけにデカいゴリラだな・・・3m位あるんじゃないか?取り敢えず〈神眼〉発動)
キングエイプ Lv92(マイン)
種族 魔人 猿人型(魔王の配下)
HP 19578 MP 9081 ATK 26354 DEF 21908 AGI 19989 MAG 8709 LUK 17134
〈魔王の恩恵〉〈剣毛〉〈体力超回復〉〈格闘王〉
〈超速治癒〉〈剛力〉〈破壊王〉〈悪魔魔法〉
〈統率者Lv98〉〈土魔法Lv89〉〈狂化Lv95〉
(・・・・・・何こいつ!?Lv、ステータスは俺を軽く超えているし恩恵も知らないのが殆どだぞ!?それにLvの横のマインって何だ?それよりも魔獣じゃなくて魔人だと?魔人が何しにこんな所に?)
帝が〈神眼〉でステータスの確認をしていると・・・。
「脆弱な人間よ。我名はマイン。7つの大罪、暴食を司る魔王ベルゼブブ様の配下の者だ。ベルゼブブ様の命により各地の珍しい飲食物を収集している。
そこにある柑橘水に用がある。そこを退いてもらおう。退かぬなら力尽くで退かすが・・・加減は出来んぞ?」
(マインはこの魔人の名前なのか・・・いや、それよりも今こいつ魔王と言ったか?)
「今直ぐ退くから待ってくれ」
そう言い、帝が浸して置いた貯水袋を取る為に手を伸ばした時・・・。
ブンッ!!
帝の目の前を何かが通った。帝が何かと思い顔を上げると目の前に全身が黒く蜥蜴の様な者が槍を構えて立っていた。
(何時の間に目の前まで移動したのか?)
と帝が考えていると・・・。
「人間如きが!我ら魔人に対してその口の利き方は何だ!?」
槍を突き付けて怒鳴り散らしてくる。
(我らと言う事はこいつも魔人なのか?〈神眼〉を発動してこいつのステータスも確認するか)
リザードロード Lv56(バース)
種族 魔人 蜥蜴型(魔王の配下)
HP 10098 MP 6109 ATK 19095 DEF 9093 AGI 6755 MAG 7992 LUK 5654
〈魔王の恩恵〉〈竜鱗Lv89〉〈貫通王〉〈縮地Lv92〉
〈竜化Lv77〉〈威圧Lv81〉〈悪魔魔法〉〈風魔法Lv91〉
(・・・こいつも魔人だけあって能力値が高いな。取り敢えず〈身体強化∞〉を発動しておくか、5倍くらいなら大丈夫だろ・・・)
皇王 帝 Lv39(恩恵による強化中)
HP 31715 MP 18385 ATK 32450 DEF 20250 AGI 32040 MAG 19955 LUK 21340
(取り敢えずこれなら戦闘になっても問題ないだろ。マインとか言う猿型の魔人はATKが俺のDEFを超えているが、AGIは俺のが高いから攻撃は簡単に避けられるだろ。魔法が気になるがどんな魔法があるかのか知らない以上は気にしても仕方が無いしな・・・。あぁ、〈魔法無効〉があるからどんなに凄い魔法でも効かないのか・・・。ん?って事は〈打撃無効〉と〈斬撃無効〉もあるから〈身体強化∞〉は要らなかったか?まぁ発動しちゃったし良いか・・・)
等と帝が考えていると。
「聞いているのか!?人間如きが俺を無視するとは言い度胸だ!構えろ!俺の手で殺してやる!」
(無視していた訳では無いのだが・・・)
バースと言う名の魔人が殺気立ってしまった。仕方が無いのでその場に立ち上がる帝。武器を出さず適当に拳を構える。
「ほぉう。素手でバースの相手をする気か?〈格闘術〉の所持者か、人間にしては珍しいな」
猿型の魔人マインが拳を構えた帝を見て感嘆の声を上げる。拳を構えた帝を目の前で見ていたバースは小刻みに震えている。
「・・・貴様。俺を相手に素手だと!?下等な人間如きが舐めているのか!!」
どうやら神経を逆なでしてしまった様だ。
「・・・別に舐めてる訳では無いが、十分だと思うぞ?」
帝がバースとのステータス差を計算しての発言だったがそれを知らないバースは・・・。
「人間如きが!どこまで俺を馬鹿にする気だ!」
激高していた。
「死ね!疾突槍!!」
そう言いバースの槍が瞬時に帝を目掛けて突き放たれる。
帝は突き放たれた槍を余裕で左に躱し、右拳をバースの顔を目掛けて振りぬく。
ゴキッ!
