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元令嬢様の華麗なる戦闘記  作者: 夢猫


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リディーラン国王捕縛

 所変わってクラリナ達の方は、こちらもまた、シルティーナ達が丁度浄化をしている時に遡る。


「おー、やってるねぇ」


 マンリーニャから少し離れた場所で光の粒子が空へ昇って行くのを見ていたクラリナが感嘆の声を上げた。

 彼女の前には拘束されたリディーラン王国の国王とその部下の姿がある。


「あれは、アカリが浄化をしているのか? マンリーニャに置いていた騎士達はどうした!? アカリがあそこに居るのならあの二人も……」


「うわぁ、神経図太いねぇ、王様」


「貴様っ……」


 ニッコリと笑ったクラリナが国王の前にしゃがみ込み目線を合わせる。


「いい事教えてあげようか?」


 そう言って鳴らされた指。

 その音に反応するかの様にクラリナの後ろで何かか小さく破裂するような音が鳴り、次いで何も無かったそこに大勢の人が現れた。


「なっ!?」


 拘束されている二十人前後の者達は皆一様にリディーラン王国軍の防具を身に着けている。

 逆にそれを囲む十人程の者達は格好も性別すらも様々であった。


「な、何だこれは……?」


「何って、見たまんまだよ」


「……」


「あれ? おーい? 生きてる? 息してる? 大丈夫?」


 目の前の現実に思考が停止した国王の顔の前でクラリナがヒラヒラと手を振るが無反応である。


「うーん、参ったなぁ。国王ともあろう人がたったこれだけの事で放心しちゃったらダメでしょ、まったく……お?」


 呆れた様に息をつくクラリナ達の元に馬に乗った集団が駆け寄って来る。

 それに気づいたクラリナが嬉しそうに声を上げた。


「間に合ったんだね、ファーラ!」


「おう、クラリナ。久しぶりだな」


 クラリナの言葉に一人の男が応え馬から降りて来る。


 ぼさぼさの髪に伸び放題の髭。がっちりとした体つきをしているクマの様なその男の名はファミラス・カランザートと言い、リディーラン王国最強の部隊である特務遊撃隊の隊長その人である。


「ハイン君から話は聞いてたけど、見事な変身っぷりね」


「そうか? 髪と髭を伸ばしただけなんだけどな。案外気づかれないモンだ」


「そりゃあ、あなたは何処ぞへ行方をくらませた事になっているんだもの。まさか一般兵に交じって行動しているとは誰も思わないじゃない」


「そういうもんか?」


他愛もない話をしている二人の後ろで騎乗したまま待機している男達が身に着けている装備に掲げられた紋章(エンブレム)を見た瞬間、国王の瞳に光が戻った。


「お前達、特務遊撃隊の者達か!?」


 その言葉にファミラスが国王の存在に今気づいたとばかりに声をあげる。


「あ? おお、国王様じゃねぇーの。その通り。俺達は特務遊撃隊の人間だ」


「今まで何処に!? い、いや、そんな事はどうでもいい!! 早く私を助けろ!!」


「ご冗談を。俺達は隊長か副隊長の命令しか聞きませんよ」


「まだそんな事を宣うかっ!? 状況を見よ!! この蛮族どもは私を捕らえ、我が国を乗っ取るつもりなのだぞ!! そうなればお前等だとて無事では済まない! いいから早く私を助け、この者達を打ち殺せ!!」


 必死の形相の国王にクラリナが肩を竦めた。


「いやだなぁ、王様。うち等別にこんな国乗っ取ろうなんて考えてないよ。うち等が欲しいのはここ。マンリーニャだけなんだから」


「マンリーニャは我が国一の港町だぞ!! それをただのギルドの者達が手にして何をするつもりだ!? マンリーニャを失えば、我が国の交易機能はほぼ失われたも同然だ!! それを乗っ取りと言わず何と言う!?」


「正当な報酬、って言うんじゃないかな? うち等はルラン王国に手を貸した。国の乗っ取りって言うならルラン王国の方だよ。うち等はその報酬にマンリーニャを貰おうってしてるだけなんだからさ」


