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魔法

作者: 羽生河四ノ

前掛けと前書きって母方の親戚で、お盆はいつも母方の実家であって一緒にお酒を飲むそうですよ。

 それは、ある日の放課後の事だった。


 「なあ、もし魔法を一個だけ使えるってなったら何がいい?」

 「あらああー?その話しちゃう?」

 「おおん」

 「んだすなー、一個?一個だけ?」

 「そうだよ、一個だけ」

 「えええー、一個って事無いでしょう、けち臭い。やっぱりこういう時は三個くらいあったほうがいいじゃないの?」

 「だめだめ。お前馬鹿だな。三個あったら、それが五個になり、十個になり、ってそうやって増えていくだろう?」

 「当たり前でしょうが。人間だもの」

 「その人間だもの感が駄目なんだ、こういう時は一個だ。一個だから考える事の意味があるんだろうが?」

 「ええー、お前なんだよ?市役所かよ?魔法使用許諾申請書とかの提出を求めるやつかよ」

 「何個もあったらありがたみもない。人間の欲って言うのはもう無限なんだからな」

 「何言ってんだお前、当たり前じゃん、人間に生まれて欲が無かったらもうそんなもん死んだも同然じゃん」

 「そんな事をえらそうに言う奴が、魔法を使って悪い事をするんだ。サリバンとかISとかみたいな・・・」

 「俺はそこまで崇高な精神をもっていない」

 「わかる」

 「わかるな」

 「お前は崇高じゃないな、うん。わかる」

 「わかるなよよおおおまえよおおお」

 「うるさいな」

 「うるさくねーし!」

 「それによ。お前の精神が崇高とかどうでもいいよ。魔法だよ。魔法。一個魔法使えるんだよ。お前魔法何を使いたんだ?」

 「あー・・・」

 「一個だぞ、一個だけだぞ」

 「一個か・・・あー」

 「どうする?どうするんだお前?」

 「どうしよう!どうしようかなああ!」



 「・・・」

 さっきから・・・、

 さっきから・・・うるせえな・・・。

 私が読書をしているというのにこの糞共が・・・。


 最初に言ったとおりそこは放課後の教室。先ほどからこの教室の入り口近くの席で安堂と伊原がそのような糞みたいな会話をしている事に教室の窓際の席で読書をしていた私は腹が立っていた。立ちまくっていた。一体どうして奴らは放課後になっても帰る事もせずに、この教室に残っているか?私が読書をしているこの教室に。遊びに行けよゲーセンとかに。この野郎共が。


 私は読書に全神経を集中したいのに、それをすることが出来ずに腹の底で「ううう・・・」ってなっていた。私の大事な読書タイム、放課後は図書館もそれなりにカップルとかで混んでいるから、より良い読書を行う為に、私は悩みに悩み、そしたらあるとき天啓を得て「にゃるほど!」ってなって。逆転の発想で静かな場所として、自分のクラスの教室を思いつき、そこで読書をすることにしたのだ。


 で、


 ここ一ヶ月位は静かに読書を出来ていた。


 しかしながら、今日。


 何故か『あなんとか』と『いなんとか』がこの教室に居て、それだけだって「ぐぎぎ」って私はなったのに、それなのに、


 それなのに奴らは、


 それだけでは飽き足らずに、


 「魔法何がいいんだよおおお」

 「何にしようかなあああ」


 という糞みたいな会話をしているのか!?


 やつらは本当に高校生か?


 私は頭が痛くなった。あと、気を抜いたら持っている本のページを手でくちゃってやりそうで、それをしないようにすることにも苦心していた。だって読書している女子の近くで、男子高校生二人が、大声で、


 第一大声だけだって腹が立つのに、


 それプラス、


 「魔法一個かあああ」

 「魔法一個だけだよおお」


 って言う会話!

 その会話!

 高校三年生、来年奴らが就職するのか進学するのか、私は勿論知らない。しかし、今その会話か?本当か?やつらは?本当にそうなのか?


 「そうだなあ!魔法なああ!」

 「一個だぞおお!一個だけだぞおおお!」


 「・・・」

 絶対に違う。


 あれは何だろう?

 罠か?

 私はずっと謀られていたんだろうか?


 これまでの静かな一ヶ月間がまるで今日の為のフリだった様な気がして、で、それが私の内心を死ぬほど「あー!」ってさせた。



 「一個って言うのはあれだよねえ。重要性が増しすぎて、あれだよねえ」

 「お前はそんな事を言っているから、駄目なんだ。そんなんだから桃鉄でもいつもカードを残して勝てねえんだ」

 「なにおー!お前がボンビーを人につけたから悪いんだろうが!」

 「一か八かのタイミングで、ぶっ飛びカードを使うとお前はいつもハワイに行くよな」



 「・・・」

 私はその時既に本を読んでおらず、ただただ白目になっていた。あと鼻血が出そうだった。両穴から出そうだった。あと自分の鼓膜を破りたくなった。あと・・・、


 するとその時不意に、あといの二人が居た近くの扉がすごい勢いで開いて、

 

 「ねえよ!」

 と言って珍妙な格好をしたやつが教室に入ってきた。

 「わああ!」

 すぐ近くで起こったことだっただけに糞共は驚いたような声を上げた。

 「・・・」

 私は遠かったので叫びはしなかったものの、でも急な事にすごく驚いて、気がつくと手が本のページをくちゃってやっていた。


 「結局!?」そう思った。


 「なんだちみは!」

 あのほうのクソが、言った。


 「お前ら、あほみたいに魔法のことしゃべってたろ!?わたしは魔法使いだよ」

 珍妙な格好をした奴は言った。

 「なんだちみは!」

 いのほうの糞も同じ事を言った。


 「お前ら魔法の事を好き勝手言っているけど、そんな魔法無えからな」

 しかし珍妙な格好をした奴は気にすることなく言った。


 「そんな都合のいい事が世の中にあるか!馬鹿共が!」


 「ええー」

 あといは同じタイミングで、同じアクセントで、同じ尺で『ええー』って言った。


 「勉強しろ!」

 珍妙は言った。


 よっしゃあああああああああ!

 私は本のくちゃってなったページを一生懸命伸ばしながら心の中でそう思った。ガッツポーズした。


後書きは村八分にあっています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 欲望には限りがない。だから一個だけ……という考えに共感しました。読書家女子のキレ具合も面白い。
2019/11/30 18:07 退会済み
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