鈍い音を立てながら後方へと飛んで行くバース。マインの横を通り抜け森の木々をぶつかってはへし折って行く。
(・・・予想外だな。本気で殴ってないのにあんなに飛んで行くとは・・・。一応手加減したし、魔人なんだから死んでないよな?)
バースが飛んだ方向を見ていると・・・
「人間がバースを素手で殴り飛ばすとはな・・・。〈格闘術〉ではな〈格闘王〉の所持者か?それにしても隙だらけの構えだったが・・・油断させる作戦か?」
等と口にしながらマインが此方に歩いて来る。
帝が警戒をしていると。
「そう警戒するな・・・と言っても無理な話か・・・。私に敵意はない。そもそも柑橘水の確保が目的で来ているのだ。無駄な戦闘をする気はない。
それにお前は殺すつもりでいたバースに対し手加減をしただろう?仲間を殺せたにも関わらず手加減をしてくれた相手に敵対するほど愚かではない」
マインはそう言い柑橘水の泉に袋を浸し始める。帝と戦闘する意思は無いようだ。
「・・・魔人は人間を敵視していると思っていたが?」
帝は気になって聞いてみた。
「魔人全てが人間を敵視していたのは1000年以上も前の話だ。今では魔人の3割程は人間との共存を望んでいるらしい、魔王様の中にも賛同している方はいるらしいぞ?・・・まぁ、バースの様に同じ魔王様に使えていても人間を敵視する者はいるが・・・」
マインは魔人の人間敵視の状況を教えてくれる。
「なるほどな。魔人の中にも人間との共存を望んでいる者がいるのか・・・人間と魔人が共存か・・・出来たら良いな?」
(出来たら中々に面白い人生になりそうだ!)
「確かにそうだな。お前の様に人間全てが魔人だからと言って敵視しなければ良いのだがな・・・そうなれば共存も現実的になるのだがな」
帝がマインと会話をしていると・・・。
「人間如きがぁぁぁぁぁ!」
吹き飛ばされたバースが森の中から戻って来て開口一番にキレた。
「バースも戻って来たしそろそろお暇させて貰うとするか」
そう言うとマインは柑橘水の泉に浸していた袋を取り出してバースの方を向くと・・・。
「バース!落ち着け!」
バースを落ち着かせようと声を掛けるが当のバースは。
「マイン様!?なぜ人間の肩を持つのですか!?下等な人間如きは問答無用で殺せばいいのです!
まさか!貴方様も人間との共存等と言う夢物語を望まれているのですか!?下等な生物との共存などあり得ません!!人間の様な下等生物は根絶やしにすればいいのです!!」
バースがマインを捲し立て人間との共存を否定する。
「人間よ!我が力とくと味わえ!」
そう言うとバースの体が光始める。
(何だ?いきなり体が光始めたぞ?)
オウル:あの光は〈竜化〉の恩恵によるものです。
(〈竜化〉の恩恵?〈竜化〉と言う事は竜にでもなるのか?・・・なんてな)
オウル:その通りです。〈竜化〉の恩恵は、一時的に使用者を竜の姿に変化させます。加えて〈竜化〉のLvによって全ステータスの強化値が変わります。〈竜化〉のLv的に約8倍くらいです。
(・・・マジか。冗談のつもりで言ったのに本当に竜になるのか・・・。8倍も強化されるのか・・・恩恵はどうなるんだ?〈貫通王〉は槍の使用時に効果があるんだろ?竜になったら槍は持てないだろ?)
オウル:〈~王〉は攻撃力の激増と体技が使用可能になるだけですので問題無いのでしょう。竜に変化している間だけ〈竜魔法〉〈大空王〉〈並列思考〉〈詠唱破棄〉〈魔法同時発動〉〈魔法無効〉〈聖魔法〉の7つの恩恵を獲得します。
(ほぅ、7つの内6つが未所持の恩恵か、それは興味が湧くな!)
