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殺し屋が執事になってみました。  作者: ヘモグロビン
2/6

怪しい依頼にはご用心

私は裏業界で生きている裏側の人間。


要するにフリーランサーの殺し屋だ。



《フリーランサー:組織などに属していなく、自由に依頼を受けている》




小さい頃から暗殺訓練を学び、10歳の時から殺し屋を始めた。




16歳になった今では裏業界で私の名を知らない人はいないと言うほど有名になった。




依頼達成率100%の死神に見初められた殺し屋、【アオメ】として。











そんなある日のことだった。







「ーオヤスミナサイ」




目の前の獲物の心臓を私は撃ち抜く。



今回の依頼はあまり難しいものではなかったのでさっさと私は片付けてしまった。




返り血に染まったコートを脱ぐと代わりにパーカを羽織り、フードを深く被ってから早々に私は街に出る。



そのまま路地裏にある小さな店に入り、

さらに1番奥の個室に向かった。




そこには太った大柄の男が葉巻を咥えて、指で机を叩いている。




「遅くなりました、立て込んでいまして…」



私はそう言いながら席に座る。


私を見たその男は黙ってカバンから紙の束を机の上に出してきた。




それは今回頼みたい依頼についてをまとめたものだった。




手付金1000万っ!?なんでそんなに…




《手付金:暗殺を承った場合に先に貰うお金。後からもらうのが報酬。》




私は驚きつつ、内容を確認していくお更に驚かされた。




成功報酬が1億っっっ!?なんだこの額…。




標的はどこかの伯爵のようだが、聞いたことのない名前だ。




「なぜこんなに高額なのですか…?」




私がそう聞いても男は沈黙を守っている。



どうしよう、やろうか迷うな…。




「ー達成率100%の死神に見初められた殺し屋なんだろう?アオメ」




野太い声で男は言う。


普通ならこんな依頼、怪しすぎて断っていただろう。




でも今回それは無理な事を私は悟った。


なぜなら、男から禍々しいほどの殺気がじわじわと私を取り巻いているのだ。




「喜んで承りますよ、アオメの名にかけて」




私がそう言うと男はニヤッと笑ってこう言った。




「交渉成立だな、ならこれ持ってけ」




ポイッとこちらに投げてきたのはバッグ。中を確認すると手付金だった。








今思えばこの取引が私の人生を180度変えた分岐点だった。







不意に身体がビクッとして私は目を覚ました。




ここはどこだ……?




徐々に開けた視界にまず目に入ったのは

豪華なシャンデリア、高級そうな絨毯。



そしてお洒落なティーカップで紅茶を飲む燕尾服(えんびふく)の男性。




「ーん?やっと目を覚ましたか?」




私の視線に気づいたのかこちらに向かってやってくる。




何か嫌な感じがして私は逃げようと思ったが、ここで初めて手足が鎖で固定されてることに気づいた。




「暴れんなよ、んな事しても無駄だ」




そう言って私に顔を近づけて来た彼の顔は悔しいがとても整っている。




「状況分かってるか?お前は我が屋敷に侵入した挙句、マスターを殺そうとしていた。


が…俺に捕まり今に至る」




わざわざ教えられなくても分かっていたが、こいつが私を捕まえたのは知らなかった。



あの時はかなり意識が朦朧としていたので、笑っていたことしか覚えていない。




「…どうするつもりですか?殺すんですか?」




「場合によったらな?…まぁ、まずはマスターの命令でお前のことを聞き出せと言われている。命が惜しければ質問に答えろ」




彼は私から顔を離すと私の周りをぐるぐると歩きながら、質問をしてきた。




聞かれた質問は歳や出身地などどうでもいいようなことばっかりで、別に隠す必要ないから答えておいた。





「質問は以上だ。…またな」




そう言って男は部屋を出て行った。





1人きりになった私は鎖を外すことはできないかと挑戦してみる。



しかしそう簡単に外れないので、壁にもたれかかって座ってることしかできない。




私、これからどうなるんだ…?





そう思っていると燕尾服の男がまたやってきた。



私に近づいたと思ったら鎖を外しているではないか。




逃げるチャンスか……今だっ!