「このっ……!! お前等ごときに政策が出来るとは思えぬな。マンリーニャがお前等の手に渡ったとて、直ぐに立ち行かなくなる!」


「あー、それなら問題ないよ。そういう知識をちゃんと持った、とってもとっても頼りになる〝味方〟がうち等には居るんでね」


「なに?」


「ほら、騎士の人達を取り囲んでいる人達をよーく見てみてよ。見覚えある紋章をつけている人達が居るでしょう?」


「あれ、は……」


 クラリナの言葉に従って騎士達を囲む者達に再び目を向けた国王は、彼女が言う様にその中に見知った紋章をつけた者達がいる事に気が付く。


「アルモイヌ侯爵家とルルート侯爵家の紋章……ハウトート男爵家の者も……何故……?」


「後は、インマニア男爵家とリウチーナ子爵家が私達の“味方”です。あぁ、それとバルラトナ公爵家も」


「な、に……?」


「更に更に!」


 楽しくてしょうがないとでも言う様にクラリナの声は弾んでいる。

 満面の笑みで視線を向けた先に居たのはファミラスを含めた特務遊撃隊の者達だ。

 クラリナにつられてファミラス達を見た国王が怪訝そうに眉を寄せた。


「リディーラン王国の誇る最強部隊、特務遊撃隊の方々もまた、うち等の“味方”だったりするんだな、これが!」


「なにを……こいつ等はファミラスかハインの命にしか従わないと……」


「その通り。けれどとっても残念ながら、その二人こそが双翼の剣の人間だったりするんだよ、王様」


「どう、いう……」


「ファーラ、種明かししてあげなよ」


「おー、そうだな」


 クラリナの言葉に頷いたファミラスが顔を覆っていた髪を上げる。


「おまえ、は……ファミラス?」


「疑問形かよ……そうだよ、国王様。ご無沙汰だな」


「何故、何故お前がっ!?」


「何故も何も、俺は何処にも行っちゃいなかったんだぜ。ずっと、特務遊撃隊に居た。お前等が気付かなかっただけでな」


「お前が、双翼の剣の者と言うのは……」


「事実だぜ」


「いつから……」


「最初からさ。この国に来る前から俺は……いや、俺とハインは双翼の剣に所属していたのさ」


「どういう事だ?」


「どうもこうも……って、別に全部説明する必要はねぇのか。ま、クラリナが言った通り、特務遊撃隊は全員が双翼の剣側の人間って事だ」


「……」


「あはは!! いい表情だねぇ、王様。けれどまだ終わらないよ。現状はもっと愉快な事になっているんだから。もっともっと絶望してよ!!」


 目を見開き言葉を失っている国王に追い打ちをかける様にクラリナが取り出したのは数枚の紙。

 それを無造作に投げれば、地面から僅かに浮いた状態で留まったその紙達がそれぞれ違う情景を映し出す。


「やあジン様。そちらはどうだい?」


『クラリナか。制圧は済んで、後はアルハルト達からの連絡を待つだけだな』


「そっか」


『クラリナ様』


「エレイン! ケガとかしてない?」


『大丈夫ですわ』


「そう、良かった」


 映し出された情景を背に濃紺色の髪と瞳を持った男が現れる。

 その男と話をしていたクラリナにまた別の紙から映し出されている情景から甘栗色の髪を持った女性が声をかけた。

 その後もう一つ違う紙の情景にも茶色の髪を持った男が現れ、計六つの紙から映し出された情景の内三つに映し出されたその人物達と言葉を交わすクラリナ。


「これは……」


『あら、リディーラン王国の国王様は無事捕獲出来たのですね』


「うん、ばっちり! 只今絶賛絶望中だからさ、更に追い打ちをお願いしようかと思ってね」


 目の前の光景に思わず声を漏らした国王に気付いたエレインが言えば、クラリナがニッコリと笑って言った。


「ね、彼に今のこの国の状況を見せてあげてよ」


『そういうとこか』


『お安い御用ですわ』


『分かった』


 三者三様に了解の意を示した後、写っていた景色が動き次いで映し出されたのは拘束されたルラン王国の兵士達と国王の姿であった。


「なっ!? いったいどういう……?」


「簡単に言っちゃえば、今この国はうち等、双翼の剣が制圧している状態なんだよ」


「一体何の為に……」


「うーん、全部説明するの面倒くさいなぁ……てか、別にいらないでしょ、説明なんて。あなた達は今、自分が置かれている立場を正確に把握さえしてくれればいいんだよ。まぁ、すっごく簡単に関係性を説明すると、今拘束されている人達はもれなく皆うち等の“敵”というわけさ。他は“味方”あるいはそれに近い人達って事さ」


 クラリナの言葉に国王の顔が青ざめる。


「一体、お前等は何を企んでいるのだ……?」


「んー? とっても簡単な事だよ。うち等の大事な大事なシルティを傷付けたあなた達に彼女が負った傷を倍以上にして返してあげるのと同時に、立地のいい場所を一つ頂戴して、新しい双翼の剣(うち等)の本部を置こうと考えてるのさ」


「シルティーナ……あの娘が何だというのだ? 我はただ、罪を犯したあやつに合った罰を与えただけで……」


「あは! あはははは!! 罪!? それってどんな!? 国の為に駆けずり回るのが罪なの!? 目の敵にされるのを覚悟して間違いを正そうと声を上げるのが罪なの!? あんた何にも分かってない!! 真に罪に問われるべきはあんただよ!! 無能で強欲で浅はかで卑しい王よ!! あんたが国王なんてやってるからシルティは負わなくてもいい傷を負う羽目になったんだ!!」


「っ、」


 向けられた鋭い殺気に国王の頬を冷や汗が流れる。


『クラリナ、そいつはルラン王国の王に引き渡す事になっている。手は出すなよ』


 シン、と静まり返ったその場にジンの声が響いた。


「分かってるよジン様。けれど、ちょっといじめるくらいはしてもいいじゃない」


『そんな楽しい事はシルティーナにさせろ。もう直ぐお前を迎えに来る頃だろう』


「うわ……何で分かるのジン?」


 ジンの言葉に応えたのはクラリナとは別の人物だった。

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