「ふふっ」
オウルの説明を聞いていた帝は未所持の恩恵の話を聞き不敵な笑みが出てしまう。バースの体から光が消えていく。光が消えたその場にいたのはマインよりもデカい黒いドラゴンであった。
「フハハハッ!下等な人間よ!我が真の姿を見て声も出ないか!だが真の力はこんな物ではないぞ!ハァァァッ!!」
そう言いバースが全身に力を入れるとバースの体から今度は黒いオーラの様な物が噴出し始める。バースがオーラの様な物を全身に纏うと・・・。
「これが我が真の姿にして真の力だ!」
どうやらバースの戦闘態勢が整った様だ。
(ってか見た目だけなら十分にラスボス何だが・・・。と言うより邪竜みたいだな?取り合えず〈神眼〉で確認しとくか)
リザードロード Lv56(バース)
〈竜化〉〈魔王の恩恵〉による強化中
種族 魔人 蜥蜴型(魔王の配下)
HP 807840 MP 488720 ATK 1527600 DEF 727440 AGI 540400 MAG 639360 LUK 452320
〈魔王の恩恵〉〈竜鱗Lv89〉〈貫通王〉〈縮地Lv92〉
〈威圧Lv81〉〈悪魔魔法〉〈風魔法Lv91〉〈竜魔法〉
〈大空王〉〈並列思考〉〈詠唱破棄〉〈魔法同時発動〉
〈魔法無効〉〈聖魔法〉
(・・・・・ステータスが聞いていた話と違うんだが?)
オウル:〈竜化〉はLv的に約8倍ですがその状態からさらに〈魔王の恩恵〉を発動した為です。
〈魔王の恩恵〉は使用者のステータスを一時的に10倍にします。
(8倍からの10倍か・・・重ね掛けとか反則だろ!?何だあの数値!桁がおかしいぞ!本当にラスボスじゃないか!・・・魔王より強いんじゃないのか?)
「下等な人間よ!死ぬ準備は出来たか?」
そう言うと口を大きく開けるバース。
「死ね!竜の息吹!」
口から帝の視界を覆いつくす程の炎を吐き出す。帝がマインの方を見ると既に非難をしていた様で、いつの間にか隣から居なくなっていた。その間に炎は帝の全身を覆いつくした。
「フハハハハハッ!下等な人間如きには過剰な力だったか?」バースは自分の攻撃の結果を見る前に高らかと笑い帝の死を疑わない。同様にマインもバースの攻撃で帝が死んだと思っている。
(人間との共存はやはり無理なのか・・・)
マインが己の夢が叶わぬ物とかと考えていると・・・。
「いや~流石に焦ったぞ。〈魔法無効〉があるとはいえあの火力はビビった」
まだ燃える炎の中から帝がバースの方へと歩み出て来る。
帝の立って居た位置から後ろの大地が扇形に焼き払われている。その姿を見ていたバース、マインの2人は驚愕の表情をしている。
「な、何故生きている!?我が全力の攻撃だぞ!?無傷だと!?そんな馬鹿な事があり得るか!?貴様!一体何をした!?」
バースは混乱しているらしい。
「何って言ったろ?〈魔法無効〉があるって?まぁ服の方はヤバそうだったから強化したんだが・・・」
帝は〈魔法無効〉により無傷だが、服の方は〈頑丈Lv39〉の恩恵があるがバースの攻撃には耐えられそうも無かったので帝の〈能力強化∞〉の恩恵で魔寄せのコートの〈頑丈Lv39〉の恩恵を強化したのだが・・・。
オウル:〈~無効〉の恩恵は身に着けている武具にも効果があります。
・・・との事だ。
(俺の心配は杞憂だったみたいだな)
「下等な人間が〈魔法無効〉だと!?あり得るか!?
・・・まさかお前は勇者か!?ならば!魔王様に敵対する者はこの場で必ず息の根を止める!」
そう言うとバースの周りに風の塊が無数に発生する。
「喰らえ!風の弾!」
無数の風の塊。風の弾が帝を襲う。
ドドドドッ!
大地を揺らす程の衝撃が続く中でマインは思考していた。
(〈魔法無効〉?確かにバースの言う通り人間では勇者ぐらいしか所持していないはずだが・・・。あの人間は勇者にはとても見えない程に無防備すぎる。まるで戦闘の素人にしか見えないぞ?勇者の末裔か?)
