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「ここ、地下一階は大浴場だ」
「スゲー、温泉浴場みたいですね」
エレベータを降りて少し廊下を歩くと、目の前に「殿」、「姫」と大きく書かれた2つの扉が目の前に現れた。
「言わなくても分かると思うが、『殿』が男湯、『姫』は女湯だ」
「女湯ってことは、もしかして女性隊員もこの寮にいるんですか?」
扉の文字と亮夜の説明を聞いた光は驚いた顔をした。
「ああ、そうだ。この寮には男性隊員と女性隊員が半々くらいの人数で生活している」
「でも、部屋を移動している時は見なかったですよね?」
「この大浴場と、これから案内する共有施設以外は厳戒に分かれているからな。そのうち女性隊員を目にすることもあるさ」
亮夜は表情を変えずに淡々と説明をする。この寮施設はエレベータを挟んで女性寮と男性寮に分かれているそうだ。
「ICカードを扉にあるカードリーダーに翳さないと扉は開かないが、女湯の方に翳すなよ」
「もし、女湯の方に翳したらどうなるんですか?」
光は少しニヤッとした顔で亮夜に質問をする。
その表情を見た亮夜は少し呆れた顔をしながら、小さくため息をついた。
「警報がなって、警備員が駆けつけて、最悪除隊だ」
「……分かりました。気をつけます」
「……お前、翳す気満々だっただろ?」
亮夜の鋭い突っ込みに、光は焦りを感じ、顔を左右に軽く振った。
「ま、まさか、そんなこと……考えてません!」
「まあいい。ここの女性隊員はお前より強いから、殴られないように気をつけるんだな。……次の場所に移動するぞ」
「ああ、置いていかないでください」
亮夜は無表情のまま素早く移動すると、エレベータの中に入っていった。
光は慌てて亮夜を追いかけながら、急いで亮夜がいるエレベータの中に滑り込んだ。
光がエレベータの中に収まった瞬間、扉が閉まりエレベータはゆっくりと動き出した。
「あのー、質問いいですか?」
討伐隊に入ってからの行動を思い出しながら、光は右手を小さく上げながら亮夜に質問をする。
「なんだ?」
「もしかして、受付してからエレベータホールに行った時、桃色と水色の扉があって、でも俺達が水色の扉のエレベータに乗ったのって……あれが男性専用なんですか?」
「ああ、そうだが、言ってなかったか?」
分かりきったことを聞くなよ、という顔をした亮夜が返答をすると、光は少し膨れた顔をした。
「全然、聞いていません! もしかし桃色の扉のエレベータに乗るのも駄目なんですか?」
「緊急事態以外は原則禁止だ」
「やっぱり……そうか」
亮夜からの分かりきった答えに、光はガクット肩を落として俯く。その様子に亮夜が呆れた声で追い討ちを掛けた。
「お前、『トイレが緊急事態』とか言って女性専用エレベータに乗るなよ」
「……絶対に乗りません」
亮夜の突っ込みに光は苦虫を噛み潰した様な顔をして答える。
やがて二人を乗せたエレベータは15階、寮棟の最上階に到着した。
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