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キャフスネーキンは体を上下左右に大きく震わせていたが、やがて、顔を天に向けて、腹から頭まで垂直の形で動きが止まった。
その瞬間、キャフスネーキンの喉が大きく裂け、大量の赤い血が噴出してきた。
そして、裂けた喉の穴から、血の塊が素早く飛び出してきた。
しかしそれは血の塊ではなく、全身に返り血を浴びた鈴だった。
鈴が飛び出したと同時に、キャフスネーキンの体は頭の方から塵になっていって、やがて雪が解けるように、消えていった。
「鈴、大丈夫か!?」
「鈴さん、怪我は無いですか?」
キャフスネーキンの体から飛び出してきた鈴を見つけた光と亮夜は急いで鈴の側に駆けつけた。
「大丈夫だけど、涎と血でベトベト~」
キャフスネーキンの喉にいた鈴は頭の先から足元まで、キャフスネーキンの体液に塗れていた。
「鈴さん、今、温水出します。サーマルウォーター」
光の右の手の平から、温泉のような暖かい水が飛び出してきて、鈴の頭に降注いだ。
「光ありがとう! 気持ちいい!」
鈴はそう言うと、温水のシャワーを服ごと浴びた。
するとそれを見た亮夜が、光に向けて右の手の平を向けて「スモーク」と、唱えた。
「亮夜さん、いきなり何をするんですか!? 目の前が何も見えないじゃないですか?」
「……水を浴びて、鈴の服が透けるんだ。しばらくそのままで温水だけ出せ」
「し、仕方ないですね。……残念だけど、我慢します」
突然目の前を煙で覆われた光だが、亮夜の雰囲気に押され、目が見えないまま、鈴に温水を掛け続けた。
「光、もういいよ。温水ありがとう」
「いえいえ……亮夜さん早くスモークを解除してください」
「もう少し待っていろ」
やがて、全身ついた汚れを落とした鈴だが、着ている服はすぐに乾かせない状態だった。
「鈴、服が濡れていたら風邪を引くからこれを着てろ」
「ありがとう亮夜。さっそく着替えるね」
亮夜はそう言うと、自分の着ていた迷彩柄の上着を脱いで、鈴に渡した。
すると鈴は服を受け取ると、着ていたTシャツを脱ごうとした。
その瞬間、亮夜は顔を赤くして、鈴に背を向けると、光の側に向かった。
「わっ、亮夜さん、なんか俺の目に圧力がっ!?」
「慌てるな。俺の手の平だ」
スモークの煙で何も見えない光に対して、亮夜は念を押すように、光の目を自分の手で押さえると、自身も体を捻り鈴に背中を向けた。
恋人同士とはいえ、目の前で堂々と着替えを始める鈴に対して、なぜか亮夜は羞恥心に駆られてしまった。
しかしそんな亮夜の気持ちに気付かないまま、濡れた服を脱いだ鈴は亮夜の上着に着替えた。
鈴からの着替え終了の合図を聞いてから、亮夜は光の目から手を離し、スモークを解除した。
「亮夜さん、目にスモークはかけるわ、いきなり押さえるわで、俺の目がチカチカしてます!」
視界が明るくなった光は、亮夜に向かって怒りをぶつけた。
「悪かったな……」と光に声を掛けた後、「見せたくなかったんだ」と、小さく呟いた。
「俺だって最低限のマナーは持ってますから!」
「もう二人とも、見る見ないはどうでもいいから早く頂上に向かいましょう!」
光と亮夜の言い合いを聞いていた鈴は、急かすような声を出して、光と亮夜より先に歩き出した。
鈴の行動に慌てた光と亮夜は、慌てて鈴を追いかけた。
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