マインが思考している間にも戦闘は続いている。
「風の大砲!風の爆弾!」
バースが次々と魔法を発動して帝を攻撃する。
「ハァッハァッ。ど、どうだ人間!流石にこれなら・・・」
バースが肩で息をしていると・・・。
「もう終わりか?そろそろ攻撃しても良いか?」
そう言うと土煙の中から駆け出す帝。走りながら帝は〈身体強化∞〉をさらに重ね掛けで発動する。
(確か5倍で発動してたから・・・30倍まで強化すれば余裕だろ。ってかそれ以上だと手加減が難しくなりそうだな。・・・後で手加減の恩恵を作るか。)
皇王 帝 Lv39(恩恵による強化中)
HP 951450 MP 551550 ATK 973500 DEF 607500 AGI 961200 MAG 598650 LUK 640200
(取り敢えず数発殴って竜化してる時の恩恵だけを奪うか?〈竜化〉面白そうだから欲しかったんだが変化したら無くなったしな・・・)
オウル:マスター。〈竜化〉の恩恵は無くなった訳では無いので奪取する事は可能です。
(奪えるのか!?なら奪おう!是非とも奪おう!)
帝はやる事を決行する為、バースへと接近する。
「まず一発!」
そう言いバースの腹部へと右拳を振りぬいた。
「ガハッ!!」
血を吐きながら後ろへと仰け反るバース。
「もういっちょう!」
続けざまに左拳でバースの脇腹を狙い振りぬく。
ゴキッ!
「ガァァァッ!」
とっさに右腕を間に入れてガードしたバースだが手応えと音的に骨が折れたようだ。
「何なのだ!お前は一体何なのだ!?」
折れた右腕を抑えながらバースが吠える。
「俺か?そう言えば名乗ってなかったか?俺の名前は帝。皇王 帝だ」
帝が名乗っている間にバースは〈聖魔法〉の上級回復を発動し骨折を治していた。
右拳を開いて閉じてを繰り返し治った事を確認する。その間に帝はバースの目の前まで歩み寄っていた。
「・・・貴様。本当に人間か?勇者でさえ素手でここまでは戦えない筈だぞ!?なのに全力の我を相手に素手で戦うだと!?本当に何者なのだ貴様は!?」
右腕の確認をし隙を伺うバース。
「しつこいな!さっき名乗っただろ!」
バースのしつこい質問に半ギレで答える帝。
帝はバースとの会話の間に〈強欲な剥奪者〉を発動して恩恵を奪って行く。
(う~ん。どうしたものかな・・・。恩恵を全部奪ってやっても良いんだが、殺すつもりが無いからなぁ。やっぱり可哀そうかな?)
帝がバースから恩恵を全て奪うか考えていると・・・。
「隙ありだ!竜の息吹!」
ゴォォォォッ!
至近距離から竜の息吹の高火力と熱量を受ける帝。
「ハハハハッ!油断したな人間!?この距離なら流石に無事では済まないだろ!?」
竜の息吹を至近距離から放った事でバースにも凄まじい熱量が浴びせられるがバースには大したダメージにはならない。様子を見ていたマインは・・・。
(・・・やはり勇者にしては隙だらけの上に無防備すぎる。そう言う性格なのか?にしても・・・酷すぎるな。戦闘経験が少ないのであれば経験を積む事でかなり強くなれるが、性格ならどうにもならないか・・・。だがあの強さは経験の少なさを十分に補える。あの攻撃でも恐らく・・・)
帝の今後の成長を考えると魔王様の脅威になるのならこの場で殺した方が良いかと考えてしまうマイン。
「なぁ?バースって言ったか?お前は学習能力が無いのか?〈魔法無効〉があるから近距離で撃とうが遠距離で撃とうが魔法である以上は意味が無いだろ?何の為に撃ったんだ?魔王の配下なのに馬鹿なのか?」
煙の中から姿を現した帝がバースに何のために撃ったのか聞いてみるが・・・。
「馬鹿な!?この距離で直撃したのに無傷だと!?・・・まさか勇者を超える力だと言うのか!?」
「勇者がどれほど強いなんて知らんが・・・もういいや、お前しつこいから全部貰うわ。ステータスは残してやるから一から鍛え直せ!」
そう言いバースから奪えるだけの恩恵を奪い始める帝。傍から見ると帝は何もしてない様に見える為、バースは何を言ってるんだ?と警戒を強めているが体に変化はない。そう思っていると、バースの体が光り始め〈竜化〉が解けてしまう。
「な!何が起きたのだ!〈竜化〉の変化が解けただと!一体何をした!」
バースが自分の体に起きた異変に驚愕し帝に問うが帝は気にせず恩恵を奪い続ける。
(何が起きている!?バースの〈竜化〉はLv77の筈だ!変化の時間はまだある筈だぞ!?いや違うな・・・バースの反応を見るからに〈竜化〉を解除したのではなく、解除されたという事か?その様な効果を持つ恩恵は聞いた事が無いぞ?)
