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「この階と、下の階は男女共用の娯楽とフリースペースだ」
「カラオケとかボウリング場まであるんですね」
エレベータを降りて、扉の横にある『館内案内図』を見ると、最上階には「ボウリング」「ミニシアター」「カラオケ」「ゲームコーナー」などがあり、その下の14階は、「マッサージルーム」「フリースペース」「相談室」などがあるようだ。
寮棟は地下1階が男女それぞれの「大浴場」、地上1階が「出入り口」と「外部者の受付」、2階が「討伐隊員用事務局」、3階から11階までが「討伐隊員の宿舎」、12階が隊員全員が集まることが出来る「ホール」、13階がバイキング形式の「食堂」、そして14階と今、光と亮夜がいる最上階の15階が「娯楽施設」になっていた。
亮夜の話によると現在この寮棟には、男女の討伐隊員と事務員を合わせて約180名近くが生活しているそうだ。
どの遊び場も男性と女性が混ざって、ゲームやボウリングを楽しんでいるように見える。
隊員は男女どちらとも、白いTシャツに迷彩柄のズボンか、上下共迷彩服を着ているが、ラフに着こなしていた。
「今日は案内が優先で時間が無いが、後日、訓練の後にカラオケでも体験してみるか?」
「いいんですか! 俺、訓練頑張ります!」
まだ知り合いのいない光は、亮夜から掛けられた言葉が嬉しいのか、喜びの声を上げた。
「そうしたら一旦部屋に戻って、今度は各階にある共有施設に案内する」
「はい、分かりました」
光と亮夜は自分たちの部屋に戻るため、男性専用の水色の扉のエレベータの方に移動を始めた。その時――。
「亮夜、こんなところで何をしているの?」
亮夜と光の背後から高めの可愛らしい声が聞こえてきた。
その声で亮夜と光が振り返ると――そこにはショートヘアで光より僅かに背の高い、顔立ちの整った女性が立っていた。
「鈴か……派遣先から帰ってきたのか……っておい、くっつくな」
「もう、メールしたじゃん~。見てなかったの?」
鈴と呼ばれた女性は亮夜の左腕に、自分の両腕を絡めて甘えるように擦り付ける。
亮夜は左腕を解くことなく、自身の右手を頭に当てて、顔を左右に軽く振りながらため息をついた。
その様子を見た光は、しばらく固まっていたが気持ちを落ち着かせながら質問をした。
「神堂さん、その綺麗な人は誰ですか?」
「こいつは朝倉鈴。女性討伐隊員で、俺の……恋人だ」
「えぇっ!? こんな綺麗な人が、ですか?」
「もう、『綺麗』だなんて。イイコだわ。フフッ」
「あ、あの、俺、今日から討伐隊に入った、輪鳥光です」
光からの質問に顔を赤らめながら鈴を恋人だと紹介する亮夜に対して、鈴は光から『綺麗』だと言われて上機嫌になっていた。
学校の同級生とは違う、年上の女性を見た光は、緊張しながらも自己紹介をした。
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