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オープニング 創造の極致

 始めに言葉があった。「光あれ」と“言葉”は言った。すると光があった。

 次いで“言葉”は言った。「音よあれ」「地よあれ」「生き物よあれ」するとみんなあった。

 現れた地に生物は満ち、鳴き声をあげ、歌を歌った。“言葉”はそれを見て良しとした。

“言葉”はその世界を心地よく眺め、生物達の歌声に耳を傾け、それを聞いて良しとした。“言葉”は新たな生物の創造を続け、歌声に満悦していた。

“言葉”はそのまま心地良い自らの世界に引きこもった。ごくたまに世界の外に出ることはあっても、居心地の悪さに身をよじるのみであった。

 そしてそのまま世界は無限の活動を繰り返したが、“言葉”気に留めなかった。『時間』の創造を忘れてたのだ。


 いっぽう宇宙の半分だけ離れたところでは、別の“言葉”があった。

「光あれ」と“言葉”は言った。すると光があった。そして見よ、光は沈んで夕となった。こちらの “言葉”は先人の体たらくから教訓を得ていたのだ。

 続く五日間で、“言葉”は天地と、海と陸と、生き物を創造した。自らが入り浸らないように適度に不快な世界だった。“言葉”は創造した世界を見て良しとし、自らが棲み付く代わりに二体のアバターを設置した。

 しかしアバターは手違いで『知恵』がインプットされたため、“言葉”はやむなくアバターを自立発展モデルに目的変更し、数百年の後にモデルの子孫は地上に繁殖することとなった。

 それはそれとして、海の中では“言葉”が創造した生物とは別に、独自の生命体が自力で誕生し、変異と環境適応を繰り広げ、やがて“言葉”の生物たちと覇権を争うまでになった。

 この頃になると“言葉”が創造した生物と、独自に進化した生物の交配も起きて収拾がつかなくなったため、ついに“言葉”は観察をあきらめ、モデルたちの経過データを記録にまとめることにした。

 記録されたモデルの子孫たちのホームドラマは、後に人類の間で一大ベストセラーとなった。


 さて、先に自分の世界に引きこもった“言葉”のほうは、悠久の退廃にすっかり知性も理性も底をつき、時折外の宇宙に現れてハメをはずしたとき以外には、知る者とてない存在と成り果てていた。

 それでもごくたまに外の宇宙に与える損害は凄まじく、いつしかその恐ろしさは地球の人類にも漏れ伝わることとなっていた。口に出すのも憚られるというその存在を、ある者は恐れ戦きながら密かに書物に記し、ある者は『自分の売り物でハイになるな』という箴言を生んだ。

 いっぽう対照的に地球の“言葉”のほうは、人間の一人を広報担当官に任命したことがきっかけで二冊目のベストセラーをものにした。それから二千年ほど経ったある日のこと。

 相変わらず地上には不快と不満がはびこっていたが、現状への不満に耐えかねた人間の一部が立ち上がり、状況打破のために行動を起こした。

 彼らは創造主の御技に倣って、新たな価値あるものの創造を思い立った。

 彼らは言った。「光あれ」するとライトが当たった。

「音よ鳴れ」するとサウンドが響いた。

「ドラムとギターを」それはそこにあった。

「ロックよ在れ」

 すると見よ、ロックが鳴り響いた。

 こうして神の創造物と、神が意図せず誕生した生ける者全ての上にロックはあまねく響き渡り、ついでにこの物語を生んだ。


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