様子をうかがうマインは見ていた光景に驚愕する。
「良し。完了だ!」
帝はそう言うとバースに背を向け柑橘水の泉の方へ歩み始める。バースは帝が何をしているのか分からず口を開けたまま固まってしまう。
「な、何のつもりだ?」
バースが正気に戻り、帝に尋ねるが・・・。
「ん?何って?何がだ?」
帝がバースに言われた事が分からずに問い返す。
「何って・・・。何故急に攻撃を止め、立ち去ろうとしている!?」
バースが帝が何故急に攻撃を止めたのか質問する。
「あぁ。その事か?単純にもうお前に用が無くなったからだが?」
帝は奪うものは奪ったので用が無いと言い切る。
「用が無い?どう言う意味だ?」
バースは帝の言葉が理解できずに混乱している。
「ハァァ・・・。やっぱりお前馬鹿だろ?用が無くなったから用が無いのだが?それ以外にどんな意味があるんだ?」
帝はバースの質問に溜息をつき呆れながらも答えてやった。
「用が無くなった?今まではあったと言う事か?」
質問をしながら懲りずに帝の隙を伺っている。
「元々は無かったがお前の所持恩恵に興味が湧いたからな・・・まぁ、もう済んだから良いが・・・」
帝はそれだけ言うと再び泉の方へ歩き始める。
「恩恵に興味が湧いただと?意味の分からん事を言いやがって!喰らえ!風の爆弾!」
バースは懲りずに帝の隙を見て再び風魔法を発動させ不意打ちを試みるが・・・魔法は発動しなかった。
「???」
バースはもう一度、風魔法を発動させるが結果は変わらなかった。
「何故だ?何故!魔法が発動しない!貴様何かしたのか!?」
バースは帝が何かしたものだと思った為、帝に何をしたのか聞くが帝はバースを無視して泉の中から貯水袋を取り出している。
(戦闘の間、泉に浸しっぱなしだったから結構な量が入ったと思うが・・・見ておくか)
帝は〈魔眼〉を発動して貯水袋の中身の量を確認する。
貯水袋(創造されし魔術道具)
〈倉庫(液体限定)〉〈吸引(液体限定)〉
中身柑橘水10㎘
(あー。うん。浸しすぎたな。・・・㎘って普通の水ならともかく味付きの水じゃ中々減らないぞ。どうするか・・・。まぁ、無いよりは良いか?)
