菫色の選択
「さぁ、選びなさい、マース」
「え?」
あの後。全てが終わった後、ルラン王国にフラクトとリディーラン王国の国王が引き渡され、一同は一先ずクラリナ達が敷いていた野営地へと来ていた。
そしてそこで流されるままに着いて来ていたマースに突然シルティーナがそう告げたのだ。
「あなたの“世界”は壊れたわ。私達が壊したの」
「……」
「あなたが好きだったリディーラン王国もなくなったわ。私達が手を貸したの」
「……」
「それで? あなたは何を選ぶのかしら? どんな答えを出すのかしら?」
「……お姉ちゃんは、どうして僕を助けてくれたの?」
それは無意識にした質問だった。
自分を最初に助けてくれた人は、マースの為ではなく、自分の立場ゆえの事だった。
“ヒロイン”ならそうするだろうからと。
なら、魔物からなんだかんだ言いながら守ってくれた彼女はどうなのだろう?
決して優しくは無かったけれど、それでも自分で選べと言ってくれた彼女は……
「そんなの当然、自分の為に決まっているじゃない」
「え……?」
「私は、こうなった後にあなたがどんな選択をするのか知りたかったのよ。親しい者からの裏切りに対して、私とは全く違った選択をしたあなたが、ならその後に出来た大切な者にまた裏切られ、奪われたのならどんな選択をするのかを知りたかったの。それだけよ」
それは、酷く残酷な言葉の様でいて、しかしその時のマースにはある種の救いでもあった。
少なくともシルティーナは自分をちゃんと見て、その選択を見届けようとしてくれている。
マースにとってそれは、今後の自分の道を決めるのに何よりも大切な事であった。
「僕、決めたよ……」
菫色の瞳に強い決意を宿して、マースは自分の道を選んだのだった。




