シルティーナとテドラ②
「私が、この国を救うとでも?」
「……っ、」
無表情で放たれた言葉。その言葉を放った声も、何の感情も伴わない酷く無機質なモノだった。
「時が来るまで余計な詮索はしない事です。でないと、あなたもまた、選ぶ事すら出来なくなりますよ」
それは、確かな警告であった。
「……」
自分に対して明確に引かれた境界線。
そこから先に踏み込む程の覚悟を、テドラはまだ持ち合わせていなかった。
「……」
先を歩くシルティーナに着いて行きながら、テドラは先程までのやり取りを思い出す。
彼女は『何れ分かる』と言った。
旅が終わった時に全て分かると。
そう、言ったのだ。
「……隠さなかった」
隠す事も、はぐらかす事も、ましてや自分の口を封じる事もなく、彼女はその情報を与えた。
"情報"と呼べる程のモノではなかったかもしれないが、それでも、双翼の剣が何かを企んでいると言う事を理解するには十分な言葉だった。
つまり、それは……
「今更"何か"に気付いた所でもう止められない所まで来ているって事なのか……」
そう口に出して呟いた瞬間にテドラは唐突に理解した。
「あぁ……僕達は最初から間違っていたのか……」
そう、きっと二年前から間違えていたのだ。
取り返しのつかない程の過ちを二年前に自分達は犯していた。
その時に、今のこの未来は決まってしまったのだろう。
"シルティーナ・バルラトナ"という一人の少女を糾弾し、国外追放したその時にこの国の行く末は決まったのだろう。
彼女は……かつて、誰よりもこの国を愛し、この国の為にと奔走した彼女は今、この国の事を"憎い"と言った。
滅んでしまえと思える程に"憎い"と言ったのだ。
あぁ、だからきっと。
彼女は最初から救う気など無かったのだ。
国も聖女も、救ってやる気など、全く無かったのだ。
「選択、か」
彼女は言った。
自分は選ばなければいけない、と。
選択肢を与えられているだけ幸運なのだと。
では、それすら与えられていない者達とは?
「……」
それこそ愚問と言うものなのだろう。
頭に浮かんだ者達の名をテドラは頭を振って考えなかった事にした。
「選べと言うのなら、僕の意思はもう決まっているんですよ……」
二年前の自分の行動に後悔し、嘆き、悔やんだその時から。
「もう二度と、あなたの事は裏切らない」
もう一度笑顔を向けて欲しいと思った。
それが全てだ。
ぐっと、誓う様に握り込んだ拳。
その選択が、今後のテドラの運命を大きく変える事となった。