帝が貯水袋の確認をしていると・・・。
「貴様!一度ならず二度までも無視しやがって!舐めるのもいい加減にしろ!」
帝に幾度も無視され続け青筋を浮かび上がらせるバース。
「舐めるも何も言っただろ?用が無くなったって?お前を相手にする必要性が無いんだからそりゃ無視もするだろ?」
帝はバースとの会話さえも面倒だと言わんばかりに溜息をつきながら話す。
「それに魔法が発動しない原因が俺だとして何したか言うと思うか?まぁ実際に俺が原因な訳だが。何をしたか言うつもりはないがヒントとしてステータスを確認したらどうだ?」
帝が何をしたのか言わないが代わりにステータスの確認をしろと言う。
帝に言われるがままバースは自分のステータスを確認する。
「何だコレは!?貴様一体何をしたのだ!?」
バースは自身のステータスを確認して驚愕し声を荒げる。
「どうしたバース?何が起きたのだ?」
帝とバースのやり取りを黙って見ていたマインはバースに何かが起きた事を理解し確認するが・・・。
「マ、マイン様!?わ、我がステータスが大変な事に!!」そう言うとバースはマインにステータスの開示をした。
「何だコレは!?何が起きたのだ!?」
マインはバースのステータスを確認して驚愕の表情をした。
帝も〈神眼〉を発動してバースのステータスを確認する。
リザードロード Lv56(バース)
種族 魔人 蜥蜴型(魔王の配下)
HP 10098 MP 6109 ATK 19095 DEF 9093 AGI 6755 MAG 7992 LUK 5654
〈竜鱗Lv89〉〈貫通王〉〈威圧Lv81〉
バースの恩恵の内〈貫通王〉は所持しているため残し〈威圧Lv81〉は進化済みの〈脅迫〉を所持しているため残し〈竜鱗〉は手に入れても帝に鱗が無いので発動しても意味が無い為に残したのだ。
「これは一体どういう事だ!?恩恵が消失しているだと!?」
バースのステータスを確認したマインは声を荒げる。それもそのはずだ。この世界には恩恵を消失させる恩恵などは存在せず、恩恵を消失させる方法は儀式による不利恩恵の消失しか存在しない。
その為、儀式も使用せずに恩恵・・・しかも不利恩恵ではなく通常の恩恵を消失させる事など彼らの主である魔王にも・・・いや、この世界の神にさえも出来ない事なのだ。それ故にマインは驚愕したのだ。もちろん帝はこの事実の事など微塵も知らないのだが・・・。
「確か・・・ミカドと言ったか?一体何者だ?このような事・・・恩恵の消失など勇者・・・いや我が主である魔王様にも出来ない事を行うなど・・・貴様の正体は・・・」
「ただの旅人さ・・・凄腕のな?」
帝はマインの話を切り、凄腕の旅人と答えた。
「凄腕の旅人か・・・」
マインは帝の発言を信じた訳では無いが、それ以上の追及はしなかった。
「それで、どうする?俺はこれ以上戦う必要を感じえないがお前も・・・マインも俺と戦るのか?」
帝はマインの所持する恩恵が気にはなっているが戦う気は無い為、戦闘の意思があるのか確認をする。
「・・・いや、止めておこう。勝敗は別としても我が恩恵まで消失されては敵わん。それに今は魔王様より命を授かっている身だ。命を果たすまでは死ぬ訳にはいかんのでな・・・」
マインは勝敗は別と言うが帝と戦う事で自分が死ぬ事を理解しているようだ。だが理解していない者が1人この場にいた・・・。
「マイン様!?こいつはいずれ魔王様に牙を剥きます!今の内に殺した方が良いかと!!」
バースは帝が魔王にもたらす脅威を考えマインにこの場で殺すように言うが・・・。
「先程も言ったが魔王様より命を受けているのに勝手に死ぬ訳にはいかないだろう。それにこのまま戦っても勝てる気が微塵もしないのでな・・・」
マインははっきりとこのままでは帝には勝てないと言った。
「今はこの場で戦い無駄に命を散らすより魔王様の命を果たすのが先だ」
そう言い何処からともなく巻物?を取り出すと・・・。
「ではミカド我々は退散させてもらうとしよう。・・・次に会う時は敵と認識して相対する事になるだろうが、その時は我が全力を持って挑ませてもらう!」
マインはそう言うと巻物?を宙に放る。
「〈転移〉!」
マインは呪文?を唱えると巻物?が燃え上がりマインとバースの姿がその場から消える。帝は黙ってその光景を見ていた。
「今の巻物?は何だ?それにマインが唱えた呪文?は一体・・・」
オウル:あの巻物はスクロールと言い魔法が施されており、記載されている魔法を唱える事でMPの消費をせずに魔法を発動する事が出来ます。使い捨ての上に結構な値段します、安い物もありますがそちらは下級の魔法なのであまりオススメは出来ません。
「なるほどな。便利そうだがあまり役には立たなそうだ。まぁ、それは良いとして取り敢えずは野営地に戻って3人の朝食でも作ってやるか!」
帝はそう言い野営地へと走り始める。
更新、遅くなり申し訳ございません。思いついた設定をまとめている内に日がだいぶ経ってしまいました。