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ある日突然現れた『ウォーム』は見境なく人や動物を喰い殺す残虐な生物で、家にある殺虫剤や鉈などの武器では倒すことができず、多くの死傷者がでた。
政府も自衛隊を各都市に配備して対策をしていたが、ウォームは、いつ、どこに出現するが予測ができず、犠牲者が増えていくばかり。
そんな時、日本屈指の財閥『雨降財閥』が、ウォームを絶滅させるために『ウォーム討伐隊』を設立したのだ。
自衛隊とは別に作られた私的戦闘部隊だが、ウォーム討伐隊の活躍はめざましく、彼らの働きで犠牲者も少なくなっている。
元は母親がウォームに襲われかけた時に、駆けつけたウォーム討伐隊に母親を助けられた。
以来、高校を卒業したらウォーム討伐隊に入隊して、ウォームを倒したいそうだ。
先生の話によると、この付近にウォームが現れたとの情報で、昨夜から討伐隊がこの街に次々と入ってきているとのこと。
怪しい物体を目にしたら、すぐに警察か討伐隊に知らせてほしいそうだ。
「連絡は以上だ。じゃあ日直――」
先生が日直に号令をするように呼びかける。
「起立――礼……」
そして最後の『着席』を言おうとした時、ピシリと、校庭側の窓ガラスが音を立てた。
「な、なんだぁぁ!」
嫌な音に、教室にいる生徒達が窓ガラスに視線を向けると……突然、窓ガラスが音を立てて割れると同時に、全身が真っ黒に黒光りした生物が進入してきた。
頭から腹部まで、節はあるがくびれずに続いている体。
腹部からは長い尾が伸び、上向きに曲がっている。
頭部のすぐ下からは長い鋏腕が伸びている、体長80センチくらいの蠍のようなウォームだった。
「ウォームだぁー!」
「逃げろー!」
「殺されるー!」
教室の中は突然侵入してきたウォームに混乱し、生徒たちは叫び声を上げ、逃げ惑う。
ウォームは「キシャァァァァァ」と奇声を上げ尻尾を細かく震わせると、すばやく動き回り全身から風を切るような音を立てる。
「うわぁぁぁぁ! 俺の腕がぁっ」
その時、同級生の一人がウォームに腕を深く切りつけられ、血が床にボタッと落ちた。
どうやらあのウォームの尻尾は、刀のように鋭くなっているようだ。
その光景を見た他の生徒達は、悲鳴を上げ、一斉に教室の扉に殺到する。
教室の中は鞄の中身が散乱し、椅子が乱暴に横に倒れていた。
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