全ての鎖が外されたその瞬間、私は踏み出そうとした。





「ー逃げようとか思うなよ、ガキが」




冷淡極まりない声が聞こえたと思ったら、首筋に冷たい感触があった。



男が私の首に剣先を当てていたのである。




この男、間違いなく私より強い…。



逃げるのは諦めるとするか。





「マスターの命令だ。この紙に書いてる人のところに行け。


どうせ屋敷内部の地図は知ってんだろ?」




そう言って私に一枚の紙を渡してきた。



人の名前の隣に【食事】、【談話】、【運動】などが書かれていた。



さっぱり意味がわからない。




「ほら、さっさと歩け、行くぞ」




男は私の背中を剣の柄でツンツンしてくるので、私は歩き始めた。





紙の一番上に書かれていたのは『メルロ 【食事】401号室』




私は401号室に向かう為、部屋から出ると改めてその豪華な内装に驚いた。



そんな屋敷内を私は歩き、401号室を発見する。



ノックをすると中から落ち着いた声が聞こえた。



部屋の中は外の豪華な内装とは違い、

いたってシンプルだった。




「こんにちは、アオメさん。メルロです」




クリーム色のサラサラな髪をなびかせて緑色の綺麗な瞳を持つ中性的な彼は、私に深々と礼をしてきた。




私も礼をすると部屋の奥の方にあったイスに座るよう促されたので座る。




「朝食がまだでしたよね?」



そう言った彼は奥の部屋に消えたと思ったら幾つかの皿やグラスを持ってきた。



皿には美味しそうな料理が盛られているし、空だったグラスにはメルロさんが水を入れてくれた。




「お食事にしましょう?召し上がれ」




そう言ったメルロさんは「いただきます」と言うと器用にナイフとフォークを使って上品に自分の分を食べ始めた。




私も「いただきます」と言った後に口に入れるもの1つ1つに細心の注意を払って食べた。





しかし私は気づいていた。


私が食べ物を口に入れる時に必ずメルロさんと、後ろの男が私を見ていることに。



おいしい味つけの後ろの方で微かに苦い毒の味がしている。



「とても美味しいです、ほのかな苦味は隠し味ですか?」




私がそう聞くとメルロさんはクスリと笑って、満足そうに拍手した。



「やはり気づいておられましたか…。


お見事ですね、致死量の毒を盛って居りましたが耐性があるのですね?」




メルロさんはどうやら私を見定めていたようだ。



彼が言った通り、私には毒の耐性がある。だからこのくらいの量はどうってことない。



それからも私は毒入りの朝食を頂き、最後に水を飲むことした。



透明で無臭、外見は明らかに水だ。




「どうされました?グイッといってください?」




にこやかに微笑んだ彼はとても嬉しそうだ。これにもきっと毒が入っているのだろう。



私は見せつけるようにそれを一気飲みして見せた。





こ、これは……まさか………











「ただの水じゃんかよぉぉぉぉ泣」




構えた私が馬鹿だった。


メルロさんも燕尾服の男も爆笑している。




「アオメさん、ナイスリアクションです!


私は気に入りましたよ、合格ですね」




メルロさんはそう言うと、男は私に次の部屋に行くよう指示してきた。




とんだ赤っ恥をかいた私は廊下を歩いている途中、何度も後ろを見る。



未だに燕尾服の男が爆笑しているのだ。




「いい加減笑うのやめてください、こっちだってあの状況で警戒してたんですから」



「いやぁ、カッコよく飲み干したものは普通の水だったなんてな、実に滑稽なもんだ」




そんな会話をしていると私は402号室に着いたので先ほどと同じようにして中に入る。




またしてもシンプルな部屋にいたのは赤いショートカットの男の人だ。



確か名前は…『クレナ』だったはずだ。




「こんにちは、アオメッ!クレナです!」




扉付近にいた私に走り寄っていきなり抱きつかれた。


私は頭が追いつかず呆然とする。




「えっと、僕とは…【運動】だね?


