殺し屋が執事になってみました 2
そんな感じでお話が盛り上がっている最中に、お風呂が沸いた事を知らせる音が鳴った。
「さて、みんなで入るとするか~」
そう言ってステラさんが立ち上がり、服を脱ごうとしている。
あ…これヤバイやつかも…。
「私は遠慮します、自室のお風呂沸かせてきたので……」
と思ったらメルロさんは平然と断って、一旦戻っていた。
「あ、着替え忘れちゃった!…取ってからまた来るの大変なんで向こうで入ってきますね!」
私は持ってきた荷物を掴んで逃げるように部屋を後にした。
「皆さんも殺し屋だったんですか?」
「だったっていうか今もこの屋敷にいる人はみんな殺し屋だな。アサシンって統一して呼んでるけど」
この屋敷にいるみんな…?
てことは料理人も、庭師も、マスターもという事になる。
それから裏の仕事についてみんなが教えてくれて、なんとなくは理解した。
「アオメはどこで殺しの技術養ったの?」
「スペルタールで5歳の時から暗殺訓練を受けましたよ」
「スペルタール!? 確か、暗殺訓練の質は世界最高峰で卒業出来るのは毎期たっ1人だけなんでしょ?」
私はその質問に「はい」と答える。
スペルタールでは訓練中に実弾を使用するので、気を抜けば死んでしまう。
しかも卒業するための最後のテストでは生き残りをかけた【デスゲーム】をして、勝者だけが卒業出来るのだ。
他の人は地下街など貧相地域出身で生きるために殺しの技術が備わったらしい。
「それで、毒の耐性がお強いんですね」
「はい、痛みの耐性も少々ありますよ。
あとは人の目を引くものはできた方が良いと言われてたので、その辺はだいたい出来ます」
そんな感じでお話が盛り上がっている最中に、お風呂が沸いた事を知らせる音が鳴った。
「さて、みんなで入るとするか~」
そう言ってステラさんが立ち上がり、服を脱ごうとしている。
あ…これヤバイやつかも…。
「私は遠慮します、自室のお風呂沸かせてきたので……」
と思ったらメルロさんは平然と断って、一旦戻っていた。
「あ、着替え忘れちゃった!…取ってからまた来るの大変なんで向こうで入ってきますね!」
私は持ってきた荷物を掴んで逃げるように部屋を後にした。
無事に危機を乗り越えた私は洗面所で服を脱いでいく。
久しぶりにサラシを取ったので、肌が赤くなってしまっていた。
「っと、ウィッグ外さなきゃ…」
サラシと同様こちらもつけてる時間の方が多いので、つけている事を忘れてしまいそうになる。
ウィッグを外すと背中の半分くらいある長い髪が久しぶりに顔を出す。
「こうすればちゃんと女に見えるんだけどなぁ~」
なんて呟きながら私は暖かいお風呂に入った。
のぼせそうになってきたのでお風呂の扉を開けた瞬間ーー
黒い燕尾服のすそが見えて、私は瞬時に顔を上げる。
「ーお前タオル忘れて……!?!?!?」
洗面所にバスタオルを持っているステラさんが驚いた顔をしてこちらを見ていた。
「ステラ、さん……うわぁっ///」
ステラさんがいたのにも驚いたが今は
男装をしてないし、裸だったのに気づき急いで扉を閉める。
どうしよ…女だってバレた…
男して生きようと決心してから約1時間、早速バレてしまいました…。
洗面所の方を見るともうステラさんの姿は見えなかったので私はそろり、と扉を開ける。
そして、洗面台に置いてあったバスタオルに手を伸ばした。
「ーぬわぁぁっ!!」
もう少しで届くというところで横から手が伸びてきて、私の手首を掴み、そのまま体ごと引っ張られてしまった。
ステラさんの体に引き寄せられ、勢いがあまり後ろに倒れこむ。
気づいた時には私がステラさんを床ドンする形になっている。
しかし、すぐにステラさんによりひっくり返されて立場は逆転した。
「アオメって女だったんだな」
ステラさんはさっきの驚いた顔と一変して、悪戯そうに微笑んでいる。
嫌な予感がするので私は起き上がろうとするが、両手首を押さえつけられてるので起き上がれない。
「ここまま体の関係作るか?………なんてな、ガキに興味ねぇし」
そういうと私の手を取って起こしてくれた。
全くイタズラが過ぎるが、黙ってたこっちも悪いのでなんとも言えない。
「他の奴らにもちゃんと言っておけよ。信頼に関わるからな」
そう言うと彼はスタスタと歩いて部屋を出て行った。
…裸見られたんだけど、そんな魅力ないのか。
私はバスタオルで体を拭きながらそんなことを思っていた。
○●○●○●○●○●○●○
ステラside
「おかえり、ステラッ!遅かったね」
扉を開けた瞬間、飛びついてきたクレナは下半身にタオルを巻いてるだけだ。
「服を着ろ、服を!風呂入ってくる」
再度、燕尾服を脱ごうとしたらくっついていたクレナが首をかしげる。
「すっごいアオメと同じいい匂いがする…なんで?」
「…アオメの部屋にいたからだろう」
ペリッとクレナを剥がして素早くお風呂に入った。
あぶねー、バレるところだった。
いい大人が年下の体見て欲情して、理性を保てないなんて…。
まだ手や耳に残ってるあいつの肌感と色っぽい声などが身体を熱くする。
なんだかのぼせそうだったので今日はできるだけ早く風呂から上がった。
寝間着に着替えて、部屋に戻るとメルロが戻ってきていた。
クレナもやっと服を着たので、ホッとする。
「アオメさんはどうしたんですか?」
「風呂でのぼせてたからそのまま寝かせてきた」
歓迎会の途中に主役が抜けてしまったが、料理も残ってるためとりあえず飲み食いをする。
話題はアオメについてだ。
「スペルタール卒業ってことは、自分以外の同期みんな殺したってことでしょ?」
「それアオメさんの前で言っちゃダメですよ?トラウマの可能性もありますから」
「分かってるよ~!でもアオメが仕事するところ見てみたいなぁ!きっとかっこいいんだろうね」
2人は勝手に盛り上がって妄想を働かせているようだ。
俺も稀に話に加わりながら、次の犯罪の計画を練る。
「その依頼からアオメは加わるんでしょ?僕、アオメと同じチームね!」
椅子に座っていた俺に後ろからクレナが抱きついてきたので、書いていた字が乱れた。
「分かったから、離れろ!相性とかもあるからそれはまた今度決める」
みんながいて集中できないので、計画を立てるのはやめた。
「もう俺は寝る、朝早いし……」
2人を放っておいて俺はベットに入る。
どうせしばらくしたら、メルロは自分の部屋に戻りクレナはベットの下で寝てるだろう。
「お前らも早く寝ろよ…おやすみ」
俺はそう言い残して、そのまま眠りについた。