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RED RAID-侵略大戦-  作者: 赤木梓焔
第1章 友人との別れ
5/101

-5-

「元は生きているのか!」


 息を切らしながら亮夜に問いかける光。しかし亮夜はゆっくりと首を横に振った。


「いいえ。医療班が首を繋いだだけです」


 そう言うと、亮夜は元の体を地面に敷いてあったブルーシートの上に静かに乗せた。

 元の顔色は青白く、着ていた制服は血まみれだったが、医療班が繋いだという首は横に赤い蚯蚓腫みみずばれのようなラインがあるだけだった。


 光は元の横に膝をつくと、元の両手を胸の上で組んでやる。

 すると、側にいた亮夜が元の目を指でそっと閉じると、その顔の上に白い布を乗せた。

 そして自身の両手を合わせて合掌すると、小さな声でお経のような言葉を唱えた。


 亮夜のお経を耳にしながら、元の組んだ手の上に自分の手を重ねて、光は元の側に寄り添っていた。

 しかし亮夜の読経が終わりしばらくすると、二人の自衛隊員が近づく。


「失礼します。遺体を収容します」


 光の側に来た自衛隊員の一人が光に声を掛けると、その様子を見た亮夜はその場からそっと立ち去る。

 元の遺体は自衛隊のストレッチャーに乗せられ、元と光の手はそこで離されてしまう。そして元の遺体はどこかへ運ばれて行ってしまった。

 光は自分から離れていく元を、黙って見送った。


 校内の探索が終わったのか、警察や自衛隊そして討伐隊も撤去の行動をとり始めた。

 その様子を校庭の隅でじっと見ていた光だが、やがて何かを決意した顔になると、作業をしていた亮夜の側に近づく。

 光に気がついた亮夜が「どうかしましたか?」と尋ねた時。


「お、俺を討伐隊に入隊させてください!」


 光はそう叫ぶと、亮夜に深く頭を下げる。

 その声に、他の討伐隊員も光と亮夜の方に目を向ける。


「いきなりどうしたんですか?」


 亮夜が静かに問いかける。


「元の、アイツの夢は『討伐隊に入って皆を守ること』だったんです。だから俺がその意思を引き継いでアイツの夢を、そして俺自身、元の仇を取りたいんです!」


 光は一旦顔を上げ、亮夜に力強く話すと再び深く頭を下げた。


「仇を取るまえに死ぬかもしれませんよ」

「それでもいいんです! 俺は討伐隊に入って皆を助けたいんです」


 静かで丁寧な口調で話す亮夜に、光は少し早口で熱く訴える。

 すると亮夜は胸から無線機を取り出すとどこかへ連絡した。


 数分後、亮夜の側に別の討伐隊員が現れ、手に持っていたB4サイズの茶色い封筒を亮夜に手渡した。


「これが討伐隊に入る為に必要な書類です。君は未成年なので必ずご両親の許可を貰ってください」


 亮夜は無表情のままそう言うと、その茶色い封筒ごと光に手渡す。


「ありがとうございます。必ず両親を説得させてみます」


 光は何度も頭を下げると封筒を大事そうに抱え、その場から走り去っていった。


「彼は本当に来るんだろうか。出来ればこのまま学生でいてほしいな」


 光の後姿を見送りながら、亮夜は自分が入隊した時の事を思い出し、ポツリと呟いた。


ご閲覧ありがとうございますm(__)m

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