じゃあ鬼ごっこしよっか!制限は10分、僕が鬼で、君が逃げる人!!」




クレナさんは勝手に話を進めて30秒からカウントダウンしている。




「捕まったら殺されるか、抱きつかれるぞ?」




私が慌てていると燕尾服の男が私にナイフを渡してきて、部屋の扉を開けてくれた。




私はとりあえずダッシュで部屋から離れて、天井にある通気口の穴に身を隠す。




少し経つと「0ー!!行くよっ!!」とクレナさんの声が聞こえたので私は身構える。




が、扉の前でクレナさんは動きを止めた。




なんで動かないんだ…




そう思ってその光景を見ていると突然クレナさんはこちらを見た。


確実に目が合ってしまった。




「アオメ、みーつけたっ!!!」




嬉しそうに言ったクレナさんはこちらに向かってすごい速さで来たので私は逃げる。




通気口から降りて廊下を全力疾走しながは、後ろを見るとクレナさんとの間が縮んでいた。



逃げ切れないと分かった私はまたしても天井に通気口に入る。




通気口から天井裏を通っていると、どこかから音がした。



私はとりあえず走っていたが角を曲がったところで結局クレナさんと会ってしまった。



来た道をまたしても全力疾走するが、だんだん間が縮む。




通気口まではギリギリか、でも降りてる途中に捕まえられるな。




私は見えてきた通気口目掛けて更にスピードを上げ、そのまま踏み切った。




グランと揺れた巨大なシャンデリアに私はなんとか着地をして、後ろを見る。




「お~!アオメ、やるね?」




通気口の穴から顔をのぞかせいるクレナさんは笑った後、何かを投げてきた。




私は高く飛んで避けるとそれはシャンデリアのガラス細工に突き刺さっていた。




ナイフ……マジで殺す気か……




それからもクレナさんは私に向かってナイフを投げてくるので、シャンデリアは破壊されつつある。




このままだとシャンデリアごと落ちてしまうので、私は体を揺らしてシャンデリアをも揺らす。



そしてふりこのように揺れてるシャンデリアとタイミングを合わせて、私は飛ぶ。



飛んでる最中に身体の向きを変えて、通気口に向かってナイフを投げる。




床に着地して様子を伺うと、燕尾服の肩らへんが破れていただけだった。



私は追いつかれないうちに402号室に近づくと燕尾服の男が扉の前にいた。




「ナイフもう一本ないの?」



私がそう聞くとどこにしまっていたかはわからないが何本か出してくれた。




「残り3分、来てるぞ、上から」




その声で私は上を見ると、クレナさんが私目掛けて落ちてきていた。




「言わないでよ、もうすぐだったのにー!」




華麗に床に着地したクレナさんは頬を膨らませて、男に文句を言っている。



その隙に私はクレナさんから距離を取り、もらったばかりのナイフを投げる。



それをクレナさんは自分も持ってるナイフで叩き落としている。



お互いナイフの投げ合いをしていると次第にナイフはなくなった。






いつのまにか接近戦となった私達は相手に殴る蹴るをして闘う。




「あのクレナさん、私に触れてるので私負けじゃないですか?」




私が気になったとことを攻撃も防御も緩めずに聞いてみる。




「まだだよ、だって…………………






……殺せてないからさ?」




狂気じみた目をして彼は私に攻撃をしてくる。


いつも間にかルール変更された鬼ごっこはなかなかハードだ。



まったく埒があかない…



そう思った時だった。




「時間だ、引き分けだな」




私たちから少し離れたところで高みの見物をしていた燕尾服の男がそう言った。




その言葉でクレナさんは攻撃をやめて、

狂気じみた目が正気に戻っていた。




「アオメ凄いねっ、こんなに長く遊べたのは久しぶりだよっ!」




そう言ってクレナさんは抱きついてきた。




「クレナ、俺たちはマスターのところへ行く。離れろ………」




燕尾服の男が私からクレナさんを剥がしてくれた。



そして私の前を颯爽と歩き始めた。

これまではずっと私の後ろを歩いてきたのに。




不思議に思いながら、クレナさんに別れを告げた私は大人しく後をついていく。




行き止まりについたと思ったら目の前の壁を男は押した。


するとその壁はドアのように開いた。





「地図にこの扉のこと書いてあったか?」




私はその問いに首を振ると男は満足そうに微笑んで、中に入っていった。




私も後をついていくとこれまで行った部屋とは違い、豪華な内装だった。




「マスター、アオメを連れてきました」




スーツの男がそう言うと、華美なソファに座っていたマスターと呼ばれた人がこちらを向いた。




「ーなっ、あなたがなんでここにっ!?」




私はその顔を見たことがあったので思わず変な声を上げてしまった。



マスターと呼ばれたその男。



それは今回のこの屋敷の主を殺せと命じたクライアントだった。




「やぁ、アオメ。よく来たな。とにかく座れ」




クライアント、もといマスターは私をソファに座らせてこう話した。



「君に依頼を理由をした理由はただ1つ。…君が欲しいんだ」




私は自分を指差せて、「へ?」と言ってしまう。



「要するに君のことを雇いたいのだ…おい、ステラ!」




マスターがそう言うと燕尾服の男、ステラは私に紙を渡してきた。




「ここは《ルーコイド・ターキス・カンパニー》のアジトであり、我々の家だ」






最初は冗談かと思っていた。



ルーコイド・ターキス・カンパニーと言えば、世界各国で恐れられている犯罪組織だ。



私ももちろんその名を知っていた。



組織に関する情報は一切なく、突然現れて犯罪を犯す極悪非道な組織。



それがルーコイド・ターキス・カンパニーだ。





「う、嘘ぉぉぉ…じゃないですよね」




情のない声を出して、私は紙とマスターの間で視線を彷徨わせる。




渡された紙には【契約書】と書かれていた。




「ルーコイド・ターキス・カンパニーで働かないか、アオメ?」




そう言いながら私に万年筆を渡してきた。




「えっと…1つ聞いてもいいですか?


断ったらどうなりますか?」




私がそう聞いた瞬間、背後でいくつもの殺気が感じられた。



後ろを見ればメルロさん、クレナさん、ステラさんが私に銃を向けていた。




「ご存じの通り、我々の存在を知った後にここから出れるのは屍になった時ですよ?」




ニコッとメルロさんが笑ってそう言った。



その笑顔を見て、私はすぐにマスターに向き合う。




「ー万年筆をお借りしてもいいですか?」





こうして私は雇われることになった。







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