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(4)アカネの装備品


 アカネは両腕を広げて 何も持っていない事をアピールしながら言葉を発した。


「装備はどうするの。それに『武器なし』じゃ困るわ。私は靴も履いていないのよ」


 彼女は睡眠中に拉致(、、)されたのだ。何も持って来ていない、それを強調した。「何とかしなさい」と。


「……では、装備一式を提供致します。どのようなモノを お望みでしょうか」


 招喚者は譲歩ばかりしている。アカネの要求を断ることが出来ないのだ。


「そうね、魔法攻撃も物理攻撃も完全に遮断する装備かな、でも重いのは嫌よ。それと、着替えは任意にして貰わないと困るわ。

 武器は、……うーん そうね、如意金箍棒、通称『如意棒』が良いな」


 ダメ元だ、何でも言ってしまえ。彼女の言葉は そんな感じのものだった。

 しかし彼は、それを まともに『要求』だと受け取った。律儀に 一つひとつ答えを返す。


「えっと、魔法と物理攻撃、両方とも完全な防御は、規格外能力チートになりますので不可能です。耐魔法、耐理物攻撃の どちらか片方の防御力を上げたモノになりますが、いかがでしょう。

 着替えですか? あぁ そうか、女性ですものね。では、倉庫キューブを提供致します。それに思い付くものが出るよう調整しておきます。

 ところで如意棒とは どのようなモノですしょうか?」


 ホウ、何とかなるんだ。アカネは面白くなって、悪戯心から訂正と追加要求をした。


「片方だけの防御なら要らないわ。その代わり 回避のために五感の精度を上げてよ、第六感も欲しいな。

 如意棒は、うーん。まぁ、伸縮自在の とても強靭な棒ね。如意いのままって言うくらいだもの。詳しくは私の心象イメージを読めば良いわ。あ、そうそう。如意棒は二本ね」


 アカネは、西遊記の登場人物、斉天大聖が使う武器である如意金箍棒のイメージを招喚者に伝えた。ありもしない二刀流(、、、)で。

 これは特に意図したものではない。ただ、二本ある方が面白いし、後々きっと都合が良いだろう、という それこそ勘である。


「はい。では五感の精度をプラス十倍と、第六感の追加ですね。第六感の精度は……、初期で的中率五十パーセントくらいかな。如意棒はっと――」


 何もない空間に腕を突っ込んで、彼女の欲している物を探し(創っ)ている。


「だめよ! 第六感の的中率は百パーセントにして! じゃないと意味ないじゃないの」


「は、はい!」


 招喚者が、二本の如意棒をアカネに渡して 倉庫キューブに細工している。彼は それをアカネが覗いているのに気付いていない。

 彼女は それを読み取っていく。

 ――いくつか同じ様式パターンがある、男の様子からみるに、あれは制限を付けているのだろう。ということは『無制限』があるということだ。

 招喚者が使っている魔法回路の構造を横目でシッカリ観察しながら、別の話題を振った。


「魔法の事を もっと良く知りたいわ。説明書のようなモノを何か持っていないの?」

 アカネは、何気ない声を作って質問したたが、さすがに これには警戒感を抱いたようだ。


「なぜ そんなモノを?」


 招喚者の表情に不審感が浮かぶ。彼には それを隠す余裕もないのだ。


「私って好奇心が旺盛なのよ。それに待っている間 することがないでしょ? 本でも読みたいわ。それに知ってて悪い事じゃないでしょ。

 そうだ、他にデータべ―スの」ようなものは ないかしら?」

 アカネは何気ない顔で 白々しくも淡々と答えた。


「確かに そうですが……」

 彼には躊躇ためらいが見える。そんな事をして良いのだろうか、と。


「それとも、何か知られて困るような事でもあるの?」


 彼女が不信を滲ませた言葉をかけると、招喚者は慌てて、何度も首を振って否定した。


「いえ、そんなことは、全く、ありません。

 そ、それでは、私が学生の時に使っていた教科書を読んでみますか。図書館のデータ検索機もありますが、使われますか」


「じゃ、一式貸して」アカネは無邪気を装って 大きな知識の元を入手した。


 それらは彼の『個人的な亜空間』収納されていたので、即刻貸与された。アカネは文字翻訳のためにと強奪した、キューブと如意棒の疑似人格収納用リストバンドを装着しながら話を続けた。


「魔法の追加補正が決まるまで ここで待ってるからね」


「分りました。暫くかかりますが お任せください」


 招喚者は深々と礼をして、出現した時と同じように消えた。


 アカネは彼に とても大きな情報源と共に、とても便利な道具と、とても強力な武器を貰って、更に追加要求までして やっと開放した。


 しばらくして大樹のもとに立つアカネの服装、上は ロングカーディガンとブラウス、下はロングのワイドパンツ、それにローファというモノだ。

 それは、組み合わせも、その色合いも、彼女の外見年齢には 少しばかり地味であった、そう あと四、五年は待った方が良さそうな感じに見えた。





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