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光が立ち去った後、亮夜は腰に下げていた日本刀を鞘から抜き胸より下辺りに置き、両手で構えた。
すると、教室の中に倒れていたウォームが再び「キシャァァァァ!」と奇声を上げ、亮夜の方に飛び掛っていく。
「これで終わりにしてやる――フォルティス」
亮夜が呟くと、亮夜の右手中指に嵌められている指輪の赤い石が鈍い光を放つ。
すると、亮夜の体と持っていた日本刀が薄い光に覆われた。
亮夜に投げ飛ばされたウォームは亮夜の変化に気づかず、長い尻尾を一層細かく震わせ、亮夜に向かって突進した。
しかし亮夜は一歩も退くことなく、ウォームの動きをじっと見つめる。
ウォームは奇声を上げ、両方の鋏腕を左右に振り回しながら一気に亮夜の目の前まで迫る。
その時、ウォームをギリギリまで惹きつけた亮夜の持っている日本刀の切っ先が、ウォームの目と目の間に突き刺さった。
「塵になれっ!!」
「ギシャャャ『ザシュッ!』ァァ」
ウォームの体に真っ直ぐと日本刀が入り、2枚おろしにされた魚のように綺麗に真っ二つに裂けた。
裂けた体は、糸の切れた人形のように教室の床に落ちながら、黄砂のような細かい塵になっていく。
その塵は空中を舞いながら、亮夜の指輪の方に吸い寄せられ、赤い石の中に全て吸収された。
すると指輪の赤い石がごく僅かに形を変えた後、光を閉じた。
亮夜の体も日本刀も光を失い、元の状態に戻ったようだ。
「またレベルが上がったか」
亮夜は無表情のままそう呟くと、胸から黒い無線機を取り出した。
「こちら神堂。医療班を頼む――」
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「いいかー! 1年1組はここ!……2年生は教頭先生の近くに――!」
「怖いよー」
「帰りたい」
校庭では、生徒の確認を取る先生の怒号と、生徒の鳴き声が入り混じっていた。
教室から逃げ出した生徒の中には、階段で転んだり、窓ガラスで怪我をした生徒もおり、学校のテニスコート内にあるベンチに座り、保険医や救急医の治療を受けていた。
その周りを討伐隊と自衛隊が銃のような武器を持って囲んでいた。
そんな中、光は皆とは少し離れた場所で体育座りをしながら遠くを眺めていた。
思い出すのは元と過ごした楽しい日々。
「元……なんで……」
光の目に涙が浮かび、周りの景色が滲んでくる。
それを自分の手の甲で拭くと、視線の先に亮夜の姿が入ってきた。
そして亮夜の腕の中に元の姿があった。
「う、嘘だろ?」
「こら、輪鳥! どこへ行く!」
光は立ち上がると先生の静止の声を無視して、亮夜の下に全速力で駆け出す。
そして、亮夜が抱えている元の姿を見て、目を大きく見開いた。
なぜなら、ウォームによって切断されたはずの元の体と首がつながっていたからだ。
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