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地球から遠く離れた惑星――エトワル星。
月と同じくらいの大きさだが、空気と水、雲があり、気温や天候など、環境は地球とほとんど変わらない。唯一地球と違うのは、空が紫色で常に薄く感じるくらいだ。
しかし草木など、緑は豊富で、緑が生えている土の上には、灰色の石を積み重ねて作った建物が惑星の各地に点在している。
この星に住む住人は地球人とほとんど変わらない背格好をしている。
この星には通貨などはなく、物々交換を行い、自給自足の生活を送っている。
そして地球に突然現われたウォームと同じような生物が、牛や馬のように畑を耕したり、大きな石を運んでいた。
この情景だけを見ると、のんびりとした田舎のような雰囲気だ。
しかし、小高い丘に建てられた一番大きい石造りの城のような建物はピリピリとした険悪な雰囲気が漂っていた。
大広間のような広い場所の中央には、10人くらいが座れる楕円形の大テーブルが置かれている。
しかしそのテーブルに座っているのは一人の男性のみ。
そのテーブルから少し離れた所に、2、3人の男性が厳しい顔をして、直立で立ち、天井を眺めている。
彼らのいる大広間の天井は、映画館のスクリーンのようになっていて、そこには亮夜と鈴の合図で光がウォームを銃撃した映像が流れていた。
「忌々しい奴らよ!」
そう苦々しい声を上げた人物は、自分の握り拳を目の前のテーブルに叩きつけた。
中世バロック時代の貴族が着るようなレースや刺繍が施された服に、左肩にだけ紺色のマントのような布が覆われていた衣装を纏った、丸坊主でこめかみに青筋を立てた老年の人物の体は、怒りで小刻みに震えていた。
そして激しく右腕を左右に振り、テーブルの上にあった飲み物が入った入れ物を荒々しく床に落とした。
高い音を出し、床に転がった金でできた入れ物は割れなかったが、床一面にワインのような赤い液体が広がった。
「メビウス様、落ち着かれてください」
椅子に浅く座り、肩で激しく息をしている人物に向かって、落ち着いた声が掛けられる。
黒の燕尾服に身を包んだ長身の若い男性は、その態度と台詞から、メビウス様と呼ばれた人物の従者のようだ。
「これが落ち着いていられるかデファンス! クソッ! これも裏切り者のクレールとブランのせいだ!」
メビウスは、デファンスと呼んだ燕尾服の男性を睨み、怒鳴りながらもう一度テーブルを思い切り叩く。
すると激昂しているメビウスの側に、デファンスとは別の男性が近づいてきた。
メビウスと同じような服装で両肩に緋色のマントを羽織り、彫刻のように美しく整った顔立ちをした若い男性はメビウスのすぐ左横に立つと、深々と頭を下げた。
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